6月2日(日)、兵庫・神戸ワールド記念ホールで開催される「RIZIN.16」でカナ・ハヤット(米国/BODYSHOP FITNESS TEAM)と対戦する魚井フルスイング(和術慧舟會HEARTS)が5月29日、所属ジムで公開練習を行った。
修斗世界ストロー級王者で、前ONE Championship世界ストロー級王者の猿田洋祐を相手にマススパーリングを行った魚井は、続いてロープトレーニング、さらにバットに見立てた日傘を左右にスイッチしフルスイングするというサーキットトレーニングを2セット行った。
神戸出身で格闘技を始めた魚井フルスイングこと魚井守は、修斗ジム神戸で格闘技を始め、総合格闘技ゴンズジムに所属し、アマチュア修斗に出場。DEEP、DOG FIGHT、DEMOLITION、CAGE FORCE、HEAT、RIZING ON等を経てプロ修斗に出場するようになった。
神戸で白星と黒星を繰り返すなか、「やり切ろうと思って」上京を決意し、新宿近辺に移り住み、和術慧舟會HEARTSに入門。徐々に頭角を現し、修斗バンタム級世界3位にまで上り詰めている。
囲み取材で魚井は、今回が初のRIZIN出場で、地元・神戸での試合になることに、「不思議な気分。よりによって神戸なんだと」と複雑な気持ちを吐露した。
「ある意味そこ(神戸)から抜け出して河岸を変えてという気分でこっち(東京)に来たので、せっかくのキャリアの大舞台でチャンスのときに、呼び戻されてとなると……色々考えましたね。逃げられないのかなと」と、逡巡があったことを明かしながらも、参戦にあたり、「二つあります。一つは『凱旋』。もう一つは、言葉は悪いけど『ざまぁみろ』みたいな(笑)。『格闘技ちゃんと出来てるだろ、俺?』みたいな感じ」と、故郷で存在証明をするつもりであることを語っている。
対戦相手のカナ・ハヤットについては、「VTJで強い相手とやってる。体重とか戦う時期を問わず、逃げないタイプかなと」と印象を語ると、魚井同様にパンチの破壊力を誇るハヤットとの対戦で「相手の強い右フックを当てられた時に僕がどういうリアクションをするかをお客さんに見てもらいたいですね。そこで日和るのか、そこからどう出るのか」と、「腹を決めて」攻めの姿勢で臨む気持ちを語った。
「自分がしっかり腹を決めてちゃんとやれれば」
──綱を引き、傘でフルスイングしました。今日の公開練習のテーマは?
「まあ、本番でフルスイングする為の練習です。あとは真面目な話をすると、疲労を残さないように、ずっと見てもらっているトレーナーさんが計画して、試合2カ月前、1カ月前とメニューを組んでくれて、今回は軽めの有酸素でやるという感じです」──練習では蹴りを出したところに猿田選手にカウンターのテイクダウンを決められていましたが?
「そんな場面は僕はちょっと覚えてないですね。全部うまくいってたと思います」
──日傘でのフルスイングスイングの練習で「しっかりボールを見て」と注意されました。
「やっぱり目を離すと打球を捉えられないですから」
──……RIZINからオファーが来た時はどんな気持ちでしたか?
「あらー、て感じですかね(笑)。あんまりなんていうか、『わー』とかびっくりはなかったです。へー、RIZINのオファーって実際に来るだなと。すごいなぁというか、ちょっと他人ごとというか。有難い話なんですけど、試合(5月6日の修斗で2R、左フックでKO勝ち)終わってからあまり間がなかったので、え、そうなの? というか」
──神戸大会でRIZIN初出場が決まりました。魚井選手の地元でもあります。
「そうですね、ずっと生活してきた場所ですね。不思議な気分でしたね。よりによって神戸なんだと。縁だなって感じですね」
──「よりによって」というのは、神戸から一念発起して東京の新宿に出てきて今がある、というのもあるでしょうか。
「そうですね。ある意味そこ(神戸)から抜け出して河岸を変えてという気分でこっち(東京)に来たので、せっかくのキャリアの大舞台でチャンスのときに、呼び戻されてとなると……色々考えましたね。逃げられないのかなと。それと、ある意味そういう運命というか、ああ、面白いなと思って。わざわざそこ? と。自分の知っている街で? という感じでしたね」
──知っている街で、知っている人もいる。
「そうですね。でもその人たちは喜んでくれて『観にいきやすいわ』と言ってくれています」
──改めてリングネームである“フルスイング”の由来を教えてください。
「東京に来てHEARTSに入って試合を1、2試合した時に、ジムの代表(大沢ケンジ)が『バカみたいに大振りするな』ということで、『お前、次からフルスイングになるから』と言われて、冗談かと思ってたら、次の試合のパンフレットを見たら“フルスイング”って印刷されてて、本当になってて凄いなと(笑)」
──名は体を表すとも言いますが、その名がつけられた事でよりそういうスタイルになってきた感じはありますか?
