堀口vs.ミックスに感じた体格差、肉体改造も
現地では、堀口恭司がパトリック・ミックスに5R判定負けしたBellatorの試合もチェックし、「ほんとうにこの試合は、日本のファンのみんなと同じ気持ちで悔しかった。僕も堀口選手が勝つと思っていた。強いやつはたくさんいるなと」と悔しさをあらわにした。
その敗因を「ステップや入り方など、ちょっと動きがいつもより調子が悪いかなと感じた。最初のコンタクトでテイクダウン、バック取られたのが大きかったと思います。その後のミックスの寝技を警戒せざるを得なかったため、思いっきり打撃に行けなくて、いつもの堀口選手の打撃じゃなかった」と分析。
さらに「あとは体格差。2、3kg戻しの堀口選手に対して、ミックスは10kg近く戻している(※試合当日155ポンド=70キロ以上あったことを本誌の取材で明かしている。堀口は試合当日145ポンド=65kg)から大きかった」と階級違いの体格差も響いたとした。
それは、今後、海外勢と戦う朝倉にとっても課題だ。
「身体を大きすることは僕も前から思っているテーマで、今回スパーしたアルジャメインも同じバンタム級で大きかった。普段から70kg以上にして大きくしていないといけない。前田(日明)さんからも言われているけど、ナチュラルウェイトを増やしていこうかと。ただ無理して動けなくなっても仕方ないので動けるように」と朝倉もさらなる肉体改造を視野に入れる。
日本にも格闘技のPIを作りたい
「選手としての夢はもちろんUFCに出て、UFCのチャンピオンになること」と明言する朝倉。
今回、実はフロリダのアメリカントップチームでの出稽古も検討したが、「堀口選手のところにも、最初もともと行きたかったんだけど、所属してないと難しいんじゃないかな」と断念した。
「日本とは練習内容や環境の違いがある。施設は大きいし、小さなことでも採り入れた方がいいことをジムで共有したい」という朝倉は、今回のYouTubeライブを「ラスベガスに来て大きな夢が1つできたので聞いてください」と題した理由を語り始めた。
それは、日本に総合的な「格闘技強化施設」を作ること。今回、その夢を朝倉は、榊原CEOに相談し、「RIZINパフォーマンス・インスティテュート」設立に賛同を得たという。
ラスベガスで、ドヴァリシビリやケイプら「UFCファイターの練習パートナー」として、UFCパフォーマンス・インスティテュートを訪れた朝倉は、その施設の充実ぶりに感銘を受けたという。
「UFC本社の隣りにあって、金網も2個あって、栄養士つきの減量食も用意されて、整体やサウナ、ジャグジーも用意されている。これは強くなるなって感じた。成長スピードや選手のモチベーションも上がる。そういう施設で格闘技のレベルが変わる。この施設が日本にあったら、底上げにつながる。何とか日本に格闘技の複合施設を作りたい。それが夢になりました」
格闘技人口を増やすために
もちろん、その施設が、世界中からファイターを参戦させ、世界各国で大会も開催するUFCの規模ゆえに成立していることも理解している。
オリンピックで「お金がなければメダルは取れない」と言われるように、五輪競技では、01年に国立スポーツ科学センター(JISS)が、続いて08年に味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)がオープンし、選手強化に国が税金を投入し、トップアスリートはその施設を使用することが出来る。それは、メダル獲得が国威発揚や国益に繋がると判断されてのことだ。世界に挑もうとする日本のファイターたちがその施設を使うことは許されていない。
朝倉は、「いますぐに施設を作ることは不可能だと思うけど、もしかしたら自分が現役の間に実現は出来ないかもしれないけど、僕は引退してからもずっと格闘技に携わって盛り上げていきたいし、日本の格闘技の底上げに協力したい。これを実現させるために、一人じゃ絶対できないので、施設をつくるために協力してもらえる人にはお力添えしてもらえたら。こういった施設を作るためにどうしたらいいかを考えていきたい。めちゃめちゃ難しいけど意義のある事。すごくワクワクしています」と、自身のみならず、日本の格闘技力を上げるために、長期的に考えていきたいテーマだとした。
「日本でも絶対に作りたい、RIZIN PIを社長の力を借りて出来たらいいと榊原さんに話したら、『凄くいいことだと思う』と言ってもらえました」と賛同を得たという朝倉は、そのための一歩が、格闘技を「やる人」「興味を持つ人」を増やすことだという。
「競技人口が多くならないとそういう施設も作れない。まずは格闘技人口を増やしたい。アメリカでMMA、格闘技に対する認知度が違うことを感じる。普通に飲食店やショッピングモールのスクリーンにも、UFCやBellatorの映像が流れている。シンジケートジムでも、60人くらいが柔術クラスに出ている。日本でもそういう状況が作れるように動きたいと思いました。もっと日本でも格闘技をメジャーにして、格闘家への認知度が高まり、格闘技への熱量が高まることは、MMAへのリスペクトに繋がる。アメリカはレベルの高い選手が多いから、関心も高まるし、やりたいと思う子供も増える。世界で戦うことでそうなる。もっと日本でも格闘技が認知されるように頑張らなきゃいけない。それは、ひいては自分のためにもなる。強くなることと、日本の格闘技を盛り上げること。このYouTubeの活動もここに繋がる。日本の格闘技のファンを増やしたい」と、競技としての格闘技の広がりに尽力したいとした。
すべてにおいて強くなっている
「世界との差」を問われ、「環境の差」と答えた朝倉。「強くなるためのシステムが作り上げられている。お金のかけかたがそこにある。強くなるための場所が整っていて、競技人口が多くて練習内容が濃い。そして、みんなめちゃめちゃ楽しんでいる。やるのもやられるのも、みんなワクワクしていて、格闘技ってこんな面白かったかなって」と、生活のなかにある格闘技の豊かさ、そして格闘技の面白さを再発見した。
そしてトップファイターとして求められる強さ、については「合宿前の自分と試合をしたら?」と問われ、「すべてにおいて強くなっている」と自信を得ていることを語った。
あらためて、海外武者修行を実行したことを「自分から行動をすることが大事だなと思います。アメリカに来てなかったらいろいろなことが実現しなかった」と、視野が広がったという。
「この1週間でほんとうにいろいろなことがあって、貴重な体験が出来ました。兄貴(朝倉未来)もハワイからベガスに来ると言っていて、もしかしたら入れ違いになるかもしれないし、僕も延長するかもしれない。残り2週間の予定を頑張って、いろいろ吸収して強くなって、日本に帰ったら試合をします。楽しみにしていてください!」と、目の周辺を少し腫らしながらも力強く語った朝倉海。どんな進化を遂げるか、注目だ。