MMA
インタビュー

【RIZIN】なぜ朝倉未来は萩原京平を「ドミネート」したのか?

2021/10/03 11:10
 2021年10月2日(土)に開催された『RIZIN LANDMARK vol.1』のメインイベントにて、朝倉未来(トライフォース赤坂)が萩原京平(SMOKER GYM)に判定3-0で勝利。6月のクレベル・コイケ戦の一本負けから再起を飾った。  試合は、戦前に朝倉未来が予告していた通り、“汗かき仕事”をやり抜いての完封勝利だった。萩原をテイクダウンしたのは、シングルレッグではなくニータップ。  得意の左ストレートを突いて肩を押しながら、右手で相手のヒザ裏を掴んで倒す、元UFC世界王者のフランク・エドガーやジョルジュ・サンピエールが得意とする形で、朝倉の打撃の踏み込みの強さを活かした形だ。  試合前に「今後待ち構えている敵はもっと強いし、RIZINの枠をもし出る時にもっと異次元な精神力を持っているヤツらが待ち構えているのでそういうのを経験したい。そういう練習をしてきたので。今まではキツい展開を避けて来たけど、あえてそこに挑戦できるマインドを準備できたというか。もしキツい展開になったとしても根性でいける自信があるので、そういう試合もやってみたい」と語っていた朝倉。  その言葉を裏付けるように、かつて魔裟斗を指導し、現在は朝倉のスタミナトレーニングを担当する土居進トレーナーも「今までスタミナ的に“辛いこと”を経験してなかったので、そこに刺激を与えて、どれくらいが辛いのかを身体に覚えさせた段階です。本人のなかでもどこまで行けるのかの感覚は身についてきているので、ここまで持っている最大の能力をちゃんと出せるようにしました」と、負荷をかけた練習で、底上げされたスタミナのほんとうの底を現在の未来は知ってるという。  試合後に、それがどれだけ試すことができたのかと問うと、朝倉は「いや、(キツい展開には)ならなかったですね。そんなに息も切れずに終わったので。(萩原が)もうちょっと立つのが上手いと思っていたので、テイクダウンが今のように取れるとは思っていたんですけれど、もっと立たれて打撃の展開になって打撃の展開からテイクダウンに行って……というのが続いたらもうちょっと僕も精神的にも体力的にもキツくなっていたんじゃないかなと思っていたんですけれど」と、MMAとしてのさらなるタフな展開を求めていたと語った。 [nextpage] 激しく暴れてでも立ち上がっていたら──(萩原)  敗れた萩原は、事前に朝倉のテイクダウンを想定しており、テイクダウンを切れずに下になったとしても、バックを取られるリスクを取りながら、相手に背中を見せて立ち上がり、正対する作戦を立てていた。  それが序盤は成功したが、中盤以降は、スタミナも切れない朝倉が、力強くテイクダウン、萩原に背中を着かせるコントロールから、ヒジ・ヒザを突き、削っていった。  萩原は「テイクダウンを取った後のトップコントロールが想像していたよりも上手かった。バックを取らせて立ち上がる作戦で、その通りやってるつもりだったけど、なかなかそこからの展開が作れなかった。向こうのほうが上手でした。激しく暴れてでも立ち上がってたら展開は変わってたかも……」と唇を噛んだ。  打撃では三日月蹴り、ハイキック、カーフキックも当てた。萩原を指導する元シュートボクシング王者の吉鷹弘氏は、「朝倉選手に負けている選手は、みんな中に入れないで後退させられている。京平は中に入ることが出来る」と評していたが、この試合で萩原があと一歩中に入れなかったのは、朝倉の打撃ではなく、テイクダウンプレッシャーを受けたからだった。 「1、2Rを取られているのは分かっていたので、3Rは自分から仕掛けて行こうかと思っていたのですが、そこのスイッチが入る前にテイクダウンを取られてしまったので、自分のやりたいことができなかった。相手も確実に勝ちに来た。相手の弱いところで戦うのがMMAだと思っているので、その逆転を試合までに克服できなかった僕の実力不足と練習不足です」と萩原も完敗を認める。  右利きサウスポーの強い打撃。さらにテイクダウンプレッシャーも獲得した朝倉だが、組み技の課題が見えたのもたしかだ。 「(グラウンドで)1回だけ返されたかな。萩原選手の身体の強さが思ったよりもあって。そこもその後のラウンドでは修正しました。バックに回ったのは、萩原選手の弱い部分はそこで、そういう展開を選ばざるをえなかったから」と、バックテイクから極めのチャンスを掴みながらも、極めまでに至らなかった理由も語っている。  