2021年1月22日(金)、シンガポール・インドアスタジアムにて、ONE Championship「ONE: UNBREAKABLE」が開催された。
▼ONEバンタム級キックボクシング世界タイトルマッチ(61.3kg – 65.8kg)×アラヴァディ・ラマザノフ(ロシア)65.80kg, 1.0156[2R 1分56秒 KO]〇カピタン・ペッティンディーアカデミー(タイ)64.90kg, 1.0066※カピタンが新王座に就く。ラマザノフは初防衛に失敗。
王者ラマザノフは18歳でムエタイデビューを果たし、21歳でタイへ渡って本場でのトレーニングを開始。ロシア国内ではムエタイ選手権で12回優勝、IFMA(国際アマチュアムエタイ連盟)ではヨーロッパ王者と世界王者に輝いている。ONEには2018年10月から参戦し、ペットモラコットに勝利。2019年12月の6戦目で初代ONEバンタム級世界キックボクシング王者となった。今回が初防衛戦。
カピタンは2016年にWPMF世界スーパーウェルター級王者、2019年にルンピニースタジアム認定スーパーウェルター級王者となったムエタイ戦士で、テレビマッチの『True4U』では2019年にミドル級、2020年にはスーパーライト級王者となっている。セーンチャイやペッブンチューといった超一流選手とも戦っていた。2020年9月のONE初参戦では僅か6秒でのKOを記録。10月には日本でも活躍したチャムアックトーンから勝利を収めている。
1R、カピタンは右ローで積極的に攻めていき、右ストレートにつなげる。ワンツーで迎え撃とうとするラマザノフにカピタンは左右のローをどんどん蹴り、パンチに合わせての左ミドルも蹴る。ケージ際では強烈な右ストレート。下がってケージを回り込み続けるラマザノフにカピタンはカモンゼスチャー。しかし、ラマザノフの右がクリーンヒット。それでもカピタンは前進を続ける。
2Rもアグレッシブに追いかけるのはカピタン。ラマザノフは下がりながらも構えを左右にスイッチし、ワンツーを繰り出す。ケージを背負って強打を浴びるシーンが増えるラマザノフ。防戦一方のラマザノフに右ロー、右ボディフック、そして右ストレートを叩き込むとラマザノフはしゃがみこむように倒れ、カピタンが圧倒KO勝ちで新王座に就いた。
ベルトを持ったカピタンは「夢が叶いました。自分のチームとサポートしてくれた皆さんに感謝します。ムエタイに戻ってきてONEで勝ちたい。これからまた自分の道を作っていきます」と語った。まるでロッタンのようにアグレッシブな新王者。今後も注目される選手だ。
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▼ライト級(77.1kg)○青木真也(日本)75.50kg, 1.0023[1R 2分42秒 ネッククランク]×ジェームズ・ナカシマ(米国)76.70kg, 1.0091
ONEライト級(※77.1kg)戦。青木のONEウェルター級(※83.9kg)ファイターとの対戦は2017年11月のベン・アスクレン戦以来。当時は青木がウェルター級に挑戦し、「ONE世界ウェルター級選手権試合」としてアスクレンと対戦も1R TKO負けを喫した。
しかし、その後、青木はONEライト級でラスール・ラキャエフ、シャノン・ウィラチャイ、イブ・タン、そして2019年3月のエドゥアルド・フォラヤンとの再戦での一本勝ちを含む4連勝でライト級王座を奪還。
2カ月後にクリスチャン・リーに敗れベルトを手放したものの、2019年10月にホノリオ・バナリオにダースチョークで一本勝ち。2020年4月の「Road to ONE:2nd」では、世羅智茂とのグラップリングマッチにも臨み(時間切れ・判定無しドロー)、2020年9月の『ROAD to ONE 3rd:TOKYO FIGHT NIGHT』で江藤公洋に判定勝利している。
