2021年11月20日(土)東京・後楽園ホール『Krush.131』にて、MIO(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)の挑戦を受けてKrush女子アトム級タイトルの初防衛戦を行う王者・菅原美優(K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)が、都内所属ジムにて公開練習を行った。
公開練習は、1Rのミット打ちが行われた。菅原の素早く正確なパンチが、大宮司進代表のミットを打ち抜く。「コンディションはめちゃくちゃ良くて、体重はいつも通り問題ないです。プレッシャーとかもないですね」と、あとはリングに上がって戦うだけの状況に仕上がっている。
今回の相手は、今年5月K-1横浜武道館大会で対戦したMIOだ。この試合で菅原は、持ち味を発揮できずに判定負けを喫している。試合後は大粒の涙を流した。「前回は、自分のやりたいことが何もできずに後悔だけが残る試合でした。今でも後悔の気持ちはあります。でも負けは負けなので、それを意味のある負けにできるように前を向いて練習してきました」と気持ちを切り替えていた。
さらに涙の記憶を辿りながら、「ただ今回の負けは、前回の負け(延谷美智子戦=2019年4月19日)とは違いました。その時とは、格闘技に対する気持ちが違っていたんだと思います。言葉でうまく伝えられないんですけど、今回は周りのサポートがあって、それに応えられなかったのが悔しかったですね。蹴りを出せなかったのもそうですが、もっと前へ出たかったなと思いました。相手を高く見過ぎた部分もありましたが、気持ちが負けていましたね」と言葉を絞り出した。
相手ではなく自分に負けた。MIO戦での涙は、そういうことなのだろう。「もうあんな後悔はしたくないので、勝つことが前提ですけど、出し切りたいです。出し切れば勝てると思っていますので」と菅原は自分を信じている。「それに今回は、メインイベントなんです。こんな大変な時期に応援に来てくれる方々のためにも、前回のような試合は絶対にダメです。女子らしくない試合をしたいです」とメインとしての重責をはたす覚悟を持っている。
プレッシャーは大きくなるが、「こんなチャンスはなかなかもらえるものではないので、それすらも楽しめるようにしたいです。これで、メンタルも強くなるはずです」と深く考えないようにしているようだ。
精神的な支柱になっているのは、シルバーウルフの面々だ。「とくに大宮司代表には、格闘技の技術的なことだけではなく、人間としての生き方も教えてもらっています。理論的に分かりやすく例えてくださいます」と全幅の信頼を寄せている。前回の試合で泣いたのは、みんなの気持ちが伝わったからなのだろう。
今回は、自身の持つKrush女子アトム級のベルトがかかっている。最大のライバルが目の前に現れたため、危機的な状況だ。「ベルトはモノという感覚ではなく、友達ではないけど、強い人についてきてくれる。タイトルマッチでプレッシャーはあるのかとよく聞かれますが、結果を残せばいいだけなんで。あとは、私がしっかりとやるだけです」と友達を手放すつもりはない。
話題になったのは、今夏に発売された菅原の写真集のこと。MIOが公開練習で、菅原が敗北後に写真集を発売したことに対してディスっていたが「そうなんだという感じです。K-1をたくさんの人に見てもらうために、仕事として受けさせてもらっただけなんで。たまたま、私にその話があったということです。とくに気にしていません」と軽く流した。
注目されるのはプロとして当然のことで、名誉でもある。菅原は、自分の役割をはたしただけで浮足立っていない。おそらく、熱い思いで立ち向かうシルバーウルフの魂が芽生えているからだろう。
ちなみに菅原は、今年の年末に村田諒太と対戦するボクシング界の“レジェンド”ゲンナジー・ゴロフキンの大ファンだという。強さはもちろんだが、真摯にボクシングと向き合う姿勢が心を打たれるそうだ。真摯に格闘技と向き合う菅原が、タイトル初防衛に臨む。