2022年11月19日(土)シンガポール・インドアスタジアム『ONE 163』にて、ペッタノン・ペットファーガス(タイ)を相手に初防衛戦を行う、ONEバンタム級キックボクシング世界王者・秋元皓貴(Evolve MMA)。
秋元はONEで4連勝をマークして2022年3月、満を持してONEバンタム級キックボクシング世界王座に挑戦。カピタンを判定3-0で破り、日本人初のONEキックボクシング世界王者となる快挙を達成した。
挑戦者ペッタノンは同級4位で357勝56敗1分という驚異的な勝利をあげている36歳のベテランムエタイ選手。大和哲也から2度勝利を奪っている。
難敵を相手に、秋元は「今回のテーマは“自分だけが攻撃して相手には攻撃させない”こと」とし、「僕はどの試合でもしっかりと相手にダメージを与えている。正直、ONEで階級を上げてから4戦して、相手から攻撃されたダメージはほとんど無く、自分が攻撃して相手に与えたダメージしかない。攻撃をもらっていなかったり、攻撃のもらい方がうまい部分も見てほしい」と、進化を語っている。
まさに「世界最高峰」と言えるONE立ち技のスーパーシリーズで、頂点に立つ秋元の試合直前の言葉は以下の通りだ。なお大会の模様は、ABEMA PPV Onlineにて独占生中継される。
王座を獲得し「やってきた事が間違っていなかった」
──2022年3月にカピタンを破り、日本人初のONEキックボクシング世界王者に輝きました。前回の試合から8カ月が経ちましたが、改めて試合を振り返ってみてもらえますか。
「やっぱり、今思い返しても本当にタフな試合だったと思います。でも、しっかりと今まで自分が練習してきたことを出せたっていのはすごく良かったのかなと思います。」
──カピタンはなかなか倒れない選手だったと思うのですが、実際に戦ってみてどれだけタフな選手でしたか。
「2ラウンド目で、いけるって。確実に勝てるって思ったんですけど、それでも5ラウンドまで一瞬でも気を抜いたら負ける、やられちゃうっていうのは常に思っていました。一発がある選手ですし、本当にギリギリまで気が抜けない戦いでした」
──世界タイトルを獲った後に感情が込み上げている様子が見られました。改めて、あの時の気持ちを振り返っていただけますか。
「長いのか、短いのかは分からないですけど、キックボクシングに転向してきてから3年半、4年で世界タイトルを獲得できました。自分の中では(この期間が)すごい濃い時間だったので、報われたというか。ここからがスタートですけど、まずはやってきた事が間違っていなかったんだと思い、とても嬉しかったです」
──今回の試合はチャンピオンとして臨むわけですが、試合に向けての気持ちに変化はありましたか。
「それは全く変わらないです。この試合は防衛戦でもあるかもしれないですけど、僕にとってはこれも挑戦の一つ。なので、これまでと変わらずしっかりとトレーニングをするってことでは、変わらないです」
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ペッタノンの都合の良いタイミングで攻撃をさせないこと
──ペッタノンについて、ファイターとしての印象は?
「ここ最近は試合数が多くない選手ですけど、過去にはたくさんの試合をしていますし、たくさんのタイトルを獲得している。本当にベテランで、レジェンドと言っても良い選手だと思います」
──ペッタノンはフィジカルも強く身体も大きく見えます。
「本当に身体は大きいですけど、そこはそんなに意識していないです。それよりも経験が豊富なので、過去の映像とかを見ていると、タイミングを取るのが上手い選手だなっていう印象があるので、それをいかに崩すか。相手の都合の良いタイミングで攻撃をさせないように、いかに動くかが重要になると思います」
──この試合はどんなプランになりそうですか。
「もちろん倒すことを前提として戦っていくんですけど、自分はスタミナにも自信があるので、1ラウンドからどんどん削って、削っていきます。自分は、5ラウンドまでフルで動けますけど、削って相手がフラフラになるような試合にするのも面白いと思う。チャンスがあればしっかりと倒しにいきたいと思います」
──この試合は接戦になると思うのか、それとも頭脳戦のような形になると思いますか。
「自分が見せたいのは、しっかりと1ラウンドからプレッシャーをかけていって完封すること。自分だけが攻撃して相手には攻撃させないっていうのが、今回のテーマです」
──この試合は大会のメインイベントでもあり、日本ではペイ・パー・ビューとなりました。自分が最高レベルにいる、そう実感はありますか。
「もちろん自分がチャンピオンだってことを自覚して、この8カ月間トレーニングしてきましたし、本当にこの階級でONEのサークルの中での世界一は自分だと思っているので、それをしっかりと証明したいと思います」
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他団体からもONEに選手が入ってくるなか、「最強・無敵」のチャンピオンになりたい
──デメトリアス・ジョンソンが、ジョー・ローガンとのポッドキャストで、彼のお気に入りの選手は秋元選手だと話していましたが、それを聞いてどう思いますか。
「自分が意識してトレーニングして、それを試合で出して、それを他の選手が、MMAの選手ですけど評価してくれて『好きな選手』として選んでくれるのはすごい嬉しいことだと思います。自分もデメトリアス・ジョンソン選手のことが本当に好きで、タイトルを獲得した時の右ストレートから飛びヒザまでの間が、僕はすごいなと思いますし、本当にリスペクトしています」
