キックボクシング
インタビュー

【KNOCK OUT】重森陽太、日本の市場は空いている「ヒジありキックボクシング、ムエタイの面白さを広めていきたい」

2021/07/08 18:07
 2021年7月18日(日)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT 2021 vol.3』にて、KNOCK OUT-REDライト級タイトルマッチ3分5Rで王者スアレック・ルークカムイ(タイ/STURGIS新宿)に挑戦するWKBA世界ライト級王者・重森陽太(伊原道場稲城支部)のインタビューが主催者を通じて届いた。  重森は16歳でプロデビューし、10戦目で無敗のまま新日本キックボクシング協会の日本バンタム級王者となり、14戦目で初黒星を喫するまで無敗を保った。20歳で日本フェザー級王者となり二階級制覇を達成。2017年12月には『KNOCK OUT』で、4年間無敗の18連勝を誇っていたマキ・ピンサヤームに黒星を付けてその名を轟かせた。2019年7月にWKBA世界ライト級王座を獲得して三階級制覇。前戦は今年4月にリュウイチから勝利を収めている。戦績は34勝(17KO)4敗5分。 スアレック選手と私の試合勘の差という形で出るんじゃないですか ──今回、スアレック選手とのタイトルマッチですが、前回はワンデー・トーナメントの決勝戦でした。「ワンマッチなら」という思いはありますか? 「そうですね、ただ『ワンマッチなら勝てる』というんじゃなくて、『ワンマッチだからこそ100%をぶつけ合える』という感覚ですかね。あと今回は5Rできるということで、私の中で安心感があります」 ──それで言うと、前回決勝に進んだ時点で、重森選手は何%の状態だったんでしょう? 「準決勝で小川翔選手と対戦した時に、トーナメントなので、若干流しちゃったんですよ。たぶん前蹴りの数が多かったと思うし、ディフェンスが多めで、コカしたりもして、できるだけ攻撃しないようにしてて。後から見直して『よくないな』とは思ったんですけどね。その中で前蹴りを多用していたので、左足の裏がすごく痛くなって。大丈夫かなとも思ったんですけど、右を蹴る時には軸足になるじゃないですか。左を蹴るのも痛いし。実際に蹴ったんですけど、けっこうしんどかったかなというのはありました」 ──カード発表会見ではその試合でのスアレック選手の印象を「ファイターの印象だったが、テクニックもすごくあった」と語られていました。アグレッシブ一辺倒だと思ったら違った? 「試合後、シャワーでスアレック選手と会ったんですね。彼は準決勝の相手が高橋一眞選手で、あまり前に出ていなかったので、『どうしてだったんですか?』って聞いたら『トーナメントでスタミナが心配だったから、セーブしてた』っていう答えだったんです。準決勝はどちらも延長だったんですけど、私は延長Rにかなり前に出る形になったので、その時点でだいぶ差が出ていたんだなと思ったんですよね」 ──そうなんですか。試合の組み立てもトーナメント全体を考慮して、しっかり考えていたと。 「あとポイントの取り方もすごくうまいですしね。印象がよくなるように、まとめるところはまとめるし、休むところはしっかり退いて休むし、という感じで。そういう部分にムエタイならではのうまさを感じました。今回の試合に向けて、直近の試合だけじゃなくて、彼が以前のリングネームでラジャダムナンスタジアムで戦った試合も見てみたんですけど、やっぱりテクニックがありますね。普通のタイ人選手ですよ。日本向けにああいう戦い方をしてますけど、ベースは普通のムエタイ選手です」 ──ああ、そうなんですね。根底にはムエタイの技術があると。そういう面を引き出して、競り合ってみたいという思いもありますか? 「前回もそうだったように、部分部分では出してくると思うんですよ。ただスアレック選手が私に勝とうとするなら、アグレッシブに来ると思うんです。実際、前回はガンガン来るところにやられているので。私自身、意地になっているところもあるので、そこを攻略して勝ちたいと思っています」 ──その反省点を踏まえて練習している? 「ちょっとずつなんですけど、アグレッシブに来る相手に対する練習は、ずっとやってたんですよ。それがかなり形になったというのを見せるのが、今回の試合だと思います。小川選手もすごくガンガン前に来る選手だったと思うし、6月に対戦した健太選手も前に出る選手だったので、スアレック選手と前回やってからあまり時間は経ってないんですけど、その間にいろんな選手とやってイメージもつきましたし、実際に動くこともできているので、落ち着いて対応できるんじゃないかと思います」 ──ちょうど名前が出ましたが、6月に健太選手、7月にスアレック選手と連戦って、かなりなものですよね(笑)。問題はないものですか? 「そうですよね(笑)。でもケガもないし、全く問題ないです。先にスアレック戦が決まっていたんですけど、間に1試合挟んだ方が動きがよくなるんじゃないかということで、『1カ月前だけど出てみようか』という話になったんです。そういう場合、調整試合というと失礼ですけど、そういうカードが組まれるのかなと思うじゃないですか。そしたら、あの大会で一番ハードな相手を持ってこられて(笑)。