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インタビュー

【ONE】アトム級GP準決勝へ、平田樹「グラウンドは譲れない」×青木真也「不真面目な優等生が一番強い」=10月29日(金)「ONE: NEXTGEN」

2021/10/21 05:10
 2021年10月29日(金)「ONE: NEXTGEN」で「ONE女子アトム級ワールドGP準決勝」に、日本の平田樹が出場。1回戦で中国の強豪メン・ボーに判定勝ちしたリトゥ・フォガット(インド)と対戦する。  映画『ダンガル きっと、つよくなる』で描かれた伝説のレスリングコーチを父に持つフォガットは、1回戦でメン・ボー相手に得意のレスリングで逆転勝ち、番狂わせを起こした。  組み技を最大の武器とする両者だが、柔道ベースの平田と、レスリングベースのフォガットでは、動きが異なる。悲願のGP制覇、そしてその先に待つ王者アンジェラ・リーへの挑戦に向け、平田は10月から青木真也が指導する「青木学校」に通っていた。  毎週土曜日に行われるプライヴェートレッスンで、青木は何を伝え、平田は何を学んでいるのか。それぞれの試合について、練習後に聞いた。 自分の良さをどれだけ3R目まで出せるか(平田) ――10月29日「ONE: NEXTGEN」で「ONE女子アトム級ワールドGP準決勝」に臨む平田樹選手です。今回は「青木学校」こと青木真也選手との練習とのことですが、いつから青木選手との練習を始めたのでしょうか。 平田 10月から始めたばかりで、主に技術練習をしています。 ――青木選手の指導を受けるようになったのはどういった思いからだったんでしょうか。 平田 技術レベルを上げるには教わることから始めるのがいいかなと思いました。それをいかに自分が試合とか練習に生かせるか。ここで教わったことを、いつも普段の練習に持ち帰ってやっている感じです。 ――特にどんなことを学びたいと? 平田 やっぱりレスリングというか、グラップリングが好きなので、もうちょっと組み技の技術を上げていきたいと思い、グラップリングを学びたいと思い、教わっています。 ――今日の練習では、シングルレッグテイクダウン。あるいはシングルレッグからバックテイク、ダブルレッグに切り替えるなど、足の位置取りから手の持ち替え、相手の引き出し方、バックへの回り方など、基本の細かい動きを繰り返し、打ち込んでいました。それを普段の練習でもディテールを大事にして繰り返しているのでしょうか。 平田 はい。それを練習前か練習後に必ず打ち込みとしてやるようにしています。毎日やっています。 ――レスリングという部分では、レスリングをベースに持つ、GP準決勝の相手リトゥ・フォガット戦に向けてという意味合いが強いのでしょうか。 平田 いえ、そんなことはなくて、今後に向けて必要なことだと考えてやっています。 ――9月3日の「ONE女子アトム級ワールドグランプリ1回戦」では、米国のアリス・アンダーソンに判定勝ちしましたが、その率直な感想から教えてください。 平田 トーナメントなので負けたら終わりの試合で、まずは無事勝てて良かったなという感じです。 ――アンダーソン戦では、相手にバックを取られないよう、脇を差しての投げでパウンドで削り、後半にはフラッシュダウンも喫しました。ご自身で得た手応えと課題をどのようにとらえていますか。 平田 首投げの対策をされていたと思いますけど、組んだときに相手が自分より頭1個分くらい大きかったので、脇を差しやすいというのもあり、それに細かったので、腰に乗せちゃえばすぐに投げれました。普通に投げることができたので、それ以外の技術をもっとやろうかなというのが、今回の青木さんとの練習にも繋がっています。あと、ダウンは……ダウン取られたな、くらいの感じでした。 ――青木選手に教わっていることのひとつが、その柔道技ではない、レスリングの動きであると。 平田 そうですね。そこが大きいかなと思います。柔道技を対策されて、そこしか引き出しがなかったら終わりなので、両方できたらいい。その練習かなと思います。 ――練習の中で、特に青木選手から注意をうながされるのはどんなところでしょうか。 平田 柔道の構えとか、「身体の使い方が柔道っぽい」と言われるので、そこを嫌でも直さないとなと思っています。 ――GP1回戦では、平田選手がアンダーソンに判定勝ちのほか、リトゥ・フォガットがメン・ボーに組んで逆転の判定勝利、スタンプ・フェアテックスがアリヨナ・ラソヒナとの再戦でスプリット判定勝ち、ハム・ソヒがデニス・ザンボアンガに同じくスプリット判定で勝ちました(※ハム・ソヒが負傷でジュリー・メザバルバがスタンプと対戦)。GPの勝ち上がり選手を、どのように感じましたか。 平田 もう全試合判定だったので、横一線だったのかなと思います。なので、次戦までにいろいろな引き出しを増やしておきたいという思いが一番あります。どのポジションにいても、できることを増やしたい。でもそんなに長い時間ではないので、そんなたくさんはできない。大事なところに絞って引き出しを増やし、精度を高めたいです。 ――いまご自身で、このメンバーの中で武器になると考えている部分は? 平田 グラウンドかなと思いますね。ポジションキープも。技術的にもグラウンド好きなので、そこは譲れないかなと。 ――10月29日のGP準決勝の平田選手の相手となるフォガットは、9月30日の1回戦で、フィジカルも打撃も強い中国のメン・ボーと戦って、序盤は苦しみましたが、中盤から粘り強いレスリングで上を取って削って勝ちました。あの試合を平田選手は率直にどう感じましたか? 平田 最後、相手が疲れているときのタックルでポジションキープは強いかなと思うんですけど……それはこっちもしっかり分かっていることなので、もうそこの部分の練習はしていて、自分の良さをどれだけ3ラウンド目まで出せるかが勝負だと思います。それに、そんなすぐにグラウンドに行かないと思うので、しっかり打撃でも勝負したいと思っています。 ――フォガットにどこで上回るかといったときに、しっかり打撃でも勝負したいと。そして組んで上になることができた場合に、その先で“極める”ことができるかどうかが重要な試合になりそうだと感じます。そのフィニッシュの部分の強化も、青木選手との練習の中でやっているのでしょうか? 平田 そうですね。土曜日の練習でも、技術練習をしているので、そこで本当に細かい技術の練習とかもやりつつ、練習で出して、試合で出たらいいなという感じです。そんなにすぐにその成果が出せるか分からないですけど……チャレンジはしてみたいです。 ――かなり粘り強い試合になっても、そこで上回れるスタミナの自信はありますか? 平田 はい、あります。スタミナは負ける気がしないです。それに私、やっぱり打撃勝負もそろそろしないといけないなと思っています。 ――フォガットは「グラウンド&パウンドでフィニッシュする」とコメントしています。 平田 逆に、たぶん自分がそれをやって終わるんじゃないかなと思っています。自分的にはスタンドもパウンドも含めて、打撃も楽しみです。次の相手よりかは打撃も出来るんじゃないかなと思っているので、毎試合言っているんですけど(苦笑)、打撃もやりたいなとは思っています。フォガットには『待っとけよ』という感じです。 ――さきほど「横一線」と仰ったように、1回戦では全員が盤石という試合ではなかったように思います。その中で気になった選手はいますか。 平田 反対側、スタンプが上がってくるだろうなと自分の中では思っているので、そうなったら決勝はどういう戦いになるのかなって考えました。スタンプは私にとって、たぶん過去一番、打撃が強い選手。どれだけ食らうかが逆に楽しみです。 ――スタンプ戦も想定したときに、どこを注意が必要だと考えていますか。 平田 やっぱり下がることはちょっと……。スタンプが負ける試合って、相手がすごい気持ちが強くて前に出てくる選手のときなので、そういうところを見ると、自分も下がったら負けるなと思います。もうGPの試合は、毎回1回限りなので、後悔のないように試合をします。 [nextpage] ぬちゃぬちゃした試合になるかな(青木) ――青木選手から見て、平田選手のポテンシャル、あるいは課題はどんなところにあると思いますか。 青木 課題、ポテンシャル……。不真面目。まあ“不真面目な優等生”ですよね。一番強いと思いますよ、そういう意味では。 ――“不真面目な優等生”……どんなところにそれを感じますか。 青木 “真面目な優等生”が多いんじゃないですか。でも、平田さんは不真面目だから、基本的に自分でなんとかしようという気持ちがあるところがいいですよね。結局、上に行ったりとか、頑張る子というのは“不真面目な優等生”だから、そこはやっぱ強みじゃないですか。  腕っぷしが強くて、我が強くて気持ちも強い。周りと協調したり同調するわけでもなく、自分の道を行くというか、マイペースでやるという意味で不真面目ですよね。