MMA
インタビュー

【ONE】青木真也「僕が勝ちますよ。受けるんじゃない、挑戦する試合だから」=5月17日(金)「ONE:Enter the Dragon」

2019/05/07 11:05
5月17日、シンガポール・インドアスタジアムで開催される「ONE:Enter the Dragon」で、青木真也がクリスチャン・リーを相手にONE世界ライト級王座初防衛戦に臨む。 試合を11日後に控えた青木が6日、プロ修斗「SHOOTO 30th ANNIVERSARY TOUR Supported by ONE Championship」後楽園ホール大会の第2部前に、囲み取材を行った。 3月31日の日本大会のメインでライト級王座を2年4カ月ぶりに奪回した青木は、「15年目にやっとできた。そのアドバンテージはあるかなと思います」と、次戦にも活きる大きな経験になったことを語り、“MMAの未来形”と呼ばれる20歳のクリスチャンを防衛戦の相手に希望した意図を、「上のやつらが下との試合をやらなかった。当時の僕はそれを見ていい気持ちがしなかった」といい、次世代の超新星を相手に「守るのではなく攻める」気持ちを語った。 また、1日にAbemaTVで放送された『那須川天心にボクシングで勝ったら1000万』出場辞退についても青木は回答。独自のモノ作り論、メインイベンター論を語った。 23とか24歳のときに“俺のほうが強いのに”とずっと思っていたから── ――クリスチャン・リーと対戦するということを考えたのはどんなことからでしたか? 「彼と練習をしていたり、コミュニケーションを取っていく中で、シンガポールで練習したり、会場で会ったり、最近の伸びしろとかも見て、1回“触ってみたいな”というのはあって。実現するとは思わずに“ああ、やってみたいな”と。たぶんそれが(主催者に)引っかかったらしくて。僕がやりたいと言ってやったようになっているけど、結局は主催者からのオファーだから、それが引っかかった感じです」 ――非常に勢いのある選手だと思いますが、両国大会後、「若い選手と」と希望した意図は? 「そうですね。やっぱり『若い選手を』と言ったのは、23とか24歳のときに、上の(世代の)やつらが試合を上で回してたんだよね。下との試合をやらなかった。その当時の僕はそれを見てやっぱりいい気持ちがしなくて、“俺のほうが強いのに”とずっと思っていたから。その若いときに、35、36とか40(歳)近い選手がかっこいいなとは思わなかった。だからこそ、(自分は)若い選手とやっていきたいというのはありましたよね」 ――難敵エドゥアルド・フォラヤンにリヴェンジを果たした後にそう感じたと。 「誰でもいいというのはあるんですけど、とにかく今一番伸びている、今これからのアジアのMMAを背負うとされる選手が彼だとしたら、やってみたいなと思います」 ――その中で勝算もあってのことだと思いますが。 「僕が勝ちますよ。要は、受けるんじゃないんです、やっぱり挑戦だから。挑戦する試合なので。結局、35、もうすぐ36歳(5月9日)で、いま40前後。今日の宇野薫がまさにそう(43歳)だけど、自分のキャリアを守るのか戦っていくのか──、みんな誰もがこの格闘技だけじゃなくて、多くの仕事で選択があると思うんです。多くの人が運用をしていくとか守るほうに入るんだけど、やっている意味とか思想で言うと、僕はやっぱ攻めたいなと思うんです」 クリスチャンのグラウンドはブラジリアン柔術を介していない ――クリスチャン・リーの組み技が「未来形」と言われるのは、どこが異なると感じてのことですか。 「“グラウンド”ってブラジリアン柔術をメインとしたものがグラウンドと今の日本だとされているじゃないですか。彼のやっているグラウンドは、ブラジリアン柔術を介していないですよね。当然、柔術の練習はしていると思いますけど、感性が──、あのペルヴィアン・ネクタイだったり、アナコンダ、スピニングチョークだったり、ちょっと独特じゃないですか。そこは俗にいう“グラウンド”を介していないですね。