MMA
インタビュー

【DEEP JEWELS】堀口恭司先輩のように世界へ──MMA2戦目で暫定王者を撃破した女子格闘技の“超新星”伊澤星花

2020/12/21 13:12
 2020年12月19日(土)東京・新宿FACEにて『skyticket Presents DEEP JEWELS 31』が行われ、セミファイナルのDEEP JEWELSストロー級(-52.2kg)戦で、プロMMA2戦目の伊澤星花(高本道場)が、DEEP JEWELSストロー級暫定王者の本野美樹(AACC)を、ノンタイトル戦ながら、判定0-3で破る波乱が起きた。  小学生から柔道とレスリングを始め、グラップリングでも強豪・杉内由紀(QUINTETで山本美憂、杉本恵、長野美香に一本勝ちで3人抜き)とドロー。さくらにも判定勝利するなど、組み技で頭角を現していた伊澤は、10月のDEEP JEWELSでプロMMAデビューし、キャリアで優るARAMIをテイクダウン&寝技で圧倒し、判定3-0で完勝していた。  堀口恭司と同じ作新学院出身。教職員免許を持ち、このコロナ禍で「何もやることがないから」始めたMMAは、いまや伊澤にとって「世界」への扉を開く重要なパートとなった。 「伊澤星花の人生の中で、いま全力を賭けたいのはこの総合格闘技」──“波乱”から“確信”の王座獲りへ。JEWELS史上最短、3試合目の戴冠に向け、女子格闘技の超新星に聞いた。 これまでやってきた全部の技術を集結させてるのが総合格闘技 ──MMA2戦目にしてチャンピオンを破りました。 「練習してきたことが試合で出せたので、とりあえず安心しているという気持ちが強いです」 ──「練習してきたこと」のひとつは打撃でしょうか。 「そうですね。ずっと柔道とかレスリングとか組み技ばかりをやってきたので、打撃にあまり自信がなかったんですけど、今回、しっかり打撃の対策を練って試合に臨みました」 ──本野選手はサウスポー構えから右ジャブを突いてきました。 「本野さんのジャブは強いという印象があったので、すごく気をつけようとしていました。その意味では、結構予測通り、想定通りのタイプだったので、試合がやりやすかったです」 ──そのサウスポーの本野選手に、伊澤選手の三日月蹴り、右ミドルがヒットしていました。前手が当たる距離でミドルも当たると? 「そうですね。ミドルも結構練習していたので、蹴りながら距離感を掴んでいました。3R目にすごくそれが合ってきたという感覚がありました」 ──組み技の部分でも「想定内」でしたか。 「はい。力とかどのくらいか分からなかったんですけど、組んだ感じも想像通りというか、“あっ、これくらいだな”という感じでした」 ──2R終了時にはリードしていると? 「2R目があまり攻めていなかったので際どいかなと思っていました。自分がやることは変えずに、最後はしっかり取りに行こうと考えていました」 ──現王者に勝ったことで、次はタイトルを賭けて早々に試合をしたいですか。 「そうですね。次はDEEP JEWELSのベルトを巻きたいと思っているので、もう1回、本野さんとやってしっかりベルトを獲りたいと思います」 ――なるほど。あらためて、伊澤選手の格闘技歴を聞きたいのですが、柔道とレスリングの経験があると。 「そうですね。柔道とレスリングと、あと相撲を少しやっています」 ――相撲? いつくらいにやっていたんですか。 「去年の大阪であった女子相撲選手権みたいなやつ(第24回全日本女子相撲選手権大会)に出ました」 ――結果は? 「50kg以下級で準優勝でした(※伊澤は3人抜きで決勝進出。優勝は大田嵐連合道場の吉澤満帆)。その1回しか出てないのですが……」 ――それは腕試し的に? 「そうですね。初めてまわしをつけました」 ――プロフィールによれば、4歳で始めた柔道では高校2年生の時にインターハイ3位と全国選手権5位に入賞。2019年東京学生柔道体重別選手権女子52kg級では準々決勝まで進出と。高校はどちらでしたか。 「作新学院です」 ――堀口恭司選手と一緒ですね。堀口先輩のことは噂には聞いていたりしたのですか。 「はい。空手部に強い人がいたと。それでプロになった人がいるよみたいな。当時はへえ、そうなんだと思っていました」 ――その当時はそこまでMMAに興味があったわけでは無さそうですね(笑)。レスリングは、いつまでやっていたのですか。 