2022年3月11日(金)シンガポール・インドアスタジアムにて、ONE Championship「ONE: Lights Out」が開催された。大会の模様は午後8時からABEMA格闘チャンネル、ONE Super Appにて配信された。
▼ONE世界フェザー級(※70.3kg)選手権試合 5分5R〇タン・リー(米国)王者 69.35kg, 1.0053[1R 0分56秒 KO] ※パウンド×ゲイリー・トノン(米国)挑戦者 70.30kg, 1.0095※タン・リーが王座防衛
ONEフェザー級王者のタン・リーはMMA12勝2敗。2020年10月にマーティン・ニューイェンを3R、左右フックの連打でTKOに降し、王座奪取、ベルトを巻いた。
父からテコンドーを、ライアン・ホールから柔術を習ったというベトナム系米国人ファイターのリーは、“ノックアウト・アーティスト”として知られ、2019年5月のONEデビュー以来、ユサップ・サーデュラエフ、元ONEライト級世界王者の朴光哲、高橋遼伍、そしてニューイェンをいずれもマットに沈め、ONE4戦負け無しだ。
対する2位のトノンは、MMA6勝無敗。最先端グラップリングを志向するヘンゾ・グレイシー&ジョン・ダナハーを師に持つグラップラーで、グラップリングの試合では、クロン・グレイシーを追いつめ、マーチン・ヘルド、青木真也や北岡悟にも一本勝ちの戦績を持つ。
2018年3月のMMAデビュー後、しばらくは組み技はテイクダウンからポジションを奪い打撃を当てるために使い、最後は絞め技でフィニッシュしていたが、2019年5月に中原由貴に1R、後転からの外ヒールフックを極めて、足関節を本格解禁。
コロナ禍でもグラップリング大会で活躍、2020年12月のONEでは松嶋こよみに組みの圧力で判定勝ちしている。
50/50柔術でライアン・ホールともトレーニングを積むタン・リーはレッグロックの対処に不安はなく、半身気味の遠間に立ってテイクダウンをディフェンスし、打撃で優位に立つか。
それともジョン・ダナハーとマンツーマンで練り上げてきたトノンが新たな組みへのセットアップを見せるか。同時にタン・リーの組み技と寝技の力、ゲイリーのスタンド力も試される一戦だ。
1R、オーソドックス構えから入るリーに、サウスポー構えのトノンは左の蹴りから。さらに右の蹴りを脇で掴んだリーは、右ストレート。それをさばきながら引き込んだトノン。右足を掴みながら、後転。左足を外がけに。そこに右足を外して前に出て右のパウンドを入れるリー!
しかし右足首はつかんだままのトノンは再び外がけ。サドルロックで組んで外ヒールフック! ヒザを曲げて、その組み手を右手で掴み、左手でサドルロックの右足を外したリーは、トノンの左手と右足首を掴んだまま、座らず左足を立てて立ち上がり正対する。
外掛けしていた左足を解いて、右足を股間に差し込んだトノン。その瞬間に前に進み、右のパウンドを打ち込むリー! ここも右足首は離さず後転するトノンは、みたび外から足をかけてセットアップに行こうとするが、その際で足首を抜いたリーは、左足を右に払ってレッグドラッグの形で足を潰して右のパウンドを強打! トノンの意識が飛び、レフェリーがストップを宣告した。
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▼ONE世界バンタム級(※65.8kg)選手権試合 5分5R×ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)王者 65.60kg, 1.0144[2R KO] ※左フック〇ジョン・リネカー(ブラジル)挑戦者 65.0kg, 1.0087※リネカーが新王者に
ビビアーノvs.リネカーは当初、2021年12月に開催予定だった「ONE X」で組まれていたが、大会延期に伴い、2022年2月11日の「ONE: BAD BLOOD」のメインイベントにいったん決定。しかし、現地入りしたリネカーに新型コロナウイルス陽性反応が出て、延期に。今回の3月11日の大会で行われることが発表された。
王者・ビビアーノは、2019年10月のケビン・ベリンゴンとの4戦目をリアネイキドチョークで一本勝ちして以降、試合から遠ざかっており、2年4カ月ぶりのファイトで、“最強挑戦者”リネカーを迎え撃つ。
“石の拳”の異名を持つ元UFCファイターのジョン・リネカー(ブラジル)は、2008年にMMAデビューからMMA34勝9敗のベテラン。2012年にUFCに初参戦し、UFC12勝4敗と大きく勝ち越し、2019年10月にONEに参戦。
ムイン・ガフロフを判定で下すと、2020年11月に、元ONE世界バンタム級王者のケビン・ベリンゴンを2R、左右の強打でTKO。2021年4月の前戦では、ロイ・ウォーゼンも1R、右ストレートでKOに降し、3連勝で王座挑戦を決めていた。ONEバンタム級1位。
1R、ともにオーソドックス構え。先に圧力をかけるリネカー。ビビアーノは右ローを見せて、シングルレッグからケージの端から端までドライブしてテイクダウン!
