2019年6月2日(日)兵庫・神戸ワールド記念ホールにて開催の『RIZIN.16』で、米国のティム・エスクトゥルースと対戦する山本アーセン(KRAZY BEE/SPIKE22)が5月31日、大阪市内のホテルで事前インタビューを行った。
これまでMMAでは、クロン・グレイシー、才賀紀左衛門、所英男、ジェシー・ローグ、マネル・ケイプ、宮田和幸を相手に2勝4敗。現在は2連敗中で才賀戦、ローグ戦に続く3勝目を目指すアーセンにとって、今回のエスクトゥルースは、初めて同じ経験値の相手となる。
ダロン・クルックシャンクなど強豪を生んできたミシガン州のローカルサーキットでアマチュア大会から凌ぎを削ってきたグラップラーであるエスクトゥルースとの対戦は、アーセンの真価と進化が問われる試合だ。
レスリング力で上回るアーセンに対し、エスクトゥルースはテイクダウンされてもそこからの引き出しが多い選手。「ヒジ有り」ルールの中で、トップを取るアーセンはいかに相手を削るか。エスクトゥルースの仕掛けを潰してパウンドしたいところだ。
そんな試合を前に、アーセンはグアムで母・美憂とともにUFC4勝5敗のジョン・タック=ジョン山本をメインコーチに据えて、寝技を含む総合力をアップしてきた。かつて五味隆典に一本勝ちしたタックのMMAグラップリングは、アーセンにいかに伝わったか。2019年2月14日には第1子となる女児も誕生。アーセンはファイター、そして父親としても負けられない再起戦に臨む。
アーセン「相手の土俵でも結果を出せるように練習してきた」
――現在のコンディションは?
「ばっちりです。動きも。前回は100%見せられなかった分、今回は出せると思っています」
――対戦相手の印象は?
「今まで自分は寝技で負けていることが多くて、今回も(柔術)茶帯と聞いている。でもこっちも対策しているし、相手の土俵に連れていかれたら、そこでも結果を出せるように練習してきたのでバッチシだと思います」
――どんな試合を見せたいですか?
「パパになったので、カッコいいパパの姿を見せられたらなって。もちろんお客さんのためにやることが大前提なんですけれど、娘のためにも頑張ろうかと思っています」
――寝技を強化してきたということなんですか?
「全部なんですよ。自分はまだトップ選手みたいに全部そろっているわけでもないし、ここだけ強化したら試合で勝てるとかではない。僕はまだ見習いというか、これから頂点に行く男なのでとりあえず今は全部です。叩き込めるものを全て自分で叩き込んでいるので」
――その中でもより自信がついたものは?
「それも全部ですなんですよ。大きい口は叩きたくないけれど、本当に自分が強くなっている実感がある。下にも落ちていないし、並行でもない。ただ上に上がっているだけなので、それを皆さんに証明出来たらいいかなって感じですね」
――白星から遠ざかっていることは気にしていますか?
「気にしてないです。気にしていたら下に行ってしまうんですよ。結果を出していないのは事実なので。でもそこは見ないで上に行くことだけ。上を見すぎると足元をすくわれるので、とりあえず今は目の前の壁をどんどん壊していこうかなって感じですね」
――美憂選手と同じリングに上がるのはこれが5回目になると思いますが、山本一家として臨むRIZINにはどんな思いが?
「今回こそは2人とも勝つぞって感じですね。まだ同じ日にどっちも勝ったことがないので、今回こそは2人でトロフィーを持って帰ろうかなって感じですね。今回の2人で絶対に勝ってやろうなっていう思いはいつも以上に強いんじゃないかな。美憂さんも超燃え上がっているので、いきなり朝に“今回は絶対に2人で勝つよ!”て言ってきたりだとか。だいぶテンション2人とも高いので今回はいけると思います」
――先にバトンを渡す立場ですよね。
「よかったーって感じですね。俺、普段はダブル緊張するんですよ。かあちゃんのことでも俺のことでも。でも今回はだいぶ早い時間帯に試合が終わりそうなので、試合はパッパッと終わらせていいもの食って、全力で応援に行こうと思っています」
――セコンドにも付くんですか?
