2021年6月27日(日)丸善インテックアリーナ大阪で開催される「Yogibo presents RIZIN.29」での「バンタム級トーナメント1回戦」で獅庵(パラエストラ大阪)と対戦する大塚隆史(T-GRIP TOKYO)が4日、所属ジムで公開練習&囲み取材に応じた。
ONE Championshipフェザー級4位の松嶋こよみ(パンクラスイズム横浜)を相手に、MMAレスリングに特化したスクランブルの動きを見せた大塚は、AACC時代からの後輩・松嶋との練習について、「松嶋くんは、ほんとうに一番を目指しているというか、世界の強豪と戦うためにいま頑張っている選手で、触れてるだけでも凄くエネルギーをもらいます」と語り、松嶋も「どんどん強くなっているのを肌で感じていて、大晦日決勝の舞台まで行ってくれるだろうっていう感覚があります」とエールを送った。
対戦相手の獅庵は、3月のRIZINで修斗世界バンタム級7位の祖根寿麻を27秒、TKOに下しているストライカーだが、大塚は、「早く試合を終わらせることが出来る、仕留める能力がある選手」と評価しながらも、「言い方は悪いですけど、打撃しかないかな。それで行くしかないかなってだけで、そんなに脅威ではないです」と言う。
2017年のバンタム級トーナメントでは強豪アンソニー・バーチャック、カリッド・タハを下すも、準決勝で石渡伸太郎に判定負け。そこから3年半、RIZINから遠ざかった。修斗での環太平洋王者・安藤達也戦でのTKO勝ち、世界王者・岡田遼戦での判定負けも経て、RIZIN再参戦に向け、大塚は「強くなっている自信がある。“相手を仕留める”のがテーマ」と力強く語った。
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言い方は悪いけど、彼(獅庵)は打撃しかないかな
──松嶋こよみ選手との公開練習でしたが、スパーリングというより打ち込みのような興味深い動きでした。抑え込むのではなく倒して立つ、MMAのレスリングのような。いつもやっている動きだったのでしょうか。
「いつもではないですが、これくらいスピーディーな動きで練習はしています。でも、動きのある、ポイントはそんなに意識していないですが、時折レスリング限定でポイントを取り合うのを意識して、倒す・取らせないというのは採り入れていますね」
──無理矢理取りに行くというよりも、すごく動きが丁寧に感じました。
「実際の練習では、もう少し圧力や取りに行くしつこさは出しています。今日はそこまではしていないです。疲れましたけど」
──元AACCで後輩の松嶋こよみ選手とはいつから一緒に練習していますか? また、それはどんな効果がありますか。
「一緒に練習するようになったのは……本格的に始まったのは今年の1月からですが、刺激だらけですね。松嶋くんの強さ、強さというのは格闘技としての強さ、打撃でも組みでもレスリング力でもあり、彼の格闘技に対する姿勢など、いまの自分にとってはエネルギーをもらいますね。練習以外の部分でも」
──松嶋選手とのからみでは、SNSではパンクラスイズム横浜でのタケ大宮司さんとのムーブメント・トレーニングも紹介されていました。剛毅會空手道の岩﨑達也さんとの空手の稽古も含め、身体に馴染むには時間がかかると思いますが、今の手応えはいかがですか。
「手応えしかないですね。正直、始めたときはこれが何の動きなのか理解が出来ていないまま始めていたのですが、ようやくインプットしてきて、そして自分の動き、さらにアレンジが出来てきたりとか、しっかり形になってきたのかなという実感があります」
──その意味では、大阪大会が延期になったことは、大塚選手にとってはいい時間になったのでしょうか。
「そうですね。コンディションもすごく良かったのでそのまま試合をしても良かったのですが、延期になったことで集中力を切らさずに、少し減量もあったので、その辺はいったん食事を摂りながら(調整し直して)変わらずの感じなので、いい状態ですね」
──バンタムトーナメント抽選会では、獅庵選手を選びましたが、その時の気持ちは?
