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【ONE】エナッシがスーパーレックを退けV2に成功、ペトロシアンが変わらぬ強さで完封勝利、ロッタンがキック第一戦で判定2-1、秋元皓貴は因縁の相手を返り討ち、ワンダーガールがダウン奪われONE初黒星、アンジェラ妹ビクトリア・リーも登場

2021/02/26 21:02
 2021年2月26日(金)シンガポール・インドアスタジアムで、ONE Championship「ONE:FISTS OF FURY」が開催された。 ▼ONEフライ級 キックボクシング世界タイトルマッチ 3分5R〇イリアス・エナッシ(オランダ/モロッコ/王者)61.2kg[判定3-0]×スーパーレック・ギャットムー9(タイ/挑戦者)60.95kg※エナッシが2度目の防衛に成功。 今大会は6試合中5試合がキックボクシング&ムエタイの立ち技中心の大会となり、メインイベントではONEフライ級キックボクシング世界タイトルマッチとして、王者イリアス・エナッシ(モロッコ/オランダ)に同級2位スーパーレック・ギャットムー9(タイ)が挑戦する。 エナッシは11歳でキックボクシングを始め、ジュニアからプロへ。2014年11月に18歳で来日し、森井洋介と対戦するも1RでKO負け。2016年5月にEnfusion -60kg世界王者となり、同年11月の再来日では町田光から2度のダウンを奪って勝利し、BLADE 61kg世界王者となっている。2018年にはWFL -63kgトーナメント優勝。2019年8月にONEへ初参戦を果たすと、ペッダム・ペッティンディー・アカデミーを3RでKOし、ONE Super Seriesキックボクシング世界フライ級王者となった。同年11月にはワン・ウェンフェンの挑戦を退けて初防衛に成功している。 スーパーレックはベテランの域に達した名選手で、ルンピニーのフライ&バンタム級王座、WBCムエタイ世界スーパーフェザー級王座のほか数多くのタイトルを獲得。2012年にはタイのスポーツ省が認定するムエタイMVPにも選ばれている。2017年6月、2018年8月と2度来日経験があり、ヤスユキにハイキックでKO勝ち、小川翔にヒジによるカットでTKO勝ちと圧倒的な強さを見せつけた。2020年7月大会ではONEムエタイ世界フライ級1位にいたパンパヤック・ジットムアンノンを判定3-0に破り、変わらぬ実力を発揮。9月にはファディ・カレッドにも難なく勝利して2連勝でタイトルに挑む。  1R、スーパーレックは右ローを蹴っていき、エナッシはスイッチをしながら前後にステップを踏む。スーパーレックは足を滑らせる場面が多い。スーパーレックの後ろ蹴りがローブローになってしまい、一時中断。サウスポーになったエナッシは左ミドル、スーパーレックの右ローの返しはしっかりブロック。スーパーレックは様子見のラウンドに。  2R、スーパーレックが前に出る。エナッシは長い手を振り回しての左右フック。スーパーレックは単発ながら右ローをしっかりと当てていく。エナッシのステップを止めに行く作戦か。どちらもクリーンヒットはないが、スーパーレックの右ローがしっかりと捉えていた。  3R、圧力をかけるスーパーレックだが、円形ケージのためエナッシに回り込まれてしまい追い詰められない。スーパーレックは左腕潰しの右ミドルを狙い撃ち。エナッシもフック&アッパーを繰り出す。 4Rも右ミドルを蹴っていくスーパーレック。スイッチしながらワンツー、左右フックを放つエナッシ。組んで1回のヒザ蹴りはスーパーレックが蹴る。スーパーレックに右ミドルを蹴られるとエナッシが必ず連打を返す。明らかに右ミドルを嫌がるエナッシ。  5R、スーパーレックの右ミドルをキャッチして軸足を払うエナッシ。右ミドルには左インローも必ず蹴り返す。大きくケージをサークリングするエナッシを追うスーパーレック。その展開は変わらず試合終了となった。  判定は3-0でエナッシ。右ミドルを蹴られても連打とインローを返したことが評価されたか。防衛に成功したエナッシは「彼は多く蹴って来たが、自分のコンビネーションパンチの方が良かったのではないか」と勝因を語り、「次はロッタンと戦うのはもちろん。王者vs王者の戦いをみんなが見たいだろう。その後はMMAに転向してデメトリアス・ジョンソンと戦いたい」と爆弾発言した。 [nextpage] ▼フェザー級 キックボクシング 3分3R〇ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)70.05kg[判定3-0]×ダビッド・キリア(グルジア)70.30kg ONE Super Seriesキックボクシング・フェザー級ワールドGP優勝者ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)は、ダビット・キリア(ジョージア)と対戦。  ペトロシアンは2009年と2010年のK-1 WORLD MAXでミドル級世界トーナメントを制し、世界にその名を轟かせてから、GLORY世界ライト級スラムトーナメント2012優勝など10年にわたって世界最高峰に君臨してきた。ONEではひとつ無効試合があるものの5戦全勝。今回の試合は2019年10月のONE東京大会以来となる。  対するキリアは芦原会館空手出身で、15歳でキックボクシングに転向。2012年にGLORYで行われた世界ミドル級スラムトーナメント(16名出場)に出場すると、準決勝まで進出したがペトロシアンに判定負け。2014年3月にはアンディ・リスティをKOしてGLORY世界ライト級王座に就いた。さらに2018~2019年にはクンルンファイトのWORLD MAXトーナメントでも優勝している。2019年2月以降、試合から離れていたが今回ONEで復活。  1R、キリアは前へ出て積極的にパンチを放っていく。サウスポーのペトロシアンはバックステップでかわしながら左ミドル、左ヒザ蹴り。ジャブを伸ばしてヒザも上手く入れていくペトロシアンが距離をつかんできた様子。キリアの左フックは空を切る。ロー、ミドル、左ストレートと攻撃を振り分けるペトロシアン。  2R、ペトロシアンの右フックからの左ストレートがクリーンヒット。さらにヒザ蹴り。キリアが前に出てくるところに左ミドルを合わせ、ワンツーを叩き込むペトロシアンにキリアは入り込めなくなる。キリアの右インローがローブローになって中断。再開後も絶妙な距離感で自分の攻撃を当てていくペトロシアン。パンチでガードを固めさせてのテンカオ、離れれば左ミドル、前に出てくるところに左ボディストレート。  3R、ペトロシアンは左ミドル、左インロー、ジャブでしっかり距離を取り、左ストレートからヒザを突き刺す。離れ際には右ローも。キリアの左フックは空を切り続ける。残り1分で攻撃をまとめ始めるペトロシアン。左ミドル、左ストレート、左ヒザ、左アッパー、右ジャブと的確に攻撃を当て続ける。  ほぼ相手に何もさせず完封したペトロシアンが判定3-0で勝利。変わらぬ実力者ぶりを示した。 [nextpage] ▼フライ級 キックボクシング 3分3R〇ロッタン・ジットムアンノン(タイ)61.20kg[判定2-1]×ダギール・カリロフ(ロシア)60.95kg  ONEフライ級ムエタイ世界王者のロッタン・ジットムアンノン(タイ)が、ダギール・カリロフ(ロシア)と対戦する。当初はアレハンドロ・リーバス(スペイン)と対戦予定だったが、カリロフに変更された。  ロッタンは2018年6月、RISEに初来日して那須川天心と激闘を展開。延長R判定で敗れるも、そのアグレッシブなファイトで一躍人気者となった。ONEには同年9月から参戦し、2019年8月にONEムエタイ世界フライ級王座を奪取。2020年7月には3度目の防衛に成功している。以前からONEキックボクシングの世界タイトルも手にして2冠王となりたいと発言しており、今回はONEで初めてキックボクシングルールで戦う。  当初ロッタンは元K-1ファイターのアレハンドロ・リーバス(スペイン)との対戦が決まっていたが、衛生安全プロトコルの都合上、カリロフに変更となった。カリロフは28歳、タイ・プーケットの「レボリューション・ジム」代表。その前は母国ロシアの・エカテリンブルクの「サミンプライ・ムエタイ・ジム」に所属していた。WMC I-1グローバルチャンピオンで、ロシアとタイを転戦し、プロ戦績は22勝7敗2分。  1R、右ローを蹴ってくるカリロフにお構いなく距離を詰めるロッタン。左ボディからの連打を繰り出したロッタンに、カリロフも左右フックを返すがロッタンはノーガードで“もっと打って来い”と挑発。ロッタンの圧力でケージを背負う場面が多いカリロフ。スイッチしてヒザを合わせようとするが、ロッタンは左右の強打。強烈な右ローも蹴る。  2R、サウスポーに構えるカリロフの奥足を右ローで蹴るロッタンはパンチで追い詰める。ロッタンの左フック、右ストレート、左アッパーをもらうカリロフも一発ずつ返す。