2022年12月11日(日)東京・後楽園ホール『MAROOMS presents KNOCK OUT 2022 vol.8』にて、初代KNOCK OUT-BLACKスーパーバンタム級王座決定戦3分3R延長1Rで対戦する、工藤“red”玲央(TEAM TEPPEN)と古木誠也 (G-1 TEAM TAKAGI)のインタビューが主催者を通じて届いた。
工藤はファイヤー原田の愛弟子としてJ-NETWORKで活躍。ジムの閉鎖とともにTEPPEN GYMに移籍してファイヤー譲りの根性に加えて技術を磨き、10月にはダイナマイト柿崎を右フックでKOして現在3連勝中。戦績は12勝(8KO)11敗5分。
古木はフルコンタクト空手で多数の優勝・入賞歴を持ち、9月大会で前田翔太に初回TKO勝ち、11月大会では5戦目にして元KNOCK OUT-REDバンタム級王者・響波を右フックで初回KOに破り今回の王座決定戦へ進出した。戦績は4勝(3KO)1敗。
工藤“red”玲央「格闘技の神様が決めてくれるはず」
本人が「5年に一度のツキが来てる」という言葉通り(?)今年3連勝でタイトル獲得のチャンスを掴んだ工藤だが、その相手は11月大会で響波を一撃KOにより下した古木誠也に決定した。工藤は古木の存在をどう見ているのか? そして初戴冠のチャンスをどう受け止めているのだろうか?
──最近の試合前インタビューでは、最後に「もっと●●のこととかも聞かれるのかと思った」と言われることが多いので、先にお聞きします。今日話したいことは?
「サッカー・ワールドカップのこととか、ポケモンが新しく出たじゃないですか。趣味のこととか聞かれるのかなと思って」
──一応、試合に向けてのインタビューですからね(笑)。ワールドカップは見てるんですか?
「そんなに熱狂的というわけでもないですけど、一応見てます。ドイツ戦は起きてる時間だったので見ましたよ。深夜まで起きて見たりはしないですけど」
──なるほど、人並みですね(笑)。ポケモンは買ったんですか?
「『スカーレット』の方を買いました。発売日に買ったんですけど、始めたのはさっきなんですよ。始めようと思ったらコントローラーが壊れてて、今はコントローラーも入手困難なんですよ。人気だからなかなか売ってなくて。ようやく買えて、始められたって感じです」
──そうなんですね。……では試合のことをお聞きしてもいいでしょうか?(笑) まずは前回のダイナマイト柿崎戦を振り返ると?
「まあまあよかったんじゃないですかね」
──まあまあですか。
「そんな緊張もせず、リラックスして戦えたので。周りから倒せ、倒せと言われてたので、力みはありましたけど」
──しかし最後は見事なKO勝利だったじゃないですか。「工藤拳」も、その前の試合ではしゃがむところまでは見せてましたが、今回はダウンを奪うところまでいきました。
「そうですね。前回はうんこ座りでおわっちゃったんで」
──うんこ座り(笑)。今回の手応えはどうでしたか?
「あの時はけっこうよかったんですけど、今は工藤拳が20個ぐらいに増えてるんで、今となっては普通に倒しただけって感じですね」
──20個に増えたんですか! 試合後の一夜明け会見では「工藤拳は8つある」と言っていましたが。
「先週か先々週かが調子よくて、1週間で10個ぐらい作ったんですよ。今週は2個だけなんですけど」
──際限なく増えていくものなんですね(笑)。そのパターンだけでも、相手を惑わせられる?
「僕はそんな卑怯な手は使いたくないので、惑わせてるつもりはないんですよ。あの動きに対して、僕なら冷静に対処できると思ってますし。あれは自分が一番動きやすいというか、その後に打ちやすいというか、そういう動きなんです」
──ああ、「自分が落ち着くためにやっている」とも言っていましたね。
「そうです。相手を騙すとか、そういう目的じゃないんですよ。あと、勘違いしている人が多いんですけど、工藤拳はパンチだけじゃないんですよ。蹴りもあるので」
──えっ、そうなんですか? 蹴りだと「拳」じゃないのでは? 「工藤脚」とか……。
「いや、それはカッコよくないので、全部まとめて工藤拳です。いやそれこそ、しゃがむっていうのは脚だけの動きじゃないですか」
──それはそうですけど、その後に出るパンチが工藤拳なのかと思ったもので。
「でもそのためには脚の動きが大事なわけですよ。工藤拳のキーポイントはパンチじゃなくて、脚なんです」
──奥が深いですね……。柿崎戦の後に、響波vs古木誠也の勝者と王座を懸けて対戦することが決まって、古木選手がKO勝ちで上がってきました。あの試合についてはどう思いましたか?
「普通に『すごいな』と思いましたよ。『俺だったらもっと早く倒せた』とか、そんな生意気なことを言うつもりもないし、純粋にすごいと思いました。
──どちらかが勝つだろうなという予想とかはしてたんですか?