今回は青木にとって4カ月ぶりのMMAで、日本大会以外の試合はリー戦以来、1年8カ月ぶり。このコロナ禍のなか、10日間の隔離期間を経てシンガポールで戦うことになる。
対するナカシマはMMA12勝1敗。米国在住の父が日本人一家の養子として育ったため、日本姓を持つファイター。
全米短期大学体育協会(NJCAA)のレスリング全国王者に輝き、2015年にMMAデビュー。LFAでは二階級制覇を成し遂げ、ONE初戦ではロシアのライモンド・マゴメダリエフ(MMA7勝1敗※唯一の黒星がナカシマ戦)に判定勝ち、2戦目では阿部大治をKOに下しているルイス・サッポにTKO勝ち。
さらに2019年8月には、元UFCファイターの岡見勇信と対戦し、ダウンを奪う判定勝利で、ONE3連勝をマークした。2020年11月には12連勝の戦績を引っ提げ「ONE世界ウェルター級選手権試合」として、王者キャムラン・アバゾフに挑戦。中盤に粘り強いテイクダウンを奪うも、4Rにヒザ蹴り&アッパーを受けてTKO負けし、ウェルター級王座戴冠はならなかった。
今回は階級を下げてのONEライト級(※77.1kg)転向初戦となる。ライト級4位の青木を下し、一気に上位戦線進出を狙う。
MMAの「ユニファイド・ルール」では、ライト級は70.3kg、ウェルター級は77.1kgが上限となる。ONEの場合は体重チェックのみならず尿比重チェックも導入しているため、減量時の「水抜き禁止」の上で、ライト級は77.1kgが上限となっている。
ナカシマはRFA、LFA時代も含め、一貫してウェルター級を主戦場としており、ウェルター級の中では大柄ではない。「水抜き禁止」のONEライト級=77.1kgでどんな動きを見せるか。
ナカシマは、ホイス・グレイシーの黒帯ジョン・クラウチ率いるMMA Lab所属。レスリングベースに加え、ベンソン・ヘンダーソンらとの練習で鍛えた強力な組み技を武器とし、岡見を極めかけたハイエルボーギロチン、パスガード、マウント&パウンドなどの寝技に加え、ミラノではジョルジオ・ペトロシアンから打撃を学び、力強いワンツーの左で岡見からダウンも奪っている。組み技を軸にする同じサウスポー構えの青木にとって、タフな相手となる。
宇野薫をセコンドにつけた青木。『バカサバイバー』を口ずさみながらケージイン。ナカシマは上半身の厚みがうかがえる。
グローブタッチ。1R、ともにサウスポー構え。相手の左ストレートを潰す右ミドルハイから入る青木はローキックも。ナカシマも右の蹴りも、青木は右の蹴りからヒザと上体を触り、組み付く。差し上げたナカシマは金網に押し込みヒザ蹴りを見せて離れる。
ナカシマの右の入りに右フックを当てた青木! ナカシマの圧力を押し戻す。ナカシマの左をかわして両脇を差して組んだ青木は脇を潜ってバックテイク! 左脇を取り右足でハーフバック。両腕を左に手繰り、前に落とそうとするナカシマだが、落とされず腕を戻した青木は、さらに背中に跳び乗って両足は4の字ロック。アゴ上から首をひねるようにネッククランクへ! スタンドで青木を背負ったままナカシマはタップした。
勝利した青木は、すぐにケージの外に出て宇野とハグ。ライト級4位の青木は、勝利者インタビューで「次はタイトルショットか?」と問われ、「ベルトとか考えてないです。ほんとうに怖くて、でもすごく幸せな時間で、あの……俺も格闘技、別にやんなくてもよくて、それでもやることで喜んでくれる人がいるんで」と、ABEMAプロデューサーの北野雄司氏、GOの三浦崇宏氏らの名前を挙げ、涙ながらに「俺たちはファミリーだ!」と絶叫。
続けて「もう(格闘技が)好きなだけ。日本にはいっぱい応援してくれる人がいて、37歳で、37年間生きてきて、いまが一番応援を受けていて、いまが一番幸せです。ありがとう!」と感謝の言葉でサークルケージを後にした。