でも自分の軸はある。自分がやりたいことはあって──でもそれがなんだか的が外れているところはありますけど──それでも自分の形を作ろうというのは、僕はいいことだと解釈します。 ――単なるイエスマンよりはそっちのほうが伸びる? 青木 そうです。ただ真面目な子よりは全然いいと思いますけどね。周囲はあてにならないから。選手は自分で思考して作りあげていく能力も含めての実力。もっとしっかりやれよと思います。 ――先ほどシングル、ダブルレッグ、バックテイクとタックルからの展開を拝見しました。いま平田選手に一番伸ばしてほしいのはそのMMAのレスリングだということでしょうか。 青木 基本動作だけです。技術力でいうと、一切基本的な動作が入ってないので、そこの基本的な動作だけちゃんと繰り返しやってくれれば、あとは自分で考えていただければという段階ではあります。――逆にいうと、それでここまで勝ってきていると……。 青木 これでそこまで勝ってきてるのは、周りにも難があるということなんじゃないんですか。男子だったらちょっとあり得ないわけじゃないですか。 ――1回戦を踏まえて、平田選手ならここまでいける、という手応えをどれほど感じていますか。 青木 GP……どんぐりの背比べですよ。誰が勝つか分からない。 ――平田選手が「これが出来ればいけるんじゃないか」というところもありますか。 青木 それすらも分からないくらいどんぐりの背比べだと思います。 ――では、平田選手の対戦相手リトゥ・フォガットという選手について、青木選手はどういう選手と捉えていますか。 青木 別に特段強いとは僕は思わないんですけどね。特段強いと思わないから、まあ……ぬちゃぬちゃした試合になるかなと思いますけど、お互いフィニッシュが無いじゃないですか。その意味でいうと、どうなんですかね……。 ――となると、平田選手は極めが必須になってくる。そのポジションになるように上回ればいい? 青木 極めは無いですからね。無いものは仕方ないですよね。抑えてコントロールして“頑張って”勝つしかない。 [nextpage] 秋山成勲には「プロ格闘技をやってる」意地がない(青木) ――なるほど。ところで、青木選手自身は10月5日の『Road to ONE』で、キャプテン☆アフリカ選手とのグラップリングマッチを終えたばかりです。MMAの次の試合というのをどう見据えているのでしょうか。 青木 次の試合、あればやりたいですけどね。言うても僕、1月(ジェームズ・ナカシマにRNCで一本勝ち)、4月(エドゥアルド・フォラヤンに腕十字で一本勝ち)にいい勝ち方してるのに組まれないですからね。“何なんですかね”とは思いますよ。 ――その中で、日本でグラップリングで「試合」は行った。でも、やはりMMAとは違うものという感触でしたか。 青木 緊張感、無いでしょう。緊張感が無いなと思いますね。結局、周りの選手がちょっと足りないじゃないですか。それで俺のマイクひとつに話題を持っていかれてるんですよ。メインで誰が戦ったのか、もうみんな覚えてないんじゃないですか。そういうのをもっとみんな悔しいと思ったほうがいい。運営も結局、全部俺に任せてんじゃん。青木真也に全部任せてるわけですよ。青木真也に全部丸投げして、“この人だったらとりあえず形にしてやってくれるよね”みたいに。もうこのスタイルでやるのはしんどいなというのは、僕は思いました。 ――そこから脱して、ご自身の本戦の試合に進まなくちゃいけない。そしてそれはテーマのある試合であってほしいと思います。 青木 そうですね。青木がやることに価値があるなとは思います。その意味では『Road to ONE』を通過して絶望感はあります。虚無感というか。今に始まった話じゃないかもしれないけど。 ――でも38歳と決して若くはない中でも、「もっと試合をしたい」という気持ちは常にあるんですね。しかも格闘技として厳しい試合を。 青木 そう、もっと試合をしたいし、もっといいものを作りたいんだけど、今の状況で何をどうするんだ、というのもあります。 ――『Road to ONE』では、解説席の秋山成勲選手に問いかけました。12月のONE Championshipでなぜ試合を断ったのかと。秋山選手に関しては、DREAMの頃から対戦を要求したことがありましたが、以前からどんな気持ちで見ていた選手ですか。 青木 見えない。本当のことを言わなくて、見えないやつだったんだけど、ここ2、3年、ONEに来て、綺麗ごとを言うじゃない。