キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】初代王座を懸けて再戦、良太郎「ベルトに向かって一直線に行くだけ」渡部太基「まず『やり返したい』という思いが一番強い」

2022/09/21 21:09
 2022年9月23日(金・祝)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT 2022 vol.5』のダブルメインイベント第2試合にて、初代KNOCK OUT-BLACKウェルター級王座決定戦3分3R延長1Rで対戦する良太郎(池袋BLUE DOG GYM/team AKATSUKI)と渡部太基(TEAM TEPPEN)のインタビューが主催者を通じて届いた。  両者は7月大会で初対戦し、良太郎が判定3-0(29-28×3)で勝利。試合前から激闘が期待された一戦で、1Rは渡部が左右フックのラッシュで良太郎をダウン寸前まで追い込んだが、2Rになると良太郎が首相撲からのヒザ蹴りで逆襲。最後は執念の首ヒザで良太郎が勝利をもぎ取った。ダイレクトリマッチで今度は王座を懸けての戦いとなる。なお、この試合には『G-BALLER』の冠協賛が付いた。 良太郎「私怨でやり返すためにやってくるのは『どうぞご自由に』」 ――8月24日の記者会見では、両選手ともにいつにも増してピリピリとした空気でしたね。 「まあ、構図的には僕が喧嘩を売られてる立場なんで、どっかの大会みたいに会見でも大乱闘になるのかなと思ってたんですけど、別に何もしてこないし、言うことも想定内だし。こっちは敬意とリスペクトを持って接してましたけど、何言ってんのかもよく分からないし。見てるみんなが『?』だったでしょうけど、僕も『何言ってんの?』と思って聞いてました」 ――渡部選手は、「バチバチやると言ってたのに、組んでばっかりだった」と言っていましたが、そこについては? 「僕は別に、『足止めて打ち合う』とは言ってなくね? って感じでしたけど(笑)。言ってましたっけ?」 ――「足を止めて」とは言ってないですね。 「そうですよね。『どうせボカボカ殴り合うだろう』ってぐらいですよね。だから、僕からすると『何言ってんだろう?』と思って、正直どうでもよかったです」 ――そこからSNSでのやりとりもあって、タイトルを懸けての再戦が決まりました。ただ、間隔が短い中でのダイレクト・リマッチなので、同じ展開になるのではという声もあると思います。 「それはあるでしょうね。ただ、こればっかりは水物ですからねえ。100回やって100回同じ結果にはならないということは、競技者なら分かってることなので。しかもベルトが懸かってるので、間隔が短いとかそういうのも関係なく、結果を出さないと何の意味もない試合ですからね。練習した通りに頑張るだけですよ」――前回は、最初攻め込まれたけれども、そこから渡部選手の弱点をしっかりと突いたからこその勝利だったと思います。だからこそ、今度もそれをすることが勝利への近道なのではないかと。 「みんなそう思うでしょうねえ。でも今回どうするかは、思ってても言わないですよね(笑)」 ――それはそうでしょうが……。 「まあ、僕を応援してくれてる人は前回も『どうせ打たれてから目を覚ますんだろ』と思ってたはずなんで。前回もそうですけど、作戦とかって感じじゃないんですよ。僕が見据えてるのはベルトなんで。この前の対戦は『渡部選手とやる』というテーマでの対戦だったんですけど、その試合は終わったんで。相手側がどう思ったかは分からないですけど、興行的には盛り上がってくれたみたいだし、僕としてもいい景色が見えたわけですよ。でも今回に関しては、一番のテーマはベルトなんで。『アイツを倒す」とかそういう括りじゃなくて、ベルトに向かって一直線に行くだけなので、そこの差は出るんじゃないですか」 ――「差」ですか。 「あっちが僕に対する私怨で、やり返すためにやってくるのは『どうぞご自由に』という感じですけど、僕は見据えてるものが違うってことです。その差が出るんじゃないかなと」 ――確かに前回は「渡部太基と戦う」ことが主眼で、「自然と面白い試合になるだろう」ということをおっしゃっていました。今回、ベルトが一番ということは、内容うんぬんに関しても大きく違うということですか? 「別に、やることは変わらないと思うんで。作戦とかじゃなくて、しっかり練習して高いチケットを買ってくれたお客さんにその成果をビシッと見せなきゃいけないんで。みんなこの短いスパンでまた来てくれるわけですし。僕はここでベルトを獲って、その後のこともいろいろとプランがあるんですよ。それも含めて見据えてるんで」 ――渡部選手に一度勝っているという事実は、気持ちの面で影響しますか? 「僕はあまり気にしないかな? 