MMA
インタビュー

【RIZIN】必然の跳びヒザ──新王者・牛久絢太郎と下馬評を覆した“夢の力”

2021/10/26 14:10

牛久を見て「サウスポー構えの方がいいんじゃないか」って(古川会長)


(C)Ushiku Juntaro

「今回はまだ出していない、当たりそうなものは何種類かあって、跳びヒザはそのうちの一つでした」

 元K-1王者の武居由樹・江川優生らを育てた古川会長は、打撃に関して牛久と斎藤は「五分五分」と感じていたという。

「自分は携帯電話もガラケーであんまり下馬評とかも見たことが無いので、打撃では最初から五分五分くらいじゃないかなと思ってました。『お前が打撃を使えれば五分じゃないか』と言っていて、(試合後に)そんな下馬評だったの? って驚いたくらいで」と苦笑する。

 牛久の打撃の指導をするようになったのは、2017年頃からだという。

「真面目ですね、もう3、4年前からコンスタントに週3、4回はウチに来ていて、朝練習から参加しています。朝から走って、フィジカルトレーニングもして、2部練習でジムでも練習する」と、その取り組みを評価する。

 牛久の強い体軸を活かした現在の打撃スタイルは、古川会長のアドバイスから、固まっていった。

「連敗しているときだったかな。打撃を見て、顔の位置とか、何となくサウスポーに向いている子って分かるんです。これまでも何人か構えを変えるアドバイスをした選手がいるんですけど、牛久もサウスポー構えの方がいいんじゃないかって」


【写真】K-1の佐々木洵樹のミットを持つ「POWER OF DREAM」の古川会長

 牛久は、小学1年生から高校2年生まで柔道部に所属、「部活で趣味感覚でやる程度」だったが、中学生の時にテレビで「DREAM」を見て、総合格闘技を始めた。

 柔道では、利き手を釣り手として相手の襟を握る組み手、さらに利き足を基点に回転する・ステップを踏む動作が多いため、利き足を前にする選手は少なくない。

 牛久も柔道時代は右足を前足にしていたのではないか、そう聞くと、古川会長は「そうなんですよ、聞いたら。最初に打撃を習ったときにオーソドックス構えに変えられたみたいで、間合いが悪くて、あまりパンチが見えていなかった。それで変えたら、パンチも見えて、左の攻撃もスムーズに出るようになった」と、構えを変えたことが転機となったという。

 サウスポー構えにして、先に学んだのはディフェンスだ。相手のパンチをよく見て避けること。それが出来て、初めて攻防一体の動きとなる。

 古川会長は、「構えを変えて、いろいろな避け方の練習をしましたね。攻め方より避け方の練習を多くしてきました。落ち着いてだいぶパンチも見えるようになっていたんで、打撃もスムーズになった。ただ、それを使うタイミングが無くて、これまでもいいものを持っていたんですけどね。来た当初は全然、打撃がうまく使えてなかったけど、もっと出来ると思っていて、ウチの(打撃の)選手とも練習をやっているけど、試合では使わないから(苦笑)、今回、いい流れで使えたのかなと思いました」と、大一番に決めた打撃を語る。

 それは、牛久の組みの強さを活かしたMMAの動きだった。

「流れのなかであの練習はしていました。いままでタックル、タックルでタックルしか能が無かったから(笑)。いままでの牛久の戦い方をみんな見ているから、上の攻撃がハマったのかなと思います」

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