2022年9月11日(日)横浜アリーナ『K-1 WORLD GP 2022 JAPAN~よこはまつり~』に来襲する海外強豪選手たちを、K-1 WORLD MAXで日本を背負って戦った佐藤嘉洋が解説する。その第二弾は和島大海と対戦するメレティス・カコウバヴァス(ジョージア)、金子晃大と対戦するジョーダン・スウィントン(イギリス)、第5代スーパー・フェザー級王座決定トーナメントに出場するアダム・ブアフフ(モロッコ)とアヤブ・セギリ(モロッコ/スペイン)について。
――続いてヨーロッパ編です。まずは和島大海選手と対戦するメレティス・カコウバヴァスが話題になっていますね。
「いやぁ…このメレティスは『マジでつええぞ!』という選手ですよ! パンチがものすごく重くて、馬力では世界トップレベルでしょうね。ヨーロッパでは強豪選手とやっているんですけど、そういう相手がコロコロ転がされてましたからね。あの馬力は本当に凄いですよ」
――ずばり和島選手は……大丈夫なんでしょうか?
「メレティスはパンチを振り回す選手で、和島は真っ直ぐ下がっちゃう時があるんですよ。そうするとメレティスのガン!ガン!ガン! と前に出ながら打ってくるパンチがバコーン! とクリーンヒットしてしまう可能性はあります。和島はそこをものすごく気をつけた方がいいと思いますね」
――それだけメレティスは怖い選手なんですね。
「サウスポーの和島がどうしたらいいかというと、下がる時は相手のパンチに押されて下がるのではなくて、徹底的に相手よりも速く下がることなんですよ。自分から先に攻撃して下がって…のヒット&アウェイを徹底するか、それか自分から距離を潰してしまうことですね。メレティスは危険な相手ですが、徹底的に距離を潰して削り合いに持ち込めればいける気がします」
――中間距離で危ないパンチを貰わずに削り合いに持ち込む、と。今の和島選手ならメレティスの馬力にも対抗できますか?
「今の和島なら出来ると期待してます。それぐらいのパフォーマンスを試合で見せていますし、2年ぐらい前の和島とは全然違いますよね。『THE MATCH 2022』を見ても思ったんですけど、和島はもう世界の強豪とやっていかなければいけない立場になったと思います。だから今回が本当に試金石ですよね。メレティスに勝てば本当に大きいですよ」
――金子晃大選手と対戦するジョーダン・スウィントンはどうでしょうか?
「映像を見て、金子とめちゃ相性が良さそうだな、と思いました。ストレート・フックのコンビネーションで、どちらかがダウンしてる映像が浮かびます。タイプ的にはキレがあるのは金子で、重さがあるのはスウィントンかな。スピードだと金子だと思いますけど……この試合は間違いなくかみ合う試合になると思います」
――ここからはトーナメントの参戦選手についてもお聞きします。モロッコのアダム・ブアフフはどうでしょう?
「2年前に武尊とK-1とISKAのダブルタイトルマッチで話題になった無敗の選手ですよね。今回が初来日で、本人も期待されてると分かってるから相当気合いが入ってるでしょう」
――試合映像を見たんですけど、掴みどころがない印象です。
「試合映像も数年前のもので、しかも散打に近いルール(投げ技を認めた立ち技の試合)の試合なんで未知数ですよ(苦笑)。あと注意しないといけないのは、モロッコ系の選手は前のめりでパンチを打ってもバランスが崩れないところ。そういう基本を度外視したパンチの打ち方を確立させているんですよ」
――なるほど。独特なパンチの打ち方で、それでも連打出来るのはそういうことですか。
「日本人の身体能力では考えられないような軸の保ち方を習得してるから、技が変な風に伸びたりするんですよ。届かないと思っていたはずのパンチが届いてきたり。実は僕も現役時代はモロッコ系の選手が苦手だったんですよ。距離感を狂わされるから」
――ええー、そうだったんですか。
「あと、モロッコ系の選手は感情が激しいんで、遠い間合いからワワワッ! と飛び込んでくるんです。それが通常のK-1・キックボクシングのセオリーにはない距離なんで、すごく戸惑った思い出があります。まさにブアフフの試合映像を見ると遠目の距離からパンチを打っていたので、大岩君は相当気をつけないといけないですよ。特に大岩君はその場にいるタイプだし、パンチの破壊力はあるけど前に出ていくスピードはあまり速くない。ブアフフのスピードに追いつけるのかな、というのはありますね」
――続いてレオナ・ペタス選手と対戦するアヤブ・セギリはいかがでしょう。彼は佐藤さんとも対戦したアルトゥール・キシェンコの教え子でもあります。
「この試合は非常に激しい試合展開が予想されますね。セギリの試合映像を見たんですけど、ダブルノックダウンしてから相手をKOする試合があるんですよ。相当負けん気・精神力が強いと思います。ファイトスタイル的には圧力が強くて、フック系のラッシュが多い。近距離でバックスピンキックをヒットさせるのも上手いので回転系の技術も高そうです。『THE MATCH 2022』で不完全燃焼に終わっているレオナ選手の復帰戦としては、厳しい相手が来たなぁと思います」
――レオナ選手にとって厳しい一回戦になる、と。
「セギリはフック系が多いので、石の拳を持つレオナ選手の左右とストレートをどう当てていくかが勝負の分かれ目になる気がしますね」
――こうして話を聞いていると日本人選手にとっては厳しい結果が出る大会になる可能性もありそうです。
「でも6月の女子大会から続々と強豪外国人選手が来日することは良かったと思いますよ。今のK-1は日本人の中で切磋琢磨してトップを決めて、コロナ禍が落ち着いて強い外国人に挑む状況じゃないですか。この数年間で日本人選手は十分に力を蓄えたと思うので、これからどんどん強い外国人選手に挑戦していってほしいです。きっと日本人選手も『強い外国人は望むところだ!』と燃えていると思うし、僕も一ファンとして“よこはまつり”を楽しみにしてます!」