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米国史上初のボクシング五輪2連覇金メダリストで、プロボクシングではスーパーウェルター級、ミドル級、スーパーミドル級の世界三階級制覇を達成、ミドル級およびスーパーウェルター級の2階級では世界4団体統一(WBA、WBC、IBF、WBO)も達成したクラレッサ・マリア・シールズ(米国)が、2021年6月10日(日本時間11日)のPFLでMMAデビュー、劇的な逆転勝利を収めた。
女子ライト級(70.3kg)で、対戦したのはMMA3勝6敗のブリトニー・エルキン。エルキンは、Bellatorでアマンダ・ベルにTKO負け、そして2018年6月のPFLでは、シールズと同じロンドン五&リオ五輪金メダリスト(柔道)のケイラ・ハリソンに1R 腕十字で敗れている。しかし、元Bellatorミドル級王者ラファエル・ロバトJrの茶帯のエルキンは、近年グラップリングの「Subversiv」に連続参戦しており、シールズにとっては危険なグラップラーといえるだろう。
▼女子ライト級 5分3R
〇クラレッサ・シールズ(米国)
[3R 1分44秒 TKO]
×ブリトニー・エルキン(米国)
1R、ともにオーソドックス構え。ムエタイのように上体を立てて左手を前に出して大きく構えるシールズ。遠間から右ストレート、右のオーバーハンドも見せるシールズ。しかし、その打ち終わりにエルキンがボディロックテイクダウン。
金網で上体を立てて座るシールズは、エルキンの頭を押さえて立ち上がることに成功。さらなるエルキンの崩しの際で、脇を差して上を取るとパウンド! しかし、エルキンは右で脇差し立ち上がると再びボディロックテイクダウン! マウントを奪うと、背後から右手で後ろ手にシールズの右手を縛り、パウンド。背中をマットに着けさせられたシールズは、エルキンのアメリカーナ狙いを防ぎ、パウンドにも抱き着いて腹に顔をつけて、下からも果敢にパウンドを放つ。
2R、エルキンから中央を取り、右ロー。にじり寄るシールズに鋭いワンツーを放つシールズ。さらにオーバーハンドの右! 下がるエルキンは左ロー。右前蹴りも、打ち終わりに左右のコンビネーションはシールズ! 詰めてのワンツーにカウンターのダブルレッグに入るエルキンに、シールズはがぶり頭を押して離れようとするが、足首を掴んだエルキンがテイクダウン! サイドを奪い、ニーインベリーからマウントへ。足を絡めて肩固めも狙いつつ、シールズのブリッジを潰す。
ここも背中を着かされたシールズ。苦しい時間帯に右で脇を差しマウントを返そうとするが、キープするエルキンが上からパウンド。シザーズ狙いのシールズも潰してドミネート。ボディ打ちから頭部を殴り、脇を開けさせて腕十字へ! シールズは腕を引きよせて抜いて上に! 亀になるエルキンに力強いパウンドを打ち込み、ゴング。
2R終了のゴングに先に立ち上がるシールズ。セコンドから「お前に何が出来る? ジャブ、ジャブ、ジャブ、ライトハンドだ」と声をかけられ送り出される。
最終3R、蹴りを見せるエルキンだがスピードに欠ける。右のサイドキックの打ち終わりに右ストレートを打ち込んだシールズは、勇気を出して圧力をかけて行くと、エルキンの遠間からのシングルレッグを、両足を後方に飛ばしてスプロール。頭を押さえて離れることに成功する。その立ち上がり際に右フックを当てるシールズ! なおも右足にしがみつくエルキンに鉄槌・パウンドを打ち込むシールズ。上体を立てるエルキンを潰してついにサイドを奪うと、声を挙げながら右のパウンド連打! エルキンが頭を抱えて防戦一方になり、レフェリーが間に入った。
大逆転勝利の歓喜の雄叫びを挙げるシールズは、「夢みたい、クレイジーよ。ジャクソンウィンクMMAジムでトレーニングもしてきて、ラウンド間のコーナーでも、この試合は滅茶苦茶ハードになる、簡単には勝てないなと話していた。
1Rを取られて、2Rも失った。でもテイクダウン、パウンドも何もダメージは受けていなかった。腕十字も全然、痛くなかった。とにかく“彼女をやってやる”と、いうクレージーな状態だった。絶対に負けたくなかった。それがこの結果。
3Rになり、もうやるだけだった。ラウンドを失っても、私は諦めない。ひとたびケージに足を踏み入れたら自分の力を出し来るだけだった。ボーイフレンドに4週間会わなかった。母とは2カ月合わなかった、それだけ練習してきたから。
(フィニッシュのパウンドのビデオを振り返り)当たっている! これが効いた。グラウンドでコーチに言われて腰を落とし直して打った。
これまでボクシングの試合で自分を疑ったことはなくて、MMAに挑戦するのは、自分に初めて黒星がつく可能性があったけど、とにかく負けたくなかった。私の右手が私を裏切ったことは無いから。
1Rも2Rも心が折れることはなかった。三角絞めだろうが、腕十字だろうが、絶対に諦めない。最後にコーナーは立たせて戦え、と言ったけど『絶対、嫌!』と言ってパウンドし続けたの(笑)」と大きな笑顔でフィニッシュを語った。