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2月17日(日)、東京・新木場スタジオコーストで開催される「PANCRASE REBELS RING.1」(パンクラス・レベルス・リング・ワン)は、DAY(昼の部)とNIGHT(夜の部)の二部構成で、当日はTOKYO MXとUFC FIGHT PASSにて生中継される。
REBELS初の地上波ゴールデンタイム生中継の大会でメインイベントを飾るのは、REBELS 70kgタイトルマッチ。王者・日菜太(クロスポイント吉祥寺)が、現役のラジャダムナンスタジアム認定スーパーウェルター級王者シップムーン・シットシェフブンタム(タイ)を挑戦者に迎えて、防衛戦をおこなう。
シップムーンは、過去に同門のT-98(たくや)からラジャダムナン王座を奪い、緑川創(藤本ジム)の挑戦を退けて防衛に成功。中量級日本人ファイターにとっての高い壁である。日菜太は「日本人キラー」シップムーンをどう攻略しようとしているのか。(提供=REBELS、聞き手・撮影=茂田浩司)
緑川創との「日本最強決定戦」を制すも、足の骨折で1カ月のブランク
「2018年は、すごく辛い1年でした。2試合して2骨折ですよ(苦笑)。今まで大きな怪我もなくやれてきたから、そんなに危ないと思えなかったんですけど、改めて『本当に危ないことを仕事にしているんだな』と思いましたね」
日菜太にとっては怪我に泣かされた1年だった。3月にK-1で「欧州の覇王」チンギス・アラゾフの持つスーパーウェルター級王座に挑戦して2R KO負け。試合中に鼻骨を骨折し、治療のため半年以上のブランクを余儀なくされた。
10月のREBELS.58で復帰し、新日本キックボクシング協会の中量級エース、緑川創との「70kg日本最強決定戦」に臨んだ。試合は団体の看板を背負ったトップ選手同士の見応えのある競り合いとなり、日菜太が2-0の判定で勝利した。
【REBELS.58】Hinata vs tsukuru Midorikawa
「緑川選手との試合は僕の中では完勝だったんです。もっとパンチで攻めてくると思っていたんですけど、僕の蹴りをすごく警戒して守備的で。ミドルキックのカットが本当に上手かったです。だから、逆に僕はパンチでいけてワンツーとかで攻めれた部分もあったかな、と。緑川選手が前に出てパンチをガンガン振ってきたのは3ラウンドだけでしたけど、前に出てこられても『効いたな』という攻撃は一発も貰ってないです。
取られたと思ったラウンドもなかったですけど、もし延長と言われても戦う力は全然残ってたので、延長になればもっと差を付けられたんじゃないか、って。ただ、ツイッターでは『良くてドローだと思った』とか『REBELSだからひいき目で日菜太が勝った』みたいに言う人もちょろっと見えて。
みんなが『日菜太が勝った』と納得する試合をしないといけないですけど、相手が強くなればなるほどギリギリの勝負になってくる。最近試合した日本人選手、緑川君もそうだし、廣野(祐)選手も地味に強いですからね(苦笑)。もっとハッキリした形で勝ちたいですけど、実際はなかなか難しいです」
厳しい試練は試合後に待っていた。足の骨折が判明して「年内にもう1試合」という日菜太の希望はかなわなかった。
「試合が終わった直後は特にダメージもないと思ってました。試合の翌々日に足の指の骨が折れてることが分かったんです。2018年は本厄だったんですけどやっぱりツイてなかった(苦笑)。年間2試合なんて、こんなに試合数が少なかった年はプロになって初めてです」
それでも、2試合で多くのものを掴んだ。アラゾフ戦では「世界の怪物」と戦い「絶対にかなわない相手ではない」との実感を得た。1年10カ月ぶりのREBELS参戦となった緑川戦でも、貴重な経験が積めたという。
「今回、よかったなと思ったのは計量の後にしっかりリカバリーが出来たことです。REBELSはお昼に計量して、記者会見をして、1時間で解放してくれるじゃないですか。すごく気持ちよく帰れました(笑)。試合当日も、会場入りまで時間があるのでゆっくりと眠れましたし、リカバリーの時間をしっかりと取らせて貰えるのは選手からすればありがたいと思いました。その分、試合に集中できるので、コンディションの違いは大きいですよ」