だから独特だなと思います」 ――その独特な動きに、青木選手としては“寝技”も含めたMMAで対抗していく? 「この前、海外のインタビューで、『グラウンドにこだわりがありますか?』というのを当たり前のように言われたんですけど、実はグラウンドにこだわりなんか全くなくて、“一番効率的なこと”をやっていて“フィニッシュしたい”から、一番効率的なことをやった結果がグラウンドだったことが多い。打撃でノックアウトすることもあるし、グラウンドで殴ることもある。結局、“一番効率のいいフィニッシュが、そのとき何か”だから、彼のグラウンドに付き合うとか、彼のスタンドに付き合うみたいな話ではなく、一番効率のいいことをやっているということです」 ――リーは階級は一つ下(ONEフェザー級※70.3kg)です。そこでも彼は十分強いと。 「わからない、階級は。階級どうこうみたいな話もありますけど、結局当日2人がファイトすることが事実だから。それ以外、別に階級が下だからアドバンテージがあるだとか、あんまり思っていないですね」 『那須川天心にボクシングで勝ったら1000万』出場辞退──「思いどおりにはさせない」 ――AbemaTVの『那須川天心にボクシングで勝ったら1000万』に関しては、5月17日の世界戦が決まり試合に出ることができなくなった、ということがありましたけど、那須川とクリスチャンも同い年です。あのあたりの世代に青木選手は……。 「那須川のことで言うと、結局みんなこのコンテンツを“楽しませてもらえるもの”だと思っているわけ。すごく当たり前に。だから、作り手が8割のものしか作らない。そう思いません? 賛否が分かれるものを作りたがらないです。今のそれがK-1だし、今の新日本プロレスだし。とりあえず当たり障りのないものを作ろうとする。余地がない。それの一つの形が──ああ、じゃあ青木、スカすんだというのが一つの形であって。(それに対して)ああ、そういうこと(反応)ね、みんな、というのにムカつきはありますよ。結局、“楽しませてもらうもの”じゃなくて、“一緒に楽しむもの”なんだぜ、というのは、僕は思っています。そこで言うと、すごい現代的だなと思った」 ――あの試合が中止になった反応が。 「あの反応とかも含めて、すごい現代的。だから、要は、(受け手が)デーンと寝て“さあ、楽しませてくれ”となっているわけ。それってやっぱり違うし、そこに向けてモノを作るのもいいんだけど、当然お付き合いもするんだけど、ただ、“思いどおりにはさせない”。それってどういうことかと言うと、“つくり手とものを見る側”“つくり手と受け取り手”(の関係)がフェアじゃないと思う。要は上から見ているわけじゃないですか。“俺たちのいいものを作れよ、俺たちが納得するものを作れよ”と。でもそうじゃなくて、やっぱりあくまで“俺のもの”を見せてやっているんだから、あとはお前らが指図するなよ、という気持ちは持っていないと。例えばプロレスがすごい顕著だけど、いまフィニッシュで『無効試合』とか『不穏試合』ってほとんどないですよね」 ――昭和のものという感じはします。 「それって賛否が分かれるから、レスラー自体が作るのを嫌うと思うんです。だって叩かれたくないから。それをモノを作る人として恐れずに、今後いいものを作っていきたい。20歳、那須川とかのあの世代ということですよね。彼らがもう新しいものを作っている。彼らが中心になっていくのはもう当然ですよね。そこに対して足を引っ張ろうみたいな考えはあまりない。むしろちょっと関わっていることで、自分に吸収できることは吸収していきたいなという感じかな」 ――クリスチャン・リーとの試合はリアルファイトですが、ONEの中でのストーリーラインについて、青木選手はどのようにとらえましたか。 「ONEのストーリーラインの中でも、やっぱり新しいスターを作る、彼がこの後そうなっていくことを期待する人がいっぱいいると思うけど……僕がそんなに実は“おっさん”だと思っていないから(笑)、まだ勝負できると思っているし、まだ成長できると思っている、まだ勝負したいなと。