青木「初めて、試合する前に帰りたいと思った」
【写真】イザガクマエフ戦直後の控え室での青木(ABEMA提供)
試合後、青木はABEMAの北野雄司エグゼクティブプロデューサーの肩を借りてケージを後にすると、控え室で苦しい胸のうちを吐露している。
「満足してるんすよ……。はい…もう…あの……」と口を開いた青木は、「帰りたいと思って、試合する前に帰りたいと思って、初めて。もういい……」と落涙、いつも向き合う試合への恐怖のなか、今回は「帰りたい」と感じるほど、さまざまなプレッシャーのなかで戦っていたことを明かした。
「突っ張れなくなっちゃってさぁ。人に辛く当たれないのよ、もう。人に辛く当たってまでやろうと思わないのよ、もう。よく頑張りました。よく、みんなを敵に回して頑張りました……」と、日本向けのPPVカードのなかで、試合を売ることも含め、多くの責任を背負って大一番に臨んだ想いを語った。
その戦いは、精神と肉体のぎりぎりのバランスのなか、青木をもってしても綱渡りで取り組んできたことがうかがえる。
「秋山(成勲)さんとやったときから、気持ち切れてんのよ。もう……何のために頑張っていいのか、分かんないのよ。もう嫌われるのも疲れた。人に辛く当たるのも疲れた……」と赤く目を腫らし、振り絞るように語っている。
その後、青木は自身のnoteを更新。
「完敗。力及ばすでしたが。悔いはありません。今後のことは身体を休めてから考えます。今は感情が先行してしまって、判断を見誤るのが容易に想像がつくので、ひとまずは感謝の気持ちをお伝えさせてください。本当に応援ありがとうございました。僕1人では恐怖でケージまで辿り着くことはできませんでした。応援してくださるお客様に対する責任があったからこそ、ケージに足を踏み入れることができました。感謝しています」と、今後についてはすぐに答えを出さず、周囲への感謝の言葉を綴っている。
一方、勝者のイザガクマエフは、青木を打ち負かしたことで、ONEのチャトリ・シットヨートンCEO兼会長から、5万ドルのボーナスを獲得。「クリスチャンが試合に勝った(キャムラン・アバソフに4R TKO勝利でウェルター級とライト級で同時戴冠)のを見た。彼が私の次の対戦相手です。チャトリ、楽しみだ。必ず実現させる!」と、クリスチャンに宣戦布告。
チームリーダーの元UFC世界ライト級王者のハビブ・ヌルマゴメドフも、「お幸せにブラザー! おめでとう、次のステップはタイトル争いだ」と後押しのコメントをアップしている。
ハビブ門下生のうち、今回イザガクマエフのセコンドについたイスラム・マカチェフが、シャーウス・オリヴェイラを下し、UFC世界ライト級王者となり、ONEと同日の19日にはウスマン・ヌルマゴメドフが、パトリッキー・ピットブル・フレイレに判定勝ちで、Bellator世界ライト級王者となったばかり。青木に勝ったイザガクマエフがONE世界ライト級王座を獲得すれば、世界のメジャーのライト級のベルトがすべてダゲスタンに揃うことになる。
ハビブ率いる“イーグル”軍団は、完全な世界制覇を達成するか。そして2017年以来、2度目のMMAでの連敗を喫した青木真也は、どんなキャリアを選択するか。