2022年9月11日(日)横浜アリーナ『K-1 WORLD GP 2022 JAPAN~よこはまつり~』に来襲する海外強豪選手たちを、K-1 WORLD MAXで日本を背負って戦った佐藤嘉洋が解説する。その第一弾は、玖村将史と対戦するコンペット・シットサラワットスア、アビラル・ヒマラヤン・チーターと対戦するジョムトーン・ストライカージム、第5代スーパー・フェザー級王座決定トーナメントに出場するナックロップ・フェアテックスのタイからの刺客3名。
――佐藤さん、9月11日(日)横浜アリーナで開催されるK-1よこはまつりに集結した外国人選手が凄い顔ぶれですね。
「本当にK-1は凄いヤツらを連れてきましたよ。これまでコロナ禍で外国人選手が呼べなくて、ようやく解禁になったと思ったら、こんなに強い選手ばかり揃うとは…。特に格闘技マニアは絶対に見逃したらダメな選手ばっかりですよ!」
――かなり佐藤さんも興奮しているようですね(笑)。では各選手を解説してもらいたいのですが、タイ編からお願いします。まずは玖村将史選手と対戦するコンペットからお願いします。コンペットはタイの超人気選手で、ムエタイ軽量級の6冠王という強豪です。
「まさにコンペットは“本物”のムエタイ選手ですね! ムエタイの二大殿堂の一つ=ルンピニースタジアムで、競争が激しい軽量級での2階級制覇という実績がありますし。僕も試合映像を見て、最初はオーラがなくて『あれ?』と思うんですけど、開始1分~1分半ぐらいから徐々に一流の片りんを見せ始めるタイプなんですよ」
――それは対戦相手としては怖い、ですね。
「ムエタイの選手って、キックや空手の選手とは間合いが違うんですよ。これは対戦したことのある人にしか分からないと思うんですけど、K-1・キック・空手とはまったく違う『ムエタイマジック』があるんです。コンペットのような一流選手と戦うとなれば、玖村選手は戦っていて『何をやったら当たるんだろう?』となると思います」
――玖村選手もK-1屈指のテクニシャンですが、それをさらに上回るテクニックを持っている、と。
「コンペットは間違いなく難敵ですよ。玖村選手は『THE MATCH 2022』の志朗戦で勝ちましたけど、コンペットのようなタイプのムエタイのトップ中のトップとはやってないと思うんですよ」
――佐藤さんが「トップ中のトップ」と思うポイントとはどこですか?
「コンペットの試合を見て貰うと分かるんですけど、軸がまったくブレないんですよ。コンペットの軸の強さはまさに世界一流の選手しか持ってないものです。だから、コンペットに勝てば玖村選手は世界トップレベルだと証明出来ますよ。この階級だとムエタイは絶対に越えていかないといけないので、K-1の選手たちにはガンガン行って貰いたいですし、格闘技マニアという人たちには、もっと『コンペットがK-1に来るぞ!』と騒いでほしいですね」
――そのくらいの超強豪がK-1にやってくるわけですね。
「ずばりコンペットは“本物中の本物”なんです。体が屈強で、テクニックはもちろん、パンチとローも強い。あのローを受け続けたら間違いなく効かされるでしょう。だから僕は玖村選手にはぜひカーフキックをガンガン蹴ってほしくて。個人的に『ムエタイの一流どころにカーフキックは当たるのか?』が知りたいので(笑)。そんなポイントが思いついちゃうくらい、本当にこの試合はめちゃくちゃ楽しみです」
――ムエタイの選手のK-1ルールへの適応力という点はいかがでしょう?
「今のK-1ルールは掴むこと自体が反則で、僕らがやってたK-1MAXのルールでは、掴んで1度は攻撃出来たのでまだムエタイ寄りなんですよ。その分、空手の選手には不利だったと思います。今のK-1ルールはどちらかといえば空手・グローブ空手の方に寄っているから、空手出身の選手は活躍しやすくて、ムエタイ出身の選手は活躍しにくくなっているので、そういうパワーバランスや傾向はあると思いますね」
――なるほど。
「ただ、コンペットはパンチ&ローが得意そうなので、そこまで影響はないと思います。昔のランバー(“ランバー”ソムデートM16、日本の軽量級トップを総なめにした名選手)のような戦い方をすればK-1ルールでも勝てると思います」
――次に日本でも有名な大物、ジョムトーン選手が参戦します。
「ジョムトーンは自分らの世代には説明不要の超大物ファイターですよね。もちろんテクニックは超一流で、パワーも、タイミングも、すべてがレベルの高い選手ですね。本当に偉大な選手だと思います。自分は彼の試合を何試合か生で見ているんですけど、中でも大和哲也との試合には衝撃を受けました。強い、上手い、集中力も途切れない」
――ムエタイのトップ中のトップで、ボクシングをやれば世界タイトルマッチまで行ってしまうわけですからね。
「ジョムトーンと練習した70kgの選手に聞いたのですが『ジョムトーンと首相撲をやったらピクリとも動かなかった』と。それぐらい飛びぬけた選手だったんですよ」
――気になるのはブランクですね。
「ジョムトーンなら関係ないと思いますよ。3年前の日菜太選手との試合を見たら、めちゃくちゃ強かったんで。自分は全盛期のジョムトーンを見てるので『ちょっと体が出来てないな』と思ったんですけど、技のタイミングも全部上手くて、テクニックってキャリアを重ねても落ちないんです」
――大ベテランのイメージがありますが、まだ33歳なんですよね。
「えー、意外ですね。じゃあまだ全然行けるじゃないですか」
――本人は「3階級制覇」を口にしていますし、ウェルター級やスーパー・ライト級まで絞れそうですよ。そうなるとぜひ野杁正明選手との試合も見てみたいですね。
「野杁とジョムトーンは見たいなぁ。それはめちゃくちゃいいカードですよ。今回のアビラル・ヒマラヤン・チーター選手との試合で、ジョムトーンがどんな試合を見せるのか。ファンに衝撃を与えるような試合になるのか。新鋭のアビラルが超一流のベテランに一矢報いるのか。ぜひ注目して貰いたいですね」
――スーパー・フェザー級トーナメントに参戦するナックロップ・フェアテックスについてはいかがでしょう?
「映像を見て、破壊力があるな、と感じました。あと、荒々しさがあって怖いタイプですね」
――上手いよりも怖いタイプですか。
「たとえば、今、ゴンナパーやゲーオがムエタイルールでムエタイのトップ戦線で勝利するのは難しいと思うんですよ。でも、K-1ではあれだけ大活躍してるじゃないですか。ナックロップはムエタイではコンペットほど実績は残していないですが、ムエタイ離れした荒々しさがあって、この選手ならK-1ルールにすんなり対応してしまうかもしれないな、と思いました」
――なるほど。中村拓己K-1プロデューサーも記者会見で言っていましたが、まさに「K-1ルールに向いている選手」ですね。
「はい。だから要注意だと思いますよ。朝久(裕貴)君はムエタイとの対戦経験があまりないと思うし。朝久泰央vsゴンナパーと同じく、朝久空手vsムエタイがどんな戦いになるのか、これも興味深いですね」