武田光司「最後の涙はみんなに『ごめん』って。どんなに盛り上げても、やっぱり勝つことが正義なので」
──ガジ・ラバダノフ選手との試合後の率直な感想をお聞かせください。
「さっき喋っていたのは僕個人、ファイターとしての感想というか。でまあ、対抗戦に選んでもらって先鋒で盛り上げて勝たなきゃいけない状況の立ち位置の考え方では、日本のファンのみんなにすみませんでした、というふたつの気持ちがあります」
──戦いを通し、通じ合うものがありましたか。
「僕個人としては、すげえ楽しかったです。結果だけ見たらすごくよくないですけど、勝ち負けにこだわらずやり切った結果がこれだったので、まあ楽しかったですね」
──1Rにダウンを喫し、かなりひやっとした場面でした。あそこはどうやって持ち直したのですか。
「セコンドの声とファンのみんなの歓声と……、なんかそれでパッと意識が目覚めて、で兄弟子の芦田(崇宏)さんから『帰って来い!』って言われて。意地でも2R目に持っていこうと思って死ぬ気で耐えました」
──実際、ラバダノフ選手と拳を交えてどういったところが長けている選手だと思いましたか。
「反省点として言えば、ちょっと2、3Rの最後か、ちょっと(相手が)バテている印象がすごいあったんですけど、僕もやっぱり組みでバックコントロールされたのも初めてだし、バックでコントロールされて、そういうところでコントロールされて僕も削られて、お互いバテちゃっていたのもあったんですけど、スタンドの攻防をもっと僕もやらないといけないなと思いましたね」
──リング上での言葉を聞いたのですが、武田選手は何を?
「さっき(ラバダノフのインタビューの最後に)言ったことを言いました。それだけですね。べつに僕はやっぱりなんだろうな、煽ったりとかしないじゃないですか。対戦相手がいるからこそ、ファイト=試合が出来るっていう、で、やっぱヌルマゴメドフ一族のダゲスタンの選手で。そんなトップファイターが僕とやってくれることにはすごい敬意もあるし、感謝もしているので、だから“ありがとう”って感じですね」
──さきほど「一緒に練習したい」と。いつそういう心境になったのですか。
「試合が終わったあとですね。“すげえ強えぇ!”と思って。こんな強い奴がまだ全然世の中にはゴロゴロいるんだってすごい感じて。やっぱ理想のスタイルなんですよ、ヌルマゴ一族。で、そこで実際に教わっている選手とやって。だからそこで練習できるならしたいなって。で、それでこうお話をしました」
──少し休んで、2023年に行く気満々ですか。
「そうですね(笑)。今年海外行く、海外行くしか言ってないですね、僕。でも一回少し休みますけど、休んでまたやりたくなったら、行きます」
──今回の経験が格闘技人生で今後どのような意味を成すと思いますか?
「僕は対抗戦にRIZINサイドとして選ばれてすごい光栄に思っていますし、Bellatorの選手にも戦ってくれたことに敬意を表しています。僕の中での価値観なんですけど、UFCとかBellator、ONEとか海外のトップ団体があると思うのですけど、そういうトップ団体で活躍して修羅場を乗り越えて戦っているファイターたちって、僕の中では“オリンピック選手”だと思っているんですよ。アマチュア競技におけるオリンピック選手、トップ選手。だから本当に僕はオリンピックに出ている人間は“神に選ばれた人間”で、やっぱり努力しても行けないのもあると思うので、僕もレスリングをやっていて昔はオリンピックを目指して頑張ってきた一人の人間なので、いまMMAでオリンピッククラスの人たちとトップ団体で試合をすることができて、嬉しいなって。そして、乗り越えなきゃいけないなって思いました」
──RIZINの代表として戦うなかで、選ばれてから試合するまでの期間はどういう感じでしたか。
「毎日が長いようであっという間でしたね。本当に週3くらいで、月・火はBRAVEジムで練習して、水・木・金は出稽古に行かせてもらって、本当にプライベートのことは断ち切ろうと思って。僕が住んでいるところは埼玉県なんですけど、パンクラスイズム横浜さんに水曜日、松嶋こよみさんとやらせてもらってほぼガチスパーなんですよ、ほんと実戦みたいな。それでも前乗りしてホテルに泊まったりしていて。試合に臨むような気持ちで出稽古に行く。
木・金はロータス世田谷さんに行かせてもらっていたんですけど、やっぱり運転だったり移動だったりで疲れることがあるじゃないですか。そこでも前乗りしてホテルに泊まることもあって、本当に自分のためにお金を使って、すこしでも楽になるように練習をメインでやろうと思っていて。試合のために時間を使ってやってたんですけど、すげえ本当に長く感じるんですよ。“うわあ、また明日もまたガチスパーか、行きたくねえな”って。でもホテル泊まってちゃんと気持ちを作っていくと、試合に行く感じだったので、本当に毎日・毎週試合をしている気分でした。だから大晦日向けて、いい毎日を過ごせたのかなとは思いますね」
──今後の展望を教えてください。
「2022年が4試合をしてちょっとこう、すごい疲れちゃったのかなって思っている自分もいて。ちょっと休もうかなと。肉体的にも精神的にもガタがきているところはあるかもしれないので。だからまあちょっと休んで、格闘技以外のことでも少しやろうかなと思って。なんだろう……ずっと練習練習、練習練習の毎日を過ごしてきたので、だからすこし格闘技を離れて休むこともいいんじゃないかなと思って。神様がいたとしたら別にダメとは言わないかなと、それくらいの1年だったので。うん。だからもう、すこし休みます」
──2022年に4戦(スパイク・カーライル、ジョニー・ケース、ザック・ゼイン、ガジ・ラバダノフ戦)したなかで、精神的・肉体的にガタがきている、と。特にどういうところが?
「ちょこちょこ喋ったりはしていたんですけど、結構僕、鬱だったり、パニック障害だったりっていうのが一時期あったりして、結構おかしい時期もあったりしたので、そういうのってやっぱり、プレッシャーとかそういうところから生まれてきていると思うので、だから1回ちょっとリセットして休もうかなって感じですね」
──試合後、観客の方を見て涙していました。何を思っていましたか。
「“ごめん”って。みんなにごめんていうこと伝えるしかないなって。やっぱり勝つことが全てだと思っているので。どんなに盛り上げても、やっぱり勝つことが正義、勝つことが全てだと思っているので、やっぱり勝てなくて、みんなにごめんていう気持ちがあったので、自然に泣いちゃったのですかね……」
──あの試合には感動の声が多いと思います。
「まだ見ていないので後で見たいと思います」