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【ONE】キャリア2度目の連敗、青木真也「秋山(成勲)さんとやったときから、気持ち切れてる」、ハビブ門下のイザガクマエフといかに戦い、いかに敗れたか

2022/11/20 16:11
 2022年11月19日にシンガポールで開催されたONE Championship『ONE 163』ライト級(※77.1kg)で、青木真也(日本)とザイード・イザガクマエフ(ロシア)が対戦。  ダゲスタンのハビブ・ヌルマゴメドフ軍団の一員で、MMA21勝2敗のイザガクマエフが、青木を1R1分26秒、パウンドによるTKOに下し、同級王者のクリスチャン・リーに挑戦を表明。敗者の青木は、試合直後、ABEMAの動画に「試合する前に初めて帰りたいと思った」と、恐怖のなか、試合に臨んだことを明かした。  青木は4連勝中のプロスペクトのイザガクマエフを相手にいかに戦い、いかに敗れたのか。試合の両者の動きと、試合後のコメントを紹介したい。 イザガクマエフはスイッチして右を振り抜きダウンを奪った  開始前、ケージ中央で対峙する青木とイザガクマエフ。39歳・180cmの青木に対し、28歳・185cmのイザガクマエフは身長のみならず、身体の厚みも青木より一回り大きいことが分かる。  青木は序盤、ムエタイの打撃で立ち会った。  最初はオーソドックスに構えたイザガクマエフ。左ジャブを突くと、青木は左ミドルハイ。さらに間合いを取ると、左ミドルを当てる。イザガクマエフは、青木のその長い左ミドルに左ジャブを届かせて、青木をのけぞらせる。  そして今度は、青木の左ミドルが当たる前に踏み込んで左フック! 首筋に受ける青木だが、もう一回下がって構え直すと左ミドルを打つが、ここはイザガクマエフが左足を上げてチェック。  そのままスイッチしてサウスポー構えになるイザガクマエフは左ロー。すると青木も右ミドルに変えるが、右足を上げてチェックするイザガクマエフ。青木の踏み込んでの左ローも、空手のように右足を下げることでディフェンス。下がらないイザガクマエフは、そのままオーソの構えで圧力をかけると、青木は左ミドルを脇腹にヒット。  しかし、イザガクマエフの圧力に青木が下がる形に。イザガクマエフの左ジャブをさばいて左にサークリングする青木。サウスポー構えからイザガクマエフは左ローをヒット。青木の右ミドルに前手のフックを狙う。  右ジャブをスウェイでぎりぎりかわす青木は右ジャブを刺し返すが届かず。  ここでイザガクマエフはオーソに構えると、左手を前に出して、青木の肩を押し込み組みの動きを混ぜながら、強烈な右ボディストレート! 鈍い音を立ててもらった青木だが、続く左フックはかわすと、右フックを振ってイザガクマエフを下がらせる。  いったんバックステップでかわしたイザガクマエフは、サウスポー構えから左ジャブ。そこに青木の左ハイが交錯もイザガクマエフのブロッキングに青木が弾き飛ばされる。  圧力をかけるイザガクマエフに青木は金網を背に。スイッチしてサウスポー構えになるイザガクマエフは、右ジャブ、左ローの対角線攻撃。さらにオーソに変えると右ストレートを素早くスイングして青木のアゴ下、胸付近にヒット!  これに尻餅を着いた青木だが、上半身はまだ立っている。すぐに覆いかぶさるイザガクマエフは青木の上体を寝かせると、足の内側にフックガードの青木を潰して左のパウンドに。  効かされながらも左足は股下に。右足はイザガクマエフの左腰に当てて距離を取ろうとする青木だが、中腰になって腰の足を外したイザガクマエフは、左のパウンドを連打。ガードの足が届かない位置から青木の頭を押さえつけて、さらに左を連打、青木が背中を見せて亀になったところで、背後から右を連打すると、レフェリーが間に入った。  