4月21日の「RIZIN.15」横浜アリーナ大会に向け20日、都内で前日計量が行われた。同日の本計量を済ませた選手たちは16時30分からの公開計量にそれぞれのコスチュームで登場。
第11試合のキックボクシングルール59kg契約で、WBA世界ウェルター級王者マニー・パッキャオ推薦という触れ込みのフリッツ・ビアクダン(フィリピン)と対戦する那須川天心は、58.95キロでクリア。ビアクダンも57.45キロでクリアした。
計量後の撮影では、ビアクダンが『ドラゴンボール』の悟空の技「かめはめ波」を先に繰り出せば、那須川もすかさずベジータの必殺技「ファイナルフラッシュ」で対抗した。
範囲を限定することにより「かめはめ波」より高い威力を持つという「ファイナルフラッシュ」のポーズを咄嗟にとった那須川は、試合でもピンポイントで殺傷力の高い技でKOを続けている。
計量後のSNSでは、「明日は自分のやるべき事をしっかりやって倒して勝ちます。進化し続けている自分の姿を見てください」と意気込みを記した。
対するビアクダンは、計量前日会見でパッキャオとはまだ会ったことがないことを明かしたが、今回の計量前にパッキャオと顔合わせをし、エールを送られたという。
那須川の相手にボクサーでどうかという打診もあったが…
公開計量後にはRIZINの榊原信行実行委員長が会見。ビアクダンが“パッキャオ推薦選手”という触れ込みだったことについて、「パッキャオはビアクダンを資料では見ていた。パッキャオ陣営からはボクサーでどうかという打診もあったが、JBCの問題もあり、さらに対戦相手が天心でキックルールと聞くと喜んでやる人と、ノーという人もいて、今回は残念ながら手が上がらず、キックとMMA経験のあるビアクダンになった」と説明した。
また、「ビアクダンとパッキャオはフィリピンで会う予定だったが、ビアクダンが間に合わず、日本での顔合わせとなった。誤解を呼んだことはお詫びします」と話した。
「パッキャオの“秘蔵っ子”」「パッキャオの“秘蔵っ子”ではなかった」というキャッチフレーズはともに煽情的で世間の興味をひくが、このフィリピン人ファイターの格闘技の実力に触れた記事は少ない。
父が元ISKA王者でいまだ現役という父子鷹のビアクダンは、WBCムエタイフェザー級フィリピン王者、ムエタイとキックで32勝3敗3分、MMA4勝1敗でURCCストロー級王者にもなっており、それぞれの試合動画は、カード発表時から確認できている。
肩書だけでなく、その戦いに目を向ければ、スピード・威力・精度ともに那須川には及ばないものの、低い手の構えから接近戦を好むビアクダンの立ち技の実力、MMAでの蹴り足をつかんでのパンチや首相撲からのヒザなど、際での打撃の強さが、ヒジ打ち無しながらつかんでの攻撃は1回のみ許されるRIZINのキックルールでどれだけ有効か、など那須川戦での見どころが見えてくる。
ボクシング界の巨人パッキャオの名を借りた「プロモート協力関係を結ぶ契約」は事前に伝えられており、プロモーション側はその契約のなかでどれだけ実のある選手を真摯に招聘し、興味を持った観客の目を満足させる試合を提供できるか。同時にメディア側は今回のようにそのプロモートの質を精査し、どのようなファイターでどんな物語を持っているかを、戦いを通して伝えていくことで、格闘技の楽しみ方は深まっていく。
メイウェザー戦後、一般層も巻き込んだ時代の寵児となった那須川と、日本では無名のフィリピン人ファイターの試合。貧しい境遇からWBCムエタイ地域王者、URCC王者になり「いつかチーム・ラカイで練習したい」と語ったビアクダンにはアンダードッグの意地もある。その試合を地上波で放送できる数少ない機会に、格闘技の魅力をいかに伝えられるか。それは2019年に大会数を増やしていくRIZINにとっても大きなテーマとなる。