MMA
インタビュー

【UFC】2大王座戦ガヌーvs.ガーヌ、モレノvs.フィゲイレード「最重量級と最軽量級、このコントラストだけでも今回のUFCは面白い」高阪剛が見どころ語る

2022/01/19 11:01
 2022年1月22日(日本時間23日)、米国カリフォルニア州アナハイムのホンダ・センターにて『UFC270』が開催される。  メインイベントは、正規王者フランシス・ガヌーと暫定王者シリル・ガーヌのヘビー級王座統一戦。さらにフライ級王者ブランドン・モレノvs.前王者デイブソン・フィゲイレードによる3度目の決着戦となるフライ級選手権試合も組まれている。  この2大タイトル戦の見どころをWOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”髙阪剛に語ってもらった(※プレリム出場のビクター・ヘンリーインタビューも) ガヌーは短距離型で100メートルをどれだけ速く走るかというタイプで、ガーヌは中距離型 ──日本時間の23日日曜日の『UFC270』メインイベントで、フランシス・ガヌーvs.シリル・ガーヌのヘビー級王座統一戦が実現します。 「ガヌーとガーヌなんで、ちょっとややこしいですけどね(笑)。」 ――似た名前で実況・解説者泣かせの試合です(笑)。 「ただ、名前は似てるけど、両者のファイトスタイルはある意味で真逆だと思うんですよ。大雑把に言うと、ガヌーは短距離型で100メートルをどれだけ速く走るかというタイプで、ガーヌは中距離型。ペースを握って後半追い上げるというレース展開をしっかりと考えるタイプですね」 ――ガヌーは秒殺KO勝ちが多くて、ガーヌは5ラウンドをフルに戦って判定でも勝てるタイプだと。 「両者ともに一発で倒せるだけのパンチ力を持っているんだけど、ガヌーはそれが桁違いに飛び抜けています」 ――パンチ力測定の世界記録を持っているんですよね。乗用車と正面衝突した衝撃に匹敵するという。 「だからガヌーの場合は、その自分の力をいかにコントロールできるかがポイントになるんです。当たればKOできるけれども、パワーの出力が大きいから、もし凌がれてしまったらガス欠してしまう恐れがある。前回のスティーペ・ミオシッチからヘビー級王座を奪取した試合では、そうならないために、ちょっとスロースタートというか、慎重でしたよね。出力のコントロールをすごく意識してるなというのが見えたんですよ」 ──それまで4試合連続で秒殺KO勝ちでしたが、ミオシッチ戦では2ラウンドKO勝ちでした。 「それはミオシッチのような打撃の技術が高い選手に凌がれた場合、後半失速することを自分で理解しているからだと思うんですよね。タイトルマッチなので、5ラウンド制ということもあるし」 ――ガヌーはUFCで2度の判定決着がありますが、1度目のミオシッチ戦も2度目のデリック・ルイス戦も判定負けでした。 「だから結局、倒せるところでいかに強い打撃を入れるか、という部分は変わってないと思いますが、攻撃の出力のコントロールを意識するようになってきましたよね」 ――となると対戦相手のガーヌは、アウトボクシングがうまくてフルラウンド戦う気がまんまんの選手ですから、ガヌーにとっては天敵となるかもしれないですね。 「その可能性はありますね。今回はヘビー級王座統一戦で、ナンバーシリーズのメインイベントという注目度の高い試合ですけど、ガーヌはそこで派手な勝ち方をしようみたいな意識はせず、自分の戦い方を貫くと思うんですよ。要はスタンドの距離設定を遠目に置いて、序盤からフットワークと足技を使って、ショートレンジの打撃をとにかくもらわないようにするという」 ――強打のガヌーとは決して打ち合わないことが予想される、と。 「前回のデリック・ルイス戦でも、ちょっと距離がつまりそうになったら、すぐサイドステップを使って離れて、フットワークでオクタゴンの広さを充分に使って、焦らして焦らして最後はKOしましたからね」 ――パワーストライカーを無力化する戦い方ですね。 「そう考えると正直、ガヌーは分が悪い。だからこそ、これは期待を込めてなんですけど、ガヌーにしょっぱなからガンガン行って欲しいなと思うんですよ。