2020年12月27日(日)東京・新宿FACEで開催されるJAPAN KICKBOXING INNOVATION主催『CHAMPIONS CARNIVAL 2020』。2部制で行われる今大会の第2部第5試合、スーパーファイト67kg契約3分3Rで対戦するINNOVATIONウェルター級2位・与座優貴(橋本道場/JAPAN KICKBOXING INNOVATION)と元ルンピニージャパンウェルター級王者・喜入衆(NEXTLEVEL渋谷)の試合前コメントが主催者を通じて届いた。
与座は2016年極真会館『第33回全日本ウェイト制空手道選手権大会』軽量級を19歳で制し、2017年には軽量級世界王者に。2018年4月の第35回全日本ウェイト制選手権では中量級に階級を上げて準優勝するなどトップ選手として活躍していたが、2019年3月にキックボクシングに転向。ほぼ月イチのハイペースで試合経験を積み、7戦全勝(3KO)の快進撃を続けていたが、今年2月の『KNOCK OUT』で鈴木千裕に判定2-0で敗れ、プロ初黒星を喫した。11月のREBELSではGLORYなど世界で活躍する久保政哉に判定3-0で完勝した。
喜入は2001年プロデビュー、今回が71戦目となる大ベテラン。これまでJ-NETWORKスーパーライト級王座、初代MuayThaiOpenウェルター級王座(3度の防衛に成功)、ルンピニージャパンウェルター級王座と3本のベルトを獲得している。
与座優貴「『こいつヤバイ!』と対戦相手も見る人もすべてが感じ取る存在に」
――“令和最初の怪物”とキャッチコピーされた与座選手が“平成最後の怪物”花岡竜選手と揃い踏みでホームリング(INNOVATION主催興行)に登場です。
「前の試合(11月8日、久保政哉戦、判定勝ち)が納得いかない出来だったので、仕切り直しで気合いが入っています。コンディションも良く、キックボクシングの試合も次で10戦目、試合慣れしてきたというかリング上での成長を実感でき、総合的にスキルアップしていることを感じます」
――総合的なスキルアップとはどんな?
「これまで空手道で身に着けた飛び技や二段蹴りといった派手な大技を披露することはありましたし、そういった動きは一見してアピール度が高いのでしょうけれど、そういった空手の応用ではなく、キックボクサーとしての僕自身のキックボクシングができつつあるなと」
――その完成度は?
「良くて30パーセント。けれど、試合中に学び伸びる感覚が身についてきたし、相手のレベルも上がってくるごとに成長スピードが加速している実感があります。やはり、強い相手と闘うことは大きな糧になります」
――そんなところに超新星×レジェンドと分かりやすい構図が成り立つ与座×喜入戦、この試合は望むところなのでは?
「実績確かな選手ですし、豊富な経験はもちろん、高齢であってもフィジカルの強さも感じます。まさに願ったり叶ったりの相手です。が、今の自分が普通に力を発揮すれば問題なく勝てると確信しています」
――それは「キックボクサー与座優貴」としての自信?
「それももちろんですが、喜入選手がRISEで“ブラックパンサー”ベイノア選手に負けています(2019年7月5日)が、自分は空手道トーナメントで2回当たり、どちらも勝っていますので三段論法が絶対じゃないといえ、自信にはなります」
――また、喜入選手には大接戦だとはいえ、今回、同じ興行に登場する先輩、橋本悟選手が敗北(2017年10月15日)しています。
「カタキを獲るなんて問題でもないですが、悟さんから喜入戦選手対策も聞いていますので、ますます勝率が高まっています」
――可能性の塊でもある与座選手のその先は?
「首相撲は、武術としても何にせよ練習してかなり向上しています。それでも自分としては、まずは肘打ちなし系のキックボクシングを志向したいので、色々なしがらみがあるにせよ、RISEやK-1、KNOCK OUT、更にはRIZINも狙いたいですし、ONEやGLORYといった世界の舞台も指標に定めたいです」
――与座選手の現在階級、63.5kgから65kgあたりは、世界的にも日本でもかなり層が厚い大変なクラスです。
「RISEなら原口健飛選手、K-1は山崎秀晃選手などでしょうか。興味も希望もあります」
――今、そのレベルに通じる自信がある?
「関係者やマニアは『絶対無理』と言うでしょう。しかし、自分が史上最年少、高3の18歳で優勝した2016年の第33回全日本ウェイト制空手道選手権大会では、同様に『絶対無理』と言われていた3度の優勝経験を持つ福井裕樹先輩を決勝で破ることができました。世界のトップを今すぐ倒してみせるとなんて豪語なんてしませんが、内に秘めた自信を核として、日々の稽古と試合で強くなるのみ。今、この瞬間だって自分は成長していますから」
――最近(12月20日)、23歳になられた与座選手ですが、まだまだこの先は長いのでは?