両足を束ねようとするビビアーノに、首を抱え上半身を金網で立てる。リネカーの立ち際に右をまとめるビビアーノだが、離れるリネカー。
リネカーはビビアーノに左を当てると、足が一瞬泳いだビビアーノに詰めるリネカーは頭下げて上下にパンチ。しかし金網背に左のカウンターを当てたビビアーノにリネカーがダウン!
詰めたビビアーノに片足を手繰り上を取るリネカーはインサイドガードにステイ。ダメージを回復させると、下から右手首を持つビビアーノもヒジ打ち。リネカーもパウンドする。
2R、ビビアーノの左前足に右カーフキックを当てるリネカー! さらに右カーフキック! ビビアーノの詰めにボディを打つリネカー。しかし、ビビアーノもカウンターの右を返すと、シングルレッグテイクダウン!
ケージ中央で背中を着かせたビビアーノ。金網使い立つリネカーは右アッパーも空を切る。互いに左右の打ち合い! ともにクリーンヒットは避ける。
シングルレッグに入ったビビアーノ。切るリネカーは、詰めると右ボディから左フック! 足が揃ったビビアーノが後方に倒れ、リネカーが鉄槌1発、レフェリーが間に入った。
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▼第8試合 フェザー級(※70.3kg)5分3R〇マーチン・ニューイェン(豪州)70.25kg, 1.0152[3R 2分18秒 TKO]×キリル・ゴロベッツ(ウクライナ)70.10kg, 1.0018
ニューイェンは、フェザー級とライト級で史上初の2階級制覇を成し遂げた元ONE世界王者で現在はフェザー級3位コンテンダー。MMAのキャリアを通じて最高峰の経験を積んできたが、タン・リーにベルトを奪われ、2021年9月には1位の韓国のキム・ジェウンに敗れた。連敗を止め、王座戦線復帰なるか。
対するウクライナのキリル・ゴロベッツは、9連勝中。MMA11勝1敗でフィニッシュ率は62%、7年のプロキャリアで黒星はタジキスタンでのACB1戦のみ。WWFCではペルヴィアンネックタイ、バナナスプリットといったテクニカルな一本での勝利もマークしている。
1R、ともにオーソドックス構え。頭を回して跳びヒザで近づくゴロベッツ。強い右ストレートを見せる。ブロッキングするニューイェン。ゴロベッツは左のサイドキックもローブローに。再開。サウスポー構えになるニューイェン。
右の蹴りを上下に突くと、右の後ろ蹴りの後にダブルレッグテイクダウン! 金網まで這うニューイェンの足を束ね、立ち際に背中に乗ったゴロベッツ。着地すると、正対したニューイェンはギロチンチョークからがぶりでヒザ。
さらに詰めて得意の右! さらに右カーフ! 左ボディ。カウンターの右を当てると、ゴロベッツは後退。しかし右の蹴りで押し返す。
2R、左インローを打つニューイェン。互いに後ろ蹴り。ゴロベッツの右にニューイェンが右を返す。素早いダブルレッグテイクダウンはゴロベッツ! 立ち際にボディロック。背後からヒザを突き、左足をかけるが、座って外してからまた立ち上がるニューイェン。
正対し、離れ際に左を振るニューイェンは右! しかしゴロベッツも右アッパーを狙う。左ボディも。ゴロベッツはシングルレッグも足を外に出すニューイェンは金網背に立ったまま。
追うニューイェンは右を効かせると、背中を見せて回るゴロベッツ。振り向いてダブルレッグは切るニューイェン。詰めて左ボディ&ヒザにゴロベッツはくの字になり、防戦一方もゴングに救われる。
3R、ニューイェンの圧力に、左ロー、右を振って組み付くゴロベッツだが、ここは切るニューイェン。右カーフキック、左ボディにゴロベッツは雨後kうが止まる。左ボディに座りこんだゴロベッツ、さらに追うニューイェンの左右に背中を見せて回り被弾し崩れるゴロベッツを見てレフェリーが間に入った。
試合後、ゴロベッツとヒザを着いて言葉をかわしたニューイェンはウクライナ国旗を手に取り、ゴロベッツの肩にかけた。
2019年8月の松嶋こよみ戦以来の白星を掴んだニューイェンは「3年ぶりの勝利だ」と勝利を噛みしめ、家族やサンフォードMMAのヘンリー・フーフトらに感謝の言葉を語ると、今後の対戦相手について、クリスチャン・リーの名前を挙げた。