ガーヌは試合を作るタイプなので、自分の距離設定や形が定まる前にプレッシャーをかけられるとモロさが出るタイプ。そこを突くことができれば、ガヌーが一気にペースを握ることも可能だと思うんです」 ――セットアップが完了してしまったら鉄壁になるけれども、そうなる前にラッシュで殴り合いに持ち込むと。 「そうなればガヌーのものだと思うんですよ。ただ、ガーヌの方も、もしそうなったときの準備はしてくる気がするんですよね。ガーヌはボディーブローなんかもしっかり打つので、至近距離になったときに腹を効かせたり、すぐ組みついてヒザを入れたりしていくと、ガヌーの失速のスピードも速くなると思うんです。だからガヌーはインファイトに持ち込むんだけど近づきすぎないようにする必要がある。その辺の駆け引きがあるなと予想しますね」 ──いずれにしてもポイントは1、2ラウンドになりそうですね。 「そうですね。後半になるとガヌーはキツくなるでしょう。ガーヌは後半伸びてきますから。あのヘビー級の体で、後半に強いというのはすごい身体能力ですよ。だからガヌーからしたら、序盤にペースを握れるかどうかが勝負ですね。」 [nextpage] 動き出しはフィゲイレードの方が速いけど、それに対する切り返しがモレノの方が0コンマ何秒速い ――そしてヘビー級王座統一戦の前には、UFC最軽量級であるフライ級のタイトルマッチ、ブランドン・モレノvsデイブソン・フィゲイレードも組まれています。 「最重量級と最軽量級というこのコントラストが素晴らしいですね。それだけでも今回のUFCは面白いですよ」 ――同一カード3連戦での決着戦ですからね。1度目はドローでフィゲイレードが防衛、2度目はモレノが一本勝ちで新王者になって、今回はモレノの初防衛戦になります。 「第1戦当時は、フィゲイレードに内臓疾患があったんですよね」 ――試合前夜に胃の感染症で緊急入院していました。 「そういった事情もあったので、第2戦の時は“フィゲイレードが万全ならモレノは相手にならないんじゃないの?”っていう予想が多かったと思うんです。けれど、モレノがあのネチっこさと、先の先まで読んで相手を巻き込んでいくフライ級らしい戦いぶりで、見事に完勝したという」 ――1ラウンドにジャブでダウンを奪い、2ラウンド以降はグラウンドで終始ペースを握っての勝利でした。 「フィゲイレードってフライ級の選手ですけど、重いクラス寄りの試合のやり方をするんですよね。軽量級なのに一撃で倒せるような打撃の破壊力があって、なおかつ技術も高い選手」 ――グラウンドでの極めも強いですよね。 「だからこの試合も対照的ですよね。モレノのほうは、常に仕掛けて常に動き回って、最終的にしつこさで相手に逃げ場をなくして勝つような試合をする。フィゲイレードはとにかく一発効かせて、立ち技でも寝技でも相手が崩れたところを一気にフィニッシュする。だからこそお互いスイングするというか、いい試合になるんでしょうね。じゃなかったら、3連戦なんか組まれないですよ」 ──では、第1戦と第2戦を踏まえて、第3戦はどこがポイントになると思いますか? 「モレノの試合のやり方として、3戦目だからといって、何か特別変えようとはしないと思うんです。ただ、フィゲイレードはしょっぱなのプレッシャーが非常に強く、距離も遠い間合いから一気に詰めるステップインがものすごく速いから、そこを警戒するとは思います」 ――第1戦では1、2ラウンドはフィゲイレードが圧倒しました。 「だけどモレノは組むタイミングが絶妙なんですよ。パンチを一瞬当ててすぐに組みついたりとか。相手が強打を振ってきたところでサッと懐に入って、テイクダウンに持ち込むとか。4つぐらいの動きが一体化しているんですよね。ひとつのことに固執せず、すぐ連続的にいろんなことができるから、たとえ途中でテイクダウンを奪われたとしても、すぐ自分の優位なポジションに戻せたりするんです」 ――前回、フィゲイレードはテイクダウンしたり、いいポジションを取るたびに凌がれて、それでペースを乱された感がありました。 「動き出しはフィゲイレードの方が速いんですけど、それに対する切り返しがモレノの方が0コンマ何秒速いんですよ。