MMA
インタビュー

【UFC】王者アデサニヤはキック時代に2連敗のペレイラを相手に覚醒するか!?「全勝王者にとってペレイラは“天敵”かもしれない」(高阪)=11月13日(日)『UFC281』

2022/11/11 11:11
 2022年11月12日(日本時間13日)米国ニューヨーク州ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで『UFC281』が開催される。  メインイベントは、UFC世界ミドル級王者イスラエル・アデサニヤ(ナイジェリア)が、かつてキックボクシングルールでKO負けを喫したアレックス・ペレイラ(ブラジル)を迎え撃つ6度目の王座防衛戦。  この一戦の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった。 ペレイラはMMAで「総合の試合」をほぼやってない。キックボクシングのつもりでやってる ――『UFC281』のメインイベントは王者アデサニヤvs.挑戦者ペレイラのミドル級タイトルマッチが実現します。アデサニヤにとってペレイラは因縁の相手と言っていいですよね。 「そうですね。キックボクシングルールで2度敗れていて(2016年4月「Glory Of Heroes 1」と2017年3月の「Glory of Heroes 7」)、しかも2戦目は完全にKOされていますから。自分もあのキックボクシングマッチの映像は観ましたけど、そんな昔の試合でもないんですよね」 ――アデサニヤがKO負けしたのは2017年3月で、翌18年2月からUFC参戦ですからね。 「だからアデサニヤがまだ、MMAを並行してキックボクシングのリングにも上がっていた時期だったんだなと思って、そこに合点がいったんですよ。MMAとキックボクシングの打撃って似ているようで違うので、アデサニヤはキックボクシングの打撃からMMAの打撃にアジャストしていっている最中に、あの試合をやってるんですよね。  MMAだと打撃だけじゃなく、相手の組みも警戒しながら試合しなきゃいけないので、それを自分の打撃スタイルにうまく当てはめることを模索している状態だったんだと思うんですよ。だからキックでのペレイラ戦では、相手との距離を詰める際に半歩深くて、バックステップされたときに前のめりに崩れていた。アデサニヤがキックボクシングしか頭になかったら、ああいう身体の崩れはなかったんじゃないかと思うんですよね」 ――ある意味で、キックボクサーとMMAファイターがキックの試合をやった感じになっていた、と。 「そんなことが起こっていたと思うんですよ。そしてペレイラのほうは自分が観た感じだと、自分の距離設定と自分のタイミングじゃないとパンチを出さないタイプの選手なんです。ちゃんと当てられる状況でのみ打撃を出して無駄撃ちしない、選んで打っているという印象がありますよね。  対してアデサニヤのほうは、どちらかと言うとどんどんプレッシャーをかけていってフェイントを入れたり、自分から攻撃をして崩そうとしている。それでペレイラ戦ではカウンターをもらってしまっているんですね」 【写真】Zuffa LLC/UFC ――今回は、それがMMAルールになったらどうなるか、ということですよね。 「そういうことですね。そしてペレイラのUFCに来てからの戦いを見ると、キックボクシング時代とおおよそ変わってないんですよ。自分からバンバン手を出しながら前に出ていくというよりは、距離を保ちながら、“的”が射程範囲内に入ってきたときに、針の穴に糸を通すようにパンチを打ち抜くという。打って、それが当たるべきところに当たってない打撃のほうがたぶん少ないんじゃないかな。」 ──相当な命中率の高さだ、と。 「パンチをボディにも散らしますけど、基本、顔面のガードが一瞬空いたところに、自分のタイミングでパーンと打ちにいくという、精密機械のような試合のやり方をやってますよね。ペレイラの他のキックの試合も観たんですけど、自分のタイミングになった瞬間のハンドスピードと当てる感覚はすごく優れたものがあるなと思いましたね」 ――GLORYのライトヘビー級、ミドル級の2階級制覇しているのは伊達じゃないわけですね。 