── ONEは今年の夏から、北米向けにアマゾン・プライムビデオでの生中継が始まり、これまでより多くの人から試合を見られるようになりました。これから、どんな自分を見せていきたいですか。
「もちろん格闘技といえばノックアウトを求められるところだし、自分も求めています。でも、それよりも自分が自信を持っているのはスピードとかテクニックの部分なので、自分はそういうところを見せて、もちろんKOもしたいですけど、完封するって言うのがテーマにあるので、そこを評価してもらえたり、見て楽しんでもらえたらって思います」
──現在、世界王者である秋元選手にとって、今の目標は何でしょうか。
「格闘家としては、これをどこまで守り切るかっていうのが一番の目標になる。これから他団体からもONEに選手が入ってくると思いますし、今いる選手もそうですし、一人ひとりを倒していって、この階級では最強、無敵のチャンピオンになりたいです」
──これまでのONEでの立ち位置を振り返ってみてどう思いますか。
「キックボクサーとしての自分は、世界に全く知られていないという状況でした。もちろん空手では世界チャンピオンになりましたが。それでONEのキックボクシングに参戦して、周りはもう既にどこかしらの世界タイトルを獲った選手しかきていない状況で、もちろん自分が下に見られるっていうのはしょうがないし、実際に当時の自分は、そこまで自信がなかったし。
でも、“そんなの関係ない”と思って、“絶対負けるか”っていう気持ちだけで駆け上がってきました。今回は流石にアンダードッグではないと思うんですが、少しずつ評価されていったのは嬉しいし、これからもそういう評価をされるような選手であり続けたいと思います」
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チェンロンには「正直、勝てると思わなかった」けど、シアーコーチは「7週間あればいける」と。カピタンとは心構え、準備の差が出た
──チャンピオンになるまでタフな相手との試合が続き、アンダードッグ扱いをされてきたことが多かったと思います。それでも自分の強さを証明してきたと思うのですが、ご自身では、このONEでの道のりをどう感じていますか。
「正直言うと、ジャン・チェンロンとの1戦目の話をもらった時に勝てるとは思わなくて。シアー・バハドゥルザダ コーチと話して、7週間あればいける。7週間あれば勝つところまでいける、って。そういう状況の試合をたくさん(ONE)でやってきたからこそ、僕は一気に成長できたと思います。試合が決まった時は自分の方が弱かったかもしれない、でも試合をするまでに越えて、しっかりと試合で勝ってきたというのは自分の中のプライドです。やってきた自信がある。そういう厳しい相手と戦ってきたからこそ、自分が成長させてもらったと思っています」
──タイトルマッチを組まれた時も、秋元選手がアンダードッグという声もあった。それはどう感じていましたか。
「自分としては、カピタンとタイトルを賭けて戦うっていうのは、彼がチャンピオンになった時から思っていたんで。(自分が戦うまでチャンピオンが)変わることはないだろうと。そう思っていたので、まさかカピタンが(自分との)試合でああいう風な姿を晒すっていうのは誰も予想していなかっただろうし。ただ自分は、カピタンとやるっていうのはずっと、1年以上前から思っていたので、その準備の差が顕著に出たのかなと思います。もちろんアンダードッグって思われているのは理解していたんですけど、でもしっかりと準備してきたことがあったので、“見とけよ”っていうか、“ここで自分の強さを見せつけてやる”っていうのはすごく思っていました」
──前回の世界タイトルマッチでご自身が証明できたことはなんだと思いますか。
「本当に自分の試合っていうのは、見ているとそこまで分からないと思うし、見ているだけだとポイントを稼ぐファイターって思われるかもしれません。でも、どの試合でもしっかりと相手にダメージを与えているんです。正直、ONEで階級を上げてから4戦して、相手から攻撃されたダメージってほとんどなくて、自分が攻撃したダメージしか今までない。
カピタンもその前に戦った選手たちもそうですが、みんな僕と試合をした後、抱えられてサークルから降りていったり、サークルから降りたら車椅子で退場していく選手がいたり、やってみて初めて(僕の攻撃の強さに)気づいたんじゃないかなと思います。僕は攻撃をもらっていなかったりとか、攻撃のもらい方がうまいっていう部分を見てほしいなって思うし、そういうところに中々気づいてもらえないと思うんですけど、これからもそういう自分の強さを見せていって証明したいですね」
──カピタンとの試合は、キックボクシングの試合では一番タフな試合でしたか。
「5ラウンドっていうのもありますけど、今までで一番蹴ったし、一番パンチも打ったし、一番攻撃した試合だなと思います。一番タフな試合でしたけど、しっかりとそこを自分が勝ち取ったからこのベルトを取れたと思います」
──ここで世界王者になり、タイトルを防衛する意味というのはどう考えていますか。
「ONEスーパーシリーズ、キックボクシングもムエタイもそうですが、ここが本当に世界最高峰で、このベルトが本当の世界一だと自分は思っています。自分は、SNSで自分のことをアピールするのとかは苦手だし、これからもそういうのをしていくつもりはないですけど、このタイトルを守っていってしっかりと自分の強さを試合で証明できるように、これからも頑張っていきたいなと思います」