【写真】(左より)デイブソン・フィゲイレード、ブランドン・モレノ/Getty Images
2020年12月12日(日本時間13日)、『UFC256』が米国ネバダ州ラスベガスの「UFC APEX」にて開催される。
メインイベントは、わずか3週間前、11月22日の『UFC255』でアレックス・ペレスに一本勝ちしフライ級王座の初防衛に成功したばかりのデイブソン・フィゲイレード(ブラジル)が、ナンバーシリーズ2大会連続で出場。同じく『UFC255』で強豪ブランドン・ロイヴァルを下した同級ランキング1位のブランドン・モレノ(メキシコ)相手に2度目の防衛戦を行う。この一戦の見どころを、WOWOW『UFC -究極格闘技-』解説者としても知られる“世界のTK”高阪剛に語ってもらった。
――『UFC256』はメインイベントに予定されていた、ピョートル・ヤンvs.アルジャメイン・スターリングのバンタム級タイトル戦が延期となり、急きょ、先月フライ級王座初防衛に成功(アレックス・ペレスに1R ギロチンチョークで一本勝ち)したばかりのフィゲイレードが、わずか3週間のインターバルで2度目の防衛戦を行うことになりました。
「3週間間隔っていうのは、UFCのタイトルマッチとしては最短らしいですね。ただ、フィゲイレードは前回のタイトルマッチもノーダメージだし、短時間での勝利だったので、まだ暴れ足りないんじゃないかな。彼は暴れたいタイプだと思うので、“もっと暴れさせろ”という感じで、連続でのタイトルマッチをやることにしたんじゃないか。そんな気がしますね」
――また、2カ月連続のタイトル戦となると話題にもなるし、自分自身やフライ級という階級をアピールする意味合いもあるとも見れます。
「それはあると思います。前回、アレックス・ペレス戦での勝ち方は衝撃的でしたし、フライ級というUFCでの最軽量級の戦いに懐疑的だった人たちの認識を覆して、“フライ級、おもしれえな”と思わせた試合だった思うので。だから彼の中では、試合に勝つことはもちろん、自分自身とフライ級というカテゴリーをどうアピールするかということもしっかり考えていて、その2つがちょうどリンクしている状況じゃないかと思います」
――UFCフライ級は一時、廃止の噂もありました。普通の勝ち方をしているだけじゃダメだ、という考えがあるかもしれません。
「そこまで考えてるんじゃないかな。そういう選手が出てくるっていうのは大きいですね。だからある種、同じ階級の選手からすると、目標でありライバルであるんだけど、心強い存在だと思います。また、“どうやって、あのモンスターを倒すの?”ということを、みんなが取り組むわけだから、フライ級自体のレベルの底上げにもつながるでしょうね」
――フィゲイレードは4試合連続フィニッシュを含む5連勝中ですが、このところの強さをどう見ていますか?
「試合を重ねるごとに、フライ級の中での力加減やバランスをつかんでいっている感がありますね。またグラウンドにおいては、自分の得意なところに誘い込むというか、罠を仕掛けて極める能力が非常に高い。あれは本人の持っている才能、センスでしょうね」
――そして挑戦者のブランドン・モレノも同じく3週間のインターバルの試合(UFC255でブランドン・ロイヴァルに1R TKO勝ち)で、現在3連勝中です。
「モレノもフィゲイレードとちょっと似ていて、“暴れたいタイプ”ですよね。試合でも、自分からどんどんプレッシャーをかけていって、相手が返してきたところに、もう一歩踏み込んで自分の打撃を当てていくような。リスクはあるけれど打ち合い上等で仕留めにいく戦いをしている。そういう試合を好んでいるのか、自分をアピールするために、リスキーな戦いをしているのかはわかりませんけど、それがいい方向に作用してる選手ですね」
――モレノは昨年、ちょうどフライ級廃止の噂が出た頃に連敗してしまい、一度UFCをリリースされていますよね。でも、LFAでフライ級王者になって再契約を勝ち取って、そこから引き分けを挟んで3連勝中です。
「その一度契約を解除されているからこそ、必死さが伝わってくるのかもしれないですね。また、モレノはフィゲイレードと比べて、身長もリーチも2インチ(約5センチ)長いんですよ。そしてスタンドの構えがワイドスタンスで、手と頭を常に動かしているんですけど、あれは自分の手足の長さを活かすスタイルだと思います」
――対戦相手を幻惑するというか。
「そうです。元ミドル級王者のアンデウソン・シウバもそんな動きをしますけど、ワイドスタンスで手を忙しく動かすと、相手は捉えどころがなくなるというか、全体像がすごく大きく見えるようになるんですよ。そうすると、顔面にパンチを入れようとしても、なかなか距離設定がつかめなかったり、空振りしてしまったりする。モレノもそういう考えで、常に手を動かしてるんじゃないかと思いますね」
――となると、出入りのスピードやタイミングで勝負するフィゲイレードからすると、やりにくい相手と言えますか?
「ただ、フィゲイレードはそうなったときの手として、カウンター狙いというのがあるんですよ。モレノが距離を狂わせながら打撃を出してきたところに、そのタイミングで踏み込んで打ちにいくということもできる。だから今度の試合では、その辺りのタイミングと間合いの取り合いが起こる気がしますね」
――あとフィゲイレードもモレノも、寝技の一本勝ちが多い選手ですが、その辺りはどうですか?
「グラウンドでも、自分なりに見た2人の共通項というのがあって。寝技の攻防の中で、ちょっと雑なところを見せたりするんですよ。それは本当に雑なのか、わざと隙を見せているのかはわかりません。相手が“チャンス!”と思って極めに来たところを、逆にポジションを奪い返して、自分が極める段階まで持っていくという試合が、お互い何度かあったんですよね」
――わかりやすく言うと、ヒクソン・グレイシーみたいな、きっちりとした隙のない寝技じゃないってことですね。
「そう。ヒクソンのような理詰めで隙間を与えない寝技じゃなくて、隙があって相手も“いける”と思ったところで、その瞬間に首を取りにいったりとか。フィゲイレードはまさに前回のペレス戦がそうでしたけど、モレノもそうだなって思う場面がいくつかあったので。その辺の駆け引きがポイントになるんじゃないかな。どちらも止まらない動き回る寝技になるので、立っても寝ても、すごく面白い試合になると思います」
――フィゲイレードが前回ペレスをギロチンチョークで極めたのも、二手三手先を読んだようなフィニッシュでした。
「フィゲイレードの試合後のコメントが本当だとしたら、わざとバックを奪わせておいて、ペレスが一瞬安心して気を抜いたところで、極めているわけですからね。そういった餌の撒き合い、先の読み合いが展開されて、それでいて動きが止まらないという試合になれば、相当ハイレベルな試合になると思うんですよ。そして“これこそが、UFCフライ級の戦いなんだ”というものを、あの2人なら見せてくれるんじゃないかな」
――スタンドでもグラウンドでも動きが止まらず、さらに先を読み合うようなハイレベルな戦いが、『フライ級』ということになるかもしれませんね。
「それを5ラウンドやられたら、実況・解説陣がかなり大変になりそうですけど(笑)。そういった心地いい疲れを感じさせるような試合を期待したいですね」
UFC 256: Figueiredo vs. Moreno
2020年12月12日(日本時間13日)
米国ネバダ州ラスベガス「UFC APEX」
【メインカード】
▼UFC世界フライ級選手権試合 5分5R
デイブソン・フィゲイレード(ブラジル)
ブランドン・モレノ(メキシコ)
▼ライト級 5分3R
トニー・ファーガソン(米国)
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
▼ライト級 5分3R
ヘナート・モイカノ(ブラジル)
ハファエル・フィジエフ(キルギス)
▼ミドル級 5分3R
ケヴィン・ホランド(米国)
ホナウド・ジャカレ・ソウザ(ブラジル)
▼ヘビー級 5分3R
ジュニオール・ドス・サントス(米国)
シリル・ガーヌ(フランス)
【プレリム】
▼フェザー級 5分3R
カブ・スワンソン(米国)
ダニエル・ピネダ(米国)
▼女子ストロー級 5分3R
マッケンジー・ダーン(米国)
ヴォルナ・ジャンジローバ(ブラジル)
▼フェザー級 5分3R
ビリー・クアランティーロ(米国)
ギャビン・タッカー(カナダ)
▼女子ストロー級 5分3R
ティーシャ・トーレス(米国)
サム・ヒューズ(米国)
▼ヘビー級 5分3R
セルゲイ・スピバック(モルドバ)
ジャレッド・ヴァンデラー(米国)
▼フェザー級 5分3R
チェイス・フーパー(米国)
ピーター・バレット(米国)
◆WOWOW『『UFC─究極格闘技究極格闘技─』放送スケジュール
『UFC─究極格闘技─UFC256 in ラスベガス
フライ級王者フィゲイレード、2大会連続の防衛戦!』
(※メインカードを放送)
12月13日(日)午後0時[WOWOWライブ]生中継
(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信)
12月15日(火)夜9時[WOWOWライブ]
(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信)