キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】激闘必至の渡部太基vs.良太郎、「俺の方が気持ち強いだろ」(渡部)「生き様を見てくれればいい」(良太郎)

2022/07/20 17:07

「渡部選手には自分と同じニオイを感じました。だから試合オファーを受けたんです」


 もともとREDルールのスーパーライト級を主戦場とする良太郎にとっては、BLACKルールでウェルター級というこの試合は異例中の異例。それでも彼が試合を即決した裏には、どんな思いがあったのか? そしてそれはリングでどう現れようとしているのか? 良太郎の本音を聞いた。

――最初に渡部戦のオファーを聞いた時は、どう思いましたか?

「普段やっている階級のことを考えたら、まずオファーが来る相手ではないので、驚いたのは確かですね。それにルールも、僕はずっとREDで渡部選手はBLACKじゃないですか。ヒジなしなんて俺、何年やってないだろう(笑)」

――最後にやったのはいつになりますか?

「どうだろう……10年は経ってますよね。デビュー戦はヒジなしだったんですけど、当時は別のジムで内弟子だったので「次の試合はヒジありだから」っていきなり言われて。あとは当時の先生がヒジあり、ヒジなしを勝手に決めてくるという感じでしたから。ほとんどヒジありでしたけどね」

――ヒジなしはあまり記憶にないぐらいだと。

「そうですよ。オファーが来た時は「そっちか!」と思いましたから。まあでも、渡部選手が『KNOCK OUT』に参戦するようになって、BLACKのウェルター級でやっていて、実績もあるから対戦相手を選ぶのも大変だろうとは思うんですよね。だから俺と当てれば盛り上がるだろうと思ってのオファーだろうなというのは分かってましたし、「アイツの性格だったら断らないだろう」と思ったんじゃないですか(笑)」

――ただ、対戦相手として魅力的ではあったわけですよね。

「そりゃあ、この業界で長ければ絶対に知ってる存在じゃないですか。上がってる団体は違いましたけど、もちろん存じてましたし、当時から試合は生でも何回も見てますからね。それこそ、その頃は「この人とはやることはないよな」と思ってましたけど(笑)。まさかやるとは思いませんでしたよ。面白いですね(笑)」

――そんな相手に対して、対策はどんな感じですか?

「僕の試合を見てもらってれば分かると思いますけど、どんなに対策練習したって、一発もらったら……そこは渡部選手も同じじゃないですか? カード発表会見でも言いましたけど、キレイに戦いたいんですよ、本当は(笑)」

――確かに、2人で声を揃えて言ってましたね(笑)。

「そうなんですよ。練習通りにね、キレイに戦いたいんです。デビューして十数年経ちましたけど、作戦通りにやったのなんて1回ぐらいじゃないですか(笑)」

――1回はあるんですね(笑)。

「タイトルマッチの時だけなんですよ。何かね、一発食らうと忘れちゃうんですよ。どんなに対策してても(笑)。まあ、体が覚えてるんで、それを信じます。普段の練習で体に染み込ませてるんで、それを信じるだけですね」


――特に良太郎選手の場合、お客さんの期待にも応えたくなっちゃってるというのも感じます。

「そうですねえ……。本当は、応援してくれてる人たちが見たいのは「勝ち」だし、プロは勝つことが一番なんですけど……高いチケット代を出して来てくれている身内や応援してくれる人たちからしたら、ショッパイ試合をして勝たれても、酒のつまみにもならないじゃないですか。まあ負けちゃったら元も子もないんですけど(笑)、せっかくなら大会後にメシ食いに行ったり飲みに行ったりする時の話題に少しでも残るようなことをしないと、お金をいただいてやらせてもらってる身なので」

――分かります。

「今の選手って、スポーツマンで試合もキレイなタイプが多いですよね。指導者もやってるので、それはそれでいいことだとは思いますけど、僕が焦がれてたのはもっと、黄色い声援なんかなくて空気も淀んでたような時代の、殺伐とした会場での試合なので(笑)。だから試合もそうなっちゃうんじゃないですかね(笑)」

――しかも、プロモーターの期待も多分に汲んでしまうところもありますよね(笑)。

「僕が第三者だったとしても、僕にオファーしますからね。「渡部選手の相手、どうしよう?」ってなったら「アイツでよくね?」って言いますよ(笑)。求められてんのはそこだよな、っていうのはよく分かるんで」

――逆に、良太郎選手が指導している選手が試合中に熱くなってしまったら、どういう評価を下すんですか?

