キムラにはこだわっていない
大島といえば、手首を掴んでのキムラクラッチからの展開だ。
それは、同じ柔道ベースの同門の先輩・浜崎朱加が得意とする形で、その浜崎は、山本のタックルに、シングルレッグを差し出すような形で前足に組ませて、右手で山本の脇をすくいキムラクラッチを組んで回して、センタク挟みを極めている。
「あの試合も参考になっています。でも……キムラで取るつもりはないというか、いろんな技を練習してきているので、ほかにも一本取れる技もありますし、特にキムラにはこだわっていないです。キムラは警戒されていると思いますし」と、大島は山本がキムラロック対策を練ってくることを想定している。
「組みたいですし、打撃も試したいですね。(AACCに出稽古に来ている)RENA選手からアドバイスももらっていますし、ちょっと違うところで、AACC以外でも練習させてもらっています。最初はお昼に練習しているところを探していて、そのときに打撃だけ、グラップリングだけというところが見つかったので、いまは分けて、ここ(AACC)では総合、ほかはパートに分けてやっていて、打撃は……ムエタイジムに通っています」と、HIME戦の課題となった打撃を、組みも交えたムエタイのなかで磨いているという。
GPにはチャンスがあったら出たい。勝たないとそのチャンスはもらえない
3歳の双子の娘のママとして、練習と子育てに奮闘する。
5月のDEEP JEWELSアトム級タイトルマッチでは、1Rに新鋭・須田萌里を寄せ付けず、キムラロックで完勝したものの、試合後に号泣した。後楽園ホール近くの講道館で行われていた柔道の試合で、旭化成柔道部所属の夫の大島優磨が、2回戦負け。それは大島が後楽園ホール入りする前の出来事だった。
その想いを噛み締めながら臨んだ防衛戦で勝利し、「まだ先のことが……これから格闘技を続けられるかの問題があって」と苦しい胸のうちを吐露した。
大島が直面したのは、結婚時に夫をサポートするとの約束を果たせていないかもしれないということ、夫が現役を引退すると仕事の関係で転勤もあり、そうなると格闘技を続けられなくなるかもしれないという問題だった。
朝から食材買いに行って
— 大島沙緒里(安達) (@cb_saori) May 14, 2022
柔道教室連れてって
西松屋はしご
セール品はだいたい一個しかない
から何店舗か回らなきゃ二つ
揃えれないけど傘も長靴も
安く買えた🙆♀️✨
1枚目はありがとうございました
言えないなら置いて帰るって
怒った後の涙目ピース✌︎
ちなみにまだ家の中走り回ってる
元気すぎる… pic.twitter.com/9CUTQnk3u8
それでも「格闘技を続けたい気持ちはある」と語っていた大島。現在の状況は、「旦那の最後になるかもしれない試合が8月末(27-28日・全日本実業個人選手権大会)にあるので、それから自分もどうなるのかが、いろいろ決まっていくんですけど、まずは自分のこの試合で勝って、あとはサポートをしようかなと思っています。今回の試合も子供たちを連れていきます」と語り、「大変ですね」と問われると、「充実しています」と答えている。
前週には、『THE MATCH』を配信で観戦した。
「那須川天心選手と武尊選手の試合は、たくさんの人にすごい感動を与えた試合だったし、私もぽかーんとやっぱり考えた時間がありました。“私もこうなりたいな”と思いました。あの2人は“どれほどいろんな思いを抱えて、どんな思いでここに立ったんだろう”と、自分がその立場だったら、と考えてみて抱えきれないなと思ってしまいました」と、同じファイターとして刺激を受けたという。
それぞれに戦う理由があり、それはどう生きるかを示している。
今夏には、女子スーパーアトム級でGPの開催が予定されている。海外勢も招聘するなか、今回の山本美憂との試合は、国内でのサバイバルマッチとなる。
「チャンスがあったら出たいと思っていますし、今回、勝たないとそのチャンスはもらえないと思っているので、まずは今回、頑張りたいです」
7月2日沖縄の女子スーパーアトム級戦で、最後にリングに立っているのは、山本か大島か。