MMA
インタビュー

【RIZIN】朝倉未来と対戦するクレベル・コイケ「タップしないなら落ちる、折れちゃう」「“絶対に間違えない”のは無理」「最後にベルトを巻くのは自分」

2021/06/10 19:06
 2021年6月13日(日)東京ドーム『Yogibo presents RIZIN.28』のメインイベントで、朝倉未来(トライフォース赤坂)とクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)が対戦する。  RIZINの公式YoTubeでは、朝倉の「タップしたら試合が終わってレフェリーが助けてくれてっていう、俺たちはそんな中途半端な気持ちでやってない」という言葉に、クレベルは「タップしないなら、絶対落ちるよ。壊れちゃう、折れちゃう」と、強制的に試合を終わらせることを語っている。  現在店頭に並ぶ本誌『ゴング格闘技』7月号のRIZIN特集では、ボンサイ柔術のホベルト・サトシ・ソウザ×クレベル・コイケ×アラン・ヒロ・ヤマニハの3人の鼎談を掲載。3選手の知られざる姿を語ってもらっている。  今回は試合直前のスペシャルとして、本誌からクレベルのインタビューの一部分を掲載。また陣営から、元SB世界スーパーライト級王者にして現ONE Fighting Championshipファイターの鈴木博昭(BELLWOOD FIGHT TEAM)、関根“シュレック”秀樹の証言も併せて紹介する。  クレベルは今回の朝倉未来戦にどんな思いを抱いているのか。ルーキー時代の秘話も特別掲載した。 「絶対に間違えない」のは無理 ──試合の話の前に、前回の取材で、クレベル選手が14歳で日本に来日して、不景気のときに大変だったことを以前、聞きました。工場仕事が減ってしまって、生活に困り、養鶏所での糞掃除やゴミの回収なども行っていたそうですが、そのアルバイトのなかに「犬の散歩」というのがあって、これはいったい……。 「(隣にいたサトシやヤマニハが大笑い)あー、それは……仕事関係の人が大型犬を飼っていて、散歩をするように頼まれて、それで給料というか、お小遣いをもらっていた。ほんとうに生活が大変だったからね。それが毎日だから、雨が降ったら寒いけど、関係ない」 ──立派なアルバイトじゃないですか。なぜサトシ選手たちは笑って……。 「田んぼや畑ばかりの田舎道だからね……すごい大きい犬で2匹もいたから、場合によっては、その犬に自分がスケボーに乗って引っ張ってもらったり(一同笑)。それで犬もあちこち動くから……(笑)」 ──それは散歩というのか(苦笑)。やんちゃなクレベル選手らしいエピソードです。さて、話を変えて。いよいよ6月13日の日曜日に東京ドームで朝倉未来選手との試合を迎えます。朝倉選手をどうとらえていますか。 「アサクラはベルトを持ってないけど日本のトップね。RIZINの中では、66~68kgで一番試合をやっているのも認めるところのひとつだ」 ――右利きサウスポーでカウンターが巧みな未来選手をどうとらえていますか。 「ミクルは僕と試合をするために、ずっと想定して練習をやってきただろうね。でも僕もその前からやってきた。もしミクルがサウスポーで構えても、オーソドックス構えでも心配なところは何もない。今までもサウスポーとは戦ってきているからね」 ――相手が試合を受けるのには勝つ自信もあるからだと思います。クレベル選手の黒星は、ここ10試合で一つだけ。18年のKSWでのマテウス・ガムロ戦の判定負けは、相手がサウスポーでした。そして、ガムロは、クレベルのガードワークに付き合わず立ち上がる形で判定勝ちした。 「たぶん僕とやる選手は、必ず一番最後に負けたガムロ戦を見て、“やれる”と考えるんだと思う。でも、みんな忘れがちだけど、KSWで二階級制覇したガムロは、ADCCの欧州王者だよ。あれほどレスリングと柔術、組み技が強いから、あの戦い方が可能だ。誰もが出来るわけじゃない。それに僕は試合で負けたときに一番成長する。いまの僕はあのときとは全然、違うよ」 ――朝倉選手は、「一つのミスで一気に極められる可能性がある。研究して弱点も何個か見つけた」と言い、日本のトップグラップラーである岩本健汰選手と練習しています。組み技を徹底的に切って、組まれても対処を間違えない対策を練って来ていることは想像に難くありません。 「それは僕は心配しない。全然問題ない。半年くらいでスタイルを変えることはできないし、“絶対に間違えない”のは無理。