「うーん……どっちかが勝つだろうなとは思ってましたよ」
──そりゃそうですよ!(笑)
「あーでも、『古木選手とだったらいい試合になるだろうな』というのは思ってましたね」
──ただ、響波選手だったらリベンジマッチになっていたところでした。そこは考えなかった?
「そうなんですけど、負けた昔の僕とはもう違いますからね。そこを意識してもしょうがないので。響波戦の時(2020年2月)もけっこうチケットを売って、お客さんにたくさん来てもらってたんですよ。それでこの前、「背が高い方が勝ったら、2年半前のリベンジになるよ」みたいなことを言ったら、みんなその試合のことを覚えてなかったんです。人間ってそういうものなんだ……と思って」
──そうでしたか。
「結局みんな、僕を見に来てるので、相手のことはどうでもいいんですよ。だから自分と響波選手で、勝手に『再戦だ』『リベンジだ』って盛り上がっても、お客さんはそんなところ見てないっていう。ちょっと悲しかったんですけどね(笑)。だからリベンジとかは関係ないです。僕のレベルもあの頃とは全然違うので」
──なるほど。では相手に決まった古木選手のことは、今どう見てるんですか?
「空手出身なので、多彩な蹴りをいっぱい出してくるのかなと思って。勝手な想像ですけどね」
──でも響波戦ではパンチ一発で見事なKO勝利でした。
「でも『ラッキーパンチだった』って言ってませんでした? 分かんないですけど、僕はけっこう人のことを信じちゃうんで。『たまたま当たった』って言ってたから、そうなのかなと。あの顔はウソつかないですよね?」
──いや、知らないですけど(笑)。謙遜の可能性もあるじゃないですか。
「でも僕は信じてますけどね。『あれは練習してて、狙い通りでした』とは言ってなかったんで。でも、たまたまでも勝ちは勝ちですからね」
──では、一番警戒するのは蹴りだと。
「そうですね。でも相手のことを気にしてもしょうがないので、自分のやるべきことをやるだけですよね。相手は誰でもいいので、自分の底上げをするだけです」
──その結果、工藤拳も20種類に増えたと。
「はい。いや、22個かな?」
──さらに増えた(笑)。それは番号とかつけてるんですか?
「まだつけてないんで、それは試合が終わってからやろうかなと思ってます。実況で『あ、工藤拳15番だ!』とか言ったら面白いじゃないですか。
──いや、面白いですけど、出た時に瞬時に見分けられるかどうか……。
「そうですよね(笑)。まあ、僕は必ずチャンピオンになるので。『3月の代々木第二でのビッグマッチにはチャンピオンとして出る』って、ずっと言ってるじゃないですか。これはその通りになるので」
──確かに言ってましたね。こうして実際にタイトルマッチが決まって、相手が決まっても、その自信は全く変わらないと。
「変わらないですね。自信というか、僕がチャンピオンになると決まってるので。結局は格闘技の神様が、どっちがふさわしいかと決めてくれることだと思ってるので。僕はふさわしいと思ってますし」
──ここで勝てば『KNOCK OUT』のチャンピオンです。そこへの思いは強いですよね?
「もちろんです。応援してくれる人たちの夢を、ようやく僕が叶えられるので。今回もたくさん応援に来てくれますし、その人たちの夢も僕が叶えると思ってます」
──では最後に、当日自分のここに一番注目してくれというポイントはどこですか?
「下がらない姿勢ですね。僕は迷ったらダメなんで。本当に気持ち全開に出して突き進むので、そのファイトスタイルを見てほしいですね。突き進んで、倒して勝つので。そしてベルトを巻きます」
──分かりました。ありがとうございました!
「応援よろしくお願いします!」
──いえ、僕は一応、中立なので「どちらも応援します」なので……。
「ああ、そうですか。まあいいや、とりあえず勝ちます!」
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古木誠也「まだ出せてない技がたくさんあります」
この試合への出場権を懸けた11月の響波戦では見事なパンチで自分より15cm身長の高い響波を一撃KO。キックボクシング6戦目で初のタイトルを目前にした今、古木はどう思っているのか?
──響波戦は見事な勝利でした。改めて試合を振り返ると?
「とりあえず、勝てて安心しました。トレーナーとやってきたことが形になったのが、勝利につながったんだと思います」
──一夜明け会見では、「狙っていたわけではなかったが、普段の練習が出た」というお話をされていましたね。
「そうですね。意識したわけではなくて、自然と形に出たという感じです」
──響波選手とは15cmの身長差がある対戦でした。その攻略はどう考えていたんですか?
「やっぱり身長が高いし、絶対ヒザを狙ってくるだろうというのは予想していたので、倒しにいくというわけではなく、ガードを意識してジックリ戦っていくという感じでした。それで倒せたのでよかったと思います」
──対峙してみて、パンチが入りそうだという感じはあったんですか?
「いや、全く。ガードを意識していたので、そんなにパンチを狙っていたわけではないです」
──しかし実際は一発で決まりました。その瞬間はどう感じましたか?
