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【UFC】体重大幅超過、因縁のチマエフvs.ホランドはチマエフが一本勝ち、UFC最後のネイトはファーガソンを4R ギロチンでタップ奪う=『UFC279』

2022/09/10 11:09
「地獄の夜(記者会見)から地獄の朝(前日計量)になってしまった。何か問題が起きた場合に備えて、同じ大会に同じ階級の試合を並べているのは偶然ではないが、今回はそれが功を奏した」  2022年9月10日(日本時間11日)、米国ネバダ州ラスベガスのT―モバイル・アリーナにて開催される『UFC279』に向け、ESPNの放送でUFCダナ・ホワイト代表は、前日の記者会見がバックステージでの混乱で途中で中止になったこと。さらに前日計量でカムザット・チマエフ(スウェーデン)が、ノンタイトルのウェルター級(171ポンド・77.56kg※王座戦以外170プラス1ポンドまで許容)契約の試合で、178.5ポンド(80.96kg)と3.4kgの大幅体重超過したため、カードをシャッフルしたことなどを明かした。  もともと180ポンドのキャッチウェイトの5分3Rで、ダニエル・ロドリゲス(米国)と対戦予定だったケビン・ホランド(米国)がチマエフと180ポンド契約の「5R戦」で対戦。  171ポンドのリミットちょうどで計量をパスしていたネイト・ディアス(米国)は、ウェルター級転向を果たすトニー・ファーガソン(米国)とこちらも「5R」で対戦することになった。  ホランドvs.チマエフのカードは、前日の会見を途中中止にした因縁のカード。数カ月前からSNSやインタビューで煽りあっていた両者は、翌日に別々の対戦相手と戦うにも関わらず、口論の末に乱闘。リー・ジンリャンと、元ファイターでMMAエージェントのティキ・ゴーセン、そしてセキュリティらによって引き離されている。  今回のチマエフの体重超過により、その騒動の原因となった2人を組むことにしたUFCもタダでは転ばないということか。対戦相手とラウンド数を想定したトレーニングを続けてきたはずのファイターも、カードシャッフルの同意に条件交渉を行った上での新たなカードとなる。急遽の変更にどれほどのパフォーマンスが期待できるか。  また、ファーガソンと対戦予定で、前日のバックステージで両者を引き離すなど活躍したジンリャンは、気の毒なことに当初のウェルター級戦から、急遽180ポンドのキャッチウェイトでロドリゲスと対戦することになっている。  前日会見のバックステージでは、選手とチーム同士の距離が近く、計量時ほどのセキュリティを配置しなかったため、騒ぎが起きた。  知人のゴーセンが、チマエフ陣営といるところを目撃しボトルを投げつけ、チーム同士が騒動となったネイト・ディアズは、50名近いチームで乗り込んだとされており、チマエフとチェチェン出身選手のチームは30数名、チマエフの髭を剃るように挑発したホランドは6、7名でそれに対抗するなど、事前のトラッシュトークを含め、火種は各所にあった。また、ダレン・ティルとクリス・アビラも現代の王室と女王の目的について口論し殴り合いになったとの報道もあり、まさにカオス状態だった。  ネイトにとっては、この試合がUFC契約の最後の戦いになることが決まっており、自身のプロモーションを持つネイトと手放すUFC、それぞれにとってざまざまな思惑がからんだなかでの交渉だった。ほかカードでも、アイリーン・アルダナvs.メイシー・チアソンが共に体重超過により140ポンド契約に変更、ハキーム・ダワドゥが149.5ポンドで、ジュリアン・エロサ戦がキャッチウェイトに、クリス・バーネット267.5ポンドでジェイク・コリアー戦がキャッチウェイトと体重超過が相次いでいる。  計量後には、ダスティン・ポイエー(11.12「UFC281」でマイケル・チャンドラーと対戦予定)ら複数のファイターにも緊急の出場打診があったことが分かっている。