カリロフがスイッチしても構わず右ローを狙い撃ちするロッタン。追い回すロッタンは“前へ出て来いよ”といら立ちを隠せない。  3Rも前に出るロッタンは左右フックで何度もアタックを仕掛け、カリロフもジャブ、ワンツーを返す。ロッタンの強烈な左ボディをもらったカリロフは両手を広げて“効いてないよ”のポーズ。しかし、ロッタンの右フックをもらう。  右フックを連打するロッタンにカリロフがバックハンドブロー。するとロッタンはノーガードで顔を打たせ、腰を振って挑発。ロッタンは左ボディ、左フック、右アッパー^と畳み込み、どんどん前へ出て左右フックを打ち込んでいった。  勝敗は判定へ持ち込まれ、ロッタンの圧勝かと思われたが、ノーガードでもらったり、バックハンドをもらった印象が悪かったか、判定は割れて2-1のスプリットでロッタンの勝利となった。 [nextpage] ▼バンタム級 キックボクシング 3分3R〇秋元皓貴(日本/同級3位)65.75kg[判定3-0]×ジャン・チェンロン(中国/同級4位)65.80kg  バンタム級キックボクシングマッチで、秋元皓貴(Evolve)が、元ONEバンタム級キックボクシング世界王座挑戦者ジャン・チェンロン(中国)との再戦に臨む。  WFKO空手子軽量級世界王者の秋元は、ONE2勝1敗で2020年10月にフライ級からバンタム級に階級を上げて、チェンロンと対戦した。 チェンロンは、ONEで3連勝後、2019年12月にアラヴァディ・ラマザノフと初代ONEバンタム級キックボクシング世界王座戦を争い、判定負けで王座は逃したものの、接戦に持ち込んだ実力者だ。  初回の対戦でチェンロンは、秋元の蹴りに合わせて左の強打、さらに跳びヒザ蹴りも繰り出すなど秋元を苦しめながらも、スプリット判定で敗れてる。  因縁の再戦に向け、チェンロンは「勝利には絶体的に体力が必要だ。次に必要なのはボクシング。世界に真実を知らせたい。中国格闘技の真髄や中国人ファイターの魂を。その魂は受け継いでいく価値がある。相手をKOしたい。言い換えれば、できるだけ早く終わらせたい」と、短期決着も辞さない構えを見せている。  チェンロンに辛勝し、バンタム級3位となった秋元にとっては、今回の再戦でより決定的な勝利を挙げ、現王者のカピタン・ペッティンディーアカデミー(タイ)への挑戦に辿り着きたいところだ。  決戦に向け、秋元は言う。「前回判定が割れてしまいましたが、今回はしっかりダウンを奪うKOで勝って、いい決着をして次のステップに進めたらと思いますので、楽しみにしていてください」。  1R、秋元はサウスポーのチェンロンの前足へ右インロー多用。チェンロンは左ミドルを多用する。打ち合いになると右フックをヒットさせたチェンロン。秋元は左フックを狙うが不発、3連打からの右ハイを度々見せる。 2Rになるとチェンロンがインファイトを仕掛ける。勢いよく入り込んで左右の強打。秋元も3連打を返す。奥足への右ローをコツコツ蹴っていく秋元はラウンド終了間際に左フックをクリーンヒット。  3R、チェンロンは左ストレートから入っての左ミドル。秋元はチェンロンが入ってくるところに左フックを合わせようとする。入り込んで左ボディを打つ秋元にチェンロンも左ストレートを返す。秋元は右の三日月蹴り。最後の30秒は両者打ちに行く中、秋元が右ストレートをヒットさせてチェンロンが組み付く。  試合が終わると秋元は拳を突き上げ、チェンロンはややうつむき加減。判定はその通り、秋元が判定勝ちでチェンロンを返り討ちにした。 [nextpage] ▼第2試合 ストロー級 ムエタイ 3分3R×ワンダーガール・フェアテックス(タイ)56.60kg[判定0-3]〇ジャッキー・ブンタン(米国)56.35kg  ONEで連勝している女子ムエタイ選手ワンダーガール・フェアテックス(タイ)が、アトム級キックボクシング世界王者ジャネット・トッドの練習パートナーのジャッキー・ブンタン(米国)と対戦。 スタンプと同門のワンダーガールは、2020年7月のONEデビュー戦で1R KO勝利。前に出て戦うアグレッシブファイターで、組み付いてのヒザ蹴りが得意だが、タイガージムのブルック・ファレルを相手にパンチ主体の圧倒的なKO勝利を見せた。8月の第2戦ではKC カルロスもヒジ&ヒザ蹴りで圧倒して2RでTKO勝ち。  ブンタンは米国・カリフォルニア州ロサンゼルス出身で、20勝5敗という戦績を引っ提げてONEとの契約を獲得。ジュニア時代には国際アマチュアムエタイ連盟(IAMTF)フェザー級王者などのタイトルを獲得し、シニアではカリフォルニア州のムエタイ王者に輝いた。