12月31日、さいたまスーパーアリーナで開催される『RIZIN.14』の公開計量(モック計量)が30日、同所サブアリーナで行われ、RENA(シーザージム)が最終体重調整中に過度の貧血、脱水症状を起こし、本計量に間に合わず失格となったことが発表された。
榊原信行RIZIN実行委員長によれば、脱水症状を起こしたRENAは、病院で点滴を受け、30日17時の時点で退院しているとのこと。「体調は回復したので、RENAがそれでもやりたいと思えばドクターの診察のうえ、許可が出ればキャッチウェイトでの試合をサマンサ陣営と交渉します。RENA本人の意思を確認する必要がありますが、試合はやる方向性です」と経緯を説明した。
その後、RENAと同門のMIOが「7月の2連戦からホルモンバランスが凄く乱れてて今回も女性の周期と減量が重なり苦しんでました」「周囲から試合を望まれて、いま悩んでるみたいだけど、私はこんな状態で試合なんて本当に心配だからやめてほしいのが本音です」とRENAの状況を危惧するtweetを連続でアップしている。
メイウェザーvs那須川天心の項でも記したが、体重差やコンディション不良のなかでも、ファイターにとっては試合のチャンスがあり、周囲の有形無形のバックアップがある状況で、試合をしないという選択をすることは難しい。安全面に関して、最大限の配慮をすべきは主催者や周囲の務めだ。また、その判断をファンが受けいれることができるよう周知を図るのがメディアの役割といえる。
点滴により一時的に症状は回復するであろうが、急激で大幅なドライアウト(水抜き)を行うことは、内臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めている。ONE Championshipが尿比重検査により水分値のチェックを行い、水分を戻す目的での点滴を認めないようにしたのは、脱水症状から心肺機能不全で選手が亡くなる事故が起きたことが契機となっている。
また、女性アスリートにとっては、月経によるコンディション調整の難しさという問題もある。月経までの一時期はホルモンが卵巣から分泌され、水分をため込んで体がむくみやすく便秘になりやすい時期でもあり、計画的な減量が困難になることがある。
海外アスリートのなかにはコンディション調整目的での月経移動に低用量ピル(OC)を使用する選手も少なくなく、減量のために生理を止めるという選手も存在する。
一方で、極端な食事制限や脱水を伴う急速減量により、無月経になってしまう女子アスリートもおり、無月経が長期間に渡ると、女性ホルモンが不足し骨が再生されないために、激しい運動を続けると疲労骨折を起こしやすく、不妊のリスクを高める可能性があることも現在では報告されている。
こういったさまざまな状況のなか、女子ファイターは減量に取り組み、試合に臨んでいる。
これまでRENAは7月のGirls S-cupで対戦相手のエレイン・リアルの1kgオーバーを容認し試合の実施を申し出たり、RIZINでも体重超過したアンディ・ウィンを相手に試合を行っている。今回も減量が思うようにいかないなか、キャッチウェイト戦の判断よりギリギリまで試合成立のために減量に取り組んでいたのは、彼女の責任感の現れであろう。
取材を進めるなか関係者によれば、今回のRENAの出場に関して、「試合をやる方向」以外にも「試合を断念する」という意見も内部から挙がっていることが分かってきた。大晦日に多くのメディアがかかわるなか大会内容の変更は大変な労力を伴うであろうが、それがファイトスポーツの一面であり、実際にRIZINはこれまで体重超過したギャビ・ガルシアの試合の直前中止や、9月の台風時には試合順の大幅な入れ替えを行っている。
今回、もし「試合中止」となった場合も、RENAが第1試合の責任を果たそうとすること以上に、その主催者の判断がファンから支持されることを願っている。
なお、今回のMIOのSNSでの訴えをいちはやくニュースで紹介した熊久保英幸記者は、本誌同様に榊原委員長の囲み取材でも、積極的にRENAの状況把握とドクターの見解について取材していたことを付記しておきたい。
【写真】契約体重の49kgジャストで計量をクリアしたサマンサ・ジャン=フランソワ(フランス)。海外からコンディション作りが難しいなか体重を作り、キャンプをはってトレーニングをしてきたファイターにも試合が中止になった場合のフォローがある。
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