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カーフキックの起源を探る=1982年に“赤い怪鳥”ベニー・ユキーデが「タイ・キック」として紹介

2021/01/27 10:01
 大晦日『Yogibo presents RIZIN.26』のメインイベントで、堀口恭司(アメリカン・トップチーム)が朝倉海(トライフォース赤坂)にTKO勝ちし、1月23日(日本時間24日)『UFC 257』のメインイベントでも、ダスティン・ポイエー(米国)がコナー・マクレガー(アイルランド)に効かせてフィニッシュに結びつけたカーフキック。  Twitterではトレンド入りし、ネットでは禁止論争まで巻き起こるなど、「カーフキック」が話題となっている。  注目度の高い試合で使われたことにより、一気に話題となったわけだが、国内において明確にふくらはぎを狙って蹴っていたのは長倉立尚(=引退)と和田竜光(現ONE)が思い浮かぶ。 (写真)現在はONEで活躍する和田竜光はDEEP時代からカーフキックの使い手だった 和田は『ゴング格闘技』2017年2月号のインタビューにて、「膝下を蹴るローキック(当時はカーフキックという名はなかった)を完全に自分のものにしましたね」との質問に、「あれは先輩の長倉立尚さんが練習で出してきた技で、試合では門脇英基さんとやった時は(2012年6月)その技で吹っ飛ばしていました。あれは痛いんですよ。僕は“ナガタツ蹴り”と呼んでいます。ナガタツ蹴りは有効で、タイミング、距離と自分にも結構ハマっています。カットもしづらいですし、見ているだけだと痛そうではないですが痛いんです。もらうと脚が痺れます。俺と試合をする人は蹴らないでね、と思いながら蹴っています(笑)」と、カーフキックは長倉から教わったものだと証言している。  一方の長倉は2011年8月の試合ですでにカーフキックを使っているのが確認されており、MMAで世界的に大流行するかなり以前からその有効性に気付いていたのは間違いない。 (写真)2011年8月の試合ですでにカーフキックを使っていた長倉 では、カーフキックが誕生したのはいつなのか。これには諸説あり、例えば海人(シュートボクシング)のように「練習中にたまたま蹴って使えると気付いた」と誰に教わることもなく自分で考えついた選手もいるため、起源が全て同じところに辿り着くわけではない。  ひとつの例として、打撃解説で知られる吉鷹弘(初代S-cup世界王者)は、2010年にリリースした教則DVDの中でふくらはぎを蹴るローキックを紹介。吉鷹によれば、試合でたまたまアキレス腱を蹴られた時に「もう痛くて次の日は椅子にしゃがめなくて。それでこれは効くんだと思って、高2の時に読んでいたベニー・ユキーデの教則本を思い出して“これは行ける”と思ったんです」と、ユキーデの教則本がヒントになったと話している。 (写真)2010年にふくらはぎを蹴るローキックをテクニックDVDで紹介している吉鷹弘によるカーフキック解説 ユキーデは全米マーシャルアーツまたはプロ空手と日本で紹介されたアメリカン・キックボクシングの選手で、WKA世界ライト級王者。1977年8月2日、新日本プロレスに初来日してキックボクシングの試合を行い、以後、日本のキックボクシング団体で活躍。赤いパンタロンのコスチュームを着用していたことから“赤い怪鳥”と呼ばれるようになった。1978年から『週刊少年マガジン』で連載された格闘技劇画『四角いジャングル』(梶原一騎原作)に主人公のライバルとして登場し、さらに人気を博した。  吉鷹が読んだというユキーデのテクニック教則本とは、1982年にスポーツライフ社から発売された『ベニー・ユキーデ 実戦フルコンタクトカラテ』。この中でユキーデは明確にふくらはぎを急所と指定し、“タイ・キック”という名称でふくらはぎを蹴るローキックを実演している。  今後、カーフキックの威力がより知れわたることで、ほかのローキックやハイキック、パンチ・テイクダウンへの散らしもより有効となる。また、それをチェック、あるいは外すデフェンスも磨かれ、脛で受けること、スタンスを変えることで、対戦相手もその動きを利したトランジッションを考えてくる。こうして技は巡っていくのだ。  現在書店に並ぶ『ゴング格闘技』3月号(NO.312)では、このユキーデの教則本の写真を掲載している他、中国武術に古くからあるふくらはぎを含むスネ周りを狙った蹴り技の数々、さらに吉鷹弘と鈴木秀明によるカーフキック技術解説(再録)、国内随一のカーフキックの使い手である高橋遼伍による解説など、「カーフキック&ローキック」を特集している。
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