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【BJJ】『ヴェノム』『マッドマックス』主演のトム・ハーディが柔術大会で優勝「強いというのは参加すること、教わる覚悟を持つこと」

2022/08/22 19:08
 映画『ヴェノム』『マッドマックス 怒りのデスロード』などに主演している英国の俳優、トム・ハーディが2022年8月21日、地元英国のブラジリアン柔術大会に出場。柔術衣着用のギ部門と柔術衣なしのノーギの両部門で優勝を果たした。  柔術衣を着たハーディは、グレイシーバッハの青帯の相手の引き込みでクローズドガードの中に入ると、右腕で背中の足を解こうとするが、その片腕になったところを相手に三角絞めを狙われ、さらに右足もすくわれてスイープされかかるが、肩を回して三角を外すと、すぐにサイドポジションへ。  腹にヒザを置くニーオンベリーでポイントを奪い、上四方から頭もまたぎキムラロックへ。相手が自身の襟を持って防ぐと、腕十字へ移行。上体を起こしてきた相手の頭を右足で刈って再び寝かせると、基本通り、腕を抱えクラッチを切って左腕を伸ばしてタップを奪った。一本勝ち後も、淡々と勝ち名乗りを受け、相手に礼をしてからハグをかわしたハーディ。 【写真】2020年に青帯を巻いたハーディ。右隣はブラウリオ・エスティマ  2020年に青帯を巻いたハーディは、「レオルグ・チャリティ」で柔術の練習を行っており、同クラブは、深刻な身体的損傷を負った人々や、PTSD、うつ病などを患っている人々を対象としている。身体に障害を持つ人も含む退役軍人が、退役後の人生の目的を見つけることも支援している。  20代前半から半ばにかけて、アルコール中毒やクラック・コカイン中毒と闘っていたハーディは、同クラブの趣旨に賛同し、その活動を支援している。  同クラブの創設者であるサミュエル・シェリフの青帯であるハーディは、新型コロナのパンデミックを経て、2022年に柔術コンペティションに出場し勝利したことになる。  アクションもこなす俳優にとって、実際の柔術大会に出場することは、リスクも伴うが、ハーディは勝つことも負けることも含め、そこに挑戦する姿を、一般観客のいる前で披露した。  師匠のシェリフはWARWOLF BJJ出身で、ジミー・ジョンストンの黒帯。そのジミーは、“ファベーラ柔術”フェルナンド・テレレの黒帯となる。スラム街から柔術で人生を切り拓いたテレレのように、ハーディも逆境から苦難を乗り越え、柔術を人生の友としている。  Elevateマーシャルアーツでは、英国「Cage Warriors」などで4戦無敗のロナーカヴァナともノーギの練習も重ねており、かつて主演したMMAを題材とした『ウォーリアー』のごとく、ハーディがオープンフィンガーグローブをつける日も来るかもしれない。ハーディは『ウォーリアー』の撮影で過ごしたファイトキャンプを通して、格闘技との出会いを下記のように語っている。 「興味深いのは、ファイターとしての励ましや仲間意識、規律、そしてそれぞれの陣営の人たちの愛情を感じることです。  私はいつも、格闘技はとても生意気な世界だと思っていました。外から見ていると、人を殴りつけるスポーツだと思うからです。でもファイトキャンプはそうではなく、とても愛のある場所でした。確かに上下関係はありますが、それはお互いを尊重し合っているからこそ。  以前、私が格闘技にのめり込まなかった理由の多くは、道場やファイターズジムに対する恐怖心や、集団に対するメンタリティでした。“あそこは怖い、あそこでは絶対に生き残れない”と思っていたんです。だから何年もそれを避けて、お酒を飲んだり、タトゥーを入れたりして、道場に行くことを避けて強いと感じる方法を見つけたんだ。  でも、結局、強いというのは参加すること、教えられる覚悟を持つことだと気づくんです。上手である必要はなく、参加するという事実が大きく評価される。なぜなら、彼らにはパートナーが必要だからです。誰も相手がいないと強くなれないから」。 [nextpage] 「ヒクソンは『ギを着て今夜から練習するんだ』と言ったんだ』(フラナリー)  ハーディのほかにも、映画関係者や俳優、アーティストの間で、「Jiu-Jitsu」は人気を博している。柔術に恋したセレブたちを紹介していこう。  ハリウッドスターの間では、ヒーガン・マチャドの柔術クラスが評判になっている。  叔母がグレイシー一族に嫁いだ関係で、グレイシー一族内で育ったマチャド五兄弟の三男にして最強の男と呼ばれたヒーガンは、怪我をすることが契約上、問題のある俳優たちのために、ハードスパーリングを除いた“flow jiu-jitsu”を開発、指導し評判となっている。  そのヒーガンに師事するのが、キアヌ・リーブスだ。柔道黒帯のキアヌは、50歳をすぎて柔術をスタート。近年の『ジョン・ウィック』シリーズのアクションにも役立てているという。  ドラマ『ザット'70sショー』、SFファンに人気の『バタフライ・エフェクト』などの主演俳優アシュトン・カッチャーもヒーガンの生徒だ。  