例えば、1R開始早々にバコーン!と倒した場合に、再戦で『余裕っしょ!』と思うかどうかは、人によると思うんですよ。水物なんでね。僕もキャリアの中で再戦は何度かありますけど、これまでもそんなに気にしてこなかったですし。言っちゃえば僕なんて、この階級、このルールでもう1回やるなんて思ってもみなかった感じなんですけど、道筋ができたから再戦に合意したのであって、その意味でも気にはしないかなと思います」 ――これは会見でもお聞きしましたが、10月1日から『KNOCK OUT』の地上波レギュラー番組もスタートします。その直前の試合ということになりますが。 「まあそうなんですけど、番組の中心になるのは龍聖君とぱんちゃんと鈴木千裕君でしょ?(笑)」 ――そんな(笑)。すごい試合をしてチャンピオンになれば、分からないじゃないですか。 「もちろん、みんなはそれをモチベーションに頑張ればいいと思うんですけど、僕はけっこう変な立ち位置じゃないですか。現役選手と同時にチームの代表でもあって……って、他にあんまりいないわけで。こういうのも1人ぐらいいてもいいだろうと思ってるし、それが盛り上がる材料として使えるというのなら、使ってもらえばいいと思いますし。そんな感じです」 ――なるほど。では最後に、今回一番注目してほしいポイントはどこでしょう? 「僕がベルトを巻くところですね。そこに尽きます。僕は『REBELS』からの純粋な叩き上げなんですよ。『REBELS』のベルトがほしくて頑張って、実際にそれを獲って、その『REBELS』から移行した『KNOCK OUT』で僕がまたベルトを獲るというのは、いいストーリーだと思うので、そこを見てもらえればいいと思います。その後にうまくいけば……というプランもあるので、そのためにも僕がベルトを獲らないといけないんですよ」 渡部太基「今回は、久しぶりに牙が生え替わった」 ――まず7月の良太郎戦を、改めて振り返ると? 前半はうまくいっていたように見えましたが。 「まあ、そうですね。もう倒せると思っていたんですけど、2Rから組まれて。正直、KNOCK OUT-BLACKのルールであそこまで首相撲が長くできるということを知らなかったんですよね。それまでの2戦ではそんなに長くなる展開もなかったので、あまり意識もしてなくて。だから『こんなに首相撲があるんだ』というところで面食らった感じでしたね」 ――BLACKはヒジ禁止ですが、首相撲は攻撃が続いている限りは無制限ですからね。 「まあでもそういうルールなので、負けは負けですけどね。そこは理解したので、次は大丈夫です」 ――2Rからは確かに組み中心の展開になりました。そこからの打開は難しかったですか。 「そうですね。殴るにもずっと組みつかれていたので。合間を縫って殴ってはいたんですけど、なかなか倒すまではいかなかったなと」 ――首相撲で消耗させられた部分はあったんですか? 「ありましたね。突き放すのにも疲れたし、ずっと組みなしでやっていたので、首相撲が久しぶりすぎて」 ――やりながら、かなりフラストレーションが溜まる試合だったのでは? 「いや、ホントそうですね。『離れろよ!』と思ってましたけど、相手はそれしかないので、それでくるだろうというのしかなかったし。試合前は向こうも『バチバチで』って言ってたのに結局これかよ、っていうのも思いましたけど、まあ、正直者が馬鹿を見ることになったのかなという感じですね」 ――その結果をどう受け止めたんでしょうか。 「落ち込んだというか……正直、試合した感じが全然なかったんです。やられた気もしないし、もちろん勝ったとも思ってないですけど。つまんない試合をしちゃってファンにも申し訳ないし、もうこのルールでは戦っていけないなということも、頭をよぎったりはしました」 ――試合直後はそういう気持ちだったということですね。その後、8月2日に渡部選手の『良太郎選手をぶっ飛ばしたくて仕方ないのですが、どうしたらいいですか?』というツイートから、事態が急展開しました。 「相手の一夜明け会見を見て、気持ちが爆発したんですよね」 ――あ、見たんですね。 「周りから『会見見た?』って言われたんですよ。俺自身はムカつくから見てなかったんですけど、『すげえ上からもの言ってたよ。“階級もルールも越えて勝った”ってすげえ勝ち誇ってたし、再戦してやってもいいぐらいのことを上から言ってたよ』って言われたんで、見たんですよね。『あの試合で、そんなに勝ち誇ってんだ。喧嘩もできねえくせに』と思って、それでムカつきが増して。俺は試合後、負けを認めずに噛みついたりとかはしないんですよ。試合は終わったんだから、『ありがとうございました』ぐらいでいいじゃないですか。俺も『ルールで負けたんだからしょうがねえな』と納得してたのに、『もう一回やってやってもいい』とか言ってるからさすがにムカついてきて。