WBA世界ライト・フライ級スーパー王者の京口紘人(ワタナベジム)が日本時間3月14日(日)米テキサス州ダラスのアメリカンエアラインズ・センターで挑戦者10位のアクセル・アラゴン・ベガ(メキシコ)と3度目の防衛戦を行う。
日本人世界チャンピオンが本場アメリカで防衛戦を行うのは、ボクシングの長い歴史においても現バンタム級2冠王者の井上尚弥ら数えるほどしかいない。注目の一戦を前にDAZN NEWSがダラスで最終調整を続ける京口にインタビューを行った。
最高の状態で3度目の防衛戦へ
──現地に到着して4日目ですが、最終調整の様子を教えてください。
「スタッフのサポートが素晴らしいですし、ホテル内にトレーニング施設が整っているので、国内より充実して調整できている気がします。ホテル内ですべてを済ませられて、移動の負担もありませんから。僕としてはこのほうが適しているかなという感じです。スタッフとコミュニケーションも密に取れますし、ずっと1人でいるよりもリラックスできます」
──ホテル生活がまったく苦にならないということですね。
「そうですね。食事もマネジャーに作ってもらっているので。日本にいたらこの時期は自分で作って食べますけど、栄養面なんかを考えると自分で作るよりもいい状態だと思います。おかげで減量もまったく問題ありません。今日も午前と午後、しっかりトレーニングできました」
(写真)YouTubeの企画で朝倉海にパウンドを教わる京口。ボクシングの現役世界王者がここまでやるとは、と話題に(京口紘人の公式YouTubeチャンネルより)──試合5日前にしてはたくさん練習しているように思います。
「ただ体重を落とすだけの練習ではなく、自分を高める練習ができています。昨日は12ラウンド、今日は14ラウンド動いたのかな。シャドー、ミット、バッグ。みっちり1時間くらい動いてますね。しかも(発汗を促進する)減量着は着ないで水分を摂りながら体重を落とせているので、今までの世界戦に比べてもいい状態だと思います。あす以降は疲労を抜いていくつもりです」
──調整はすべてホテル内ですか?
「そうですね。最初の2日はホテルにあるフィットネスジムで体を動かして、3日目からホテルがボクシング関係者だけという“バブル”になったんですけど、その日から大広間みたいなところにリングが設営されて、そこで練習しています」
──メインに出場する4階級制覇王者で現在はWBAスーパー・フライ級スーパー王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が出場。WBC王者のフアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)選手と2団体統一戦を行います。ゴンサレス選手には会ったと聞きましたが、他にも出場選手にホテル内で会ったりしますか?
「ロマゴン(ゴンサレス)くらいですね。彼とは僕が世界チャンピオンになった2017年に会ったことがあって、それ以来の再会なんですけど『おーっ、久しぶり』という感じで温かく対応してもらいました。僕がリスペクトして、参考にもしている選手なので気持ちが高まりました」
アメリカでのデビュー戦は「アピールできるチャンス」
──軽量級のスター選手2人が激突するイベントで、京口選手はチャンピオンとしてアメリカ・デビュー戦に臨みます。あらためてこの試合の位置づけを教えてください。
「日本以外のボクシングファンにアピールできるチャンスだと思っています。『面白い試合をする選手がいるな』と思ってもらえるような場所を提供してもらったと感じています」
──これまで世界タイトル2階級制覇をしてきた京口選手にとって「新しいスタート」ともとらえられると思います。
「ボクシングを始めたころ、世界チャンピオンになるのが夢でした。チャンピオンになってからは、アメリカの地で世界チャンピオンとしてリングに上がりたいという思いをずっと抱いてきました。それを実現できたのはすごくうれしいと思うし、モチベーションも高いですね。同時に期待値の高さも感じているので、それを楽しめたらいいと思っています」
──この試合を足がかりにさらに羽ばたきたいという思いもあるのではないでしょうか?
「今回のメインはロマゴンとエストラーダの統一戦です。軽量級ではありますけどメインを張っている。それを近くで見て感じているので、すごい世界だなと思います。いずれ自分もそういう地位に上がっていくことができるのかなと思うと本当に楽しみですね」
──大きな目標に近づくためにもまずは目の前のベガ戦が大事になります。とても背の低い相手ですが、どのように戦おうと考えていますか。やはりボディ打ちやアッパーがカギとなりますか?
「そういう戦い方はプランの一つとして練習してきましたけど、リングに上がって感じることがあるので、相手と対峙してからいろいろな引き出しを出していきたいと思ってます」
(写真)朝倉未来(左)を始め、数多くの格闘家とYouTubeでコラボしている京口──挑戦者の警戒しているところはありますか?
「相手は一発を振ってくる、パンチをたたきつける印象があるので、ボラード気味だったりフックだったりは警戒してます。しっかり頭を振ってガード高くしていけば崩していけるかなと思っているので楽しみですね」
──軽量級離れした強打が京口選手の魅力の一つだと思います。ノックアウトにはこだわりますか?
「こだわりはしないですけど圧倒はしたいですね。横綱相撲というか。ロマゴンのスタイルが好きですから、ロマゴンが圧倒するような、そんな試合展開を見せられたらいいと思っています。ファンに楽しんでもらえるボクシングをしたいですね」
──京口選手のアメリカ・デビュー戦。ぜひ多くの人に見てもらいたいと思います。
「僕自身、自発的にSNSで発信して楽しみにしてもらえるようにプロモーションしてきたつもりですけど、やっぱりボクサーはリングの上で価値を見いだせるものだと思ってます。だからリングで戦っている姿を見てほしいです。当日、ファンの方々が楽しんでもらえたら本当にうれしいと思っています」
──2019年10月以来、1年5カ月ぶりの試合です。ファンも待ち望んでいた試合であり、京口選手も「爆発したい!」という気持ちがあるのではないでしょうか。
「戦うことに喜びを感じて早く戦いたいというよりも、ファンの皆様に戦っている姿を見せたいという思いが強いですね。その思いが自分の原動力になっています。期待も大きいですし、僕自身楽しみですし、まずはしっかり勝ちたいと思っています」
インタビュー・構成=渋谷淳(しぶや・じゅん)1971年生まれ、東京都出身。慶應義塾大卒。新聞社勤務をへて独立し、現在はボクシングを中心にスポーツ総合誌「Number」などに執筆。著書「慶応ラグビー 魂の復活」(講談社)。ボクシング・ビート誌のウェブサイト「ボクシングニュース」、会員制有料スポーツサイト「SPOAL(スポール)」の編集にも力を注いでいる。
「DAZN NEWS」提供京口紘人vsアクセル・アラゴン・ベガのWBA世界ライトフライ級タイトルマッチは、3月14日(日)11:30よりDAZNにて配信される。