2021年10月17日(日)名古屋国際会議場イベントホールにて『HEAT 49』が開催され、女子59kg契約で中井りん(修斗道場四国)と鈴木万李弥(志村道場)がミックスルールで対戦した。
オープンフィンガーグローブ着用で、1Rはキックボクシング、2RはMMA(総合格闘技)で戦う今回のミックスルール。「非公式試合」としてKOや一本で決着した場合にも結果は「勝敗なし」となり、時間内に決着がつかない場合も判定も行われない。
中井は柔道出身で、2006年10月にMMAプロデビューを果たすと、国内で16勝無敗1分の戦績を引っ提げて2014年9月にUFC参戦。2016年7月からは国内に復帰し、再び無傷の6連勝を飾っている。前戦は2019年10月に計量オーバーで失格となったKINGレイナの代役として試合前日にオファーを受けて緊急参戦し、63kg契約でダイヤモンドローズ・ザ・ロケット(タイ)に1R3分20秒、腕十字で勝利した。今回は約2年ぶりの待望の試合となる。
鈴木は7歳で硬式空手を始め(全国3位入賞)、2016年11月にキックボクシングでプロデビュー。2018年12月からはMMAにも挑戦する“女・二刀流”として活躍。2020年1月の試合で前十字靭帯損傷を負って3月に手術を行い、入院を経てリハビリ生活。3カ月間ニーブレスを付けたままの生活を余儀なくされていたが、リハビリ&復帰へ向けたトレーニングを経て、2021年4月に執念の復帰。57kg契約のキックルールで強豪の村上悠佳に判定2-1で敗れるも、女子の年間ベストバウト級の試合をやってのけた。
[nextpage]
1R目のキックルールは際の打撃で魅せた中井
▼59kg ミックスルール 3分2R(1Rキック、2R MMA)-中井りん(修斗道場四国)[2R 0分22秒 勝敗無し] ※パウンド-鈴木万李弥(志村道場)
ケージでオープンフィンガーグローブでの試合。中井は両ヒザにサポーター。鈴木のチームにはJ-GIRLSフライ級王者の梅尾メイもつく。
1Rはキックルール。ともにオーソドックス構え。ホーンに先に中央に出て行った鈴木。左ジャブで前へ。前傾姿勢の中井はガードを高く上げ、左右フックを振る。鈴木のワンツーを外した中井。鈴木の左ローに右ローを合わせて前に詰める。
下がりながらも右ローを打つ鈴木に、蹴り足をキャッチし崩す中井。片足を掴まれ手をマットに着く鈴木。マスクを着用したレフェリーが間に入る。ブレーク。再開。
先に右ローを当てる中井に左右のワンツーで前に出る鈴木は左ハイまで繋げるが、中井も前進しながらハイから右ストレートを振る鈴木を掻い潜りクリンチは中井。鈴木を放し際に左を振るが、ここは鈴木もかわす。
中井の頭を下げた右オーバーハンドフックに狙っていた右のアッパーを突く鈴木! 肩口で受ける中井は首相撲に掴むが離れる。
ガードを固めて前に詰めて来た中井に右ローを当てる鈴木。しかし中井も右フックをヒット! 鈴木もすぐに右を返すが打って離れている中井がかわすと今度は左オーバーハンドも! しかす続く右ローに鈴木は右を合わせに行く。
上体を立てて圧力をかけてワンツーは鈴木だが、近距離での圧力は中井。一瞬組んでからの左に鈴木は後退。WILD宇佐美館長の「頭を動かせ」の声に頭を振って前に出る中井は、鈴木の左ジャブに頭を寝かせて右オーバーハンド! 交錯際ですぐに右もダブルで打ち込む。しかし、この打ち終わりに鈴木も4連打で前へ!
