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2021年10月2日の「UFC Fight Night: Santos vs. Walker」のコ・メインイベントのミドル級戦で、偶発的なバッティングにより、ノーコンテストとなったケビン・ホランド(米国)が、自動車泥棒を“逮捕”した。
米国ラスヴェガス「UFC APEX」で開催されたUFNでホランドは、MMA10勝2敗のカイル・ドーカス(米国)を相手に踏んだり蹴ったりの内容だった。
試合中に喋ることでも有名なミドル級14位のホランドだが、この日も余裕を感じさせる、お喋りグラップリングを展開。ドーカスのテイクダウンに立ち上がり、何やらコーナマンに語りながら試合を進めていた。
しかし、その口を黙らせるアクシデントが起きた。
1R、オーソドックス構えから左フックでステップインするホランドに、サウスポー構えのカイル・ドーカスが頭を下げて避けてボディロックへ。その際にドーカスの右側頭部がホランドの左顔面にバッティング! ホランドは明らかに失神してヒザから崩れ落ちてマットに顔を打ち付けてダウン。
その衝撃で気を取り戻したのか、ホランドはグラウンドで正対してガードを取るも、両足をかついで後転させたドーカスが鉄槌の連打。さらにアナコンダチョークへ! 続けてハイエルボーのノーアームギロチンチョークも。首を抜いたホランドは立ち上がるが、そこにスタンドバックを奪ったドーカスが背中に跳び乗って、リアネイキドチョーク! タップを奪った。
ホランドに頭突きがあり、そのダメージによりダウンしたのは明らかだが、ホランドがすぐに気を取り戻したためか、試合はそのまま続行。ホランドはアナコンダ、フロントギロチン、バックチョークと絞めのフルコースを受けてタップを余儀なくされていた。
その場でジャッジおよびコミッションら関係者が話し合い、試合結果はノーコンテストに。失意のまま、ホランドはヴェガスを後にした。
#UFCVegas38 Official Results: Middleweight Bout: Kevin Holland vs Kyle Daukaus ruled a No Contest (accidental headbutt) at 3:43 of Round 1
— UFC News (@UFCNews) October 3, 2021
しかし、地元テキサスでのホランドは、相手をキャッチすることに成功した。
MMAコーチのシュグ・ドーシーと本人のSNSによると、朝方、ホランドからドーシーに電話がかかってきて、ホランドは「いま君の家の近くで泥棒を追っかけてんだよ」と言ったという。
地元のガソリンスタンドに車を停めていたホランドは、「車が盗まれた」と騒ぎになっているところに居合わせた。目標を定めたホランドの追跡が始まった。カーチェイスさながらの捕物帳のなかで、車泥棒は前後に2度クラッシュするも、ホランドはその男を追い詰めることに成功。
車外に引きずり出した際にいったん下になったホランドだが、「スイープして上を取って、腹にヒザを乗せて固定させて、“ハビブ・スカーフホールド”(袈裟固め)に。そしたら泥棒は『い、息が出来ない』ってなった」。
ホランドは試合の鬱憤を晴らそうとしたわけではないようだ。犯人を取り押さえてるところに、盗まれた車のオーナーが駆けつけ激昂してサッカーキックで蹴り上げようとしたところ、ホランドは「それは止めときな」と制したという。「落ち着け。俺が抑えてるあいだにコイツに攻撃したら、俺がお前をやっちまうぜ」と諭すと、オーナーも「分かったよ」と怒りを鎮めた。合流したコーチの動画では、ホランドが車泥棒の左手を首に巻いて後ろで縛っている姿が確認できる。
ジョルジュ・サンピエールに憧れ、「たまたま入ったジムでカンフーのクラスに出た16歳からトレーニングを始めた。自分ではかなりデキるヤツだと思っていたんだけど、トレーナーにこてんぱんにやられた」と、UFCのアンケートに答えているホランド。
電気技師の見習いとして働き、カンフー二段の黒帯となり、トラヴィス・ルターの下で柔術茶帯を巻いた。ヒーローはバットマンとダナ・ホワイトというホランドは、11月13日にドーカスとの再戦が決定している。
果たして再戦では、車泥棒のようにドーカスを捕えることが出来るか。地元メディアは、「車を盗もうとしないように。特にケビン・ホランドの前では」と注意をうながしている。