ともあれ、新たなカードは着地した。  ダナ・ホワイト代表はESPNの動画で、「我々はドクターの指示を仰いだ。こういった事が起きると、明らかに他の選手との対戦のために長い間トレーニングを積んできた選手がいて、そういう選手たちに、他の選手との対戦に同意してもらうのは少し難しい場合があったけど、全てを組むことが出来た。ネイトvs.ファーガソンは、ファンファイトだ。ネイトがUFCを去る前にそれが実現することになった。ホランドとチマエフは、バックステージで口論になった。皮肉なことに、彼らはこれから土曜の夜(日本時間日曜)に戦うことになる」と語っている。 [nextpage] UFC279 速報 ▼ウェルター級 5分5R〇ネイト・ディアス(米国)20勝13敗(UFC15勝11敗)[4R 2分52秒 ギロチンチョーク]×トニー・ファーガソン(米国)25勝7敗(UFC15勝5敗)※ウェルター級転向  1R、サウスポー構えのネイト。オーソドックス構えのファーガソンが右ストレート。ネイトの蹴り足をつかんで崩すが、深追いはせず。  横蹴りで距離を取るネイト。ファーガソンの入りに前手の右を突く。ファーガソンの左ローを右足を上げてチェックするネイト。左脛をカットしたファーガソン。半身で近づいて行く。左右前足を変えるネイトに、飛び込んで右ヒジを打ち込むファーガソン。ネイトはワンツーから右の裏拳のコンビネーションを見せる。  右ボディストレートを突くファーガソン。ネイトは右ロー! さらにワンツーもかわすファーガソン。バックフィストは空を斬る。  2R、サウスポー構えになるファーガソン。その打ち終わりにネイトはワンツーを打つ。ファーガソンの右をダックでかわすネイト。ファーガソンは右から左アッパーも。オーソドックス構えに戻すファーガソン。ワンツーから右ローに繋ぐネイト。右ボディで飛び込むファーガソン。ネイトの右をダックしてそのまま胸に頭をつける。ネイトの左右の詰めに右眉をカットするファーガソン。右前蹴りを突くが、それに構わずネイトは圧力をかける。  3R、左ローを当てるファーガソン。さらに右ローも。しかし、右ジャブ、左ストレート、右ローと圧力をかけるネイト。一瞬ケージ上にヒジを着いて疲れたとポーズを見せるもすぐに詰め直す。しかし左回りでサイドステップでかわすファーガソンにまたもあきれたポーズを見せる。ジャブの刺し合いから右ローを当てるファーガソン。しかしネイトは距離を潰して、右肩を前にボクシングで半身でかわし、詰める。  4R、オーソから左アッパーを突くファーガソンだが、空振り。そこに左を突くネイト。ファーガソンの左ローにカウンターの右はネイト! 一気に詰めるが、サークリングのファーガソンは頭を守って防御。そこにネイトはボディ打ちを狙う。  追うネイトに金網に詰まったファーガソンはダブルレッグへ。そこにネイトは最初はアームインギロチンチョーク、腕を抱えずにハイエルボーギロチンに組み変えてタップを奪った。当初は3R戦を戦う予定だったファーガソンは4Rのカウンターのギロチンチョークにあっさりとタップすることになった。  試合後、ネイトは「しっかりファイトキャンプをしてきた。ボクシングはあまりやらなかったけど(笑)。(チマエフとの試合が変更されたが?)あいつのことなんてどーでもいい、ほんとうに何も気にしていない。ここでは5R、自分がやることをやるだけ。永遠と戦い続けられる。MMAの代表ともいえるあの男(ファーガソン)と戦えたのはよかった」と語った。  また、自身の団体運営に向かうネイトに、今後のUFCについてジョー・ローガンが問うと、「ここには愛情と憎しみが混ざるとても難しい関係がある、ファティ-タ兄弟、ダナ、みんな大好きだし、大きな功績を残して、オクタゴンで生き残ることができた。ここを少し離れて、若いUFCファイターに足跡を追ってほしい。