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▼第7試合 キック・ヘビー級 3分3Rイスマエル・ロント(オランダ)123.80kg, 1.0040イラジ・アジズプール(イラン)119.50kg, 1.0214
1R、ともにオーソドックス構え、パワフルな右にアッパーを混ぜるロント。打点の高い左ヒザも。アジズプールは押し戻して左ハイを返すとカウンターの右を当てロントの動きを止める。ロントはゴングに腰に両手を当ててコーナーに戻す。
2R、カウンターの右でロントに両手を着かせダウンを奪うアジズプール。立ち上がるロントはガードを固めて大きなカウンター狙い。下がらないアジズプールは左フックでロントをマットに沈めた。
ONE2連勝をマークしたアジズプールは男泣き。コールにガッツポーズで雄たけびを挙げ、「ベルトを狙っていきたい」と語った。
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▼第6試合 ストロー級(※56.7kg)5分3R×アレックス・シウバ(ブラジル)56.60kg, 1.0044[2R 0分05秒 TKO] ※右ストレート→パウンド〇エイドリアン・マティス(インドネシア)56.60kg, 1.0044
1R、シウバの右フックに左右を打ち返してシウバに腰を落とさせるマティス! しかしシウバは組んでテイクダウン。
サイドを奪い、左脇を差し、右手をクルスフィックス&パウンド。ノースサウスチョークへ。外して立ち上がり鉄槌のマティスに下から外掛け、外ヒールフックを仕掛けるシウバ。
回転して鉄槌を落とすマティス。足を抜き際に詰めて、シングルレッグでテイクダウン。
2R、ワンツーの左から右をヒットさせたマティス! シウバは後方にダウン、すぐに鉄槌を落とすとレフェリーが間に入った。
すぐに亀になったシウバはストップに納得しなかったが、歓喜のマティスのハグに苦笑。マティスは「アイドルを倒すことが出来て感謝します。神のおかげ、ありがとう」とテレマカシを連発した。
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▼第5試合 キック・ストロー級 3分3R×ジョシュ・トナー(豪州)56.70kg, 1.0248[2R 2分11秒 KO] ※左フック〇ジャン・ペイメン(中国)56.20kg, 1.0036
第5試合のキック・ストロー級戦で、“中国の天心”ジャン・ペイメンがONEデビュー、強烈な左の攻撃で同級5位のジョシュ・トナー(豪州)を2R KO。いきなり5万ドルボーナスを獲得した。
中国「EMLegend」等で活躍し、23勝18KOをマークするなど“最強中学生”として話題となったペイメン。今回のONEデビュー戦では、サムエーが持つONEストロー級(56.7kg)ムエタイ世界タイトルマッチにも挑戦経験があるトナーと対戦した。
1R、オーソドックス構えでトナー相手にスピーディーな左右、右ローと繋ぐペイメン。普段圧力をかけるトナーに中に入らせない。トナーのローブローを受けてもすぐに回復。トナーの左ハイをスウェイでかわして攻撃に繋ぐなど、攻防のなかでカウンターも入れていく。トナーの左ジャブをかわしたペイメンは、強い身体の軸からブレない左ボディ=レバー打ちでダウンを奪う。
2R、トナーの左ヒザ、右をかわして、左のトリプルを上中下に打ち分けるペイメン。さらに左フック! 再びレバー打ちでダウンを奪うと、立ち上がったトナーに左ミドルも腹に当てて、左右ボディを両腹に打ち、2度目のダウン。最後はボディ、テンプル上下にと打ち分け3度目のダウンを奪い、試合を決めた。
脅威の左の攻撃で鮮烈KO劇を見せたペイメンは、「トナーのように非常に素晴らしい選手と対戦できてよかった。ONEのような大規模な大会で試合が出来たことも良かった。素晴らしい経験になった。コーチからの『パンチをしっかり打ち続けなさい』の声を守りました」とコメント。
