32勝(8KO)21敗1分、55戦目を引退試合に選んだ31歳の伏見(C)SHOOTBOXING
2022年9月17日(土)東京・後楽園ホール『SHOOT BOXING 2022 act.4』の第8試合(53.5kg契約)でHIROYUKI(RIKIX)を相手に引退試合を行うSB日本バンタム級2位・伏見和之(RIKI GYM)。
強打と折れない心を武器に、これまでに植山征紀と2度に亘る激闘を繰り広げてきた。2008年にプロデビューし、54戦もこなしてきた伏見はどのような想いで戦い続けてきたのか。伏見からのラストメッセージが主催者を通じて届いた。
みんなの心に何か残してやるという気持ちでいます
――突然の引退発表で驚いたファンも多いと思います。引退を決めた理由は何でしょうか。
「前回(2021年12月26日)の試合でタイトルマッチ(SB日本バンタム級王座決定戦)をやらせてもらいました。そんなに長くやるつもりはなかったのですが、ベルトを獲ったら他団体のチャンピオンレベルの選手と絡んでいきたい気持ちがあって、そのためには必ずベルトが必要だという一心でやってきました。徹底して勝ちにいこうとセコンドと話して試合に臨んだのですが、勝ちに徹した結果、4RKO負けで……。
(写真)昨年12月、佐藤執斗とのSB日本バンタム級王座決定戦で引退を決めた
いつも倒されたら試合が終わった後に『悔しい』『やっちまった!』『ちくしょう!』といった気持ちが出てくるのですが、今回は『終わった』と最初に思ってしまい、もうこれ以上格闘家としてはいられないなと。その時にリング上で佐藤執斗君とシーザー武志会長に引退するつもりですと伝えました。でもその後、緒形(健一)さんから何度かお声がけをいただいて、シーザー会長はじめシュートボクシング(以下SB)協会のご厚意で引退試合を組んでいただけることになりました」
――最後の相手のHIROYUKI選手に決まったのは、伏見選手の希望なんですか?
「はい、もし可能ならとお願いしました。自分的には、みんな本気で上がっているリングで引退エキシビションマッチのショーみたいなことなんて絶対にやりたくないので、だったら最後に本気で戦って辞めようと。チャンピオンの佐藤君とは1勝1敗なので最後にリベンジして終わろうと思ったのですが、佐藤君は前回、HIROYUKI選手に負けています。そうなるとHIROYUKI選手が実質トップなので、分かりやすくトップを倒せばいいやと思ってHIROYUKI選手に決めました。HIROYUKI選手にとって今回の試合は何のメリットもなく受けてくれないと思ったのですが、受けてくれたHIROYUKI選手に漢気を感じますし感謝しています」
――もし佐藤選手に勝ってチャンピオンになっていたら現役は続けていたと思いますか?
「次にやることを決めていたことがあったので、続けていたと思います。よく世界一になりたいといいますが、世界を見始めたら選手なんてわんさかいるし、わけが分かりません。軽量級の選手なんて世界中だと少ないのでアジア止まりです。もう分かりやすく他団体のチャンピオンを一人一人倒していくことが昔からの僕の夢なので、それを実現させたかったのですが、僕の人生ではうまくは行かなかったですね」
――格闘技人生でやり残したことはありますか?
「僕は諦めではなく、完全に納得して引退するのでやり残したことはないかもしれません。もしやり残したと思うことがあれば、引退試合でクソみたいな試合をしてしまったら、それがやり残したことになると思います」
(写真)2014年2月、藤本昌大とのタイトルマッチで勝って初戴冠
――54戦やってきて一番思い出深いのはどの試合になりますか?
「僕の中で一番思い出深いのはSB日本スーパーバンタム級タイトルマッチ(藤本昌大戦)でベルトを獲った時(2014年2月23日)ですけど、一番楽しかったのは植山君と最初にやった試合(2015年12月1日)ですね。僕が先にダウンを取られて2Rに盛り返して最後に倒された試合内容でした。あの時ヘルニアで1年ぶりの試合でしたが、復帰が楽しみでやる気に満ち溢れていましたし。試合では負けましたが、負けて悔しい気持ちはありつつも殴り合いは楽しかったという気持ちしか出てこなく、控え室で周りが葬式みたいに落ち込んでいても僕はずっと笑っていましたね。負けて泣かなかったのはあの試合ぐらいでした」
「植山君ですね。気持ちが良すぎるぐらいの試合ができた選手でしたからね」
――今若い選手がSBのリングでは育っていますが、何かメッセージはありますか?
「それは今度の試合で伝えたいと思います。とにかく次の試合を見てほしいですね。今の若い選手はちょこちょこやって判定勝ち狙いだったり、負けている試合内容でも攻めなかったりします。僕は勝っても負けても攻めるタイプなので、これがプロだという試合を見せて、みんなの心に何か残してやるという気持ちでいます」
――今後はご自身のRIKIGYMで指導や選手育成で格闘技界にも関わっていくわけですよね。
「僕が上がってきたのはSBのリングでしたが、今はたくさんの競技があります。僕の人生ではなく、その子の人生なのでどういう場所でどんな経験を積んでいくのか自分で決めさせます。僕に憧れてプロになるのであればSBをやらせますが、無理強いはしません。どんな試合でも勝っていけるように僕は強いやつをしっかり育てていきます。僕が実現できなかった“日本一”をぜひ実現してもらいたいですね」
(写真)伏見が最も印象に残っているという2015年12月1日の植山戦
――2008年にプロデビューして54戦もやってこれたのはなぜだと思いますか?
「単純に楽しかったから続けられたんだと思います。好きなことをやっている自分が好きで、嫌いなことをやっている自分が嫌いです。人の顔色を伺って仕事をしたり、謝らなくていいのに謝まらないといけなかったりとか、自分はそういうのはできません。格闘技はそういうことはなく、何か違うと思ったら僕は言ってきましたしね」
――最後に応援してくれた方々にメッセージをお願いします。
「今までたくさん応援していただき、感謝しかありません。選手としての僕の人生は終わりますが、今後はトレーナーとして日本一を目指すし、日本一の選手を育てます。トレーナーとしての僕の応援も引き続き応援よろしくお願いします。あと、僕はもう一人では生きていけないので色々と助けて下さい(笑)。すみません、僕はカッコつけて言えないので本音を言いました(笑)。助けてもらった分、何かあったら僕は全力で倍返しします!」