「そういう選手がMMAに来てどんな戦いをしているかといえば、自分が見るかぎり“総合の試合”をほぼやってない。キックボクシングのつもりでやってる感じがするんですよ。UFCデビュー戦のアンドレアス・マイカライディス戦では、キックボクシング時代にも使っていた二段式の跳びヒザ蹴りでKOしてるんですけど、相手がダウンした時に追撃のパウンドをしてないんですよ。キックボクシングならあそこでダウンカウントが始まるので。だからペレイラはUFCのオクタゴンにいながら、頭の中は“キックボクサー”なんだと思います」 ――前回のショーン・ストリックランド戦もパウンドを叩き込んでのTKOではなく、打撃で倒した瞬間に終わるKOでした。 「あれは左フックでしたけど、一瞬フェイントをかけてステップインで左フックという、あれもキック時代によく使っていた技ですよね。だから言ってしまえば、ほぼキックボクシングで培った技術だけで、UFCというMMA最高峰の舞台で通用して、なおかつタイトルマッチまで来てしまったということが言えると思います」 [nextpage] ペレイラという最強のキックボクサーを相手に、アデサニヤがMMAで新たに覚醒する姿が見られるんじゃないか ――“キックボクサー”がUFCの頂点に立ってしまうかもしれないわけですね。 「アデサニヤの方はと言うと、同じキックボクシング出身のストライカーですけど、今はそのキックの技術をMMAに落とし込めている状態だと思うんですよ。スタンドでの距離の詰め方とか、MMAをすごく研究して努力しているからこそ、ここまでいろんなタイプのトップファイターたちに勝つことができている。MMAファイターとしての完成度なら、アデサニヤのほうが上ですよね。  ペレイラのほうは、たとえば何でもできるロバート・ウィテカーみたいな選手とやって、打撃だけじゃなくタックルや組みをいろいろ混ぜられたら苦戦するかもしれないし、デレク・ブランソンのようなゴリゴリのレスラーや、パウロ・コスタのような打撃も強い柔術家とやったらどうなるかは未知数。でも、王者であるアデサニヤに対しては、ペレイラは自信を持って戦えると思うんですよ。そこがこの試合の面白さですね」 ――MMAのキャリアは浅くても同じキックボクシングベースのストライカー相手だったら、GLORY王者の自分に分があるという。 「だからもしかしたら、アデサニヤにとってペレイラは“天敵”のような存在かもしれないですね。アデサニヤってUFCミドル級屈指の長身でリーチも長い。そこが打撃技術と並んで、対戦相手に対する大きなアドバンテージにもなってきたと思うんですけど、ペレイラは身長もリーチもアデサニヤとほぼ一緒なんですよ。それを踏まえてアデサニヤがどういう試合作りをするのか。そこにすごく興味がありますね」 ――身長、リーチというアドバンテージがなく、打撃技術も自分と同等かそれ以上かもしれない相手と戦うわけですからね。 「だから、もしかしたらアデサニヤが自分からタックルに行くかもしれない。ペレイラもタックルに対して初動が遅れるところがあるので、うまく相手の攻撃をもらわないでタックルに入ったら、削ることはできると思うんですよね。アデサニヤも自分のプライドとして打撃でKOしたいという気持ちはあると思うんですけど、これはMMAだから、タックルを選択肢として持っていてほしい希望は自分の中にありますけどね」 【写真】Zuffa LLC/UFC ――早い段階でテイクダウンできて、グラウンドで削ることができたら、かなりの優位になるでしょうからね。 「ペレイラは1発の破壊力があるので、それを弱めることをアデサニヤも考えていると思うんですけど、それがなんなのか。普通に考えたら、組んで削るというのがかなり有効だと思いますから」 ――アデサニヤは柔術世界王者アンドレ・ガウバオンの指導も受けていますしね。 「アデサニヤはウィテカー戦やマービン・ヴェットーリ戦なんかを観ても、柔術やグラップリングをしっかりやってないとできない動きを随所に見せていましたからね。だから今回、ペレイラという最強のキックボクサーを相手に、アデサニヤがまた新たに覚醒する姿が見られるんじゃないかと期待しています。