「遂に来ましたよ、俺も。ボクシングのパンチ力をより上げるために」──朝倉未来が12日、元ボクシング世界王者の内山高志にボクシングのパンチの指導を受けた動画をYouTubeにアップした。
地元・豊橋時代からボクシングジムに通った経験がある弟の朝倉海と異なり、未来はボクシングを習ったことはない、という。YouTubeの企画で京口紘人とスパーリングし、“レジェンド3人”(渡嘉敷勝男、竹原慎二、畑山隆則)の指導を受けたことがあるが、本格的な指導を受けるのは初。
「KOD LAB」の更衣室では、隆起した肉体も披露し、「毎日ウェイトトレーニングにハマっちゃって。腕、デカくなったでしょ。足もスクワットをやっている。130kg×8回を4セットやった。問題は嫌々やってるんじゃなくてハマっちゃってること。ウェイトはマジでいいよ。アドレナリン出るじゃん。上げる時に”ウワー”って。それが喧嘩の時と似ていて」と、自身の変化を語った。
「持っているものを全部、1.5倍くらいにしていきたい」という未来は、ウェイトトレーニングのみならず、スパーリング中心だった練習を変え、クレベル戦の1カ月前からミット打ちを開始。さらに「寝技・グラップリングだけの日」を設定し、今回の撮影前もトライフォースの柔術家と「7分5Rをやってきて腕がパンパンです」と、あらたに組み技にも力を入れていることを明かした。
(C)朝倉未来チャンネル
そんななか、内山が構えるミットに「いきなり本気で打っていいんですか?」という未来に、「いいですよ」と答える内山。
サウスポー構えから快音を響かせる右ジャブ、そしてワンツーの左ストレートに「おお、いいね」と声が出る内山は、ストレート、フックに「やっぱり右は(パンチ力が)ありますね」と未来の本来の利き手である前手のフックを絶賛。そして、ミットを受けながらも未来の足をチェックしている。
未来のストレートについて、内山は重心が前足に乗せられていて、当たる瞬間のインパクトがあると評価するものの「最初の力みがデカいんで、脱力したところから、当たる瞬間に腰を回すスピードで打つ」と指導。
すぐに未来が力を抜いて、腰を回して打つと「こっちの方がスピードが上がるし、ミットを合わせにくいから、見えないパンチは効く。この方がダメージを与えられる」と、“KOダイナマイト”の極意を伝授。未来も「これだけで来た甲斐がありました」と笑顔を見せた。
さらにパンチが内側に流れる癖を、相手にダメージを逃がされないように真っすぐに突き出すように指導する内山。そのアドバイスを受けて打つ未来は「ミットのときから全然違う。力が流れていないときは拳が痛い」と違いを実感。すぐに採り入れてみせた。
そして、左ストレートに続き、未来の武器である右利きサウスポーの前手の右フックをあらためてミット打ち。
「強い!」と感嘆する内山は、さらに未来の後ろ足の動きをチェック。フックを打つ際に後ろ足を回さないで止めて、反対側の身体にブレーキをかけることで力を逃さないこと、そして、後ろ足を回さず止めることで、次の左ストレートにスムーズに繋げることが大事だと指導した。
フックで身体が流れると、相手の攻撃を防御することが困難になることを未来も承知しており、左ストレート、右フック、左ストレートまで繋ぐコンビネーションのミットでは、内山が「もっとスピード無いかなと思ったけど、結構速い」と評価した。
ゆっくり大きな未来の構えは、相手にとってパンチの際にスピードに違和感を感じさせることができる。「前田(日明)さんだけは(パンチが)速いって言ってくれてましたね」という未来は、これまでほぼ我流の身体感覚とセンス、独自の研究で戦う術を掴んできたともいえる。
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朝倉未来「この動画を何度も見直すと思う」
(C)朝倉未来チャンネル
中盤から未来がアドバイスを求めたのはデフェンスだ。
ここも内山は重心移動のコツを指導し、いかに攻防一体で相手の攻撃をもらわずに倒すのかを伝えた。
ボクシングのいろはとも言える技術に、プロMMA18戦目にして初めて向き合った未来は、「全然、違いますね。ちょっと変わるだけでだいぶレベルが上がりました。俺、この動画を何度も見直すと思う」と目を輝かせる。
そこに、UFCもよく見るという内山は「ただね、総合だとグローブが小っちゃいじゃないですか。それに強い選手はみんな距離が上手」と、MMAのなかで、ボクシング技術をいかに活かすかも語っている。
身体の流れによるパワーの分散があると同時に、後ろ足を巧みに使う未来の独特なフォームが、これまでの対戦相手を惑わせてきたのも事実だ。蹴りもテイクダウンもあるMMAのなかで、今後、獲得していくボクシング技術を、未来はどのように融合させるか。
「自分でも分かっていた弱点を一つひとつ減らしていくことが大事だから」と、今回の試みを振り返った未来に、内山も現役時代に「ほかの誰よりも練習をやっている自信があった」と語りかけている。
6月のクレベル・コイケ戦では、打撃で攻勢に立ちながらもフィニッシュに至らず。2Rに三角絞めで一本負けを喫した未来。朝倉海が「ふだん練習とかでもキツい姿を絶対に見せないけど、そういう姿を見せてまでほんとうに追い込んでやっていた」という取り組みが、試合後もより戦略的に続いていることがうかがいしれる動画は、実に41分の大作でアップされており、必見だ。