2022年12月11日(日)東京・後楽園ホール『MAROOMS presents KNOCK OUT 2022 vol.8』にて、セミファイナル(第8試合)第2代KNOCK OUT-REDスーパーフライ級王座決定戦3分5R延長1Rで対戦する乙津陸(クロスポイント大泉)と心直(REON Fighting Gym)のインタビューが主催者を通じて届いた。
乙津は2021年10月にプロデビュー以来6勝(3KO)無敗の18歳ホープ。今年6月には新宿FACE大会のメインイベントを務め、NJKFフライ級1位の谷津晴之を試合終了直前にKOしてみせ、10月には酒井柚樹と大熱戦を展開して「10年に1試合くらいの勝負を見せてもらった」と宮田充KNOCK OUTプロデューサーに言わしめた。
心直は“プロフェッショナルシスト”健太の愛弟子で、J-NETWORKフライ級新人王を獲得後、KNOCK OUT、REBELS、シュートボクシングに参戦。KNOCK OUTでは2021年に「初代KNOCK OUT-BLACKスーパーフライ級王座決定トーナメント」に出場、SBでは日本バンタム級1位になっている。戦績は7勝(1KO)8敗2分。
乙津「年下だからってナメてんじゃねえぞ」
カード発表会見では心直の言葉にいらだちを隠せなかった乙津だが、それでもデビューから7戦目で無敗の王者になる自信は満々。その自信と、高校生ファイターならではの悩みとは?
──念願の王座決定戦が、やっと実現ですね。
「宮田プロデューサーにはいつも濁されてばかりだったんで、発表された時はうれしくて心拍数がヤバかったですね。『やっと来たか!』って感じでした」
──ただ、カード発表会見では相手の心直選手とやり合う場面がありました。
「まあ、口では何とでも言えるんで。『すげえ文句言う人なんだなあ』と思いました。そういう人なんだなあと」
──宮田プロデューサーもその場でちょっと言ってましたが、わりとすぐに頭に血が上ってましたよね。実はもともとそんな感じ?
「宮田さんにも『短気の乙津君』って言われたんですけど、短気なんですかね?(笑) 友達とかなら全然『やめろよ~』って感じの対応するんですけど、タイトルマッチでの対戦が決まって、緊張が走ってる中でああいうこと(「無敗は無敵ではないと思うし、試合を見たが、大して強い奴とやっていない」などの発言)を言われると、やっぱりムカつきますよね。年下だからってナメてんじゃねえぞと」
──年齢も試合数も、心直選手が上ですよね。そこでナメるなと。
「はい。キャリアは相手が上ですけど、実力は俺の方が全然上なんで。ナメられても、結果で黙らせちゃえばいいかって感じです」
──やっぱり沸点は低いですね(笑)。でも、そういうところがいい形で試合に出ている感じが、特に最近はあるんじゃないですか?
「そうかもしれないですね。この前の酒井柚樹戦とかも含めて、攻撃が逆に丁寧になってきたというか。さらに狙いを定められるようになってきたなとは思います。酒井戦は跳びヒザとヒザ蹴りを狙ってたんですけど、後から見返しても、その成長は感じられましたね」
──ただ、酒井戦はかなりな激闘になりましたね。
「相手がもうちょっと心折れてくれるかと思ったんですけど、全然そんなことなくて。悔しさもあり、楽しさもあり、いろんな感情が入った試合でしたね。ボコボコにしたのは確かなんですけど、やっぱり倒すと倒さないとでは結果が全然違うんで、次の試合からはしっかり倒して、記録を更新していきたいと思ってます」
──『KNOCK OUT STYLE』でもまるまる一回分使って取り上げられたように、試合自体の評価が高かったですよね。でもやっぱり、倒せなかった以上、そう言われるのもあまり本意ではない?
「いや、結果としては悔しいけど、みんなが見て楽しんでくれたなら、俺としては全然いいかなとは思ってます。だから相手もこっちもいろんな感情が出て、いい試合になったのかなとは思いますね」
──タイトルマッチ前にそういう試合ができたというのもよかったですね。これでまた意気込みを新たにしたのでは?
「そうですね。今回は初の5Rなんですけど……まあ、5Rはかからないと思いますけどね。最悪5Rまで行った時でも、あの試合を思い出すと思うんで。毎回、思い出すんですよ。『前の試合では、俺はこんなところで落ちなかったぞ』と。そういう意味で、この前の試合はプラスになるんじゃないかと思います」
──あれをくぐり抜けたんだから、と。
「はい。いつも頭をよぎるんですよ。練習でも、『この前の追い込みはもっといけた』と感じたりもするし」
──さて、ファイターとしての心直選手についての印象は?