再戦とかいうより、とりあえずぶっ飛ばしたくてどうしよう、みたいな」 ――それでツイートしたら、良太郎選手本人から反応があったと。 「『その喧嘩買います』って来たんですよね。『喧嘩できねえくせによう言うわ』とは思いましたけど」 ――そしたら、再戦が決定しただけじゃなくてタイトルも懸かったわけですよね。その流れについては? 「まあ正直、7月の試合をクリアして9月にタイトルマッチということだったら、すごく理想的ではあったんですけど、負けて……まさかの展開ではありましたよね。ただ、再戦するならそういうことになってもいいのかなと。ただワンマッチでやっても、周りが見てあまり面白くないのかなというのもあったので」 ――ただ、あの試合から2ヵ月しか経っていません。同じ展開になるということはないんでしょうか? 「ハハハ。大丈夫ですよ、もう。同じことにはならないですから」 ――大きく分けて「首相撲対策をする」と「首相撲の展開にさせない」という2つが考えられると思うんですが、そこは? 「まあそこは、試合を見てのお楽しみということで」 ――分かりました。今回の試合の原動力は「ムカつき」ですか? 「ムカつきでしかないですね。初めての感覚なんですよ。俺が喧嘩売ったみたいになってますけど、きっかけを作ったのは向こうなんで」 ――ということは、モチベーションの一番は「タイトル」ではない? 「もちろんベルトはほしいですけど、まず『やり返したい』という思いが一番強くて、そこにベルトがついてくるなら最高ですよね」 ――もともと『KNOCK OUT』参戦にあたってはベルトが一番のモチベーションでしたよね。そこに割って入られた感じですか? 「まあ、そうですね。向こうからしたらメチャメチャ棚ボタだし、俺がひとつひとつ積み上げてきたものを奪い去るみたいな感じになってますけど、俺からしたら『そうはさせねえよ』って感じですよね」 ――ムカついて試合するのは初めてかもしれませんが、これほど相手に対して熱くなるのは久しぶりなのでは? 「そうかもしれません。俺もいい年なんで、ちゃんと対戦相手には敬意を持ってやってきてましたけど、今回は年齢も近いというのもあるし、そういうバチバチ感は自分の中でありますね」 ――そういう気持ちだったり、先ほどの展開のことを含めて考えると、今回は「自分の試合にしたい」という思いが強そうですね。 「もちろんそうですけど、前回ルールに負けたんで言い訳になっちゃうんですけど、あとは結局、お客さんに見せるプロの格闘家として、本当にヒザをぶち込まれてアバラとか折られて動けなくされたら『完敗です』ってなりますよね。でも、首を掴んでただ足を上げてただけの場面も何回かあったじゃないですか。それとか、ちょっとどうなの?というか。お客さんから見てもそうじゃないですか。『足上げてただけじゃん。それで勝ったんだ』みたいな。そういうことするヤツだったんだ、って感じですよね、こっちからすると。もうちょっと男気あるヤツだと思ってたんで」 ――そうすると、相手が打ち合ってくれるとは思ってないという前提ですね。 「組みでしかこないでしょう。それは分かってますから。その上でどうするかって話です」 ――久々に、『本当に怖い渡部太基』が見られそうですね。最近はやっぱり、試合に向かう気持ちも以前と比べると丸くなっていた部分もあったのでは? 「それはありましたね。でも今回は、久しぶりに牙が生え替わったというか。『ナメてんな、コイツ』って本当に思ってるんで。向こうは開き直って組みに徹してくるでしょうけど、そうなっちゃったらお客さんに申し訳ないんでね。マジつまんないでしょうから」 ――そして、発表された通り10月1日から地上波でのレギュラー番組も始まります。放送開始直前の大会なので、いい材料になりそうですが。 「本当に、いいタイミングで試合できるんだなって思いますね。でも、盛り上げるだけ盛り上げて負けてたら意味ないんで、ここはキッチリ結果を出して地上波に、という気持ちです」 ――勝てばいよいよチャンピオンですし。ただ、今回重要なのは「牙」ですね。 「はい。まあ、熱くなりすぎないように気をつけますよ(笑)。ブチ切れると、自分でも自分を止められないんで、そうならないように気をつけたいと思います」――では最後ですが、改めて、今回の試合で一番注目してほしい点は? 「殺気ですかね。前回の試合を含めて、フラストレーションが溜まってますから。スカッとするものをファンのみんなに見せたいなと思います。前回は応援団も葬式みたいになってましたからね。『何なの、あの試合!』って。俺自身がスカッとする勝ち方をして、みんなにもスカッとしてもらいたいと思います」
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