大物女優と浮名を流し、現在の妻は女優のミラ・クニスというカッチャーは、最近は『スティーブ・ジョブズ』でジョブズ役を演じている。キアヌと同じくヒーガンを師事するカッチャーは、2012年から柔術を練習し、2019年に茶帯となっている。  柔術歴20年になるのが、『ワイルド・スピード』のドムことヴィン・ディーゼルだ。ヒーガンをセンセイに持ち、54歳の青帯として、柔術を生涯スポーツとして親しんでいる。  フロー柔術に飽き足らず、スパーリングを好むのは、ミュージシャンのUsher(アッシャー)だ。ヒーガンの下で柔術に触れたUsherは、ムエタイファンでもあり、アンデウソン・シウバとのトレーニング、ATOSのヘッドコーチのアンドレ・ガウヴァオンにも指導を仰いでいる。  映画監督のガイ・リッチー(『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『シャーロック・ホームズ』シリーズ、『アラジン』等を監督)は、7歳から空手を始め、柔道の黒帯でもある。柔術は2000年代に入ってから始め、2015年にヘンゾ・グレイシーの黒帯となった。  そのガイ・リッチー監督の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』でデビューしたジェイソン・ステイサムも柔術家だ。『トランスポーター』『ワイルド・スピード』『エクスペンダブルズ』シリーズに出演している、このアクション俳優は、ニューヨークのヘンゾ・グレイシーの紫帯を巻いている。  プライベートクラスもあるヒーガン・マチャド、ヘンゾ・グレイシーらに師事するセレブが多いなか、カリフォルニアのパラゴン柔術のヒカルド“フランジーニャ”ミラーに師事し、ニューヨークのマルセロ・ガッシアとも練習するのが、ショーン・パトリック・フラナリーだ。 『処刑人』シリーズ、テレビドラマ『インディ・ジョーンズ 若き日の大冒険』などで活躍したフラナリーは、ジェフ&ビル・グローバーらがいたパラゴン柔術で学び、現在は、LAでハリウッドBJJも経営している。  アメリカンナショナルやパン柔術の青帯ライト級マスター1等で優勝もしているフラナリーは、1965生まれ。1990年後半に、初めて柔術に出会うきっかけとなった瞬間を、以下のように振り返っている。 「ジェリー・バンクスと呼ばれていた所に、ヒクソン・グレイシーと、ルイス・エレディア“リモ”やヘンリー・エイキンス──当時は紫帯だったと思う(※ヒクソンの黒帯に)がやってきて、広葉樹の床にマットを敷き始めた。  ヒクソンはピコ・アカデミーを閉鎖していたので、ここが仮の場所だったらしい。それが90年代後半のこと。道衣の下にワッペンがあって、そこに『ヒクソン・グレイシー』と書いてあったから、自分は素朴な若い子だったから、『わぁ! ホイスと関係があるの?』と聞いたら、『そうだよ』って。今となってはひどい侮辱的なことを聞いてしまったけど、その時、ヒクソンは『ああ、彼は僕の弟なんだ』」と。俺は“なんとあの偉大なグレイシーと関係があるのか!”と思った。それで『どこで柔術を練習したらいいんだろう? でも場所がない』と言った自分に、ヒクソンは僕に道衣を投げてきて、『ギを着て、今夜から練習するんだ』と言ってきたんだ。その時はとても初歩的なクラスで、一緒にウォームアップしたり、身体を動かしていたら、同じような体型の相手を選んでスパーリングしようといわれて、(ライト級(70kg)の体格なのに)135ポンド(61kg)の青帯を選んだんだけど、完全にドミネートされてしまった。これが啓示のようだった」  フラナリーは、自身が脚本を手掛けた映画『ボーン・ア・チャンピオン』がブラジリアン柔術へのラブレターであることも公言している。 「私の人生において、格闘技ほど私を深く形作ってくれたものは、両親以外にはありません。私は、私が偉大な人間になったとか、まともな人間になったと言っているわけではありませんが、私が最終的に何になったとしても、それは武道のマットの産物です. 私にできることは、その話を書き留めることと、それが私に何をしたかということを伝えるだけです」  日本でも、柔術ファンの俳優は増えている。  主演映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』で、ファイトコレオグラファーとしてアクション制作にも携わった岡田准一は、CARPE DIEMの橋本知之を相手に、おそらく映画史上初のデラヒーバからベリンボロの柔術技を劇中で使用。  そのほかにも柔術道場で一般クラスにも参加する玉木宏、木村拓哉、川口春奈、米倉涼子らも柔術に取り組んでいることを公表している。  今回のハーディの挑戦は、柔術が自身の生活とともにあることを示した出来事だった。今後も柔術は世界にどのように広がって行くか、注目だ。
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