1R 1分26秒、最後は17連打で“レジェンド”をパウンドアウトしたイザガクマエフは咆哮。セコンドのUFC世界ライト級王者イスラム・マカチェフらとハグをかわした。  アジアにおいても加速する世代交代の波、そして市場が拡大し、急速にレベルアップするMMAのなかで、青木は水抜き禁止のONEライト級(※77.1kg)で自身より大きなイザガクマエフに、圧力をかけられ、ケージを背にして敗れた。 [nextpage] 青木「初めて、試合する前に帰りたいと思った」 【写真】イザガクマエフ戦直後の控え室での青木(ABEMA提供)  試合後、青木はABEMAの北野雄司エグゼクティブプロデューサーの肩を借りてケージを後にすると、控え室で苦しい胸のうちを吐露している。 「満足してるんすよ……。はい…もう…あの……」と口を開いた青木は、「帰りたいと思って、試合する前に帰りたいと思って、初めて。もういい……」と落涙、いつも向き合う試合への恐怖のなか、今回は「帰りたい」と感じるほど、さまざまなプレッシャーのなかで戦っていたことを明かした。 「突っ張れなくなっちゃってさぁ。人に辛く当たれないのよ、もう。人に辛く当たってまでやろうと思わないのよ、もう。よく頑張りました。よく、みんなを敵に回して頑張りました……」と、日本向けのPPVカードのなかで、試合を売ることも含め、多くの責任を背負って大一番に臨んだ想いを語った。  その戦いは、精神と肉体のぎりぎりのバランスのなか、青木をもってしても綱渡りで取り組んできたことがうかがえる。 「秋山(成勲)さんとやったときから、気持ち切れてんのよ。もう……何のために頑張っていいのか、分かんないのよ。もう嫌われるのも疲れた。人に辛く当たるのも疲れた……」と赤く目を腫らし、振り絞るように語っている。  その後、青木は自身のnoteを更新。 「完敗。力及ばすでしたが。悔いはありません。今後のことは身体を休めてから考えます。今は感情が先行してしまって、判断を見誤るのが容易に想像がつくので、ひとまずは感謝の気持ちをお伝えさせてください。本当に応援ありがとうございました。僕1人では恐怖でケージまで辿り着くことはできませんでした。応援してくださるお客様に対する責任があったからこそ、ケージに足を踏み入れることができました。感謝しています」と、今後についてはすぐに答えを出さず、周囲への感謝の言葉を綴っている。  一方、勝者のイザガクマエフは、青木を打ち負かしたことで、ONEのチャトリ・シットヨートンCEO兼会長から、5万ドルのボーナスを獲得。「クリスチャンが試合に勝った(キャムラン・アバソフに4R TKO勝利でウェルター級とライト級で同時戴冠)のを見た。彼が私の次の対戦相手です。チャトリ、楽しみだ。必ず実現させる!」と、クリスチャンに宣戦布告。  チームリーダーの元UFC世界ライト級王者のハビブ・ヌルマゴメドフも、「お幸せにブラザー! おめでとう、次のステップはタイトル争いだ」と後押しのコメントをアップしている。  ハビブ門下生のうち、今回イザガクマエフのセコンドについたイスラム・マカチェフが、シャーウス・オリヴェイラを下し、UFC世界ライト級王者となり、ONEと同日の19日にはウスマン・ヌルマゴメドフが、パトリッキー・ピットブル・フレイレに判定勝ちで、Bellator世界ライト級王者となったばかり。青木に勝ったイザガクマエフがONE世界ライト級王座を獲得すれば、世界のメジャーのライト級のベルトがすべてダゲスタンに揃うことになる。  ハビブ率いる“イーグル”軍団は、完全な世界制覇を達成するか。そして2017年以来、2度目のMMAでの連敗を喫した青木真也は、どんなキャリアを選択するか。
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