2022年4月30日(日本時間5月1日)に米国ラスベガスのUFC APEXにて開催(※カンデラリオの体調不良により、日本時間5月15日に延期)される「UFC Fight Night: Font vs. Vera」のプレリミナリー第1試合(UFC Fight Pass、UFC公式YouTubeにて朝5時生配信予定)で、プロMMA10勝無敗の22歳、平良達郎(Theパラエストラ沖縄)がUFCデビュー戦を迎える。
オクタゴン初戦の相手は、MMA8勝1敗のカーロス・キャンデラリオ(米国)。平良と同じくアマチュア5戦無敗後、2015年の米国「Reality Fighting」でプロデビューし、2021年8月の前戦「Contender Series 2021」では、LFAフライ級王者のヴィクター・アルタミラノに判定で敗れたが、ダナ・ホワイトUFC代表が契約を交わした30歳だ。
2KO・TKO、3つの一本勝ちを記録するサウスポーで、思い切りのいい左の打撃、強いハートが持ち味のキャンデラリオを相手に、初の海外での試合に臨む平良は、いかに戦うか。
“開国”が進み、日本勢の敗戦が続くなか、世界の頂きを目指す、“スーパーノヴァ”平良に、直前の意気込みを聞いた。
相手が最初から来てもどうするかは何回もやってきた
──4月30日(日本時間5月1日早朝)のUFCデビュー戦まであと4日と迫りました。現在の減量状況はいかがですか。
「いままでの計量で一番軽いくらい。4月26日の時点でもうあと、4.7kgくらいです」
──順調そうですね。今回は、早めにラスベガス入りしたと聞きました。
「はい。1月にラスベガスで練習してみて、高地で空気の乾燥や時差ボケが1週間で直らなかったので今回は2週間前に入りました。いいコンディションを作れています。松根(良太・パラエストラ沖縄代表)さんとも合流して、これから話をしていきます」
──前回の渡米時と同じように岡田遼選手とともにラスベガス入りしたのですよね。どのように調整してきましたか。
「サウスポー対策と、レスリングの対策、という感じですね。あとは自分の寝技だったり、強い武器を当てる練習をメインにやってきました。オフェンスとディフェンスも」
──追い込みも終えての現地での確認作業が中心だったと。
「でも結構、MMAで回したり、キックで回したり、スパーも少し多めにやりました」
【写真】米国ラスベガスの「UFCパフォーマンス・インスティチュート」で調整する平良達郎とセコンドの岡田遼(写真提供)。
──日本でもサウスポー対策として、サウスポーとスパーリングされてきたのですか。
「日本ではサウスポーの相手をメインに打撃の練習をしてきましたね。BJさん(ワイルドシーサー沖縄)や出稽古に来ているサウスポーのMMAファイターの選手とも練習をして。それと那須川天心選手や志朗選手とも練習させてもらいました」
──沖縄で那須川選手に腹パンをする動画を拝見しました(笑)。東京ではサウスポーの鶴屋怜選手とも練習をされたようですね。そして、いよいよUFCデビュー戦です。率直な気持ちとして、平常心なのか、胸が高鳴るのか、いまはいかがですか。
「落ち着いていたり、“早く試合をしてー”となったり、“ついに試合かー”となったり、いろいろな気持ちですね(笑)」
──しかし、いきなり渡米して試合に臨むより、一度、ラスベガスで練習を経験していたことは精神的にもよかったのではないですか。
「そうですね。やはり一度、この環境を経験しているので、慣れているのは大きいです」
──対戦相手のキャンデラリオは2KO・TKO、3つの一本勝ちを記録するサウスポー。思い切りのいい左の打撃が武器で、組み技・寝技での対処も強い。一方で後半で下になる場面も見せていました。平良選手はどんな印象を持っていますか。
「僕が見た試合でも最初、攻めていても後半少し疲れているような感じで、コンテンダーシリーズというのもあったかどうか分からないですけど、最初来るんだろうな、とは想像していて、そこをどういなしたり、押し返すのかというのは、もう何回も自分の頭のなかで想定しています」
──フルサイズから少し小さいUFC APEXのオクタゴン自体はご覧になりましたか。
「いえ、まだ入っていなくて、明日とか入れるのかな。試合前に確認できると思います」
──無観客なのは気にならないですか。
「はい。全く気にならないです。でもできれば大きな会場の、大観衆の前で試合をしたいです(笑顔)」
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パッチー・ミックスとの練習は2、3階級上に感じた
──前回の渡米時にUFCファイターや、プロ初戦ながらカレッジレスリングの猛者たちと練習したことはどんな経験になりましたか。
「アミル・アルバジ、JPペイズも、コービー・フェアも、1回肌を合わせたことによって、自分が劣勢な場面になってもたぶん驚かないというか、今回の試合でも実際にそういう展開になることも想像はしているので、そこを想定できたことはプラスになったかなと思います。5分3Rを全部自分の時間にすることは難しいと思うので、そこのイメージはいい感じで持つこができました」
──練習後にその都度、課題も確認してきたのでしょうか。
「岡田さんに自分のどこが悪かったのかも聞きますし、メモしたりもしてきました。課題は潰せてきていますが、もうちょっと磨かないといけないなという武器もあるので……“早く練習したーい”というところもあります(笑)」
──試合があるのに、早く練習に取り組みたいということもあるのですね。試合前と後では練習内容も変わるでしょうし。しかし、伸び代だらけとも言えます。