その場で5万ドルボーナス獲得を伝えられると、「ワオッ!」と両手を挙げて初々しい笑顔を見せた。
現在、ONEキックボクシング・ストロー級の王者は空位。1位にロシアのアステミール・ボルソフ、2位にアスランベック・ジクレーブ、3位に中国のワン・ジュングァン、4位に豪州のロッキー・オグデン、5位にトナーがランクされており、解説の仙三は「これ、すぐに行っちゃうんじゃないですか」とペイメンの上位進出を予想。
3位には、2017年9月のK-1で武尊相手に判定まで持ち込んだ“中国の武尊”と呼ばれるワン・ジュングァンもおり、日本のみならず、ONEで中国版の「天心vs.武尊」の可能性も出てきた。
中国の“神童”は現地のインタビューで、好きな言葉は「天才は99%の汗と1%の才能が必要」だと答えている。
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▼第4試合 フライ級(※61.2kg)5分3R〇エコ・ロニ・サプトラ(インドネシア)61.20kg, 1.0183[1R 1分34秒 リアネイキドチョーク]×チャン・ロタナ(カンボジア)61.05kg, 1.0027
EVOLVEのエコ・ロニが、テイクダウンのフェイントから頭を一瞬下げて右ストレートをヒット。金網に詰めてダブルレッグからボディロックに切り替えてテイクダウン。
ロタナの背中に飛び乗り、両足をかけてパームトゥパームでリアネイキドチョーク。そのまま後方に引き倒し、チョークを極めた。試合後エコ・ロニはトップ5との戦いを希望した。
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▼第3試合 ムエタイ女子ストロー級 3分3R〇イマン・バーロウ(英国)56.70kg, 1.0009[1R 1分39秒 TKO] ※右ヒジ×ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)56.25kg, 1.0195
バーロウ(左)は元Enfusion54kg王者。WKAムエタイバンタム級、WPMF世界バンタム級、Lion Fight 54kg王者など、数々のタイトルを持つ。対するロペスは、2021年9月にONEデビューし、ジャッキー・ブンタンに判定負けしている。
ともにオーソドックス構え。いきなり左の前蹴りのバーロウ。左ジャブのロペスに長い右ミドル、さらにワンツー、右縦ヒジを突く!
さらに左右ミドル、飛び込んでの右縦ヒジ! この1発でロペスが鼻から出血。折れたか、
ドクターチェックで試合が止められた。強烈なヒジ打ちで鼻が折れたか、ロペスはKOコール時にもカメラは映さず。
鮮烈KO勝利を見せたEnfusionの“絶対王者”バーロウのONEデビュー戦に、解説席の大沢ケンジは「誰が連れてきた!?」と騒然。縦ヒジを顔面に打ち込み陥没させる女王の姿に「こういうのダメなんです」と引き気味だったが、バーロウは、サークルケージの中で、5万ドルボーナス獲得を告げられ、可愛らしく跳びはねて見せた。
バーロウは、第2試合のヒジ・ヒザで1R TKO勝利を飾った英国のノーランに続き、ボーナス獲得。
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▼第2試合 ムエタイ 79kg級契約 3分3R〇リアム・ノーラン(英国)78.85kg, 1.0005[1R 1分02秒 TKO] ※左ヒザ×キム・キョンロック(韓国)79.55kg, 1.0160
ジョナサン・ハガティーと同ジムのノーランはサウスポー構えから左ヒジを当てて詰め、左右の二段跳びヒザで左ヒザをヒット! オク・レユンの練習パートナーのキョンロックを最後は金網に詰めての首相撲ヒザの連打でTKOに降した。
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▼第1試合 キック女子ストロー級 3分3R〇リン・ホーチン(中国)56.25kg, 1.0124[判定3-0]×ミラグロス・ロペス(アルゼンチン)55.45kg, 1.0061