「自分的には若くもないですし、焦っています。だから、決して主義ではないアピールをこの場を借りてさせていただいています」
――話題は変わって、極真世界王者の同志、横浜流星さんが主演する映画「きみの瞳が問いかけている」出演が話題になりました。
「思ったよりも反響がありました。ですが、嬉しい反面、悔しくもあり」
――悔しい?
「映画で評判を取るよりも格闘技で有名になるのが自分の本望なので、そのジレンマが」
――そんな与座選手に意地悪な質問ですが、YouTuberとして一世を風靡し、高額収入獲得を隠さない朝倉未来選手や、そのフォロワーとしてアンチが増えようとも活動を盛んにしている安保瑠輝也選手をどう思われますか?
「それは否定しません。彼らは信念があり、有言実行を成しているのですから尊敬もします。ただ、自分が同じ道を歩くことはしないというだけです」
――なるほど。
「それとは別に安保選手には興味があります。弟の璃紅選手は、極真時代、自分がまだ新人時代にトップクラスにいて目標とする一人でした。それだけにK-1での活躍が気になりますし、自分と同階級の兄、瑠輝也選手との対戦希望も強くなるばかりです」
――そんな与座選手の最終到達点は?
「『こいつヤバイ!』と対戦相手も見る人もすべてが感じ取る存在になります」
喜入衆「まだ確かな穴だってあることが自分には見える」
――今年がプロ20周年となる喜入選手、“褐色の荒馬”と呼ばれ美男エースだった時代からすると、まさか40歳を過ぎて現役ファイターを続け、“鉄人ゴリラ”になっているとは、想像もつかなったことでしょう。
「いやいや、あんまからかわないでください(笑)」
――アイドル的なイメージDVDが発売されたなんて、他には魔裟斗選手くらいものではないでしょうか?
「そんなこともありましたけど、キックボクシングに関しては、選手をしながら興行運営やジム経営に携わらせていただいて、リングでも裏方でも働いてきた経験は自分の大切な財産です」
――王者でありメインイベンター、プロ興行とアマ大会のプロデューサー、ジム代表と、ここまで兼任されたファイターは世界的にも稀有でしょう。
「とおっしゃられればカッコいいですけど、“キックのなんでも屋さん”が本当ですからね。三軒茶屋ジム担当が長かったですが、ジム占有の店舗がなくなってレンタルスペースになってからは、ジョイントマットや鏡をクラス前に独りでセッティングするなんて苦労が毎日でした。三茶の駅から徒歩数分の好立地だけど、雨の日はカエルを踏んづけて、マットをどかせばカビの中からキノコが生えていたり、「あんなジムは世界中探してもなかったぞ」って底辺的な部分でも胸が張れます(笑)」
――今回は、極真世界王者からの転身、スーパーホープ、与座優貴選手との試合についてが主眼のインタビューです。
「凄い素質ですよね。左中段蹴りには警戒しています。空手の実力が世界一であっても、自分にとってはキックキャリア数戦の新人キックボクサーであることには違いないわけで、まだ確かな穴だってあることが自分には見えます。そこを突く戦略も練っていますし、今だからこそ潰すことができるなと。いや、まさに今しかない」
――ベテランならではの見識です。
「与座選手は凄い人材です。ですが、自分の闘い方を貫けば勝てることが今の自分だからこそわかる。むしろ、二十代の自分だったら勝てなかったかもしれない。そういう試合をしてみせますよ」
――超新星×レジェンドといった単純な構図から一気に試合の深みが増しました。
「今年は、まさかのコロナで色んな予定が壊れたり修正したりを余儀なくされました。年に4回ペースで試合をしてきた自分が、不本意ながらの今年2月以来2度目。その間に色々考えさせられましたが、ようやく次のステップが見えてきました」
――次のステップ?
「近い将来、自分がオーナーとなるジムを創設したいと考えています」
――それは朗報です。場所や時期は?
「20年以上在住してお世話になっている神奈川県川崎市高津区あたりがいいとは思っていますが、その前にしなくてはならないこともありますし、そのステップがこの試合後には待っています」
――ホップ→ステップ→ジャンプということで、与座戦はホップに当たるわけですね。
「はい、しっかりと勝ってホップして、確実にステップを踏んで、ジャンプでどこまでも高く飛びあがってみせますよ」