「この前の会見で、俺に『大して強くない相手としかやってない』って言ってましたけど、オマエもその1人だからな、という感じはありますね。パッとしないというか、常にリングで倒れてるイメージがあります。ヒジとサウスポーというところは気をつけますけど、いつもの俺の試合になっちゃうかなという感じですね」
──ヒジに関しては?
「ヒジありのキャリアは俺の方が全然少ないですけど、今回はヒジも会長と猛特訓してるので、今度こそはヒジで切って倒してやろうかなと思ってます」
──切った上で倒すと。
「ミットでも、パンチとキックのミットをやった上にヒジとヒザだけのミットもやってますし、ヒジとヒザだけのサンドバッグも毎日やっているので、切ってもいいし倒してもいいという感じです」
──いろんな意味で死角はない?
「そうですね。練習もすごく調子がいいので、全く死角はないです」
──ちなみに、今は高校3年生ですが、期末試験の方は?
「ちょうど今週あるので、パパッと終わらせて、そこから練習に専念しようかなという感じです。今回は期末がちょっと早くて、減量前に終わらせられるのでちょうどよかったです」
──今は試験も迫ってるんですね。
「たぶん明後日からだったと思います」
──「たぶん」? 高校生が期末試験を「たぶん明後日」って、どういうことですか(笑)。
「俺、『気づいたら今日が試験だった』とかよくあるんで(笑)」
──マジですか(笑)。それで点は取れるんですか?
「まあ、赤点は何とか回避できます。赤点さえ取らなければ、俺的には満点なんで(笑)」
──一番強敵の科目は?
「数学ですね。よく分かんない式があるんですけど、数学なのに英語が出てくるっておかしくないですか?」
──理解度が分かる言葉ですね(笑)。
「数学はやってらんないですよ。英語とかは小っちゃい頃に習ってたんで、まだ何とかなるんですけど。数学は一番強敵ですね。数学に比べたら、今後のタイトルマッチなんかチョチョイのチョイですよ!」
──チョチョイのチョイ!
「数学には毎日黒星ですけど、早く試験終わって、チョチョイのチョイでベルトを獲っちゃおうかなって感じっす」
──それは(笑)。今回勝てば、ずっと願っていたチャンピオンですよ。
「はい。でももう一つ目標があるので、それはベルトを獲ってからもう1個ですね。それは今回獲ってから改めて言います。1個じゃ満足してられないので」
──過去の発言からもだいたい予想はつく感じがしますが、それは試合後のお楽しみということで。試験以外はノリノリですね。
「試験以外は、チョー波に乗ってます。練習でも、5Rやっても全く落ちないぐらいにスタミナがついてますし、スピードも過去イチじゃないかと思います。もう、始まったら俺の試合ですね。今回は自信しかないです」
──ベルトまで突っ走ると。では最後に、今回の試合で特に注目してほしいポイントはどこでしょう?
「俺の今年のラストマッチなので、デビュー戦からの成長と、獲った後のストーリーをこれからよろしくお願いしますって感じです。今、ベルトをどこに置こうかって考えてるんですよ。マジで楽しみです」
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心直「KNOCK OUTにはキャラ立ちしてる選手がいない」
カード発表会見でも「無敗と言っても強い相手とやっていない」など痛烈な言葉を乙津に浴びせ、一触即発だった心直だが、ここでも発言はさらに全開! 「しゃべる通り魔状態」の発言の中身とは?
──先日のカード発表会見では乙津選手と直接のやりとりがありましたが、どう感じましたか?
「率直な感想でいいなら、『もっとしゃべれや』って思いました。返しが物足りないですよね、全く」
──乙津選手はわりと、ひと言でバシッと斬ろうというタイプですしね。
「というか、しゃべれないのをああやってカバーしてるだけじゃないですか」
──心直選手の方から仕掛けた発言もありましたが、あれは乙津選手をイラつかせようという意図もあったんですか?
「いや、別にそういうのはないです。彼はまだ子どもなので、これからああいうトラッシュトークも経験していくと思うんですけど、あの会見では他の選手たちがみんな『頑張ります』とかばっかりで盛り上がらないし、しゃべるべき人がしゃべらないとなと思って、ああなった感じです」
──ただ乙津選手は、言われてけっこうイラついた感がありましたよね。宮田プロデューサーにも言われていましたが、けっこう沸点が低いというか。
「そうでしたね。感情のコントロールができないんじゃないですか。そういう指導を受けた方がいいと思いますね」
──まあそれはともかく(笑)、王座決定戦の相手が乙津選手に決まったときはどう思いましたか?