「小4から中学校までやってて、中学校3年のときに57kg級で、全国大会で優勝しました(※2012年沼尻直杯全国中学生選手権女子57㎏級で優勝)」 ――なぜレスリングは辞めてしまったのでしょう? 「全国で優勝したからいいかなと思って……」 ――目標を達成してしまうと次のことをやりたくなるタイプなのでしょうか。 「そうですね。けっこういろいろなことをしたくて、柔道をやろうかなと思って」 ――柔道でインターハイで3位になって、その後の進路をどのように考えたのでしょうか。 「幼い頃からずっと教員になりたかったんです。でも、柔道もやっていたから、せっかくなら柔道も、教員になる勉強もどちらもできるところがいいなと思って、今行っている東京学芸大学に進学しました。大学では柔道というよりも、勉強をずっとしていた感じになりましたけど」 ――教職のために? 「そうですね。もうずっと勉強していて。その傍ら、部活もやるかな、みたいな感じだったので。柔道部があったんですけど、そこまでのめり込んではいませんでした。そのときにちょうど今行っている高本道場が近くにあることを知って、寝技が好きだったので行ってみようかなとなりました」 ――RIZINなどで公式レフェリーを務め、柔術大会で数々の実績を誇る高本裕和代表の道場は「近くにあったから」入ったのですね。 「そうです(笑)。近くに道場があるよ、みたいな」 「夢を与えられる」ってよく言うけど、身近でそれを実感しています。本当に夢を与えられるんだって ――高本道場で初めて総合格闘技に触れたと。 「総合は最近で……柔術も試合には出たことが無くて、本当に柔道の延長みたいな感じで何回かやっていて、でもそれもそんなにがっつりやっていたわけじゃなくて、“暇だし行こうかな”みたいな感じで。MMAを始めたのは本当に最近、コロナ期間中に何もやることがないなと思って(苦笑)」 ――女子大生が「何もやることがないからMMA」? なかなか素敵な発想です(笑)。 「なんか生活にメリハリがないというか。教員にはなりたいけど、大学院に進学すると決めていたので、まだ実践することもない。だから、勉強だけして試す場所がないみたいな。そのメリハリがなくて、何かしたいなと思って、何ができるだろうと考えて、柔道もレスリングもやったし、もしかしたらMMAできるんじゃないかと思って、今年の6月くらいに自粛(期間が)明けてから始めました」 ――なるほど。それで高本道場で「MMAをやりたいんです」と。 「はい。高本道場にMMAのクラスもあったので。『じゃあ柔術じゃなくて、MMAのクラスも出てみたら?』ということで、6月くらいから出たら、楽しいと思いました」 ――どんなところが楽しいと感じましたか。 「これまでやってきた全部の技術を集結させてるのが総合格闘技だ! と思いました。立ち技もあるし寝技もある。やることが多いから飽きないなと。いろいろな技術があって奥深くて楽しい。MMAクラスにはまだ女子選手がいないので、高本さんの指導で男性会員さんたちと練習しています」 ――打撃パートはどう感じていますか。 「打撃はやったことがなかったので、難しさはあるんですけど、でもやっぱりやっていくうちにちょっとずつコツとかも分かってきて、全体で見たらレベルは低いんですけど、やっていくと『できるぞ』と。柔道とか組み技はもうできて当たり前みたいなところがあるんですけど、打撃は“できなかったことができるようになる”というステップアップがすごく明確にわかるので、成長を感じられる。自信を持つきっかけになります」 ――常にアップデートをしたいんですね。 「そうですね。成長を感じていきたいので、それができるのが打撃で、全体としてはMMAでもっと成長したいと思っています」 ――打撃ありの試合、というかMMA自体まだプロ2戦目です。成長を出せそうでしょうか。 「最初はガードしかやっていなかったんです。まだ、打撃ありの試合は2回目なので、成長しているかは分からないですけど、やっぱり守るだけじゃなくて、自分からも仕掛けられるようにはなってきたので、成長しているかなと思っています」 ――グラップリングでは、GTFでの杉内由紀戦、DEEPでのさくら戦も、スペシャリストを相手に足関節にも対応していました。高本代表や渋谷カズキ選手というグラップラーも道場にはいますね。 「はい。