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【UFC】異例の敗者にもウインボーナス! 歴史に残る死闘を制したチマエフにバーンズが5Rの再戦を希望、チマエフも「魂を奪ってみせる」

2022/04/13 15:04
 2022年4月9日(日本時間10日)、米国フロリダ州ジャクソンビルのVyStarベテランズ・メモリアル・アリーナで『UFC 273』が開催され、観衆は1万4605人、ゲート収入のみで355万53ドル7セント(約4億4500万円)と発表された。  メインイベントでは、フェザー級王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキー(豪州)が、“コリアン・ゾンビ”ことジョン・チャンソン(韓国)を4R TKO。コ・メインでは、バンタム級正規王者アルジャメイン・スターリング(ジャマイカ)が、暫定王者ピョートル・ヤン(ロシア)に5R判定3-0で勝利。王座統一を果たした。  しかし、この大会で「ファイト・オブ・ザ・ナイト」を受賞したのは、Wメインと言われた2つの王座戦ではなく、“裏メイン”と呼ばれたカムザット・チマエフ(スウェーデン)とギルバート・バーンズ(ブラジル)のウェルター級戦だった(※チマエフは3万ドルビットコインのファン・ボーナス・オブ・ザ・ナイトも獲得)。  そして、このチマエフとバーンズの試合には、勝者のみならず、敗者にも「ウィンボーナス」が贈られる異例の名勝負となった。  ウェルター級2位のバーンズに、11位のチマエフが挑むランキング差のある試合。しかし、ロシアのチェチェン共和国出身のチマエフは10勝無敗でUFC4連勝中のプロスペクト(27歳)だった。  男子フリースタイルレスリングのスウェーデン選手権を3度(92kg級と86kg級で2度)制しているチマエフは、柔道やコンバット・サンボ、柔術にも取り組み、MMAで無敗のまま、オクタゴン4連勝でいきなり王座挑戦経験もある上位ランカーのバーンズと対戦した。  初回にダウンを奪ったチマエフだが、2Rにバーンズがダウンを奪い返し、最終ラウンドにもバーンズの右でチマエフがグラついた死闘。倒し・倒され、攻め、攻められのブザー後、チマエフは笑顔でバーンズに額を押し付けて互いに健闘を称え合った。  ジャッジは3者とも29-28でチマエフを支持、デビュー以来の連勝を11に伸ばしている。  左目下をカットしたチマエフは、ブーイングもあるなか「バーンズがここまでタフとは思わなかった。ブラジリアンの強さを見た。ブラジリアンの練習仲間にも助けられた。彼の強さをほんとうには分かっていなかった。ほんとうにギルバートは強かった。(ランキング2位に勝ったけど?)満足している。10試合して10フィニッシュしてきたでど、11試合目はフィニッシュはできなかったし、流血して疲れた。でも、この痛みも大好きだ。ジャクソンビルのみんな、ブラジルにも母国にも感謝している」とコメント。  大歓声に迎えられた敗者バーンズは「まず神に感謝したい。ここで何をしようと関係ない。どんなオッズだろうと、どんなランキングだろうが、真の戦いをした。彼はランク外で僕はランク2位だけど誰とだって戦う。ゴールはチャンピオンになることだから。一番タフな相手と戦っていたいんだ。ブラジルの家族たち、サンフォードMMAのコーチたちありがとう。オクタゴンに入るたびに殺される覚悟で来ているんだ。まだまだやるぜ」と語り、大きな拍手を受けている。 [nextpage] ダナ代表「彼が本物じゃないと思うのだとしたらどうかしてる」  UFC273の試合後の記者会見で、ダナ・ホワイト代表は、「今までに見た中でも最もクレイジーな試合だった」と興奮気味に語り、「『ファイト・オブ・ザ・ナイト』が誰か? それは名前を言うまでもないほど明白で、俺がその賞を誰に上げたか分からなければ、そいつはこの場にいる資格がないね」と言い放った。  