「正直な感想は『絶妙なマッチメークだな』と思いましたね」
──絶妙?
「乙津選手が勝つのも見えるし、俺が勝つのも見える。宮田さんが好きそうなマッチメークだなというのをすごく感じました。どっちにも可能性があるというか。今回、タイトルマッチが4階級で行われますよね。工藤“red”玲央vs古木誠也は、古木選手は前KNOCK OUT王者にKOで勝って、工藤選手は今、波に乗ってるし、どっちが勝ってもいいと。僕的に『いいカードだな!』と思ったのは新田宗一朗vs久井大夢で、これもまた絶妙ですよね。久井選手が3戦目で王座獲得すればキック史に名を残すというか、歴史に刻まれるじゃないですか。新田選手は『KNOCK OUT』で連勝してて、若干課題の残る王者にはなるけど、という感じで。で、僕はここに来て、直近の3連敗はあるけど、それ以前の実績はあって、そこを評価してくれたのかなと」
──なるほど。
「ハッキリ言って、乙津選手はまだチャンピオンクラスとはやってないですよね。僕はチャンピオンクラスに競り勝ったり、何なら完封したりもしてるわけです。三段論法で言えば、乙津選手は僕に勝てばチャンピオンだし、僕はここでベルトを獲っちゃえばチャンピオンとしてもっと『KNOCK OUT』を盛り上げられるぞと。そういう点で、すごく絶妙なカードだと思います」
──解説者のようですが(笑)。
「僕はけっこう、興行とかをそういう目で見てますね。ボクシングとかに対してもそうだし。今はボクシングはスーパーバンタム級が熱いですよね。(以下、しばらくボクシング・スーパーバンタム級の情勢解説が続いたが割愛)」
──それはそれとして(笑)、今大会でタイトルマッチが並ぶ中での心直選手の役割とは?
「僕の役割としては、注目度を上げるということがまず一つ。その上で結果を出すと。注目度だけ上げて結果を出さないって、相手がオイシイだけなんで、僕としては面白くないので。『オマエ、さんざん言ってたのに負けたやんけ』って言われるだけですからね」
──乙津選手はデビュー以来全勝で来ています。例えば前回、彼と戦った酒井柚樹選手は「噛ませ犬じゃねえ」ということでファイトを燃やして、大会でも一番の熱戦になりました。「運営が推している無敗の新鋭の対戦相手」というような意識はない?
「全く。噛ませ犬って、実力差があるからそうなるわけじゃないですか。僕は実力差はないと思ってますし、経験値で言えば僕の方が全然上だし。俺を噛ませ犬として使いたいなら、もっと強い相手を用意した方がいいよって。どこに噛ませ要素があるのかなと思います。実力的には普通のタイトルマッチじゃないですか?」
──そこで乙津選手は心直選手に対して、「3連敗してるヤツ」という言い方でしたよね。
「まあ、そりゃ自信は持つでしょうね。デビューから6戦全勝、3KOですから。那須川天心とか以来の話ですよね、言ってみたら。ただ、対戦相手も含めて内容が違うじゃないですか。本当に『強い人と試合した?』って言いたいですよ。僕なら乙津選手が戦った相手と1週間に1人ずつやっても、6戦6勝6KOですよ。雑魚しかいないですから」
──7人まとめてdisるとは(汗)。まあそれはともかく、乙津選手の強いところ、警戒するところは?
「近い距離ですかね。近づいて連打とかはいいもの持ってるし、攻撃力はスーパーフライ級ではある方なんじゃないですか。でも僕はスーパーバンタム級とかバンタム級とか、上の階級でもやってるし。あの階級ではいいものがあるというぐらいですかね。あとは、あそこの会長の外智博さんがけっこう策士なので、どういう作戦を立ててるのかなと。でも、俺が乙津選手だったら俺をどう倒すかなと逆の立場で考えると、おのずと分かってくると思うんですよね。そっちだけが立ててる作戦じゃないよというのは頭に入れておいてほしいですね。サプライズじゃないけど、一つ面白いものを用意してますんで」
──それも含めて、どういう試合にしたいですか?