8月の杉内選手との試合前は、全然足関とか知らなかったんですけど、やってみて足関というのが結構有効なんだというのを知って、自分もやってみようと練習したら、これも奥深いし、楽しい。足関節に取り組むことで守り方も分かってくるので。前回の試合(さくら戦)はほとんど足を取られることも無かったです」 ――仕掛けてバックを奪うなどトランジションにも使おうと。 「ポジションがいいところに進められるので。基本は上を取ることを優先に、もし下になっても足関でパッと(笑)」 ――「足関でパッと」(笑)。しかし、今回の試合はキャリアでは上のチャンピオンと、ノンタイトル戦ですけれど、対戦しました。話を聞いたときはどのように感じていましたか。 「最初は全然違う選手とやるという候補が上がっていたので、本野選手と、チャンピオンと聞いて驚いたんですけど、チャンスだと思いました。素直に、いいチャンスが来たと思って。勝てばデカい。一気に上がっていけるチャンスだなと思ったので、やらせていただくことになりました」 ――「勝てば」ということを現実的にとらえていたんですね。女子強豪選手が集う名門のAACC所属の本野選手と戦うことで、不安はありませんでしたか。 「やっぱり周りにも強い選手がたくさんいるので、いい環境だなとは思うんですけど、やっぱりその中で、こっちは男性との練習が多いので、けっこう力とかは私もついているかなと思います。本野さんの試合を見ていたら、打撃も、パウンドがすごい強いなという印象があったので、自分が下になっちゃうと怖いなというイメージもあったので、下にならないようにしました」 ――実際、一度も下にはなりませんでした。組みでは伊澤選手がテイクダウンしコントロールする場面が多かったです。「ほかのこともやりたい」と願って取り組んだ、柔道とレスリングが混ざっているところが伊澤選手の強みだと感じました。 「いろいろやってきてよかったです。本野さんもテイクダウンを狙ってくる時間もあると思っていたので、打撃でも距離とかも使いながら、自分のペースで試合を作れたと思います。総合格闘技は奥が深いです」 ――ご家族は伊澤選手がMMAをやることにどう反応していますか。 「お母さんは最初は心配して、怪我とか危ないよね、みたいなことは言っていたんですけど、でも『やる』と言ったらしっかり応援してくれて、毎回、試合にも来てくれるんです。だから、お母さんを心配させないような試合をこれからもしていきたいです。兄弟はお兄ちゃんと弟がいて、高校まではみんな柔道選手でした。兄はスポーツトレーナーをやっているので苦手なフィジカル面を見てくれていて、弟はインターハイで2位になっていて2人ともすごいんです」 ――兄弟たちも伊澤選手をサポートしていると。 「そうですね。でも私の試合を見てて、弟も──今普通に働いているんですけど──『俺も総合やりたいかもしれない』って言ってたので、『夢を与えられる』ってよく言うけど、こうやって身近にそれを実感できて、本当に夢を与えられるんだというのをすごい感じてるので、自分の力になります」 ――22歳、教職大学院生でもある伊澤選手ですが、勉強しながらバイトして毎日練習にも行っていると聞きました。今後、教職との並行も大変ですね。 「今大学院生で、免許の更新と教員免許の一種、二種、専修免許というのがあって、その専修免許を取ろうと思っています。教員はすぐならなくても、どこかでなれればと。今はこの伊澤星花の人生の中で、全力を賭けたいのはこの総合格闘技で、自分が主役というか、自分のために力を使いたいなと思っています」 ──あらためて、今回、王者にノンタイトルで勝って、次はベルトを賭けて戦いたいと。 「はい。ここで勝って、次、タイトルマッチで、JEWELS最短の3戦でチャンピオンになること。それが今の一番近くの目標です」 ──JEWELSの歴代ストロー級王者は、元Invicta&RIZIN王者の浜崎朱加選手、PXCやROAD FCでも戦った富松恵美選手、現UFCの魅津希選手、そして豪州でも戦った本野選手と、海外でも活躍しています。伊澤選手は、リング上で、目指すところは「世界一の総合格闘家」と宣言しましたね。 「そうですね。堀口先輩のように“世界で一番強い総合格闘家”になりたいです。最終的にはUFCで。でも今は自分が出来るステージで一個一個、試合を全力で勝っていきたいです」
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