それは僕も同じで、1カ月で打撃のスタイルを変えるのは無理。みんなが知っているように、僕は寝技が上手くて彼は打撃が上手い。キツい試合になれば彼は絶対に打撃のスタイルに戻る、僕は絶対に寝技になる。そのときにどうなるか。蹴りもパウンドも、相手のどんな攻撃も自分にとってはチャンスになる。一瞬でもね」 [nextpage] 未来で警戒すべきは、コーナーゲームとロープゲームだ ――なるほど。未来選手のMMAでのグラップリングの動きはどう見ていますか。 「RIZINで寝技らしい寝技になったのは、唯一あの試合だけかな。カザフスタンのボクサー(カルシャガ・ダウトベック)との試合。ミクルにとって打撃で思うようにいかなくて寝技に持ち込んでる」 ――未来選手はサイドからスイープする動きも見せています。 「うーん……腰が強くテイクダウンデフェンスに長けている。でもミクルの組み技で最も警戒すべきは、コーナーゲームとロープゲームだ。矢地は、ミクルにロープを掴まれずにテイクダウン出来ていれば展開は変わっていたと思う。運営にはしっかりチェックしてほしい」 ──未来選手は「タップしない。俺たちはそんな中途半端な気持ちでやってない」と言っています。それでも極め切ることはできますか。 「そうだね……未来はここまでタップしてない。たぶん、次でみんなビックリする。彼は絶対にタップするから。間違いない。タップしないのなら、絶対落ちるよ。壊れちゃう、折れちゃう。でもタップしないならそれはしょうがない」 ――クレベル選手はカイル・アグォン選手をダウンさせたパンチなど組みの圧力のなかで、思い切りのいい打撃も効かせています。その点での進化はいかがですか。 「まだ、試合で打撃は見せていないよ。あの試合は相手に合わせただけ。自分の見せたい打撃じゃないから。ミクルの蹴りやカウンターが上手いことも分かっている」 ――ほかにも打撃のレパートリーはあるのですね。 「そこは豊橋のBELLWOODで鈴木(博昭)サンとしっかりやっているよ」 ――どんな試合になるでしょうか。 「面白くならないわけがない。僕たちの違いが如実に出る。打撃が勝つか、僕らの柔術が勝つか。ミノタウロ(アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ)がいたPRIDEの時代に戻るような感じだね。柔術、打撃、それぞれの価値を守る」 ――この試合を越えて、その先の目標は何でしょうか。 「夢はあるけど、彼(未来は)その夢の邪魔だね。それを除かないと。試合も人生も悪い時間は必ずある。でも最後にベルトを巻くのは自分だ。それ以外の道はない。ベルトは僕にとって黒帯みたいなもの。獲ることは難しくない。難しいのは保持し続けることなんだ。僕は王者になって防衛し続けたい」 [nextpage] 鈴木博昭「クレベルにはキラーインスティンクトがある」 「クレベル選手の打撃は喧嘩屋らしく“キラーインスティンクト”と言うべき殺戮本能があります。そして打撃と組みが繋がっている。未来選手は、今回の試合に向けて『打撃もフィジカルも組み技もようやく本腰を入れた』という雰囲気を出しているけど、もとからやっていたかもしれないし、そういった“幻想”を作るのも上手い。クレベルはその幻想には動じないです。戦(いくさ)だったら確実に仕留めるためにモノを考える。“やるか・やられるか”なんてない。“自分だけが確実に仕留める”のが本当のやり合いだろうと思うので、そういう練習をしています。ポイントは見えています。なので、今回はクレベルが勝つと思います」 関根シュレック秀樹「心と身体のスタミナがすごい」 「クレベルはKSW後も自分で参加費を払って柔術大会に出るくらい、戦うことが好きなんですよね。柔術でも無差別級に出場して、大きな選手を相手に、最初にポイントを取られるんですけど、だんだん取り返して、競り合っても最後に勝っている。それは身体的特徴によるところもあると思います。マッチョじゃないから、筋肉が酸素を消費してしまわない。高所を登る登山家のようなものですよ。練習でも試合でも普段から常に動いている。それに心のスタミナもあるんですよね。MMAで下になっても、いくらパウンドを打たれても変わらないし、ラウンドを重ねても変わらない。普通は焦るけどクレベルは動じず、いつの間にかじわじわと極めていく。あの心身のスタミナにはいつも驚かされます」
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