注目のキックボクシング復帰戦を迎える悠斗 (C)KNOCK OUT
2021年6月12日(土)東京・新宿FACE『SACRED FORCE presents KNOCK OUT-EX』のメインイベントで、KNOCK OUT-REDスーパーフライ級王者・白幡裕星(橋本道場)と対戦するプロボクシング元日本ライトフライ級王者・悠斗(東京町田金子ジム)のインタビューが主催者を通じて届いた。
悠斗こと高橋悠斗は、元々はキックボクサーで2011年に国士舘大学所属として全日本学生キックボクシング連盟のフライ級王者となっている。プロデビュー後はNJKFの上位ランカー(最高2位)として活躍したが、2014年にボクシングへ転向。2019年10月に世界ランカーでもあった王者・堀川謙一を破り、日本ライトフライ級王者となった。
しかし、2020年3月に決まっていた初防衛戦が新型コロナウイルスの影響により度々延期に。気持ちが切れてしまい、「自分がベストな状態で試合に挑むことは不可能だと感じたため引退を決めました」と4月3日タイトル返上と現役引退を発表していた。プロボクシングの戦績は11勝(5KO)4敗。
当たれば本当に一撃で意識を持っていく自信がある
──キックボクシング復帰第1戦で現役王者との対戦ということで、いきなり大一番になりますが…。
「この1~2ヵ月でいろいろ心境の変化もあって。最初は『KNOCK OUT』という強い団体のチャンピオンなので、強い相手だなと思ってたんですけど、もともと『REBELS』のチャンピオンなんですよね?」
──『REBELS』の最終大会で王座を獲得し、そのまま『KNOCK OUT』王者に認定されています。
「なるほど。まあキックのチャンピオンと言っても団体がたくさんあるので、レベル高い選手の一人というイメージですね」
──改めてですが、ボクシングを引退されたのはコロナウイルスの影響が一番ですか?
「いろいろ言われてるんですけど、まず一番はコロナの影響で所属ジム(白井・具志堅スポーツジム。昨年7月に閉館)がなくなっちゃって、移籍したところも潰れちゃったので。あとはいろんな格闘技をやりたかったので、目指してるところが違うというか。総合の試合もやりたかったしキックの試合もしたかったんですけど、そうなるとボクシングはいろいろ厳しいので、決められちゃうのがイヤで」
──ボクシングでは15戦されて、ライトフライ級の日本王者にもなりました。キックボクシングから転向した中で王座までたどり着いた選手は少ないですが、それができた理由は何だと思っていますか?
「今回、キックに戻ってきても勝てるなと思った理由の一つでもあるんですけど、軽量級の中でも軽い階級なので、全体ではKOは少ない中、僕はけっこう倒してたんですね。ミットを持ってくれた人やスパーリング・パートナーからも言われるぐらいパワーがあったということが一つです。もう一つは、分析する力があったことだと思います。自分に何が足りなくて、次のレベルに行くには何が必要かというのを、一つ一つ改善できていたので。その二つが大きいと思います」
──ボクシング転向の初期は、順応するのに苦労したのでは?
「そうですね。距離感も全然違いますし、最初は相当戸惑いました。デビュー戦はギリギリ判定で勝ちました。学生キックでは全日本優勝して、プロでもランキング2位まで行っていたので自信はけっこうあったんですけど、『こんなに違うのか』という感じでした」
──一番の違いは距離感?
「あとスタミナですね。キックにもスタミナは必要ですけど、ボクシングは最大で12Rありますからね。その練習を経験したことで、今も助けられてる感じはあります。どの程度やれば自分が12R動けるかというのが分かるので。今回、延長まで行ってもMAX4Rじゃないですか。4R戦うためにはどれぐらい練習しないといけないかというのが分かってるので、スタミナ切れはないんじゃないかと思いますね」
「キツいとは思いますね、首相撲も消耗しますし。ただ、今回僕はキックボクシングをやるつもりはないので、そこがけっこうカギになってくるかなとは思います」
──ということは、どういうスタイルで?
