2021年10月29日(金)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT 2021 vol.5』にて、スーパーファイトのKNOCK OUT-BLACK -76.0kg契約3分3R延長1Rで武来安(アメリカ/上州松井ジム)と対戦する松倉信太郎(TRY HARD GYM) のインタビューが主催者を通じて届いた。
松倉はK-1甲子園70kg日本一トーナメントでの優勝を経てK-1、Krushを主戦場にキャリアを重ねた。2018年に戦場を『RISE』に移し、『RIZIN』にも参戦。2019年7月にイ・ソンヒョンとRISEミドル級王座を争うも、5R判定負けで王座戴冠を逃した。2020年9月の『スックワンキントーン』ではWPMF世界スーパーミドル級王座を獲得。12月にT-98を判定3-0で降し、2021年3月にはトーナメントを制してKNOCK OUT-BLACKスーパーミドル級王座に就いた。
激闘に次ぐ激闘で自らが提唱した新階級の王者になって1戦目、気合いも十分……というところで、“あのポスター”での扱いに思わず本音をツイートした松倉だったが、試合に向けての気持ちはどうなのか? まずは一番気になる部分から聞いた。
他の選手とちょっと違うよっていうところを見せたい
──まずは“ポスター問題”についてなんですが…今の心境をお聞かせいただけますか?
「うーん…(笑)、本音で言うと、ポスターの話題が盛り上がること自体が不本意っていうか。僕は別に、自分が出ている出ていないとかそういうのじゃなくて、やっぱり格闘技って強い人を決めるのが本来あるべき姿だと思ってて。プロなので、盛り上げるとかももちろんすごく大事だけど、やっぱりチャンピオン、一番を決めるところであって、またそのチャンピオンっていうのは唯一無二というか、そういうものだと僕は認識してたし、『KNOCK OUT』もそういう団体だと思ってたから、別にどっちがいいとか悪いはないけど…『あ、そういう感じね』って感じにはなりましたね」
──初めて見たときは「えっ!?」と思いました?
「というか、『なめられてんな』みたいな感じには普通に思いました。よく勘違いされてるんですけど、龍聖と仲悪いとかは全くないし、そうじゃなくて、団体の考え方っていうか…『そういう感じね…』みたいな。あれで、チャンピオンが1人でバーッと出てるんだったら、俺は別に文句はないんですよ。例えばぱんちゃん璃奈選手1人でドーン! と出てたら、別に何も言うことはないですよ。そこを、ちょっと順番を飛ばしちゃってるよねっていうか。龍聖がどうせ獲るとかっていうのは置いといて、ですね。そこに対して、運営のスタンスが何かちょっと…っていう部分でした。大切にしてくれてるイベントは大切にしたいし、お互いそうだと思うんですけど…気持ちいいかって言ったら、全然気持ちよくはないですね」
──なるほど。
「ファンの方からのコメントとかで、『試合で見返すしかない』みたいな意見がメッチャ書かれてたんですけど、それも個人的にはすごく違和感があって。僕もその件を盛り上げたくなかったから、別にSNS上では何も言いませんでしたけど、そもそも試合内容で言ったら、たぶん今年の『KNOCK OUT』では一番ぐらいの自信が全然あるし。トーナメントでも毎回、試合が終わった後に『ベストバウトだったね』と言うけど、全然そういう評価してねえんじゃねかっていう部分もあったし、評価してる基準は試合内容じゃねえじゃねえかと思っちゃいましたよね」
──その気持ちが、次の試合へのモチベーションに影響する部分というのは?
「それは全然関係ないです。結局は自分の価値の問題なので、負けたら自分の価値が下がるし、勝っていくしかないので、そこは別に。だから、イベントを背負っていくっていう感覚よりは、やっぱり自分で自分の価値を上げていかないとなあと思ったんですよね」
──というところで、相手が武来安選手に決まりましたが、どんな試合ができそうだと思っていますか?
「けっこうキツい試合になりそうですよね。外国人選手特有のパワーがあって…外国人選手って、後半失速する人が多いんですけど、武来安選手は日本人より日本人ぽいっていうか、ハートも強い感じがすごく試合で見受けられるので、後半になって落ちることはなくて、逆に上がっていくタイプなので、本当にタフな試合になるかなあと思ってますね」
──またタフな相手ですね(笑)。
「いや、本当にそうなんですよ(苦笑)。『REBELS』『KNOCK OUT』に来てから、本当にそういう試合しかしてないので、だからなおさら、そういう部分でも腹立つんですけど(笑)。まあでも、自分のためなので。武来安選手は階級上のチャンピオンだし、それに勝ったらすごいんじゃないかなとは思うので、けっこう勝負どころですね」
──武来安選手は、過去には90kgでもやったことがある選手です。そこまでデカい相手との対戦というのは…。
「ないですね。80kgぐらいの選手だったら、スパーリングとかはありますけど、本気ではそこまでの選手はないです。だから、パワーとかがどれぐらいなのかはすごく気になっていて、試合が始まってみないと分からないので。絶対キツいっていうのは分かるんですけど、どんなもんなのかっていうのはちょっともう想像でしかないですから」
──そういう部分での対策などは?