また、『SHEfights』など、1日で優勝者を決める形式のワンナイト・イベントも何度も制覇しているという。  1R、ワンダーガールの右ローをかわして左ミドルを蹴り返して当てるブンタン。ワンダーガールはパンチの連打で距離を詰めてケージまで追い詰める。左ミドルをしっかり当てていくのはブンタンの方でムエタイをしっかりやり込んでいる様子。そしてラウンド終了間際に左インローから右フックを打ち、返しの左フックでダウンを奪う。  2R、軽快なステップで左右に動きつつ、パンチの3連打でアタックを続けるブンタン。ボディにも打ち分ける。ワンダーガールはほとんど手が出なくなってしまう。右ロー、左インローも蹴るブンタン。  3Rは前に出るワンダーガールが蹴りを放つ。ブンタンは右へ回り込みながらパンチをまとめ打ちしては離れてサークリング。ワンダーガールはブンタンのハンドスピードに対応できず、防戦一方に。ダウンを奪ったブンタンは大きな仕掛けをせず、出入りを繰り返して判定勝ちした。 [nextpage] ▼第1試合 女子アトム級 5分3R○ビクトリア・リー(シンガポール/米国)51.75kg[2R 1分03秒 リアネイキドチョーク]×スニーサ・スリセン(タイ)52.20kg  ONE女子世界アトム級王者のアンジェラ・リーと、同ライト級王者クリスチャン・リーの妹、ヴィクトリア・リー(シンガポール/米国)がMMA(総合格闘技)プロデビュー戦に臨む。MMA4勝1敗のスニーサ・スリセン(タイ)と女子アトム級で対戦する。  ヴィクトリアは2020年9月、ONEと16歳で契約して注目を集めた。今大会でいよいよ、兄と姉の輝かしい足跡をたどるべく、プロMMAのキャリアをスタートさせる。  父ケンと母ジュエルズもまた格闘家だ。テコンドーをバックボーンに、護身をベースとしたトータルディフェンスシステム(TDS)を考案し、ユナイテッドMMAを設立した両親、そして姉兄、弟(エイドリアン・リー)とともに、9歳でキッズMMAで頭角を現したビクトリアは、これまでにパンクラチオン・ジュニア世界チャンピオンに2度、2019年にハワイ州レスリングチャンピオン、2019年IMMAFジュニア世界チャンピオンに輝いている。加えて、NAGA(北米グラップリング協会)ではキッズクラスから15度の優勝トロフィーを手にしている。  今回の対戦相手スニーサ・スリセン(写真右)は、タイ中部のチョンブリー県在住。タイ柔道王者でMMA4勝1敗。「Full Metal Dojo」で3勝後、2020年7月にONEでスタンプ・フェアテックスのMMA5戦目の相手に抜擢されるも1R TKO負け。しかし、2020年9月にはリカ・イシゲに判定勝ちを収めている。  世界チャンピオンの血統を受け継ぐヴィクトリアだが、このONE初戦を乗り切れるか、それともスリセンが世界の舞台で戦う厳しさを思い知らせるか?  16歳のヴィクトリアと20歳のスリセン。ヴィクトリアはコールに目を瞑り、両手を前に深く呼吸をする。  1R、身長差11cm、ともにオーソドックス構え。先に中央に勢いよく飛び出し、長い左右を突くヴィクトリアに、大きな右を返すスリセン。  がぶりから立つスリセンに左で差すヴィクトリアに、首投げはスリセン! しかし、ヴィクトリアは下から腕十字狙いに。離れるスリセン。  スタンドから再び左で差すヴィクトリア。今度は投げられないよう前方に崩したヴィクトリアは、バックを奪い亀になるスリセンの背後から両足をかける。両脇で腕をつかむスリセン。  身体を伸ばすヴィクトリアだが、首を守るスリセン。ヴィクトリアはパウンド連打に変えるが、リアネイキドチョークは凌ぐ。  2R、左ジャブから突くヴィクトリアは詰めて首相撲ヒザの打ち合い。脇を潜りバックを奪ったヴィクトリアはは、バックから外掛けでテイクダウン。今度は首下にしっかり腕を巻き、スリセンの身体を伸ばして、リアネイキドチョークを極めてタップを奪った。勝利もヴィクトリアに笑顔は無し。  試合後、ヴィクトリアは「1Rでフィニッシュしたかったけど、出来なくて父がアドバイスをくれた。ごめんなさい。質問を忘れちゃいました(苦笑)。そう、最後はしっかりベースを作ってから絞めるようにしました」と初々しく、デビュー戦を語ると、マット上で父ケンさんとハグし、笑顔。ともに記念撮影に収まった。
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