テイクダウンから、片足を入れたままハーフガードの中から相手の脇を差してパウンドで削り、その過程で足を抜いてしっかりパスガード。サイドから鉄槌の連打、さらにヒジを打ち落として、萩原の左目上をカットさせた。  抑え込んで削るときに、笑顔を見せたのは、「いや、萩原君と目が合って。疲れていたので『ちょっと動けよ』と言ったんです。それでちょっと笑ってしまった」と、完全に試合をコントロールしていたことを明かした。 [nextpage] 朝倉は斎藤裕に「年末とかに受けてもらえたら」  試合後は、リングサイドの解説席に座るフェザー級王者の斎藤裕(パラエストラ小岩)に、「斎藤選手とクレベル選手にやり返すためにすごいキツイ練習をしてきました。また年末とかに受けてもらえたら」と再戦をアピール。  解説席の斎藤も「すごくトータルで強くなったところを見れました。また対戦の機運が高まれば。僕は10月24日(横浜大会)にしっかり勝ってから考えたいです」と前向きに返答。朝倉は「あとは流れに任せます」と語っている。  試合後に王座挑戦をアピールした、その真意を問うと、朝倉は「やっぱり俺が巻かないともっと盛り上がらないのかなと思っていて。RIZINのフェザー級のチャンピオンベルトは俺が一番似合うと思うので。それに今までも“俺が引っ張ってきた”という自負があって。リベンジしたいのも含めてチャンピオンベルトを巻きたい」と、勝つ時も負ける時も、常に自身を中心としてフェザー級が、RIZINが動いてきた自負ゆえに、その象徴であるベルトを巻きたいとした。  何より「やられたヤツにはやり返す」のが信条だ。朝倉は斎藤のみならず、クレベルにも「リヴェンジしたい」とはっきりと言った。それは敗者の萩原も同じで、「試合後は『また絶対やり返す』ということを(朝倉に)言いました。朝倉未来に辿り着くまでに死にものぐるいで練習して、試合もバンバンやっていく」と、再起を誓う。  大会後、榊原信行CEOは、打撃戦とはならなかったメインイベントについて、「萩原と朝倉の試合が素晴らしいというか、格闘技ならではの緊張感と、重たい空気のなかではあるけれども、しっかり勝負論と、互いに準備をしてきた選手でしか作れない戦いの空間の臨場感を醸し出してくれたということに、主催者として嬉しく思います」と評価。  敗れた萩原についても、「負けましたけど萩原の存在感は光った。8戦で未来に辿り着く、プロとして持ってなくてはいけないカリスマ性をすごく感じる選手。僕自身の反省でもあるけど、未来戦の前が大晦日の平本蓮選手との試合で、どこかでもう1試合挟めたら良かった。試合から遠ざかっていたことも敗因かもしれない」と試合勘が万全ではなかった可能性も示唆した。 「控え室で泣いていましたが、『やり返す』ということをリング上ですでに呟いているとするなら、歩みを止める気ではないと思う。年内に試合を組んでしっかり試合経験を積んでもらい、未来なりトップ戦線に繋がる実績を作る機会をあげたい」  王者・斎藤への挑戦者については、大会前に、この朝倉vs.萩原の勝者を待つことも語っていた榊原CEOだが、「朝倉選手は試合後、ちょっと足首を痛めたと言っていたので、10.24 横浜大会に志願してきても、そこじゃない。24日に未来以外の選手とのタイトルマッチで、斎藤がタイトルを防衛した先に、年末に盤石な形で、未来と斎藤の再戦があってもいいと思う」と、再戦は年末で、横浜大会ではフェザー級の王者クラスと交渉中であることを語っている。  フェザー級では、王者・斎藤裕を筆頭に、クレベル・コイケ、朝倉未来、ヴガール・ケラモフ、堀江圭功らが存在感を示しており、国内王者では、DEEP王者の牛久絢太郎、PANCRASE王者のISAO、現修斗王者のSASUKEもRIZINではまだ試合を行っていない強豪だ。  さらに、10月の横浜大会では、金原正徳が復帰戦で芦田崇宏と実力者対決、中村大介と新居すぐるのアームロック対決、白川陸斗と山本琢也のDEEPvs.GRACHAN対決が組まれており、斎藤、朝倉と激闘を繰り広げた摩嶋一整、弥益ドミネーター聡志も控えている。ニューカマーでは、『LANDMARK』で鮮烈MMAデビューを果たした鈴木博昭も注目だ。  果たして、10月の斎藤裕の「防衛戦」の相手は誰になるか。  榊原CEOは「鈴木選手はさすがにここがデビュー戦なのでいきなりタイトルは一足飛び。リストアップしている選手に十分候補の選手が何人かいるので、そのなかから選べたらいい」と語っている。
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