「やっぱり安心したというか…『よかった!』と思ってホッとしました」
──試合後にはリング上でマイクでの挨拶もありました。その時、実況・解説陣、特にゲスト解説の谷川貞治さんが「慣れてないところがいいねえ」と言っていました。実際、あの時はどうでしたか?
「分かると思うんですけど、自分はしゃべるのがすごく苦手なんですね。それに試合後にマイクでしゃべるというのが初めてだったのもあって、緊張しかなかったです」
──緊張するというのは会見でも?
「そうですね。カメラがあったり、人に見られていると思うと緊張してしまいます。響波戦のカード発表会見が初の記者会見でもありましたし」
──しかし次の試合は王座決定戦でもあり、そういう機会は増えそうですよ。
「そうなんですよね…。まあ、慣れていくしかないかなと思ってます。しゃべるのは、試合より緊張するので」
──先日の勝利によって、12・11後楽園大会での王座決定戦が決まりました。前戦から3週間ほどでの連戦になりますが。
「ダメージもないですし、問題ないですね。期間が短いのは自分にとってはあまり関係ないというか、普段からいつ試合が決まってもいいように、トレーナーと練習しているので。試合が決まったから追い込みをするというわけじゃなくて、試合が決まってなくても毎日のように追い込んでいるので。代打とかでいつ呼ばれてもいいように準備しているので、試合間隔とかは関係ないですね」
──キックでは6戦目で王座獲得のチャンスが来ました。
「こんなに早くチャンスがもらえると思ってなかったので、本当にありがたいです」
──予想外に一発で倒せて、会見やマイクも初めて経験して、タイトルマッチも初めて決まった……ということで、めまぐるしい感じなのでは?
「そうですね。初めてのこと尽くしなので大変ではありますけど、これからしゃべる方も慣れていきたいと思います」
──さて、王座決定戦では工藤“red”玲央選手との対戦となりました。印象は?
「ベテランでタフだし、パンチもありますし、厳しい戦いにはなりますけど、いつも通りに自分の試合に持ち込むだけです」
──このところ工藤選手は3連勝で、前回もKO勝利と好調です。そのあたりはどう見ていますか?
「試合を重ねるごとに強くなっていってるなと思いますね」
──前回の試合でダウンを取った動き、「工藤拳」というらしいですが、あれについては?
「油断しないようにしたいですね。ああいう動きも出してくるだろうなという想定はしているので、ガードを固めるのは当たり前ですけど、しっかり対処したいと思います。自分も試合になると緊張してアガってしまうというのもあるんですけど、練習はしていても出せてない技がいっぱいあるので、試合を楽しみながら、そういう技もいろいろ試していきたいと思います」
──空手でたくさんの試合経験がありますが、キックボクシングでは、そこでも想像しなかったような相手の動きなども多く出てくるのでは?
「ありますね。キックと空手では距離感が全然違っていて。空手は距離を詰めてお互いに殴り合う、我慢比べみたいな感じなんですけど、キックは一発でやられちゃったりもするので、全体的に違いますね」
──そこは楽しめていますか?
「キックは面白いですね。緊張感もぜんぜん違いますし、試合はワクワクします。1日も早く試合がしたいと思ってます」
──先ほど、「自分の試合に持ち込む」という言葉がありました。どういう展開が理想ですか?
「先ほども言った通り、けっこうアガっちゃうので、落ち着いて試合をするのが理想です。倒す、倒さないは関係なく、落ち着いて試合を楽しみつつ、いろんな技を試せたらと思います」
──それは、これまでの5試合ではどれぐらいできていますか?
「いや、全然できてないですね。この前の響波戦ではトレーナーの指示は全部聞けていたと思うんですけど、技は全然出せてないです」
──ということは、キックボクシングでの伸びしろはまだまだある?
「まあ、もう少しは成長できると思います」
──いよいよ、次で勝てばチャンピオンです。それを考えると……?
「キックを始めた時点でチャンピオンを目指してはいたんですけど…やっぱり早いですね。デビューしてまだ1年経っていないんで、本当に早いと思います」
──巡り合わせもありますが、自分の力で勝って呼び寄せたものでもあるわけですよね。
「自分の力というか…トレーナーのおかげですね」
──チャンピオンになると、試合以外にもいろいろ要求されるものがあると思いますが……。
「ですよね(笑)。でもチャンピオンになるからには、それにふさわしい存在にならないといけないなとは思います。もっと圧倒的な強さを見せたいですね」
──タイトルマッチということで、応援の方もたくさん?
「来てくれると思います。みんなの応援は力になりますし、当日みんな来てくれると思うとつらい練習も乗り越えられるし、頑張れます。勝ってみんなを喜ばせたいというか、恩返ししたいですね。今はジムにチャンピオンもいないので、ジムにベルトを持ち帰るというのも励みになります」
──では最後なんですが、今回の試合で一番ここに注目してほしいというポイントはどこでしょう?
「自分も体の強さには自信があるので、タフさを見てもらいたいですね。あといろんな技を試したいので、そういうところも見てもらえたら」