ペレイラという最強のキックボクサーを相手に、アデサニヤがMMAで新たに覚醒する姿が見られるんじゃないか
――“キックボクサー”がUFCの頂点に立ってしまうかもしれないわけですね。
「アデサニヤの方はと言うと、同じキックボクシング出身のストライカーですけど、今はそのキックの技術をMMAに落とし込めている状態だと思うんですよ。スタンドでの距離の詰め方とか、MMAをすごく研究して努力しているからこそ、ここまでいろんなタイプのトップファイターたちに勝つことができている。MMAファイターとしての完成度なら、アデサニヤのほうが上ですよね。
ペレイラのほうは、たとえば何でもできるロバート・ウィテカーみたいな選手とやって、打撃だけじゃなくタックルや組みをいろいろ混ぜられたら苦戦するかもしれないし、デレク・ブランソンのようなゴリゴリのレスラーや、パウロ・コスタのような打撃も強い柔術家とやったらどうなるかは未知数。でも、王者であるアデサニヤに対しては、ペレイラは自信を持って戦えると思うんですよ。そこがこの試合の面白さですね」
――MMAのキャリアは浅くても同じキックボクシングベースのストライカー相手だったら、GLORY王者の自分に分があるという。
「だからもしかしたら、アデサニヤにとってペレイラは“天敵”のような存在かもしれないですね。アデサニヤってUFCミドル級屈指の長身でリーチも長い。そこが打撃技術と並んで、対戦相手に対する大きなアドバンテージにもなってきたと思うんですけど、ペレイラは身長もリーチもアデサニヤとほぼ一緒なんですよ。それを踏まえてアデサニヤがどういう試合作りをするのか。そこにすごく興味がありますね」
――身長、リーチというアドバンテージがなく、打撃技術も自分と同等かそれ以上かもしれない相手と戦うわけですからね。
「だから、もしかしたらアデサニヤが自分からタックルに行くかもしれない。ペレイラもタックルに対して初動が遅れるところがあるので、うまく相手の攻撃をもらわないでタックルに入ったら、削ることはできると思うんですよね。アデサニヤも自分のプライドとして打撃でKOしたいという気持ちはあると思うんですけど、これはMMAだから、タックルを選択肢として持っていてほしい希望は自分の中にありますけどね」
――早い段階でテイクダウンできて、グラウンドで削ることができたら、かなりの優位になるでしょうからね。
「ペレイラは1発の破壊力があるので、それを弱めることをアデサニヤも考えていると思うんですけど、それがなんなのか。普通に考えたら、組んで削るというのがかなり有効だと思いますから」
――アデサニヤは柔術世界王者アンドレ・ガウバオンの指導も受けていますしね。
「アデサニヤはウィテカー戦やマービン・ヴェットーリ戦なんかを観ても、柔術やグラップリングをしっかりやってないとできない動きを随所に見せていましたからね。だから今回、ペレイラという最強のキックボクサーを相手に、アデサニヤがまた新たに覚醒する姿が見られるんじゃないかと期待しています。それと同時に、ペレイラもMMAファイターとしての成長度合いも未知数なので、この試合で真の実力が見られるかもしれない」
――ペレイラは前UFC世界ライトヘビー級王者グローヴァー・テイシェイラのチームですしね。
「ペレイラも絶対にグラップリングのトレーニングも積んでるはずなんです。だけど試合になったら思いっきりキックボクサーになっている。よっぽど打撃で倒せる自信があるんでしょうね。アデサニヤ相手でもそのままいけるかどうか。いずれにしても、ものすごくスリリングでハイレベルな戦いが見られることは間違いないと思います」(取材・文/堀江ガンツ)