「やることが多いです(苦笑)」
──エクストリーム・クートゥアーでは、パッチー・ミックスとも手合わせをしたのですか。
「はい。1月の出稽古中に手合わせしましたね」
──そのミックスに堀口恭司選手が5R判定負けをした試合をどう見ましたか。
「うーん……自分も試合が始まる前までは、堀口さんが勝つのかなと思っていたんですけど、実際に試合が始まったら体格差で、ああいった状態で展開を作るのは難しいだろうなあとは思いながら見ていました。でもやっぱり練習していても、自分と1階級しか違わないんですけど……2、3階級くらい違う大きさに感じました。ほんとうにバンタムのなかでも1番にデカい選手だと思うので……まあ、強かったなあという感じですね」
──あの圧力をどう押し返すのか、UFCではフライ級で戦っていた堀口選手にとって厳しい状況だったと思います。
「打撃が上手という感じじゃないんですけど、練習していてもこうしてのしのしと手を上げて歩いてくるだけでもこっちが下がらされるので、“これ、同じ階級ではちょっと厳しいな”と思いながらやってました」
──なるほど。平良選手自身もフライ級でのフレームの大きさを感じます。圧力負けしない部分もあるのではないですか。
「そうですね。フライ級の同階級の選手も、こっちの選手はみんな肉付きがいいんですけど、フィジカルでは負けてないって思っていますけど……でもレスラーはやっぱフィジカルがすごい強いですね。まだまだ力で対抗していてはダメだなって思っています」
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扇久保さんがTUFで戦ったパントージャやエリオット──それにモカエフに勝ちたい!
──今回の対戦相手のキャンデラリオは、組み技や寝技という部分では、ホナウド・キャンディードの仕掛けに対処する場面も見せています。
「黒帯のホナウド・キャンディードとの試合を見たんですけど、寝技にもいろいろ逃げて打撃でという感じだったので、たぶん、おそらく打撃でくると思っています。その打撃でも立ち会って、寝技も混ぜたり、試合をしながら突くべきところを見つけて行こうかと思います」
──この1発目の試合でオクタゴンの感触を掴んで、今後、UFCフライ級戦線で戦っていきたい選手はいますか。
「フライ級で戦ってみたい選手は……扇久保選手がTUF(「The Ultimate Fighter 24」)で戦っていたとき、自分は初心者で、松根さんと扇久保さんが戦っていたのを見ていた記憶があって、そこで戦っていたアレッシャンドリ・パントージャ(4位)やティム・エリオット(11位)とは、戦ってみたいなと思いますね。ランカーたちと。あと……ムハマド・モカエフっていう」
──! ダゲスタン出身の英国ファイターでアマとプロを合わせてほぼ30試合無敗(※プロ6勝無敗、7月にチャールズ・ジョンソンと対戦)。レスリングの英国代表で柔術の大会でも優勝しているという“英国の平良達郎”ですね。
「フフフ、あの人のUFCデビュー戦を見て“うわっ、こいつ強えな!”って思って、あいつを倒せるくらいにはなりたいですね」
──強い選手と戦って、頂点を目指す。岡田選手からはどんな声をかけられていますか。
「『大丈夫だよ』って言ってくれました。今回、セコンドに松根さんもついてくれますし、岡田さん、それに僕のお兄ちゃんがつきます」
──お兄さんも立ち技からMMAを始めたのですか。
「最初はキックボクシングだけやっていたんですが、『MMAのプロになりたい、アマ修のトーナメントに出る』と言っていました」
──そうなんですね。異国の地でも心強い陣営ですね。ところでいま、世界で入国の規制が緩和され、国際戦も増えてきました。そんななかで、日本人選手が敗れる試合が続いています。対戦相手のレベルも環境も異なるのでひとくくりにはできませんが、その状況下で、UFCで戦う平良選手は、ラスベガスで日本選手の強さを見せたいという気持ちもありますか。
「そうですね。僕が言っていいのか分かりませんが、ほんとうに僕が日本人選手の強さを──こうしてUFCで試合が出来るのは幸せなことなんで──僕が強さを見せたいな、とは思っています。
と同時に、試合を楽しみたいという気持ちが一番ですね。作戦とかにがんじがらめにならない方が、思いっきりいけるという部分もあるので、自分が“これだ”っていう攻撃を出して、“極めれる”と思ったら極めに行って、逃げられてもまた立て直してっていう攻めの展開を作りたいと思っています」
──行けるときに行く、そして15分戦い抜く準備も出来ている。
「はい。ドロドロになったときも、アクシデントや想定外のことが起きても、5分3R攻め続けられるようにやってきました」
──では、最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
「僕も初めての海外の試合で、計量、試合当日と、いままでで一番っていうくらい、緊張するかもしれないですが、初めての地で全力で戦って来ますので、早起きして僕の試合を見てくれたら嬉しいです。よろしくお願いします!」(※UFC Fight Pass、公式YouTubeにて生中継)
──朝5時半(※5時に変更)の第一試合。そちらの時間でもいつもの夜興行とは異なりますね。
「お昼の1時半です。夕方くらいの興行が多いので……でも全然、問題ないです。いつも昼くらいから練習をしているので、時間も想定してできています!」
──UFCでの試合に期待しています。ありがとうございました!
「ありがとうございます。頑張ります!」