2022年3月26日(土)、シンガポール・インドアスタジアムで開催される、ONE Championship10周年記念大会『ONE X』で秋元皓貴、若松佑弥が揃ってタイトルマッチに挑む。秋元は現在4連勝、若松は5連勝と、タイトルに挑戦するに申し分ない。シンガポール在住の秋元と、国内外で刀を磨いてきた若松のオンライン対談が、決戦を前に実現した。発売中の本誌『ゴング格闘技』5月号(NO.319)からタイトルマッチの部分を公開(text by Yasumura Nobu)。
モラエスをスタンドで削って最後にKOしてチャンピオンになる(若松)、カピタンの攻撃で下がったらいけない。カウンターを取っていければ問題ない(秋元)
──お二人とも、今回のタイトルマッチが決定した時はどういう心境でしたか。
若松 僕はこのまま勝てばタイトルマッチだと思っていながらやっていて、タイトルマッチといってもワンマッチをやる気持ちでいるので不思議と特別な気持ちはありません。僕はいつも試合には全てを懸けていて、これ以上の気持ちが入るとパンクしてしまうと思うのでいつも通りやろうという気持ちで臨みます。
秋元 日本人初のスーパーシリーズ(立ち技)のタイトル挑戦ということで、インタビューで聞かれた時に意識するぐらいであって、僕もそんなに意識はしていません。大会が近づくにつれてそういうことも意識し始めるのかなとも思ったのですが、それも今のところありませんね。僕も若松君と同じで、いつも通りしっかり仕上げて臨むだけです。この試合はずっと組まれるだろうなと思っていて、もう1年以上前からしっかりと準備をしてきたので、あとはそれを出すだけだと思っています。
──秋元選手はカピタン・ペッティンディーアカデミー、若松選手はアドリアーノ・モラエスに挑戦しますが、チャンピオンに対してはどのような印象がありますか。
秋元 カピタンはプレッシャーが強い選手で、早いラウンドでのKO決着が多く、調子に乗らせないようにしなければいけない相手だと思います。1Rから強いパンチとローキックでガンガン仕掛けてくると思うので、相手の攻撃で下がったらいけないなと。そのプレッシャーに負けないように、しっかりカウンターを取っていければ全然問題ない相手だと思います。
下がらないという部分では、ずっとやってきた空手が活きてくるかもしれないですね。戦略としては、大きく分けたら3つパターンを用意していて、自分が逆に何でプレッシャーをかけるかを考えたら20~30パターンもありますし、その調子に乗らせないように、どうしなきゃいけないではなく、どれを使うかが重要になってきます。あと残りの期間でもしっかり組み立てていきます。
若松 モラエスは、打・倒・極とトータル的に全部できて、特にグラップリング能力にすごく長けていて、これまでに何回もチャンピオンを防衛しています。モラエス自身は「自分はレガシーを、積み上げてきたものを守る」と言われていましたが、メンタル的にどうやればチャンピオンになれるかを分かっているので、そこが一番のアイツの強みだと思います。今まで彼が生きてきた環境を見ても、僕よりも治安の悪いところで育っていることでハングリー精神もあるでしょうし、申し分のないチャンピオンだと思います。僕も戦略は何パターンかを用意していて、一番の理想は、打撃でプレッシャーをかけてモラエスのタックルも全て切って、スタンドで削って最後にKOしてチャンピオンになることです。
──モラエスは、若松選手を破っているDJにKO勝ちしていることは脅威ではないですか?
若松 誰でもパンチ、蹴りが当たれば倒れます。僕は攻撃をもらわないスタイルですし、僕の打撃の方が一発の威力はあるので逆にモラエスは僕のことを脅威に感じているのではないでしょうか。フルに戦って25分間ある中で僕の打撃を一切もらわない自信があったとしても、それは相当打撃がうまくないと難しいものなので、モラエスは無理だと思います。
──前戦となった昨年12月のフー・ヨン戦のようなグラウンド勝負は考えていないと?
若松 全然やってもいいですし、そういう練習もしてきています。逆に寝技に引き込まれたらコントロールされることが唯一の自分の負けパターンだと思いますが、自分がイケると思ったらグラウンド勝負もあります。あとは配分をミスしないで5R戦い続けられたら、と思います。
──試合に向けては、ボクシングジムにも行かれているんですよね。
若松 2月ぐらいからリブートボクシングジムで基本的なことの繰り返しをやっていて、パンチの精度は間違いなく上がってきているのを感じています。
──若松選手は扇久保博正選手と練習した様子がSNSに上がっていましたが、どういう経緯でどのような練習をされたんですか?
若松 扇久保さんもそのジムに行かれていて先日、一緒に練習しようということになりました。扇久保さんは海外での試合経験があり、RIZINバンタム級GPで優勝するなど間違いなくトップクラスの選手なので、交流して強さを感じましたし、僕が渡りあえた部分もあったので自信にもなりました。
ベルトを獲ってくる
──秋元選手はタイトルマッチに向けて意識して練習していることはありますか?
秋元 僕は普段、MMAのチームで練習していて、MMAファイターとスパーをしていますが、今回はチームメンバーのノンオー(・ガイヤーンハーダオ)も同じ大会でフィリップ・ロボとの試合が決まっているのでノンオーとスパーをやることが多いです。
それに、ロックダウン解除後からMMAのチームに加わるようになり、MMAヘッドコーチのシアー・バハドゥルザダ(元修斗世界ミドル級王者)が凄く僕に目をかけてくれるようになり、ずっと付いていただいています。コーチはちゃんと僕を導いてくれ、僕の意見も組んでくれます。あとはチームとしてしっかりとしたものができたと感じているので、ここ3戦はそれが大きく影響して連勝につながっています。
若松 僕も同じくトレーナーが変わったことも連勝の要因の1つです。秋元さんと同じく、今の堀江登志幸トレーナーという導いてくれる方がいます。あとは、家族ができたことで頑張れていますし、今まではジムで指導することもあったのですが、年齢的なピークに達するまでに格闘技に100%注ぎたいと思って格闘技一本で生活できていることが大きいと思います。強くなるためのものが今、全て整っているんです。
──最後にベルト獲得を期待しているファンにメッセージを。
秋元 今回しっかり準備してきていますし、僕は完全に仕上がっていて、あとは試合をするだけです。皆さんの期待にしっかり応えてタイトルを獲ってくるので楽しみにしていて下さい!
若松 日本人選手がたくさん出場する中で、自分がタイトルマッチ最後の出番になります。しっかりKOして世界で一番強い日本人フライ級の選手は俺だということを証明します!