「いえ、それぞれのチームがあるので」
──娘さんは?
「生まれたばかりなので人ごみにはあまり連れてきたくないんです。あと自分は試合終わるといつも風邪気味になるので」
――勝って喜びの声を届ける?
「はい、そうです」
――今までの「強くなっている」と「パパになってからの強くなっている」は違いますか?
「本当に違うと思います。ポケモンに例えるとレベルアップする薬を与えるみたいな。別に戦わなくても勝手にレベルアップしていくみたいな。精神的にも変わってきますし。子供が生まれる前は、弟と妹が生まれたのが今までで一番うれしかったけれど、予想をはるかに超えてきて。俺はこの子のためなら全然命をかけられるなって思えるので、それは試合にも出ると思います。本当に可愛いんですよ(笑)。娘も今、頑張っているのでパパも頑張らないとパパ失格なので。とりあえずカッコいいところを見せて、早く帰って早く抱っこしたいです」
――お母さんはおばあちゃんになったわけですが……。
「引っ叩かれますよ(笑)。『おばあちゃん』って言うとパチンと来るので」
――アーセン選手に娘さんが生まれて、美憂選手への想いで変化したことは?
「めっちゃあります。すげえなって思いました。こんな事一人でやっていたんだって。あの人は自分が生まれてからも現役復帰して。自分を夜中にジムに連れて行って寝かせてから一人で練習して日本チャンピオンになったりとか。本当にありえないことをしている。俺にはできない、母ちゃんには頭が上がらないです。赤ちゃんが生まれると本当にやることがいっぱいで、それを練習の合間に不自由なくやるのは誰もができることじゃないと思う。母親としてもアスリートとしても親友としても尊敬できるから。マザコンと言われてもいいくらいだけど、俺の中ではあの人は別格な存在なので。これが俺のルーツなんだなって思いますね。生きていくために大事なことを今でも常に教えてもらっています。本当に素晴らしい人ですね。唯一無二って言うのかな」
ティム・エスクトゥルース「1Rで仕留めたい」
――現在のコンディションは?
「とてもいいです」
――対戦相手である山本アーセン選手の印象は?
「非常にハングリーで、勝ちたい気持ちが強い相手だと思っています」
――どんな試合を見せたいですか?
「素晴らしいバトルをお見せしたいね」
――アーセン選手のどんなところが強いと思っていますか?
「彼は素早く動き、そして若い。粘りもある。レスリングの力もある。そこが強みだね」
――自分のストロングポイントは?
「私は今はグラップリングの選手だけど、バックグラウンドはムエタイ、ボクシング、テコンドーなど、打撃技がベースになっているんだ」
【写真】ザ・グラップラーというエスクトゥルースの耳だが、バックグラウンドはムエタイ、ボクシング、テコンドーなどの打撃系だという。――34歳でプロデビューということですが、なぜその年齢でMMAを?
「それはタイミングだと言える。それまではアマチュアで17歳から戦っているよ。私は自分のことを1Rで仕留める早い試合運びが特徴だと思っている。今回も1Rで仕留めたいね」
――柔道を始めるきっかけは?
「柔道は大学で始めて、柔道に恋をした。それから格闘技に魅せられて15年以上やっているよ」
――海外での試合は初めてですか?
「初めてだ」
――日本の格闘技の盛り上がりはご存じですか?
「知っているよ。ダロン・クルックシャンクのRIZINでのファイトを見た。彼とは以前に練習を一緒にしたことがあるんだ。私のベースはミシガン州だけれども、様々な地域を訪ねて練習している。ダロンからRIZINのことは聞いていた。非常に組織として優れているとね。コーチからも戦うには良い所だと聞いている」
――アーセン選手が父親になって、子供のために戦うことをモチベーションにしています。お父さんの先輩として彼にアドバイスはありますか?
「それはリングで戦うことで教えてあげたい」