「そうですね。最初は気にしてなかったんですけど、だんだんとお客さんの声も『フルスイングするんだよね?』的な。ただ、そういうのに引っ張られて、とにかく振らないと、という風になっていると人からも指摘されて、自分でも打撃、打撃、打撃になっているなという感じになってしまっていたんですけど、いまはバランス取れて、いい感じになっているので“フルスイング”が気に入っています」
「当てられた時に僕がどういうリアクションをするかを見てもらいたい」
──対戦相手のカナ・ハヤット選手の印象は?
「VTJで外国人、日本人、強い相手とやってるなと。ただあんまり勝ちがあまりない。でも、体重とか戦う時期を問わないということで、なんというか、逃げないタイプかなという感じですね」
──そういう相手とどんな試合を見せたいですか?
「勝ちに行きたいです。出来れば打撃で勝ちにいきたいですけど……自分がしっかり腹を決めてちゃんとやれれば、お客さんが満足する、盛り上がってくれるかなと思います。あんまり試合の展開とかは気にしていないですね」
──ハヤット選手は本来の階級はフライ級ですが、上の階級の選手とも試合をしていて、パンチの破壊力は一発で試合をひっくり返すパワーを持っています。そういう展開になった時は?
「減量苦がないからこそという見方もあると思いますし、右のフックも強い。当てられた時に僕がどういうリアクションをするかをお客さんに見てもらいたいですね。そこで日和るのか、そこからどう出るのか。ぜひ見てもらいたいと」
──「日和る」というのは……。
「ビビる、という意味で使いました。関西ならイモるっていう感じですかね」
──日和った場合は、グラウンドに持ち込むという事ですか?
「ビビってるからグラウンドに持ち込むという事はないです。逃げの姿勢で打撃に付き合ったり、逃げの姿勢でグラウンドに、という風になってるかは、僕の表情とかを見てもれば分かる人には分かると思うんで。勝つために、MMAなので全部やるようには、ここでも出稽古先でも口酸っぱく指導してもらっているので。まぁ、でも、(パンチを)振りますけどね(笑)」
──一本勝ちでも盛り上がります。
「そうですね。狙いたいです。ウチには寝技が強い選手とか、ONEとかで一本で極めている選手も(練習相手に)いるので、そういう人とか、ムンジアルに出ている選手とかに組み技も教えてもらっているので、その辺もしっかり期待してもらってもいいかなと」
「一つは『凱旋』。もう一つは『ざまぁみろ』、『格闘技ちゃんと出来てるだろ? 俺』って」
──いつもより多くの人に見てもらえる機会だと思いますが、この試合はご自身の中でどういう位置付けですか?
「あんまり緊張は、普通の試合ぶんくらいですかね。オファーがちょっと急だった事もあるので、そこのドキドキはあるけど、試合の緊張感はどれも一緒なんで。修斗では──RIZINに失礼な言い方かもしれませんけど──流れがあって、この人にこういう勝負をして、次の展開として君はこの選手とやるよというか、一個一個積み上げてやって来たので、種類の違う緊張感があって。RIZINのときは、旗揚げから他の選手がこれまで積み上げてきて、巷の人たちも知っている。そこに出来上がったものにお邪魔するというか。なので、ただ勝負だけに集中できるという感じですかね」
──その一方で、「RIZINジッター」というべきか、RIZINではいつもと違う戦い方で負けてしまう選手も少なくないですが、どう戦っていきますか。
「そうですね、大舞台で。どうなるか自分でも楽しみでもあります。自分がどんだけのもんなのかと。大舞台でアガって(緊張して)しまう事も十分有り得る話なんで。そこでバンと跳ねないと何もならないんで……。
RIZINに出させてもらうに当たって、曲がりなりにも修斗のランカーとしてやらせてもらってるので、色々な人が話を何回も何回も通して、折れるところを折れてもらって、『じゃあ、魚井をRIZINに出させる』というような話に落ち着いたということを、後から自分も聞いたので、自分に気を遣わせないように『出ることになったからね』と、そこから話を聞いたので、そういう人たち、団体で言えば修斗とか、今まで修斗の選手で悔しい想いをした選手もいると思うので、見てもらえたらいいかなと。でも、カナ・ハヤットも、ある意味、修斗、VTJの流れを汲んだ選手なので、それだけのクオリティのものをRIZINを観に来てくれたお客さんに見せられるかなと思います」
──リングでのRIZINルールは上手く使えそうですか?
「もしかしたらサッカーボール(キック)を空振ってコケるかもしれないですね(笑)。グラウンドになったときに、じっとしてたらルールが違うので(ブレークになる等)、そこはちょっと注意かなと。でも、ルールは少ない方が自分のスタイルは活きると思うので、後頭部を殴るとか反則はしないように注意しますが、そんなにルールの違いはストレスにならないです」
──大沢代表の“フルスイング”には打席に立ったら振ろう、という意図もあるんでしょうか。
「そうですね。自分が振らなかったらブーイングだと思うので(笑)」
──改めてですが、自分が神戸でRIZINに出場する上で、けじめだったり、何かを見せたいという想いはありますか?
「二つありますね。周りからも言われますけど、一つは『凱旋』。もう一つは、言葉は悪いですけど『ざまぁみろ』みたいな。『格闘技ちゃんと出来てるだろ、俺?』みたいな感じですかね。その二つがありますね。どっちかと綺麗にまとめられないので、両方ですね。すごい変な気持ちですよね」