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▼キックボクシング ヘビー級(120.2kg)〇ラーデ・オパチッチ(セルビア)106.55kg, 1.0152[2R 1分11秒 TKO]×ブルーノ・スサノ(ポルトガル)102.20kg, 1.0027
オパチッチは2メートル近い長身を誇る23歳の新鋭で2015年にアマチュアでK-1ルールのヘビー級王者となり、WAKOのジュニアヨーロッパ王者にも輝いた。ヨーロッパのキックボクシング団体『ENFUSION』のヘビー級リーグ戦優勝、クンルンファイト出場などで知られるようになり、2020年12月にはONEデビュー戦 でエロール・ジマーマンを後ろ廻し蹴りでKOし、その名を轟かせている。戦績は19勝3敗。
当初はパトリック・シミッドとの対戦が決まっていたが、コーナーマンの1人に新型コロナウイルスの陽性反応が出たため出場停止。代わってブルーノ・スサノと対戦することになった。戦績は86勝16敗。
1R、オパチッチが一気に間を詰めて前へ出ていく。スサノは右ロー、ボディを交えたコンビネーションパンチを放つ。しかし、オパチッチのスピードのある左ボディが何度も決まると明らかにペースダウンし、左ボディでスタンディングダウン。
再開後、またも詰めたオパチッチにスサノの左の蹴りがローブローに。短い休憩後、スサノはスーパーマンパンチを繰り出すが、オパチッチはまたも左ボディを突き刺し、空振りに終わるも後ろ廻し蹴りを繰り出す。ローやパンチをもらっても前に出るオパチッチに、スサノはケージを蹴って飛んでのスーパーマンパンチ。ボディをもらって身体をくの字にさせながらもパンチを打ち返す。
2R、オパチッチのジャブに大きく仰け反るスサノ。このラウンドはジャブを多用するオパチッチだが、狙いはやはり左ボディだ。スサノは前蹴りで押し返すが、左ローに右ストレートを合わされて足がもつれ、オパチッチが連打をまとめる。左ボディ、右ハイキック、そして最後も右が2発ヒットしたところでレフェリーストップ。
ヘビー級の新鋭オパチッチが圧倒的なTKO勝利を収めた。
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▼ウェルター級(83.9kg)×ゼバスチャン・カデスタム(スウェーデン)83.90kg, 1.0222[1R 2分08秒 フェイスクランク]○ザキムラッド・アブデュラエフ(ロシア)83.90kg, 1.0248)
カデスタムは、かつてPANCRASEにも参戦したオマー・ブイシェ、さらにK-1&HERO'Sで活躍したオーレ・ローセンを師と仰ぐストライカー。 PXCウェルター級王者から、2018年11月にタイラー・マグワイアをKOに降し、ONE世界ウェルター級王者となった。2019年3月にはカザフスタンのゲオルギー・キシギンを退け王座防衛に成功している。
2019年10月大会でキャムラン・アバソフに判定負けで、ONE世界ウェルター級(※83.9kg)王座から陥落した。今回が再起戦となる。 対する無敗のアブデュラエフはWLFで連勝し、2019年6月「ONE Warrior Series 6」での判定勝ちでONE本戦デビューを決めた。
1R、ともにオーソドックス構え。左ローから入るカデスタム。さらに右ロー。その詰めにアブデュラエフは低いダブルレッグからテイクダウン! 背中を見せてスクランブルするカデスタムからすぐにバックを奪い、外がけでテイクダウン。すぐにバックから4の字ロックを組む。
背後から右ヒジを打ち、リアネイキドチョークを狙うアブデュラエフはパーム・トゥ・パームでフェイスロックへ! カデスタムがタップした。
1Rで危なげなく一本勝ちを極めたアブデュラエフは、ONE本戦初勝利も元王者に完勝し、一気にコンテンダーに躍り出た。
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▼キャッチウェイト(54.8kg)○メン・ボー(中国)54.80kg, 1.0233[判定3-0]×サマラ・サントス(ブラジル)53.20kg, 1.0057)
