2021年9月3日(金)、シンガポール・インドアスタジアムにて「ONE:EMPOWER」が開催された。女子のみの同大会では、アトム級ワールドGP1回戦4試合が行われ、日本の平田樹が米国のアリース・アンダーソンと対戦。判定3-0で勝利し、準決勝進出を決めた。
長身のアンダーソンに対し、スタンドでも近い距離で戦うことが出来た平田は、組んでの投げもこれまでの首投げから、ボディロックテイクダウン、さらに脇を差しての払い腰で、柔道技を活かしつつも柔術を得意とするアンダーソンにバックを取られることなく、サイドから相手をコントロール。ヒジ・ヒザで削っていった。
最終3Rも、アンダーソンの右をダッキングでかわすなど自身の距離で戦えていた平田だが、アンダーソンの右のバックフィストを避けて下がりながら右を振ったところに、アンダーソンは一瞬頭を下げての右のオーバーハンドをヒット。ダウンを喫した平田だが、すぐに足を手繰り、右脇を差して立ち上がり、残り40秒で右で差したまま腰に乗せてテイクダウン。サイドも奪取し、勝利を決めた。
ユナニマス判定の勝利コールにも渋い顔を見せた平田は、試合後の囲み取材で、「“やらなきゃ”ってギクシャクした気持ちでした。自信はあるし落ち着いてはいたんですが、試合で出せなかったら意味ないなってすごい思ったし、他の選手を見ているとやっぱり打撃の選手が強いので、自分の穴がよく見えた反省の試合だったかなと思います」と終始、笑顔を見せず。
日本代表として、GPを勝ち上がったことを「日本でただ一人だけっていうところが自分の中でとても嬉しいです」と語った。
最初に準決勝進出を決めた平田に加え、ハム・ソヒ、スタンプ・フェアテックス、リトゥ・フォガットの4選手が勝ち上がり。勝者の誰もが課題を抱える中、ファン投票ではどんな組みあわせとなるか。
ONEの投票サイトにてファン投票がスタート。投票期間は9月10日までの1週間で、結果は9月24日の次回大会「ONE: REVOLUTION」で発表される。
次の試合に向けてまた頑張れる課題ができた
──勝利おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください。
「うーん、まだまだって感じですかね」
──3Rにアンダーソンの右オーバーハンドを貰ってダウンしたように見えました。そこからシングルレッグで立ち上がり、見事にカムバックし、勝利を掴みました。ピンチを乗り越えて勝つというのはどういう気持ちでしょうか。
「初めてパンチで倒れたので、新鮮な気持ちです。グラつくよりかは、一瞬天井が見えて意識はずっとあったので。ダウンというかは、一瞬倒れたくらいですぐに立て直せました。でも、次は絶対に打撃が強い選手が来ると思うので、絶対こんなもんじゃないんだろうなって思います」
──準決勝の対戦カードはファン投票ということですが、平田選手はこの決め方をどう思いますか。
「ファン投票は良いと思います。自分もこっちにきてルールミーティングの前にこの説明を聞いたので、それで選手もモチベーションが上がったと思うし、関係者側より見る人が見たいって思う試合をすることが皆んなをハッピーにさせることだと自分も思っていたので、このファン投票に関しては大満足です」
──次の準決勝はファン投票で対戦相手が決まりますが、もし選べるなら戦いたい選手はいますか。
「まだ全部の試合結果を見ていない(※勝者インタビューは大会途中)ので、誰が勝ち残っているかは分からないんですけど、ファン的にはスタンプ(との対戦)の票が多いのかなと思うので、自分の予想ではスタンプかなって思います」
──今回の「試合内容に満足していない」というコメントもありましたが、次に向けて改善していきたいことはどんな部分でしょうか。
「やっぱり練習をしているだけあって(試合の中で)色んなことをしました。打撃もしたし、グラウンドもしたんですけど、パウンドとかポジションのキープは良かったと思います。でも、それ以外の寝技の技術や立ち技の技術も練習してきたので、それを出せなかったのが悔しいです。次の試合に向けてまた頑張れる課題ができたので、まずは勝てて一安心だなと思います」
──先ほどスタンプ選手と当たるだろうと予想していましたが、実際にその試合が組まれた時はどのような試合の流れになると思いますか。
「完全な打撃の選手なので、すごい打撃に拘って来るだろうなと思います。今日、自分がダウン取られたところとか見られると、やっぱり打撃に穴があると思われると思うので、(スタンプは)グラウンドなしの打撃だけだなって思いますね」
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(ハム・ソヒ戦は)もっと練習しないと手の届かない存在なんじゃないかなと思う
──試合当日のインスタグラムの投稿や、試合の入場の時も、とても落ち着いていて自信に満ち溢れていたように見えました。自信の表れが試合にも出たと思いますが、その要因はなんだと思いますか。
「練習期間が長かったので、それだけ自信がつくほど練習をしてきました。(練習してきた)技術はもっといっぱいあったんですが。約1年半ぶりに本戦に出て、緊張よりかは戻ってきたなという気持ちがありました。それと同時に、“やらなきゃ”って気持ちがあってギクシャクした気持ちでした。自信はあるし落ち着いてはいたんですが、試合で出せなかったら意味ないなってすごい思ったし、他の選手を見ているとやっぱり打撃の選手が強いので、自分の穴がよく見えた反省の試合だったかなと思います」
──スタンプ選手との試合をファンは見たいだろうとお話ししていましたが、リトゥ・フォガット選手も準決勝に勝ち上がりました。レスラーのリトゥ選手との試合はどう思いますか。
「全然アリだと思います。トーナメントは判定が多いと聞いたんですけど、本当に僅差でみんなが同じくらい強いので、本当に誰が来ても良いように練習します」
──アトム級WGPの交替試合に出場した山口芽生選手は残念ながら敗退してしまいましたが、平田選手が日本を代表する形となりました。日本を背負うというのはどういう気持ちですか。
「光栄に思います。日本人だからこそ、日本の強さを見せないと、というプレッシャーであり、モチベーションがあります。やらなきゃ、やらなきゃって思うよりかは、自分が持っている良いものは全て見せたいなって思います。日本でただ一人だけっていうところが自分の中でとても嬉しいです」
──ハム・ソヒ選手がザンボアンガ選手に勝利しました。ハム・ソヒ選手はとても長いキャリアを持っていますが、このグランプリを優勝するのには彼女を倒さないと、と思いますか。
「そうですね。一番注目されていて、一番強いって言われているだけあるし、経験してきた場数が違うので、やってみたいという気持ちもあるんですけど(自分の)今日の試合を見る限り、もっともっと練習しないと手の届かない存在なんじゃないかなと思うので、自分を責めるではないですけど、もっとやらなきゃなって思います」
──少し気が早い質問ですが、このグランプリで優勝すると現世界王者のアンジェラ・リーと対戦することになりますね。もし平田選手がアンジェラ選手と対戦したら、どんな試合になると思いますか。
「今日の相手もそうなのですが、アンジェラ・リーは身長も大きい選手でリーチも長いしフィジカルの強さもあると思います。それに負けないようにどう対策するかだとは思いますが、(彼女は)柔術もできるし、グラップリングも上手だし、打撃もできる穴の少ない選手なので、気持ちでぶつかる試合になるのかなと思います。ずっと対戦してみたいって思っていたので、トーナメントで優勝してアンジェラ・リーに挑みたいです」