次のキャリアで新しい仕事が出来ることを示したい。もちろんタイトルを獲るためにここに戻ってくることもできる」と答えると、シーザー・グレイシー、ニック・ディアズらファミリーに感謝の言葉を語り、「今日はパーティーをしよう」と言ってコメントを締めた。  また、敗者ファーガソンは、「ワイルドな試合でここで試合が出来たことを光栄に思う。スーパーファイトだったと思う。力いっぱい戦った。結婚10周年の妻にも感謝する。子供たちをベースボールに連れていかないと」と笑顔を見せた。 [nextpage]  ▼180ポンド契約 5分5R〇カムザット・チマエフ(スウェーデン)12勝0敗(UFC6勝0敗)※体重超過、UFC6連勝[1R 2分13秒 ダースチョーク]×ケビン・ホランド(米国)23勝8敗(UFC10勝5敗)  カードシャッフルの原因となった両者の因縁の対決。  5R戦でいきなりラッシュの組みでダブルレッグから脇を潜り、ボディロックテイクダウンはチマエフ!  スクランブルするホランドを右で差してボディロックテイクダウンから押さえ込もうとするが、その都度、立ち上がるホランドをがぶりクオーターネルソンからダースチョークを極めに行く。二の腕でクラッチを組むと、右足もかけて絞り、最後はニアマウントでタップを奪った。  カードシャッフルの張本人のチマエフは悪びれず6連勝に歓喜すると、「何か言いたいことがあれば聞いてやる。誰とでも戦うぜ。体重? そんなこと気にしない。誰とでも目の前の相手と戦う。(ウェルター級で?)何が問題なんだ。体重合わせてやってやるよ。(タイトルマッチでこの体重超過なら問題だが?)ドクターが水を飲めと言ったんだ。俺はネイトと出来た。これはブラックベルト、コーチたちが揃っているんだ。どの階級でも出来る。ウェルターでもミドルでも将来的にチャンピオンになることは間違いない。俺のことを悪く言うやつもたくさんいるけど、そいつらも愛しているぜ」と咆哮した。 [nextpage] ▼180ポンド キャッチウェイト 5分3R〇ダニエル・ロドリゲス(米国)17勝2敗(UFC7勝1敗)※UFC4連勝[判定2-1] ※29-28×2, 28-29×リー・ジンリャン(中国)19勝8敗(UFC11勝6敗)  カードシャッフルにより、トニー・ファーガソンとのウェルター級戦から、180ポンド契約のロドリゲスとの試合になったジンリャン。ロドリゲスも急遽の対戦相手変更となる。  1R、オーソドックス構えのジンリャン、サウスポー構えのロドリゲスは前手の右ジャブを当てて圧力をかける。ジンリャンは右の前蹴り。頭を動かしてワンツーで押し戻すが、その分ロドリゲスがバックステップする。  右ミドルを当てるジンリャン。左ミドルを返すロドリゲスはブロッキングの右手に効かせる。右ジャブを当てて前に出るロドリゲス。ジンリャンは刀を抜くような仕草を見せる。  2R、右ボディストレートを突くジンリャンは右インロー、前蹴りからサウスポー構えになる。ロドリゲスも左カーフを打つと、互いにクロス狙い。オーソドックス構えに戻すジンリャンは右ストレートを突く。打ち合いから右を当てたジンリャンは前に。さらに右フックを突く。左ハイを当てるロドリゲス。ジンリャンはその蹴り足を掴んで倒す。  3Rも右前手を突いて圧力をかけるロドリゲス。その左をかわして左右を振るジンリャンだが遠い。左ジャブのダブルから前に出るジンリャンをかわすロドリゲスが右をヒット。ジンリャンは右ボディストレートも単発。ロドリゲスの入りをかわしてカウンターの右を狙うジンリャンだが、ロドリゲスも深くは追わず。判定はロドリゲスが2-1で勝利。  ロドリゲスは試合後、「24時間以内の対戦変更は2試合目。対策は練れなかったけど、いい感じで試合に臨めた。最後のラウンドが勝負だった」と語った。
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