54.8kg契約戦。プロデビュー戦で現UFC世界王者のジャン・ウェイリーに判定勝利しているメン・ボー。ONEではラウラ・バリンとプリシラ・ガオールを相手に1R連続KO勝ち中だ。
対するサントスはション・ジンナンに3R TKO負け、三浦彩佳にアメリカーナで一本負けと2連敗を喫している。
1R、ともにオーソドックス構え。大きな背中のメン・ボーはゆったりと構えてフェントを入れつつジャブ&ロー。右ロー、ワンツーを振るサントスをバックステップでかわして右のカウンターを狙う。右を振ってバランスを崩したメン・ボーのバックに回るサントスだが落とされて下に。腕十字を狙う。
2R、右ストレートを当てるメン・ボーは右で差して崩してテイクダウン。下のサントスは三角絞めを狙いつつ腰を上げてヒジを頭に狙う。メン・ボーが体を離してブレーク。サントスの右ローに右ストレートを当てるメン・ボー。
3R、右のカーフキックを当てるメン・ボー。大きな右はかわすサントスだが前に出るとメン・ボーの右がヒットする。組むサントスに右ヒジを振り突き放すメン・ボー。しかしサントスは右を振って前に。
右一本で差すメン・ボーは強引に崩すが、今度は倒れない。ワンツーから前に出て左ミドルを当てるサントス。動きが止まるとメン・ボーの右を被弾する。さらにワンツースリーで前進し、右で差してバックに回り崩すと、サントスからマウントを奪取。パウンド連打でゴングとなった。
判定は3-0でメン・ボーが勝利。ONE3連勝・MMA6連勝をマークした。
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▼ストロー級(※56.7kg)5分3R×川原波輝(日本)56.60kg, 1.0009[2R 2分02秒 KO]○リト・アディワン(フィリピン)56.70kg, 1.0103※数値は、最終計量及びハイドレーションテスト結果
リト・アディワンと対戦予定だったハシガトゥ(中国)が、中国当局の新型コロナ感染拡大抑止のためのロックダウンにより、シンガポールへの渡航が不可能となったため欠場。
代わって川原波輝が緊急参戦。伝統派空手出身の川原は、練習仲間の石原夜叉坊をセコンドに2020年8月に越智晴雄をリアネイキドチョークで極め、DEEPストロー級王者となった。今回は試合9日前のオファーを受けての緊急参戦。
チーム・ラカイのアディワンは、2019年10月に日本大会で仙三の腕を破壊。2020年11月大会では修斗王者・箕輪ひろばをサブミッションで追い込みながらもスプリット判定負けを喫している。
1R、ともにオーソドックス構え。カーフ気味の右ローから入るアディワン。左ジャブのフェイントは川原。スイッチしサウスポー構えに。アディワンは右ミドル、右ロー。ダブルレッグに入るが、アディワンは切る。
互いにニヤリと笑いグローブタッチ。大きな右で入るアディワン。オーソドックス構えに戻りさばく川原は左ジャブを上半身に。続く遠間からの右はかわす川原。アディワンは右ローに続いて右フック! 川原は動きが硬いか。川原の右は空を斬る。 左を鉄槌気味にジャブで見せる川原。アディワンは右カーフキック! さらに右ミドルをヒット! 後ろ蹴りを見せる川原にアディワンは右ミドルを突く。アディワンが右の蹴りで先制した初回。
2R、左インローは川原。圧力をかける。右ミドルから入るアディワンは右フックも狙う。川原の左インローが金的に。すぐに再開。アディワンは右ロー。さらに右のカーフキックに川原は足を流し一回転する。
川原は右の蹴りのフェイントから小刻みにステップインするが、そこにアディワンは左フック! 後方に倒れた川原にアディワンが鉄槌1発、連打に入るところでレフェリーがストップした。アディワンの右の上下の蹴りに手詰まりとなった川原が左フックを受けてKO負け。スクランブル参戦のほろ苦いONEデビュー戦となった。