「これを言ったら、たぶん見出しに使われると思うんですけど、ズバリ、1R“だけ”倒しにいきます」
──ほう。1Rだけ、ですか。
「1R“から”じゃないですよ。1R“だけ”倒しにいきます。それ以上はシークレットということで。ただ決して、1Rに鈴木千裕選手みたいに攻めるという意味でもないですよ」
──今回はREDルールのタイトルマッチなので、5Rありますが……。
「だからなんですよ。面白くないですか? 5Rあって、1Rだけ倒しにいくんですよ。そのファイトスタイルを見てもらいたいです。別にスタミナがないとかじゃないんで、その意味は試合を見てもらえば分かると思います」
──それは非常に興味深いですね。
「ただ、その作戦がうまくハマってしまえば、2R以降も狙っていくのかもしれないし、やっぱりリングで対峙してみないと分からないので、作戦変更の可能性はありますけどね。そこも含めて、楽しみにしておいてください」
──分かりました。勝てば、チャンピオンというだけでなく、乙津選手の連勝を止めることにもなります。
「まあでも、ほしいのはベルトですよ。これまでKNOCK OUTではBLACKの王座決定トーナメントに出たり、他団体でもお話だけはあったりしたんですけど、ケガがあったりとかでタイトルマッチには至らなくて。ここで勝てばベルトというのは初めてなので」
──それだけにベルトへの思いは強い?
「強いというか……『KNOCK OUT』を見ててちょっともどかしいというか、『KNOCK OUT STYLE』ではバラエティをやっているのにもかかわらず、キャラ立ちしてる選手がいないじゃないですか。あそこに出られるヤツがいない」
──そうですかね?
「正直、前回の会見でも僕が一人勝ちだと思ってて。あれだけ多くのカードが発表されて、ネットニュースでも僕しか取り上げられてなかったじゃないですか。しまいには、この前の『KNOCK OUT STYLE』でも『次回、4大タイトルマッチ決定。中でも盛り上げたのはこのカード!』って、俺だけ出てたので、アレはマジでおいしかったですよね。それぐらい、『KNOCK OUT』は俺しかいないだろうと」
──盛り上げてやるぜ、と。
「盛り上げるし、今回REDを獲って、BLACKの王座もほしいんですよ。今、それができてるチャンピオンっていないじゃないですか。2階級制覇は小笠原瑛作選手がいますけど。史上初の赤黒統一王者が心直って、ちょっと面白くないですか。ポッと出てきて赤黒統一っていうのを狙ってます」
──赤黒統一は、乙津選手もずっと狙ってるんですよ。
「ああ、アイツは無理です。だって今回、赤も獲れないから。彼は今、高校3年生でしたっけ?」
──そうですね。
「ああ、じゃあ無理か。たとえここで負けても、来年のK-1甲子園にエントリーしてあげようと思ってたのに。トーナメントだからいっぱい試合できるので、そこで連勝すればいいじゃないですか。こうやって、負けた後のこともちゃんと考えてあげてたのに」
──かなり余計なお世話ですが(笑)。
「でも高校は卒業しちゃうんで、普通に老沼選手とやればいいんじゃないですかね。ちょうどいいと思いますよ」
──全方位に対して斬りつけますね(汗)。まるで通り魔状態ですよ。
「下も上も、怖いものないんで。どんと来いって感じですよ。組まれれば誰とでもやりますし。バンタム級も響波選手が返上して空位になったし、2階級制覇もいいんじゃないですか」
──夢は膨らみますね。
「そうなんすよ。まあとりあえず、目の前のベルトを獲ってからですけど」
──では最後に、当日の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「出た!」
──何ですか(笑)。
「それ、懐かしいですね! 前回聞かれた時は、槙野智章の髪型の話をしたんでしたよね」
──そうでした(笑)。
「あの時僕が言った通り、七三ヘアーは流行ったじゃないですか。格闘技界はどこ見てもみーんな七三ですよ! 何なら街なかでも七三だらけですよね。アレも僕の一人勝ちでした」
──なるほど(笑)。で、今回は?
「どうせ工藤選手は『工藤拳』とか言ってるんでしょう? 古木選手はインタビューが苦手そうだから、「倒すところを見てほしい」とか? 乙津選手はどうせ『無敗の高校生が最強になるところを見てほしい』とかですよね?」
──いや、他人がどう言ってるかはともかく(笑)。
「じゃあ僕は、『前日会見から、翌日の一夜明け会見まで』に注目してほしいです。試合はどうでもいいんで、会見に注目しろと。会見も全く面白くないじゃないですか! みんな『頑張ります』みたいな。まあ、『KNOCK OUT』は俺に任せてくれって感じですよ。『KNOCK OUT』を背負えるのは俺しかいないんで。で、勝ったら3月の代々木でコウジとやらせてくれと言いたいです」
──えっ、それはまた面倒くさい話を!
「いやいや、ボクシングのエキシビションとかやってるコウジじゃないですよ。他団体王者の●●コウジですよ!」