続けて、ダナ代表は、死闘の敗者“ドゥリーニョ”にもウィンボーナスを与える、異例の措置を表明した。 「バーンズにもウィンボーナスをあげたいと思っているんだ。今までで一番クールな試合の一つだよ。こんな馬鹿げた試合をやり遂げて、彼は自分のショーに勝利したのだから」  また、ダナ代表は、勝者チマエフに対しても惜しみない称賛を贈っている。 「考えてみてくれ。MMAでは誰も彼のことを知らない、どこからともなく現れた何者でもなかった男が、世界2位の男と戦って勝つのを見たのはいつ以来だろうか? トップ5はとんでもないヤツしかいないなかで、チマエフにとってはテストだったけど、通過した。彼はまだこれほどの経験はしたことなかっただろうし、まるで故郷で試合をしているようなバーンズのような男を相手にのしあがった。正直このカードはバーンズにとっては見下されたような試合だったが、チマエフは結果を残した」  そして、記者から、バーンズ相手にダウンも喫したチマエフについて、「幻想ほどではなかった部分も見せたのでは?」と問われ、「狼も人の子だ。ただ、彼はほんの数戦しか経験していないのに、UFCの世界ランキング2位を倒したんだから、彼が本物じゃないと思うのだとしたらどうかしてる」とまくしたてた。 「(セコンドの)ダレン・ティルが言っていたけど、彼は疲れを見せたこともないし、エネルギーも切らせたことがない。それに今夜起きたようなことを、トレーニングしてきたからと言ってできるようなことじゃない。このファイトウィークでものすごい不安のなかで、昨夜眠れたかも分からない。それなのに、彼は1Rから力を爆発させた。みんなチマエフとはやりたがらなかった。今夜こういうことが起きて見る目が変わっただろう。トップ5を破ったのだから」 「トップ5は、人類の最強を決めるような人達だ。それをなぎ倒してきたのがバーンズだし、『死ぬ気で臨んでいる』と彼からも聞いてきた。そのバーンズを撃破するということを、チマエフはやり遂げたんだ。しかも、彼はUFCでは2年で4試合しかしていない。そのうちの多くは無観客だったというのに……」 [nextpage] コヴィントン戦が浮上したチマエフにバーンズは5Rで再戦を希望  試合前にダナ代表は、「もしチマエフがバーンズに勝てば、ABCのメインイベントで、コルビー・コヴィントン(元UFC世界ウェルター級暫定王者、現同級1位)との試合を組みたい」と語っていた。  2位を撃破したチマエフは、「もちろん、コヴィントンが警察を呼ばなければ、誰とでも戦うよ。その前にスウェーデンに帰って、少し身体を回復させる。それから、もっとハードなトレーニングをするし、チームもそれについて話し合うことができる。バーンズを完封できなかったから、今はもっとやる気がある。みんなをゴールさせたいんだ」と、コヴィントンとの戦いに意欲を示した。  一方のバーンズは、「僕たちはまだ終わっていないと信じているよ。確かにチマエフははランキングで上昇し、彼らはコルビーと戦わせたいと思っているだろう。ただ、僕は誰と戦うことも恐れなかった。カムザットにはひとつだけ返して欲しい。僕は2位で、11位と戦った。そしていまカムザットとの再戦を望んでいる。  カムザットがコルビーを倒した場合、彼はカマル・ウスマンと戦うことになるだろう。僕はその次の試合でも構わない。彼との再戦を望む。一人の男がフィニッシュを得る必要がある。それは5ラウンドであるべき戦いだ」と再戦を希望している。  実は今回の試合前にバーンズは、5R戦を求めていた。しかし、世界王座戦が2試合ある『UFC 273』でその要望は受けいられなかった。 「今回の戦いはクレイジーで面白いものだったけど、当初希望した5ラウンドだったらもっと面白い試合になっていた」、そう主張するバーンズに、チマエフはSNSで、「5ラウンドで、僕はあなたの魂を奪ってみせる」と呼応している。
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