骨折による1カ月間のブランクも、日菜太にとって「30代ファイターの現実と調整方法」を知るきっかけとなった。
「1カ月休んでいる間はフィジカルぐらいしか出来なかったんです。それで、ようやく練習に復帰して久々にスパーリングをしたら思いのほかやられるんですよ(苦笑)。
小西(拓槙)が年末に試合があって(*「RIZIN 平成最後のやれんのか」に出場)『じゃあ付き合ってあげよう』って久しぶりにスパーを3Rやったんです。そうしたら、最初はなかなか反応できなくてボコボコに殴られて(苦笑)。スタミナは僕の方があるんで3Rはやり返したんですけど。僕のイメージでは、体重差はありますけどこっちが手を出し続けて終わる感じだったんで『俺、弱くなったのかな?』と気持ちが落ちましたよ(苦笑)。
1、2週間練習するといい状態に持っていけるんですけどね。やっぱり何をやるにも、スイッチを入れてからいい状態に持っていくまで時間が掛かるようになりましたね。昔は試合した後にちょっと休んでからスパーをしても、調子は落ちなかったんですけど。この年齢になると、長く休むのはダメですね。疲れが溜まったら練習量は落としますけど、練習自体は続けておいた方がいいな、と感じました」
『REBELSで活躍したい選手』が増えていい雰囲気。これからREBELSはもっと跳ねていくし、僕も現役王者シップムーンに勝って世界的な評価を上げます。
怪我による練習ブランクを経験したことで、最近のキックボクサー、特にクロスポイント吉祥寺の選手たちの練習に対する意識の高さにも気づいたという。
「昔は、試合が決まらないとジムに来ない選手も多かったんですよ。僕の中にも『試合が終わったら1週間はジムに来るな、休んだ方がいい』っていう風習があったんですけど(笑)。
今、クロスポイント吉祥寺の(小笠原)瑛作とか不可思、潘(隆成)君なんかは、試合が終わって3、4日でジムに来て練習を再開しているんですよ。『若さだなー』と思うし(笑)、それを若いうちからやっておくのはすごい財産だと思いますね」
ただし、例外もいる。昨年、クロスポイント吉祥寺に移籍してきた栗秋祥梧(元・Phoenixx祥梧)である。SNS上では山口代表やJIROに「朝、寝坊して走らない」等、いじられている。
「フェニックス祥梧は全然練習しないタイプですよ(苦笑)。だけど、クロスポイントの選手がみんな練習に来てるから、多分、アイツなりには頑張って練習している方だと思うんです(笑)。他のクロスポイントの選手に比べたらまだまだですけどね」
日菜太は、栗秋の素質を高く評価している。
「アイツはいいものを持ってます。体重の乗せ方が本当に上手くて、攻撃力があるんです。あのペラペラな体で(笑)100の力を出せるんです。だけど、まだ体が弱くて、その100のパンチは10回に1回しか出せないし、打たれ弱いです。クロスポイントの練習で体が強くなれば、かなりいい選手になると思うんですけど。
フェニックスは今、トップに行けるか、そこそこの選手で終わるかの境目にいます。あの若さ(23歳)でもう50戦やってて、キャリアは下手なタイ人みたいなものです。ここで『練習するクセ』を付けれたら、体も強くなって一気に伸びて、トップ選手になれる可能性がある。だけど、アイツは遊びというか『練習しないで試合やっちゃいます』みたいなところがあるので、そのクセがいつまでも抜けないと本当に強いヤツには勝てなくて、そこそこのところで負けて勝ってを繰り返して、そのうち辞めちゃうんだろうな、って」
栗秋も、2月17日の「PANCRASE REBELS.1」(新木場スタジオコースト)に出場し、REBELS―MUAYTHAIスーパーバンタム級王者のKING強介(ロイヤルキングス)と対戦する。KING強介も強打が持ち味なだけに、栗秋とはKO決着必至。「豪腕対決」に注目だ。
同じ日、日菜太はメインイベントで現役ムエタイ王者、シップムーンと対戦する。過去に64試合を戦ってきた日菜太だが、意外にもタイ人選手と試合をするのは2回目となる。
「21歳の時にラジャで試合してて、相手の名前が分からないんで『不明』なんですけど(笑)、2Rか3Rに奥足ローを効かせてKOしているんです。それ以来ですね。