左にさばいてかわした中井に、鈴木は左の高い前蹴りを顔面に!歓声が挙がるが、続く右ローを掴んだ中井はシングルレッグ気味にタックルから軸足を払いテイクダウン。レフェリーがブレークする。
立ち上がる鈴木の左に右オーバーハンドを強振する中井。鈴木はジャブから右フック、しかし中井も先手で右から左を振る。鈴木の左ジャブを右に潜り、片手首相撲から左ヒザを連打で突く中井。レフェリーが両者を分ける。
鈴木の左ローをもらいながらもカウンターの右ストレートは中井。手数を止めず先に右から右ローも打つ。鈴木の大きな左フックを左にかわしてバックにつく中井だが離れる。
距離が空くと、右オーバーハンド。近づけばすぐに左ヒザを突く中井。その離れ際に左ハイをかすめる鈴木は、その回転のまま右バックフィストを振るが、ここは察知している中井が懐に入り、背中を向けた鈴木のバックにつく。ブレーク。
前重心の中井の前足を蹴りたい鈴木だが、中井はセコンドの「もっと動け」の声にステップを踏み、鈴木が入ってきたところに右オーバーハンドをヒット! すぐに前に出る鈴木は左ローを返すが、蹴り足を掴んだ中井が押し込む。
今度はいきなりの右で入った鈴木。左を振りながら頭を振ってクリーンヒットは逃れる中井。鈴木の下がりながらの右ローに右ストレートをヒットさせる。「やれてるよ」の声に首相撲からワンキックのヒザを突く中井。すぐに離してショートの右左をヒットさせ、右ローまで繋ぐなど際の打撃で前に。
左でガードを固め、右手でプッシングして金網に詰めた中井は、左ヒザ! 頭が下がる鈴木に右ヒザ! さらに首を離してすぐに右アッパーと金網際の近距離の打撃で攻勢に立つ。
金網背に鈴木も右を振り、右の蹴りもスペースが足りない。中井は右フックで釘付けにし、思わず蹴り足を掴んで軸足を払おうとする。ここは片足立ちで耐えた鈴木。
ブレークから中央で再開。左ボディから右フックのコンビネーションを見せる中井。鈴木は左前蹴りは浅い。そのまま右バックフィストは空振りに。残り30秒。中井の右ローに左を打ち下ろした鈴木。
しかし続く鈴木の左をかわした中井は組んですぐにヒザ。クリンチアッパーを突くが、鈴木も負けじと右フックをダーティボクシングで返す! 鈴木のワンツーをブロックして左を刺す中井。鈴木の左の入りにカウンターの右オーバーハンド!
中井の右ローに鈴木は右のカウンター! 上体が上がる中井だが、すぐにアゴを引き、左フックを返す。残り10秒の拍子木に右ローからまたも鈴木の打ち終わりに懐に踏み込む中井は左ヒザ、ワンツー・右の蹴りの圧力で鈴木を下がらせて、金網を背させると右フック、左アッパー、右ストレートの対角線攻撃でラッシュ! 鈴木の左の返しにも左を打ち返し、鈴木が下がったところで、立ち技の1Rのゴングが鳴らされた。
[nextpage]
2RのMMAルール、つけ入る隙を与えないテイクダウン
2R、MMAルール。細かくステップを踏む鈴木に、右のオーバーハンドから入る中井はそのままファーストコンタクトで組んで右足で鈴木の前足を刈りながらテイクダウン! 足を効かすことができず後方に倒れた鈴木は亀になって立とうとするが、中井はそこを逃さず、すぐさま両足をかけてバックマウント!
背後から右の高速パウンドを連打しつつ、両足で鈴木の両足を後方に伸ばしてうつ伏せに潰すと、左手を脇の間に挟む鈴木に、背後から右手でパウンド! 身体が伸びたまま頭を防御する鈴木に左手のパウンドも入れ、バックマウントのまま左右のパウンドラッシュ! ヒザを立てることも出来ず動けず打たれるままの鈴木を見て、レフェリーが間に入った。
仰向けに倒れたままの鈴木に駆け寄る中井は、鈴木をハグ。上から鈴木の手を取ると鈴木を引き上げた。最後はパウンドアウトした中井だが、「勝敗無し」のコールで両者の手が挙げられると、2人はがっちりハグ。中井は恒例のバック宙を披露してケージを降りた。
2年ぶりの実戦で様々な動きを試すように打撃戦も戦った中井は、試合後、「HEATの大会に出させていただきありがとうございました。万李弥選手は強かったです。私の試合はいつも支えてくれる皆様に捧げるつもりでしています。本当に感謝しています。これからも応援よろしくお願いいたします」と語り、SNSでも「MIXル-ル終える事が出来ました。志村代表 私を出場させて頂き有難う御座いました。レフェリージャッジ審判団の皆様スタッフ関係者の皆様お世話になり有難う御座いました。お疲れ様でした。鈴木万李弥選手 有難う御座いました。ファンの皆様に感謝しています。有難う御座います」と、対戦相手、ファン、関係者に感謝の言葉をツイート。
59kgのオープンフィンガーグローブ戦で打ち合った鈴木も、「間違いなく、最高の日になりました! たくさんの応援ありがとうございました!! 中井りん選手に抱きしめて貰えた私は最高に幸せです」と、中井にハグされた試合後を振り返った。
今回の試合は、非公式戦のため公式結果は「勝敗無し」だが、TKOで終えた中井はステップに課題も、予想以上の立ち技の動き、そしてMMAではつけ入る隙を与えなかった。果たして中井の次の公式戦はいつになるか。(※ほか試合は後程掲載)