「さっきの質問と逆で、ボクサーがキックに出ても勝てないことが多いじゃないですか。それは、まずキックボクシングを知らないからなんですけど、僕はキックの経験があって、今もトップの選手たちと練習させてもらっているので、自分に足りないものも分かりましたし。最初、うまく戦おうかなと思ったんですけど、自分に合わないなと思って、得意なところで勝負しようと変えたらだいぶやれるようになって、トップの選手たちとも渡り合えるようになったんですね。言っちゃえば『ボクシングキック』ですよね。自分なりのそれは、だいぶ出来上がったかなと思います」
──独自に融合したスタイルができたと。
「そうですね、本当にそれを楽しみにしててもらえればいいかと思います。そこに、堀口恭司選手とか木村“フィリップ”ミノル選手とかの映像をたくさん見て、いいところはいろいろと取り入れています」
──かつてのキック時代とも全然違う?
「それは間違いないと思います。当たれば本当に一撃で意識を持っていく自信がありますし、相手の立場に立ったらそれが一番怖いじゃないですか。それから、相手がやってくることも予想がつくので、そこも対処してきた感じですね」
──というところで相手の白幡選手については、どういう印象ですか?
「『今の若いトップの選手』というイメージですね。今の若い選手って、みんな上手いじゃないですか。まさにそういうイメージですね、上手くて速くて。だからけっこう分かりやすい戦いになると思うんですよ。僕は上手くはないし、グチャグチャにする一方、向こうはキレイに戦いたいんじゃないかと思うので。打ち合いはあまり好きじゃないと言ってましたし」
──最終的にはパンチでKOが理想?
「そうですね。まあ、KOパンチがあるから蹴りもヒジも当たるし、そこからまたパンチが当たるので」
──一つ気になるのが体重です。ボクシングで王座を獲ったライトフライ級は47~48kg。今回の契約体重である53kgともけっこう差がありますが…。
「ボクシングはけっこう落とすんですよね。今のキックはそんなに落とさないので、今回も減量幅は4kgぐらいです。だから大丈夫だとは思うんですが、まあ復帰戦でこの体重で、ヒジありで…本当に乗り込む感じですよね。本当に相手の土俵だと思うので、判定じゃ勝てないと思ってるし。ボクシングでも地方に乗り込んで、判定じゃ絶対に勝てないというところを覆してきたりもしましたからね。だから今回も倒す気満々ですよ」
──今回は復帰戦が『KNOCK OUT』のリングになりましたが、所属としてはNJKFなんですよね。この先は?
「ちょっと入り方が逆になっちゃったんですけど、NJKF王座とWBCムエタイ王座は獲りたいなと思ってます。また『KNOCK OUT』に出してもらうためにも、自分の団体でも強さは証明しないといけないと思っているので」
──しかしここで現役王者の白幡選手にもし勝つと、『KNOCK OUT』でのポジションも一気に上がることになると思いますが。
「そうですよね。まあそこは勝ってから考えます。さっきも言いましたけど、53kgのトップの選手と練習する機会があって、彼らはやっぱりイケイケなんですよね。みんな『俺が一番だ』と思って練習していて、それを肌で感じて。彼らにスパーリングでアドバイスももらって試行錯誤もして、自分のスタイルが出来上がったかなというところなので」
──まずはそのスタイルを出して勝つと。
「今回の相手はチャンピオンですけど、もうこれからの相手はみんなチャンピオンクラスになると思うんですよ。経験の浅い選手は僕とできないと思うので。これまでもたくさん試合をしてきているので、リスペクトするところはして、しっかりと倒しにいきたいと思います」
──では最後になりますが、今回の試合で一番見てもらいたいところは?
「やっぱり僕のパンチですね。当たった時の衝撃だったり、音だったり。そこに注目してほしいです」
──ありがとうございました!