それと同時に、ペレイラもMMAファイターとしての成長度合いも未知数なので、この試合で真の実力が見られるかもしれない」 ――ペレイラは前UFC世界ライトヘビー級王者グローヴァー・テイシェイラのチームですしね。 「ペレイラも絶対にグラップリングのトレーニングも積んでるはずなんです。だけど試合になったら思いっきりキックボクサーになっている。よっぽど打撃で倒せる自信があるんでしょうね。アデサニヤ相手でもそのままいけるかどうか。いずれにしても、ものすごくスリリングでハイレベルな戦いが見られることは間違いないと思います」(取材・文/堀江ガンツ) [nextpage] UFC 281: Adesanya vs. Pereira 全カード・配信情報 2022年11月12日(日本時間13日)マディソン・スクエア・ガーデン米国ニューヨーク州ニューヨーク WOWOW『生中継! UFC‐究極格闘技‐ UFC281 in ニューヨーク いよいよ激突!アデサニヤvs.ペレイラ』 11月13日(日)午後0:00[WOWOWライブ]※生中継(WOWOWオンデマンドで同時配信) 11月16日(水)午前8:00[WOWOWライブ]※リピート(WOWOWオンデマンドで同時配信) 【WOWOW出演】解説:髙坂 剛、堀江ガンツ実況:髙柳謙一 【メインカード】(WOWOW/UFC FIGHT PASS) ▼UFC世界ミドル級選手権試合 5分5Rイスラエル・アデサニヤ(ナイジェリア)23勝1敗(UFC12勝1敗)UFC3連勝中アレックス・ペレイラ(ブラジル)6勝1敗(UFC3勝0敗)UFC3連勝中、元GLORY ▼UFC世界女子ストロー級選手権試合 5分5Rカーラ・エスパルザ(米国)19勝6敗(UFC10勝4敗)UFC6連勝中ジャン・ウェイリー(中国)22勝3敗(UFC6勝2敗) ▼ライト級 5分3Rダスティン・ポイエー(米国)28勝7敗(UFC20勝6敗)マイケル・チャンドラー(米国)23勝7敗(UFC2勝2敗) ▼バンタム級 5分3Rフランク・エドガー(米国)24勝10敗(UFC18勝10敗)※引退試合クリス・グティエレス(米国)18勝4敗(UFC6勝1敗)UFC3連勝中 ▼ライト級 5分3Rダン・フッカー(ニュージーランド)21勝12敗(UFC11勝8敗)クラウディオ・プエレス(ペルー)12勝2敗(UFC5勝1敗)UFC5連勝中 【プレリミナリー】(UFC FIGHT PASS) ▼ライト級 5分3Rブラッド・リデル(ニュージーランド)10勝3敗(UFC4勝2敗)ヘナート・モイカノ(ブラジル)16勝5敗(UFC8勝5敗) ▼ライトヘビー級 5分3Rドミニク・レイエス(米国)12勝3敗(UFC6勝3敗)ライアン・スパン(米国)20勝7敗(UFC6勝2敗) ▼女子フライ級 5分3Rエリン・ブランチフィールド(米国)9勝1敗(UFC3勝0敗)モリー・マッキャン(英国)13勝4敗(UFC6勝3敗)※UFC3連勝中 ▼ミドル級 5分3Rアンドレ・ペトロスキー(米国)8勝1敗(UFC3勝0敗)※UFC3連勝中ウェリントン・トゥルマン(ブラジル)18勝5敗(UFC3勝3敗) ▼ライト級 5分3Rマット・フレボラ(米国)9勝3敗(UFC3勝3敗)オットマン・アツァイター(モロッコ)13勝0敗(UFC2勝0敗) ▼女子ストロー級 5分3Rカロリーナ・コバルケビッチ(ポーランド)13勝7敗(UFC6勝7敗)シルバーナ・ゴメス・フアレス(アルゼンチン)11勝4敗(UFC1勝2敗) ▼フェザー級 5分3Rマイケル・トリザーノ(米国)9勝3敗(UFC3勝3敗)チェ・スンウ(韓国)10勝5敗(UFC3勝4敗) ▼バンタム級 5分3Rフリオ・アルセ(米国)18勝5敗(UFC5勝3敗)モンテル・ジャクソン(米国)11勝2敗(UFC5勝2敗) ▼ライトヘビー級 5分3Rカーロス・アルバーグ(ニュージーランド)5勝1敗(UFC2勝1敗)ニコラエ・ネグメレアヌ(ルーマニア)13勝1敗(UFC4勝1敗)※UFC4連勝中
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント