MMA
インタビュー

【ONE】5連勝で王座挑戦へ、若松佑弥「殴り合いはいつでも出来る。8カ月準備していたのに、勝負を投げて殴り合うのではなく、練習してきたことを出したかった」

2021/12/06 13:12
 2021年12月3日、シンガポール・インドアスタジアムにて開催された「ONE: WINTER WARRIORS」で、中国のフー・ヨンと戦い、判定3-0で勝利した若松佑弥の一夜明けインタビューが現地から届いた。  予告通り、取り組んできた組み技を披露し、新たな姿を見せた若松は5連勝。王者アドリアーノ・モラエスへの挑戦に向け、拳の怪我を完治させ「治ったらすぐにタイトル挑戦させて欲しい」と語った。 チャンピオンになるので期待していてください ──勝利から一夜明けた気持ちをお聞かせください。 「勝って嬉しい。勝つと負けるとでは、天と地の差だと思うのでホッとした気持ちです」 ──相手のヨンはノーランカーとは言え、5連勝中と勢いに乗る選手でした。試合前と試合後、印象は変わりましたか。 「印象はそれほど変わらなくて。カーフと右のクロスが当たるだろう、テイクダウンも行けるだろうと思っていて、その通りでした。気持ちの面は、向こうはこの一戦に懸けているというのは感じました。でも、相手を深追いしたりせず、平常心で戦う。相手に対してムキになって打ち合うのではなくて、15分を使って削って、確実に取りに行くというのがプランにありました。相手については、予想通りという感じですね」 ──プラン通りに戦えたと。これまでの試合と異なった面は? 「立場の面ですかね。これまで自分の立場上、自分よりランキングが上の選手だったりベテラン選手と戦うことが多かったので。今まで自分が戦ってきた相手側の立場に自分がいたことですね。今回は僕が挑戦するっていうよりも、相手がランカーの自分に対して挑戦するという、今までの自分みたいな感じでした。絶対食ってやるぞっていう、この一戦に懸けている思いは、これまで戦ってきた相手とは違ったのかなと思います。そこで自分が熱くなって、若手同士の潰し合いみたいなのはしたくなかったので、リングインしてからは、成熟したベテランらしさを見せたいと思っていました」 ──1Rを終えて相手の癖やパターンはどう見ていましたか。 「ケージを背負って右か左のフックで削ること、あとは右のカーフですね。カーフは自分が蹴った後に蹴ってきたので。ただ、狙っているのは右のパンチ、僕が入ってくるのに何かを合わせるのに必死なだけだった。自分ももっと力を抜いて弄ぶような感じにできたら良かったなというのはありました」 ──グラウンドに持ち込む展開も多かったですが、この試合の戦略でしたか。「最初から打撃で勝つ、自分の得意なところで圧倒して勝つっていうのがプランだったんですけど。試合前にグラウンドでコントロールして、相手に何もさせないというのも、別のプランとしてありました。直前まで打撃で圧倒して散らしてというイメージだったんですけど、僕の今までのキャリアみたいな殴り合い、特に仙三戦を思い出しました。いかに自分の武器じゃないところで戦えるか、総合格闘技なので、相手が殴りかかってくるのに不意をついて下に入ったり。顔面とボディとかじゃなくて、足も効かせる。全てを使おうというプランもあったんです。  グローブタッチして、それをやってみようって思いました。最近になってガードポジションからパスだったり、相手を立たせない技術を身につけた。今まで僕が逃げる側だったんですよね。例えば、上久保(周哉)さんだったり、(和田)竜光さんだったり、(佐藤)将光さんだったり、僕は逃げるのが主体だったんですけど。最近はパスしてグラウンドコントロールしながら打つみたいなのを練習していたので、それを意識して確実に勝つみたいなのがイメージありました。  でも、自分がやったことないことを試合でやっちゃって、切られて削られっていうのが逆にそれがリスクなのかなっていうのはありました。(セコンドの)長南(亮)さんともお話ししたり、トレーナーとも話して自分の得意な方で戦った方が良いっていうのがあったんですけど、自分の中で(新しいことを試す)というのはプランにありました」 ──2Rを終えて、最終ラウンドはどのような気持ちで入りましたか。 「最終ラウンドはKOしたかったんです。相手もやっぱり、1Rと2Rを取られてて、彼の頭には、僕を殴り倒すことしかなかったと思います。1、2Rより思いっきり入ってきたところに一発、それに賭けていた部分がありましたね。僕も冷静でありながら、倒さなければという気持ちもありました。かといって、残りの5分の中で一発でももらってしまったり、カーフを蹴って足が壊れたり、行って拳が壊れてというより、少しでもリスクなく、なおかつグラウンドでテイク(ダウン)して削っていこうというイメージでした。  将棋じゃないですけど、いかに相手が来るのに合わせてカウンターを入れるか。それで、ラスト1分くらいになって倒しに行こうという風になりました。でも、今までとは違う冷静さがあったので、行かなくても良いかなと思っちゃう自分がいました」 ──この試合の自己評価はどのくらいでしょうか。 「まだまだいけた、というのは正直ありました。もちろん自分も試合で全力出すというのはあったんですが、制御されている感じがありました。なので、6?~7割くらいでやっている感じでしたね。結果、見せる試合という意味では後から反省点はありましたね。だから50~60点くらいでしたね」 ──「制御されている」というのは、タイトル戦が見えてきた中で負けられないという意味でしょうか。 「はい。ここまでやってきて、全て持っていかれるリスクがあった試合じゃないですか。竜光さんだったり、将光さんだったり、そういうリスクがある時に急に出てきた、ぽっと出の選手に負けたりしていて。それだけは、自分はしたくなかったんです。他のスポーツもそうじゃないですか。急に若手に、いきなり出てきた選手に負けるっていうのは。その怖さというか、ここにきてそれは出来ない。もし負けたらタイトルから離れるっていうプレッシャーが、今回はありました。守りに入るというのはありました。  これは今回、初めての感覚でしたね。色々課題もありましたし、これまでの若松佑弥の戦いとは全く違う戦い方の試合になった。後から試合を見返して、グラップラー、レスラーのような試合だったなと。自分、殴り合いはいつでも出来るんですよ。練習していなくても殴り合えって言われたら殴れるし。でもそれって、今まで8カ月準備していたのに、勝負を投げているっていう気持ちだったんです。練習してきたことを出したかったので。反省点でもありますが」 ──この試合で練習していたグラップラーの部分を出せたと。 「そうですね。前回はスタミナだったり、寝技、テイクダウンされた後の戦い方を見せることができた。今回は、力を使わずに、DJ(デメトリアス・ジョンソン)みたいにリラックスして戦えた。本当にDJからアドバイスされた通り直前までリラックスして、15分間の中で競い合うという。そこでいかに相手を削って、相手より体力を残して確実に勝ちを取るという。面白くはないですけど、ここで負けたら黒星が5になってしまうので。それだけが一番怖かったので。今回は、新しい一面を見せられたなと思いました」 ──デメトリアス・ジョンソンからのアドバイスというのは、いつどんな言葉だったのでしょうか。 「僕がDJ戦終わった後(2019年3月)に、プーケットでの選手旅行で、彼にたくさん質問したんです。どういう風に戦っているのかって。その前までの自分って、本当に特攻しに行く感じでした。やることはやったから、倒して、15分間の中で一発でも強いのを当てて仕留めに行く。ガス欠になっても、という戦い方だったんです。トップになると頭を使っていて。冷静さというか。自分はいつも我を忘れるというか、調子が良い時は良いのですが、悪い時はすごい落ちていくんですよ。  今回も試合前に体調崩したりしたのですが、自分としっかり向き合って、確実にこの勝ちを拾うっていうのをずっと意識していました。それをDJから学びましたね。今でもしっかり覚えています。本当に直前までリラックスして、深呼吸して。見せるっていうよりも相手にフォーカスして、ゴングが鳴ったら15分間しっかり集中するという感じですね。一戦一戦、勉強して。僕はただの喧嘩屋じゃないので。考えながら自分と向き合ってやらないとなって思っています」 ──フライ級チャンピオンのアドリアーノ・モラエスもこの試合を見ていたと思います。何か彼に伝えたいことはありますか。 「とりあえず、僕は拳を怪我しているので。治ったらすぐにタイトル挑戦させて欲しいですね。いずれ戦うと思うから、しっかりトレーニングしていて欲しいです。やっぱり一番強い状態で戦いたいと思うので。アドリアーノは、僕はめっちゃ尊敬しています。DJを倒してくれて、めちゃめちゃ格好良いなって思いますし、その強いやつを早く倒したいと思います。もし自分がその時負けたら自分の実力だし、でも全力で倒しに行くので準備しておいて欲しいです。僕もしっかり拳を治して挑むし倒しに行くので。そう伝えたいです」 ──アドリアーノと戦うことを想定して、今後の課題はどんな部分でしょうか。 「課題はありますね。トップコントロールして、攻撃を当てるっていう。もっと脱力して、ヒジやヒザを打つ。組み際とかでも今は力んでしまっているので、力を抜いてできるようにしたいです。あとは、近い距離のショートボクシングとかも練習したいです。完璧っていうのは殆どないと思うので、毎回、毎回、反省点があってそこを練習して次に繋げていきたいです。落ち込みすぎず、半分、半分。自信もありつつ慢心せずやっていこうと思います」 ──もしも、次でタイトルマッチが組まれず、もう一戦挟むことになったら誰と戦いたいですか。 「うーん、カイラット、DJ、キンガッドですかね。この3人は本当に強いと思うので倒す価値があるかなって思います。本望は、アドリアーノに勝ってその3人との防衛戦をすること。本当にいち早くチャンピオンになりたいですね」 ──この試合を終えて、ファンからの期待や注目、リスペクトは高まったと思いますか。 「半々かなと思っています。新しい戦い方できるって思ってくれた方と、(戦い方が)つまらなくなっているのかなって思う方もいたと思います。でも、自分のためにやっているので。人にどうこう言われるために練習している訳じゃないので、自分の勝ち星のためにやっているので、いつかチャンピオンになって認めてもらえたらいいなと思います。だから、今は修行かなと思います」 ──試合前に、マット・ヒュームが若松選手が勝てば次期挑戦者に、という評価のコメントをインタビューで発していました。それを聞いてどう感じましたか。 「本当に素直に嬉しいですね。ただ、自分もまずは怪我を治して、次の試合は全力で無我夢中で攻めるし、もっともっと打撃で攻めていきたいと思います」──毎回の試合で進化、成長が著しい若松選手ですが、ONEだけでなく世界的に見て、この階級で自分が世界トップの選手だという自信はありますか。 「はい、あります。今まではそれがなかったので、自分に自信が持てない奴がチャンピオンになれないと思うので。僕は誰がなんて言おうと自分はできると思っています」 ──試合後、ご家族とはお話しされましたか。 「はい、話しました。みんなで一緒に観てくれていたみたいで喜んでくれましたし、ホッとしていました。勝利は一日遅れの息子の誕生日プレゼントになりました。本当にもう負けたくないですね」 ──この試合を終えて、ファンからの期待や注目、リスペクトは高まったと思いますか。 「半々かなと思っています。新しい戦い方できるって思う方と、つまらなくなっているのかなって思う方もいると思います。でも、自分のためにやっているので。人にどうこう言われるために練習している訳じゃないので、自分の勝ち星のためにやっているので、いつかチャンピオンになって認めてもらえたらいいなと思います。今は修行かなと思います」 ──最後に、今回応援してくださったファンの皆さんにメッセージをお願いします。 「応援、本当にありがとうございました。応援してくれている人がいるので戦えるというのもありますし、色々な選手がいる中で僕の試合を見てくれるのはすごい嬉しいです。これからもその人たちのために日々キツいトレーニングもするし、辛いことも乗り越えてチャンピオンになるので期待していてください」
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