“だったらお前、やれよ”と思う。『Road to ONE』でもオープニングで「やる」とか「やらない」とか綺麗ごとを言うから、リング上で詰めた。「逃げました」と言え、というだけですよ……“虚構”だったってことなんですよ。もう別にここからもう1回関わるか、というとその気はないですね。 ――12月の秋山戦のオファーがあったのは9月6日。青木選手は即OKしたと。その後、返事を4週間待たされ、結局、怪我によりNGと。このことで、いまはかなり冷めた状態でしょうか。 青木 僕はもうまったくいいですよ。もう関わりたくない、本当に。関わりたくないという感情が強いですね。だったら最初から断れよということだし、尊敬とか敬意とかよく言うけど、そういうものが感じられないよね。それに“プロ格闘技をやってる”という意地がないよな、とは思います。 「格闘技」というものの中で、みんなで作るものなんじゃないのと思ったけど、結局みんな綺麗ごとばかりで、自分のことばかりで、何かイベントが始まれば、全部丸投げしてやらせるわけでしょう。結局、お前ら虚構じゃんって、何も無いじゃんっていうのは思いましたけどね。 ――その意味で、これまで相手とも主催者とも互いに、綺麗ごとではなくいいものを作れたと感じた試合はあるのでしょうか。 青木 どうだろう……桜庭×青木とかは2人で作り上げるものだなという共通の認識は、最低限あったと思います。でもいまは……もう、あまり求めるのやめようかなと思ってます。自分のことだけやりたいなと。青木に特化する。こんなに虚無感を感じたことは無いです。バカにされているような感じで。 ――「自分のこと」を考えたときに、9月24日のONE世界ライト級選手権試合で王者・クリスチャン・リーに判定勝ちしたオク・レユンの試合を青木選手はどのようにご覧になりましたか。 青木 ONEの基準だと、僕はクリスチャンが勝ったかなと思いましたけどね。やっぱり判定システムが5Rのトータルジャッジだと難しくなりますね、戦略の差が出た気がします。 ――序盤に明確にフィニッシュに近づき力を使った感もあるクリスチャンは、後半に攻勢に立ったオク・レユンとそんなに差はなかったはずだと。 青木 クリスチャンのほうがニアフィニッシュがあったはずなので、そこは僕はえっ? と思ったけど……。でも判定は分からないものですよね。 ――その試合は、ご自身とはつながっていないんですか? リマッチになってしまう可能性もありますが。 青木 うーん、言っても僕、チャンピオン下がってから4連勝してるんですよ。うち3試合が1Rのフィニッシュなんです。それでチャンピオンシップが回って来ないんだったら……言ったってしょうがなくね、と思ってます。また回ってきたら……まあ、あまりあてにしてないところもあります。 ――青木選手のMMAの試合も楽しみにしているファンも多いと思います。平田選手にお聞きしたいのですが、指導者として見た青木選手ってどんな人ですか。 平田 青木さん……いつも優しいので。本当は優しいです。 青木 俺さ、試合の日とかにいろんなことを言われることがあったんだけど、(平田が)こうして言葉をめくって、実は読み取れる人だということが分かって、ちょっと嬉しい(笑)。人間性が作られた人なんだなと思いました。 ――ちなみに、お2人って練習後にお茶してコミュニケーションを図ることなどもあるのでしょうか。 青木 僕、まったく平田樹に興味ないですから。逆もそうだと思いますけど。格闘技以外ではあんまり興味ないです。 ――格闘家としてだけ興味があると? 青木 格闘家としてもあんまり興味ないのかもしれない(笑)。 ――では、どこに興味があるんですか。 青木 練習してれば……、ここに一緒にいればやりますかって感じです。 平田 練習前後でいろいろ話をしたりするんで。そこでコミュニケーションを取ってます。 ――お互いにあまりプライベートのことを話さない人ですか。 青木 プライベートのことは、僕が彼女のSNSを見て、想像して、大体のストーリーラインを組み立てて確認するというか、お伺いする感じですね。大体外れないので。 平田 えー(苦笑)。 青木 分かりやすい方なんですよ。なので、差し支えない範囲で伺わせていただいて、差し支えない範囲で表に出させていただく感じですね。 ──差し支えない範囲で(笑)。「青木学校」の様子とともに試合を楽しみにしています!
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