ただ、僕は外国人との対戦が多いんで、相手がタイ人だからという気負いはまったくないです。山口さんから『最近のシップムーンの試合』って映像が送られてきて見たんですけど、1、2Rは全然手を出さなくて、3Rにヒジが当たったら一気にヒジヒザでKO。全然参考にならなかったです(苦笑)」
すでに試合のイメージは出来ている。
「僕は手数を出して勝負したいな、とは思ってます。ムエタイのペースではなくて、早い展開で、早め早めに勝負を掛けたい。
いつものムエタイのペースになると手数も少ないんで、僕からどんどん手数を出すつもりです。組みの展開になっても、REBELSルールは膠着すればすぐブレイクが掛かるんで。とにかくムエタイに付き合いたくないんで『日菜太の試合』に持っていくつもりです」
シップムーンが、ムエタイの現役王者にして「T-98(タクヤ)、緑川に勝っている選手」というのも、日菜太のモチベーションを高める要因となっている。
「この試合は負けたくない。本当に負けたくない相手ですね。負けたら『緑川、T-98が負けた相手に日菜太も負けた』となってしまう。だけど、ここで勝てば『やっぱり日菜太はもう一個上だ』と自分の価値を上げられる。僕にとってメリットが大きいですから、シップムーンと対戦が決まったことでまたモチベーションが上がりましたよ。
ムエタイ信者には『ヒジなしルールでシップムーンに勝ってもどうだこうだ』と言われるかもしれないけど、記録上は『勝った』ということしか残らないものだし、僕はそこにこだわっていきたいです。32歳の僕があと何年やるか、あと何試合やれるか分からない中で、ここで星は落としたくないし、しっかりと自分の価値を高めておきたい。そうすれば、いいオファーも来ると思うので。
現役で残り何試合やれるか分からないのに、用意された相手が『その選手に勝って、次に何があるの?』という感じだといい未来が見えないんですよ。自分のモチベーションの上がる相手との対戦オファーをいただけるように、ホームのREBELSでシップムーンにしっかりと勝って、自分の価値を上げて、いい感じで次戦を迎えたいんです」
かつて日菜太は「K-1WORLDMAX」の活動休止に伴い、2011年から当時旗揚げ2年目を迎えていたREBELSを主戦場に移した。以来、2017年に新生K-1参戦を果たすまでREBELSのエースとして興行を引っ張ってきたが、その日菜太から見て、現在のREBELSは「いい雰囲気だな」と感じるという。
「最近思うのは『REBELSで活躍したい』という選手が増えたことですね。老沼(隆斗)君(REBELS―MUAYTHAIスーパーフライ級王者)とか蓮沼(拓矢)君とか、そういう『REBELS愛』のある選手が増えていて、本当にいいことだと思うんですよ。
マッチメイクを見ても、他団体では明らかに『KOを見せよう』と組んでいる試合がありますけど、山口さん(山口元気REBELS代表)はあまりにも力の差があるマッチメイクはしないですし、選手が『この試合に勝てば、もっと上に行ける』と思えるマッチメイクをしてくれます。だから、REBELSは力が拮抗してて、モチベーションの高い選手同士が戦う、面白い試合が昔から多いですし、最近は『ホームのREBELSを盛り上げる』という選手が増えてきたので、とてもいい雰囲気ですよね。そういうところも評価されて、前回大会は『エアトリ』さんがスポンサーになって応援してくれましたし、これからもっともっと跳ねていく雰囲気を感じるんですよ。
今回の『PANCRASE REBELS RING.1』はTOKYO MXで生中継されるので、一般の人にも『日菜太って強いな』と思わせる試合がしたいですけど、何よりもまず勝つことを考えて試合をします。世界的な評価を上げるためにも、全力で現役ムエタイ王者を相手に『日菜太ペース』に持って行って、勝つところを見せます。それがREBELSを盛り上げることにもなると思うので、会場に来られる人にはぜひ新木場スタジオコーストに来て生の試合の迫力を味わってほしいですし、会場に来られない人はTOKYO MXかUFC FIGHT PASSで僕の試合を見て応援してください」
◆日菜太
(ひなた 本名:渡辺日菜太)
所 属:クロスポント吉祥寺
生年月日:1986年8月26日生まれ、32歳
出 身:神奈川県平塚市
身 長:181cm
戦 績:64戦46勝(15KO)18敗
K-1WORLDMAX08日本トーナメント3位
初代RISE70㎏級王者
REBELS70㎏王者