でも、自分としてはあの試合をしたのはすごくよかったですね。タイプも体格もわりと似ていましたし」 ──そうですか。本当にいい調整になったわけですね。 「なったと思います。試合では、スアレック選手と私の試合勘の差という形で出るんじゃないですか」 ──前の試合という意味では、スアレック選手の前戦は2月のシュートボクシングで、笠原弘希選手にKO負けでした。そこは気になりますか? 「いえ、全然気にならないですね。彼が引きずってくれればいいですけど(笑)、まあないでしょうね」 [nextpage] 今回は攻撃の手を休めないようにしたい ──重森選手はこれまで4敗しかしていなくて、そのうちの一人、ラジャダムナンで敗れたタイ人のターレーグン・ポー.アーウタレーバーンサレー選手とだけリベンジマッチをして、勝っていますよね。今回、リベンジマッチという点ではいかがですか? 「リベンジマッチが少ないというのもあるんですけど……ターレーグン選手の時は、最初私がタイに試合をしに行って、現地ですごく持ち上げてもらったんですよ、TVマッチだったし。でも負けちゃって、日本に帰ってくるじゃないですか。『このままジムには帰れないな』と思って、途中で床屋さんに行って丸坊主にしたんです。それでジムに行ったら、メチャクチャ怒られました(笑)。自分自身、一つの負けとかリベンジマッチとか、あまり気にしてないようで、実は気にしてるんだと思います。だから今回も気持ちが入るんじゃないですかね。実際、今も練習の仕上がりがよくて。勝負は来週からだと思うんですけど、今の時点ですごくいいので。今年でデビューして10年なんですけど、仕上げ方とか気持ちの作り方とか、今までで一番いいと思います」 ──試合のカギを握るのは何になると思いますか? 「どうですかね……自分の中では、『しつこさ』かなと思ってます。自分はわりと手数が少ない方の選手だと思うんですけど、今回は攻撃の手を休めないようにしたいです。しつこさが大事かなと」 ──しつこく攻めて勝ちをもぎ取ると。 「できればそういう展開になる前に勝ちたいんですけど、そうなるプランも考えてます」 ──会見やここまでの言葉もお聞きしていると、5Rじっくり使って勝とうという感じに聞こえるんですが。 「まあ、最終的にはそうなるんじゃないかなと思ってはいます。欲を言えば、1R、2Rとかで決めたいですし、常に狙ってもいるんですけど、相手も相手なので(笑)、そうなるんじゃないかなと」 ──勝てば『KNOCK OUT』のチャンピオンということになります。これまでのタイトルマッチと、気持ちの上で違う部分はありますか? 「一番大きな違いは、『KNOCK OUT』では2回失敗してるというところですかね。1回目はアジアトーナメントだったんですけど、そこでボルドバートル・アルタンドルグーン選手に負けていますし、王座決定トーナメントではスアレック選手に負けているので。私は、『KNOCK OUT』以外ではタイトルマッチで失敗したことがないんですよ」 ──確かに。 「それまでは全部、必ず1回で獲ってきましたからね。『KNOCK OUT』のベルトだけは、すごく苦労してるなあという感じですよ(笑)。最初のタイトル(新日本バンタム級)はデビューして2年目、プロ10戦目で獲っていて、気づいたらベルトがあったという感じだったんです。だから、苦労してないわけじゃないんですけど、チャンピオンになる覚悟ができるより先に獲っちゃった感じがするんですね。でも今回は完全に、『獲る』という気持ちが出来上がって、練習もしっかりできて、チャンピオンとしての実力も備わってるなという自覚もあって、その上でのタイトルマッチになるので、やっぱり気持ちは入りますね」 ──もう一つ、会見では「ヒジありキックボクシングの魅力をもっと伝えたい」という言葉が印象的でした。そこにこだわりがあるんだなあと。 「そうですねえ…。今、主流と言える団体っていくつかありますけど、ヒジありではそういう団体がないじゃないですか。そこの市場は空いてるんじゃないかなと思うし、現に世界ではヒジありって人気があるし注目もされてるじゃないですか。『KNOCK OUT』はメディアに対しても活動的だと思うので、自分の中でもチャンスだなと思ってるんです。だから『KNOCK OUT』を通じて、ヒジありキックボクシング、ムエタイの面白さを広めていきたいなというのは、すごく思ってますね」 ──今回も、その面白さが伝わるような試合をしたい? 「そうですね。ヒジありならではの、組み際の面白さも見せたいですし、今回は5Rあるじゃないですか。5Rならではの面白さというのも伝えられたらと思います」 ──分かりました。最後に、ご自身で一番注目してほしいポイントはどこでしょう? 「再戦というのが大きいですね。今回の大会でも再戦はこの試合しかなくて、そこがかなり面白いポイントになると思うので、私が負けてはいるんですけど、前回の試合の映像を見て復習しておいていただければと思います。そこから1年間でどうなったかが分かると思いますし、戦い方や意識をだいぶ変えて練習してきて、それが現時点でもだいぶ形になってきたというのがありますので、新しい一面にも注目していただきたいと思います」
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