「僕が教えている選手には、「間違っても俺の真似はするな」っていつも言ってます(笑)。俺の試合を参考にするなんて、夢にも思うなと」

――やっぱり(笑)。

「僕はスポーツの才能とかは別になくて、結局、練習で培ってきたものしか持ってないんですよ。人より多少は頑丈だとは思うし、これまでアゴに食らってKO負けとかもないという条件があるから、今のガツガツいくファイトスタイルが成り立つんですよ。でも指導してると、選手ごとの特性は分かるじゃないですか。アゴが強い弱いというのもあるし、気性の荒さとかもあるし。けど、旧『KNOCK OUT』や『REBELS』にteam AKATSUKIの子を出させてもらって、みんな熱い試合をするというのは分かってもらえてると思うんですよね。そこはやっぱり、僕らはスポーツマンというよりもファイターなので」

――はい。

「結果ももちろん大事なんですけど、お金をいただいている以上、人の記憶に残ってこそだと思うんで。それにウチの子たちはSNSで盛り上げるというタイプじゃなくて、どちらかというと愚直に練習して試合で出すという、今だと「面白みがない」と言われそうな子が多いんですよ。僕はそのスタイルでも全然いいと思いますし、有名になりたいんだったらSNSを活用してキャラクターで売るのも全然いいとは思うんですけど、結局リングに上がって戦う時に、お客さんが評価するのは戦いの中身だけじゃないですか。試合前はエンターテインメントでもいいですけど、リングの中では熱い戦いを見せてほしいなというのは、指導するというよりも練習の内容でそういう感じになってるんだと思いますね」

――そういう意味では、今回の試合も良太郎選手の指導を受けている選手たちに対しては、「参考にはしてほしくないけど、見習ってほしい」という試合になりそうですね。

「そうですね。看板背負って意地と意地がぶつかり合えば、必然的にいい試合になるので。渡部選手もそういうものを持っているからこそあれだけの実績を築けたと思うし、そこは僕も楽しみですけどね」

――例えば「ここで勝ってタイトル挑戦に近づきたい」というような試合とは、意気込みもかなり違いそうですね。

「違いますね。まあお互い修羅場もそれなりに潜ってきてるし(笑)、そのへんはもう分かってると思いますけどね」

――最終的にどんな試合をして、どんな勝ち方をしたいですか?

「えーっ、そんなこと言ったら、「テクニカルに戦ってキレイに勝つ」試合がしたいに決まってるじゃないですか!(笑)」

――いやいや、話が戻ってます(笑)。

「だから、あんまりそういう風に考えたことはないですけどね。こっちが「チョキ出しまーす!」って言って、相手も「じゃあこっちもチョキ出しまーす!」ってなって拮抗するかって言ったら、ジムの理念というものもありますしね。向こうのセコンドは那須川パパだから作戦立ててくるでしょうし。だから、今はそういうのはあんまり考えないですね。タイトルマッチとかだったらしっかり作戦も立てますけど、いつも通り死ぬ気で練習して、相手を倒しにいって、結果的にみんなが盛り上がれば万々歳、という感じです。僕を応援してくれる人はメッチャ怒りますけどね。「バカ!」「ガードは?」って怒号が起こりますから(笑)」

――それは渡部選手も同じな気がします。

「だからこの試合を受けたっていうのもありますよ。渡部選手に自分と同じニオイというか、色気を感じたというのもあるので。2人で精一杯戦って、どちらも満足、お客さんも満足、プロモーターも満足というのが一番いいじゃないですか」

――間違いないですね(笑)。では最後に改めて、今回の試合で一番注目してほしいポイントは?

「うーん、無難に「気持ち」なんて言うとクソ面白くもないかもしれないですけど……リングは生き様が出るんで、その生き様を見てくれればいいと思います。注目してなくても見させられる、みたいな感じになると思いますけどね(笑)」

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