「選択する選手が他にいなくて、1カードが決まっていて次が獅庵選手で、なんだろう……“じゃあ、そこ座ろう”みたいな感じです」
──先に誰もいない椅子に座って、相手を待つことは考えていませんでしたか。
「待ちの態勢は考えていませんでした」
──対戦相手の獅庵選手は、前回の試合で打撃でKOをしているリーチの長い、独特の打撃を持つ選手ですが、ファイターとしての印象をどう感じていますか。
「前回の祖根選手との試合は、ああやって早く試合を終わらせることが出来る選手なんだなと、仕留める能力があるんじゃないかなと思います」
──そういう選手に対して、大塚選手はどう戦いますか。
「自分は自分の能力全部使って戦うだけなんで、特に今回は獅庵戦に向けてというより、相手の試合映像などは見ていますが、とにかく自分を高める練習にフォーカスしてきたかなと。全体の強化という部分を。なので、全体的にレベルが上がっている自信があります。前回の岡田選手との試合よりも、自分の上がった能力を獅庵選手にぶつけるだけですね」
──試合展開について「自分の能力の全てを使って」とのことですが、理想的な展開はどんなイメージですか。
「全体的にどこでも勝負しますよ、というか。打撃でも、もちろん総合格闘技なので組みの展開になったらなったでも、どこでも勝負します」
──ストライカータイプの獅庵選手の警戒しているポイントはなんでしょうか。それとも打撃は自身の方が凌駕していると……。
「(食い気味に)負けない自信はあります。ただ打撃が……そんなに僕は(獅庵の)打撃の能力が高いと思っていないです。彼が勝負できるところが打撃なだけで、覚悟決めて打撃で行くだけなんじゃないですかね。彼が今さら僕をレスリングでトップキープで漬けるっていうのを想像出来ないですけど、言い方悪いですけど、彼は打撃しかないかな。それで行くしかないかなってだけで、そんなに脅威ではないです」
──本誌『ゴング格闘技』のインタビューでは、獅庵選手は「自分はMMAがちゃんとしていない分、自分のパンチの軌道やスピードにビックリするだろう」と言っていました。大塚選手はムーブメント・トレーニングなどでステップを踏むための身体つくりもされていると思いますが、あの独特な軌道やスピードに対応できる自信はありますか。
「怖さはないです。それは別にムーブメントどうこうではなく、さっきも言った通り、脅威ではない、ということです」
──今回はRIZINからの3年半振りのオファーでしたが、今回のトーナメント出場の目的とモチベーションは何でしょうか。
「岡田戦が終わってオファーがあったから、出る。やってやろうじゃないか、って感じ。ただこのRIZINがなくても岡田戦が終わってから自分はすぐにもう、こよみくんや大宮司トレーナーだったり、今年から体制を作って始めたので、岡田戦の前から勝とうが負けようが、この1年はしっかり強くなるために続けていくと決めていました。その中で岡田戦では大きな怪我は特別なかったので、しっかりやっていこうと思っていたところで、オファーがあったので『じゃあ出ようか』って感じです」
──取り組んできたことを証明したいという気持ちがあるということですね。
「はい、試合があるから」
──今回はバンタム級トーナメント1回戦ですが、GPの中で過去に戦った相手に雪辱を晴らしたいなどの気持ちと、トーナメントに勝ち上がることに集中する、どちらのほうが強いですか。
「気持ちとしてはしっかり勝ち上がることのほうが大きいですね。自分としてはしっかり次を勝って、予定では9月ですか? 9月になった時に、また3カ月ほど期間が開くので、今回の試合に勝って──この3カ月で自分も松嶋くんと良い練習が出来て自分の中でも強くなって来ているなという自信があるので──次勝てば、その3カ月間は自分を高められる。その中で誰でも決まったら行きます。特にこの人にリベェンジしたいとかは考えていないです」
──今回セコンドには松嶋こよみ選手がつくのでしょうか?
「はい」
──試合に向けて松嶋さんの存在はどのくらいの比重を占めていますか。
「『どれくらい』というと言葉があれですけど……かなり大きいと言うか……あっ、喜んでる(笑)。非常に大きいですね。本当にやっぱり松嶋くんは、一番を目指しているというか、世界の強豪と戦うためにいま頑張っている選手と、触れてるだけでも凄くエネルギーをもらいますね。かなり大きいです」
──もし可能なら松嶋選手からもコメントをいただけたら……。
「そうですね、呼びたいんですけど、今、ちょっとおにぎりを口に入れているんで、それが終わり次第こちらにお呼びします(笑)」
──(質疑応答に合流した)松嶋選手に質問ですが、大塚選手の傍にいて、大塚選手の現状だったりコンディションはどのように感じていますか。
松嶋 ここ半年一緒に練習するようになって、その前に岡田選手との試合があって、どんどん上り調子というか、どんどん強くなっているのを肌で感じていて、これはちょっと大晦日(決勝ラウンド)まで戦って欲しいという気持ちがあります。決勝の舞台まで行ってくれるだろうっていう、大塚さんがやってくれるんじゃないかっていう感覚があります。
──大塚選手の強さというのは?
松嶋 今までの大塚さんを見て分かる通り、何でも出来る、レスリングも強い打撃も強い、あと吸収がすごく早いので、どんどん新しいことにもチャレンジする精神があります。そういうところを僕も見習っていかないとと思います。
──大塚選手、あらためて3年半ぶりのRIZIN参戦で、どんな試合にしたいですか。
「RIZINという舞台なので、つまらない試合はしたくないなと。強くなっている自信があるので、“相手を仕留めたい”というのがテーマです」
──大塚選手のようなキャリアを目指している若いファンに向けて、トップファイターになる秘訣やモットーを教えて下さい。
「自分はレスリングを高校と大学の途中までやっていたのですが、僕は総合格闘技をやるためにレスリングを始めてベースを作って、そこから大きくブレずに総合格闘技をやってきました。レスリングを辞める時に総合格闘技をやるって決めていたので、“もうここからはドロップアウトしない”と20歳くらいに決めて、試合に負けることもありましたが、ブレなかったので、ブレずにやっていけば、僕は一つの形になるのかなと思います。中途半端にやっていたら続けても意味はないし、あとどれくらい出来るかわかりませんが、最後は集中してやっていきたいです」
──最後にファンへメッセージをお願いします。
「『応援して下さい』というのは好きじゃないので、言いませんが、見ていて面白い試合をしたいので、だから楽しみにしていて下さい!」
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