そこに関してはすごい純粋な気持ちで、勝負はしてみたいなと思っています」 ――同じEvolveジム所属ですが、青木選手のなかにはどこか外様的な視点も持っているように思います。 「お互いEvolveで、本拠地が別にある選手というのはあると思いますけど、彼とはわりと信頼関係を築けているから、日本大会の前もアンジェラ(リー、クリスチャンの姉)ともわりと仲がいいほうですし、元気? みたいな感じですから。すごい現代的だし、自分でこんなことを言うのもあれだけど、ファイトに対する考え方が北岡とか青木っぽい。別に仕事だったら友達とかそんなの関係ある? みたいな。『友達だろうが、仲間だろうが、ファイトはしようよ』みたいな感じです。別にそもそも試合はいがみ合ってするものじゃない、というのが、北岡・青木っぽいし、理屈をこねると、今のONEが言っていることって、ファイトは憎しみ合ってやるものじゃないとか、あるじゃないですか。名誉とか(尊厳、勇気、自制心)。ああいうことに、三つのスローガン(誠実、謙虚、慈悲)に実は即していることではあります、解釈によっては。だから別にあんまり(敵対心は)ないんだよな、そこは」 ――スポーツマンシップというのもちょっと違う。 「なんだろう。僕の場合はそこに──例えば『トラッシュトークはしちゃいけない』とかいうのは、すごく最低限の話で──要は、信頼関係があればあんな(スローガン的な)ことは言う必要もないと思っているし、むしろああいうことって言葉に出すほど軽くなるから、本当は元からあって当たり前のものだと思っているわけです。いちいち『ごみは捨てちゃいけません』と書いているような感じに見えるわけ。野暮なことで、当たり前でしょうと思っているけど、それを書かざるを得ないものだというのもあるんだとは思うんだけど……。我々の場合はアスリートとかスポーツ選手という職業なんでしょうね」 彼がもしシンガポールがホームだとしたら、それは僕にアドバンテージになる ――どんな試合になりますか? 「試合はフィニッシュを、お互いすると思う。彼もマッチアップ(によるもの)もあるけど、ほとんどフィニッシュしているじゃないですか。全部じゃない? 僕もフィニッシュ率は高いほうだから、フィニッシュをお互いすると思いますけど。それは俗にいう『フィニッシュしてやるぜ』という見栄っ張りじゃなくて、データから見てフィニッシュをする試合になる可能性が高いと思います」 ――フィニッシュの手順が違うようにも感じられますが、フィニッシュを狙うクリスチャン・リーの試合は、青木選手にとってもフィニッシュを狙える展開になる? 「そうですね。要は攻めるということは“攻防”が生まれるので、互いにチャンスがあると思います」 ――ポスターなどを見ていると、彼がヒーロー的な扱いで、ちょっとアウェーっぽいのかなと感じます。 「アウェーね……。どうなんだろうな」 ――シンガポールだと日本大会の感じとはまた違いますか。 「ずっとアウェーで戦ってきたのは僕だし、そこ(の不利)はないかな。彼がもしシンガポールがホームだとしたら、それは僕にアドバンテージですよ。だって、あの面倒くささとあのつらさは俺が一番、3月(日本大会)で知っているから、僕のほうがアドバンテージです」 ――やっぱりあの日本でのメインを乗り越えたというのはすごく自信になりますか。 「自信というか、もう1回やりたいと思わないから(苦笑)。日本大会のメインを張りたいとかみんな言うじゃん。だから、それってやったことないやつの言葉だし、馬鹿だなと思いますね。やればみんなわかりますよ、10年、15年目にやっとできた、というのはあります。そのアドバンテージはあるかなと思います。そこでいうと、やっぱりアンジェラ・リーはずっとシンガポールでメインを張り続けたわけで、K-1の武尊、那須川天心もずっとメインをやり続けている。彼らに対するメインイベンターとしての尊敬はすごくある。だから、彼らは僕よりもすごいことをやり続けて、僕よりもそれを形にしているから、那須川、武尊というものに対する尊敬は僕は持っていると思います」
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