「いや…それはもう、受けてみないと分からない部分があるので、試合の中で対処しようとは思ってるんですけど、でもまあ、試合の時の体重は一緒なので、痛いだろうけど、僕もいろんな選手とやってきてるんで、何とかはなるだろうっていう部分は、自分の中ではあります。経験はあるので」
──自分としてはどういうものを見せたいですか?
「前の試合でベルトを獲って、次のステップに行かないといけないと思ってるので、他とは違うというところをしっかり見せていかないといけないなと思ってるし、このレベルの選手にしっかり勝っていくっていうのが大事なのかなあと思ってるので、このレベルで普通に勝つというところを見せないとなと思ってます」
──もしかしたら、もう少しすれば海外から外国人も呼べるようになるかもしれないし。
「そうですね。階級的に、世界が強い階級なので。だからこれを前哨戦とは言わないですけど、武来安選手は在日ではありますがガッツリ外国人なので、一つ勉強になるかなっていうか、これから先のことを考えても参考になる一戦かなと思ってます」
──そういうことも含めて、試合自体への意気込みは十分あると。
「もちろんそうです。もうこの先のことも含めて、勝っていかないと何も変えていけないと思うんで、とにかく勝たないとなと思ってます」
──運営に対して「見てろよ」的な?
「いや、そういう感覚も今はないです。別にあなたたちに見せるためにやるわけじゃないしっていう感覚です。自分の価値を落とさないように、上げていけるように。言い方は悪いですけど、うまく使っていきたいなぐらいの感覚でいますね」
──そして、今年最後の試合…ですか?
「いや、僕は年内もう一試合しようと思ってます。そのためにも、相手どうこうは関係なく勝たなくちゃいけないなっていうのが最低条件としてあるので。そこを見据えての一戦というか、この選手にこうやって勝てたんだからというのを見せなきゃいけないと思ってますね。僕はこれまで2回、その舞台に立って失神させてるので、別に前回出た選手がどうこうというのはないですけど、『KNOCK OUT』を体現できてるというか、一番ふさわしい、一番見せられるのは自分なのかなあというのはすごいあって。その切符というか、資格を取りに行きたいなと思ってます」
──同じ大会では龍聖選手が王座決定戦に臨みます。TRY HARD GYMとして2人で見せたいというのもあるのでは。
「そうですね。まあ、龍聖はもうタイトルを獲ることに関しては全く心配してないですし、本当に通過点というか、全然普通に獲ると思ってます。もう世代が違うというか、僕はもうキャリアの終盤で、龍聖はこれからじゃないですか。だから違う盛り上げ方というか、僕を好きになるファンの方、龍聖を好きになるファンの方も違うと思うので、終わりと始まりじゃないですけど、いい感じで、お互い違うやり方でどんどんやっていきたいなと思ってます」
──結局、頑張れば大会を盛り上げることにはなると。
「まあ、そうなんですよ。だからそれを含めて、ポスターのことはもう反応するのをやめてるんですけど(笑)。これはツイートにも書いたんですけど、大前提として、僕の価値というか僕の実力不足というのはやっぱり大きいので。『格闘技を盛り上げたい』ってみんな言うじゃないですか。でも、そもそもそれを言っていいのってたぶん、1人、2人、3人ぐらいだと思うんですよ。他は別に自分でやりたいからやってるだけで。別に頼まれてやってるんじゃないし、やりたくてやってるだけなのに、何かうまく理由付けてるというか……実際、本当にすごい選手がいたら、もっと格闘技界もまとまってて、全然こういう状況じゃないと思うんですよね。
もちろん団体が悪いところもあるし、選手の実力が足りてない部分もすごくあると思うので、だから本当にお互い実力不足だなと思うんですよ、僕は。だから本当に、あの一件は、腹立つ部分はもちろんあるけど、自分もまだまだだなとすごく思わされたんです。だからそういう点でも、こんなところで負けてたら、もう全然前に進まないよなと思ってます」
──なるほど。ただ次もいい試合をして勝てば、今年の『KNOCK OUT』では本当に全部いい試合で勝つことになるわけで。その意味ではいい勝ち方をして、まず2021年の『KNOCK OUT』を締めくくりたいのでは?
「そうですね。去年の12月に『REBELS』に出させてもらってから結果を残せてるというか、対戦相手があってのことですけど、いい試合ができてると思うので、そういうところでも一つ、『KNOCK OUT』では他の選手とちょっと違うよっていうところを見せたいなというのはありますね」
──ではそういった部分も含めて、一番注目してほしいとこはどこですか。一番注目してほしいポイントは?
「大会全体を楽しみにしてもらえればいいかなと。その中で一番印象に残った人が、やっぱり一番すごいと思うし、それを目指してるので。僕のどこを注目というのはないですけど、僕がどれぐらい頑張れるかなので、期待はしていてほしいとは思いますね。僕は自分でも思うんですけど、印象が薄い部分が多少あるので、残りの期間でそこをしっかり残せる選手になれればなと思ってます」