だから、気がついたらフィゲイレードが後手に回っているという。モレノはそういう巻き込み方をするので」 ――フィゲイレードは前回、ガンガン攻めたが故にモレノの切り返しに巻き込まれていきましたから、今回は試合運びを考えるフィゲイレードが見られるかもしれないですね。 「そこだと思うんですね。ただ、下手に考えすぎても良さが消えてしまうような気がするんですよ。フィゲイレードは感覚で動けるタイプだと思うので。だから慎重になりすぎず、自分の爆発力をどれだけ作戦に落とし込めるか。そこがポイントになると思いますね」(聞き手・文/堀江ガンツ) ◆WOWOW『UFC -究極格闘技-』放送・配信スケジュール 『UFC‐究極格闘技‐ UFC270 in カリフォルニア 最重量級頂上決戦!ヘビー級王座統一戦 ガヌーVSガーヌ』2022年1月22日(現地)米国カリフォルニア州アナハイム ホンダ・センター 1月23日(日)午後0:00[WOWOWプライム]※メインカードを生中継(WOWOWオンデマンドで同時配信) 1月29日(土)午前4:55[WOWOWライブ]※リピート(WOWOWオンデマンドで同時配信) 【出演】解説:高阪剛、堀江ガンツ実況:高柳謙一生中継前後に出演陣のYouTube配信!『スタジオ裏トークUFC270』WOWOW番組オフシャルサイト 【メインカード】 ▼UFC世界ヘビー級王座統一戦 5分5Rフランシス・ガヌー(カメルーン)16勝3敗(UFC11勝2敗・UFC5連勝5KO)シリル・ガーヌ(フランス)※暫定王者 10勝0敗(UFC7勝0敗) ▼UFC世界フライ級選手権試合 5分5Rブランドン・モレノ(メキシコ)19勝5敗(UFC7勝2敗)デイブソン・フィゲイレード(ブラジル)20勝2敗(UFC9勝2敗) ▼バンタム級 5分3Rコーディ・スタマン(米国)19勝4敗(UFC5勝3敗)サイード・ヌルマゴメドフ(ロシア)14勝2敗(UFC3勝1敗) ▼ウェルター級 5分3Rミシェル・ペレイラ(ブラジル)25勝11敗(UFC3勝2敗)UFC3連勝中アンドレ・フィリ(ポルトガル)14勝3敗(UFC0勝0敗) 【プレリミナリー】 ▼ミドル級 5分3Rホドウフォ・ヴィエラ(ブラジル)8勝1敗(UFC3勝1敗)ウェリントン・トゥルマン(ブラジル)17勝5敗(UFC2勝3敗) ▼ミドル級 5分3Rマイケル・モラレス(エクアドル)12勝0敗(UFC0勝0敗)トレヴィン・ジャイルズ(米国)14勝3敗(UFC5勝3敗) ▼ライト級 5分3Rマット・フレボラ(米国)8勝3敗(UFC2勝3敗)ヘナロ・バルデス(メキシコ)10勝0敗(UFC0勝0敗) ▼バンタム級 5分3Rトニー・グレーブリー(米国)21勝7敗(UFC2勝2敗)サイモン・オリベイラ(ブラジル)18勝3敗(UFC0勝0敗) ▼女子フライ級 5分3Rジャスミン・ジャスタビシウス(カナダ)6勝1敗(UFC0勝0敗)ケイ・ハンセン(米国)7勝4敗(UFC1勝1敗) ▼バンタム級 5分3Rハオニ・バルセロス(ブラジル)16勝2敗(UFC5勝1敗)ビクター・ヘンリー(米国)21勝5敗(UFC0勝0敗)  ▼女子ストロー級 5分3Rバネッサ・デモポロス(米国)6勝4敗(UFC0勝1敗)シルバーナ・ゴメス・フアレス(アルゼンチン)10勝3敗(UFC0勝1敗) ▼フェザー級 5分3Rイリア・トプリア(ジョージア)11勝0敗(UFC3勝0敗)シャルル・ジョーデイン(カナダ)12勝4敗1分(UFC3勝3敗1分) ▼ウェルター級 5分3Rジャック・デラ・マッダレーナ(豪州)10勝2敗(UFC0勝0敗)ピート・ロドリゲス(米国)4勝0敗(UFC0勝0敗)
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.335
2024年11月22日発売
年末年始の主役たちを特集。UFC世界王座に挑む朝倉海、パントージャ独占インタビュー、大晦日・鈴木千裕vs.クレベル、井上直樹、久保優太。武尊、KANA。「武の世界」でプロハースカ、石井慧も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント